問いを発する児童の育成に関する実践について

能 代市立 向能 代小 学校
問いを発する児童の育成に関する実践について
◇問いを発する児童育成の捉え
◇問いを発する児童とは…
① 積極的に発言することができる子ども
② 自分なりの考えをもって取り組む子ども
③ 問題意識をもって取り組む子ども
④ 自分で考えたことを自分の言葉で話すことができる子ども
⑤ 友達の考えを自分と比べて,共感したり,疑問をもったり,質問したりする子ども
⑥ 前向きに物事を捉えて活動したり発言したりする子ども
⑦ 興味・関心をもち,学びや体験の中から楽しさを見付けようとする子ども
⑧ 友達と積極的に関わり,他のよさを認めながら自分の考えを深める子ども
⑨ 学びや体験から考えたことを基に,新たな課題を発見し,追求しようとする子ども
⑩ 主体的に取り組み,課題を見付け,解決しようとする子ども
◇そのためには…
① 子ども自身の自己肯定度を高め,「できた」「やれた」という気持ちをもたせること
② 自分の考えを積極的に話すためには,話したことが受容されること,共感的な人間関
係が必要
③ 見通しを立てたり,振り返ったりする活動を重視すること
④ 児童にとって必然性のある課題や魅力ある課題を提示し,目的意識をもって思考・活
動させ,解決によって達成感をもたせる過程を積み重ねること
⑤ 進んで学び,考える力,課題を見いだして考える力,共に学び,よりよくなろうとす
る力,教えられるだけではなく,自ら学び,自ら考える力を身に付けること
⑥ 注意深く人の話を聞き公の場で質問をしたり,自分の考えを発表したりする態度とそ
のための知識を身に付けること
⑦ 子どもたちの興味・関心を引き出すこと。基本的な学習習慣を身に付けること。
⑧ 相手の話をよく聞く力,相手の立場になって考える力,ある程度の知識や情報を身に
付けること
◇特別支援教育において
① 自ら問いを発すること事態が困難である。「問いを発する」を課題を見付け取り組む
と考えると,支援する側が,個々の特徴を見極めそれぞれに合った課題の設定が必要で
あると考える。設定された課題にそれぞれが取り組み,「できた」と満足が得られるよ
うにしていきたいと考えている。
② 難聴児は耳から入る情報量がかなり少ない。そのため,知識・言葉だけではなく一般
常識に関しても知らないことが多い。聞こえない状態でずっと過ごすことで,「知らな
い」と伝えない態度が身に付き,全て受け身になってしまう。難聴児にとって「問いを
発する」ということは,将来社会に出たときに必要な知識や,コミュニケーションをす
るための語彙などを得るために重要であり,自立して生きていくために必要なことであ
ると思う。最初は「分からないことを自分から質問する・調べる」という意識を高める
ようにし,今後は「経験から得た知識から更に新たなことを知ろうとする」意識をもた
せたいと考えている。
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教科・領域についての実践
国語の時間において
① 文脈から読み取ったことを基に,動作化をしたりセリフを付け加えたりしながら,子ど
もがのびのびと自分の考えを生かして劇化できるような学習を心がけた。
② 自ら問題を捉え,学習課題を練り上げていく活動
子どもたちが文章に初めて触れた際に感じた思いや疑問などを一覧にしてまとめた。そ
の中から自分が解決していくべきものを見付け,自らの問題として捉えることができるよ
う配慮した。また,子どもたちから出てきた疑問を学習課題として取り入れ,単元計画を
組むようにしてきた。自分の思いや疑問が学習課題として取り上げられることで,目的意
識をもって学習に意欲的に取り組む姿が見られるようになった。
③ 「もっとできるはず」「もっとこうしたい」等,子どもが問い,子どもが考える授業展
開の工夫。体験→成果・課題→新たな課題。目的達成のための手立てを子どもも考える。
教師はそのコーディネーター。
【実践例】狂言「柿山伏」の音読発表の記録ビデオを見て
(登場人物の気持ちや場面の様子など,読み取ったことを基に音読を工夫した。)
教師 どう。音読の工夫が伝わってきたよ。
教師 なるほど。今のようなことを心がけ
よかったよ。
れば,狂言らしくなると思いますか。
児童 でも,なんか…。
児童 思います。
児童 狂言っぽくない。
教師 では,そのようにして次の「附子」
教師 他の人たちはどう思う。
の狂言を作っていきましょう。それ
児童 狂言っぽくないと思う。
と補足ですが,狂言はそこにないも
教師 じゃあ,どうすれば狂言っぽくなると
のもあるようにして演じますから,
思う。
「附子」に出てくる掛け軸や茶わん
児童 心の声であっても大きな声でしゃべれ
は 準備しないでください。必要最小
ばいいと思う。
限で行きましょう。(
「柿山伏」で柿
児童 狂言独特の話し方をすればいいと思う。
を作ってきた児童がいた。それはそ
教師 狂言独特の話し方とは。
れで評価した上で。
)
児童 大きくはっきり。
児童 先生,扇子は自分たちで持ってきま
児童 ゆっくり目に。
すから,附子の入れ物は先生が準備
児童 二字目を張る。
してくれませんか。
児童 泣いたり笑ったりする時の所作を付け
る。
※子どもが発した問いを生かすためには,教師による問い直しが大切だと感じた。
④ 1時間のめあてを「~考えよう。」「~見付けよう。」ではなく「~書こう。」「~まとめ
よう。」など,ゴールがはっきり表現できるものになるようにした。(不十分なので今後
も続ける。)課題によっては,話し方のパターン(話型)を与えて発表できるようにした。
ペアやグループでの意見の交流を取り入れて,自分の考えを声に出して必ず話させるよう
にした。
⑤ 国語科 「スイミー」読書郵便による渟城南小2年生との交流
・教科書教材「スイミー」を読むに当たり,レオ・レオニの絵本を読み聞かせて興味をも
たせ,南小の先生から届いた(という設定の)読書郵便を紹介した。
・自分たちもレオ・レオニの本を読んで南小の2年生に読書郵便を届けようと提案した。
・「スイミー」を読んで自分の思いを書くことを学習し,次に自分の好きなレオ・レオニ
の本を選んで読書郵便を書いた。
⑥ 国語「くちばし」の学習から
・「問い」「答え」の文を本文から見付け,呼応する形式を覚えるという,初の説明文の
学習である。その後,図鑑などから自分の好きな鳥を決め,「問い」「答え」の文を書
き,「くちばしクイズ」を作る学習をした。
※「これは,なんのくちばしでしょう。」という文が,
「なぞなぞみたい。」と言いながら,
答えを探し出したり,「誰かにくちばしのクイズを出してみたい。」と冊子作りに意欲
的に取り組んだりした。
※「くちばしクイズ」を作った後は,休み時間に他学年の友達や,持ち帰って家族にクイ
ズを出し,楽しむことができた。
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