新潟県農林水産業研究成果集(平成26年度) 研 究 成 果 情 報 平成26年度 地域伝統野菜とうがらし「かぐらなんばん」の安定栽培技術 [要約]「かぐらなんばん」の露地栽培は、株間は40cmにし、2節果まで摘花することによ って収量は増加する。青枯病発生ほ場では、抵抗性台木の利用が有効である。 新潟県農業総合研究所中山間地農業技術センター 連絡先 TEL FAX 0258-89-2330 0258-89-4315 [背景・ねらい] 「かぐらなんばん」は、新潟県長岡市や南魚沼市などの中山間地域で生産される地域伝統野菜の とうがらしであるが、栽培は地域慣行法で行われており生産が不安定である。そこで、生育の安 定化と生産量の増加を図るための栽培技術を確立する。 [内容] 1 商品果収量向上・安定栽培技術 (1)株間はやや密植となる40cmとすることで、単収は増加し、尻腐れ果、日焼け果、白色果 などは減少する(表1)。 (2)出蕾から着果初期までに1~2節果を摘花することは、茎径や根量の増加などの草勢維持 に効果があり、商品果収量を増加させる(図1、2)。 (3)接ぎ木台木、自根とも根量が少なく強風時に倒れやすいため、垂直に立てた支柱に主幹径 を固定する。また、枝が下垂しないよう支線で支え、主要な枝を支線に固定する(図3)。 枝は整枝剪定せず、細い枝や下垂した枝を間引く程度とする。 2 接ぎ木利用による青枯病の抑制 (1)青枯病の発病抑制は、青枯病抵抗性台木「トウガラシ安濃交2号」へ接ぎ木した苗での栽 培が有効である(表2)。 (2)「トウガラシ安濃交2号」の接ぎ木栽培は、自根と比べて草勢は同等で、ともに青枯病に 冒されず健全に生育した場合で、収量は同等~1割減収する(表2)。 [導入効果] かぐらなんばんの生産量が増加し、複合経営の安定に寄与する。 [導入対象] かぐらなんばん生産者 [留意点] 1 「トウガラシ安濃交2号」は、(独)農研機構・野菜茶業研究所で育成された品種で、平成 26年に品種登録出願された。種子の入手は、種苗会社による市販開始まで、同研究所へ申請 すれば有償配布が可能である。 2 「トウガラシ安濃交2号」との接ぎ木は、ピン接ぎ(子葉節上で斜め切り)の場合、台木を 穂木より5日程度早くは種する。 3 青枯病の誘発を防止するため、ナス科作物との連作、多肥、排水不良ほ場などでの栽培を避 ける。 新潟県農林水産業研究成果集(平成26年度) [具体的データ] (平成19年) 1a当たり 商品果 総収量 A品 B品 (kg) (kg) (kg) 574 95 900 542 101 866 490 86 810 140 30 120 25 収量kg/a 100 20 80 茎径mm 表1 株間と収量、障害果の発生 1株当たり 商品果 障害果 総収量 株間 A品 B品 尻腐 日焼 白色 (コ) (コ) (コ) (コ) (コ) (コ) 40cm 54 10 94 5 4 6 50cm 65 13 114 8 9 8 60cm 69 13 138 18 13 12 試験は畦幅120cm 着果 摘花 15 60 10 40 5 20 摘花収量 2節果 無摘花収量 1節果 摘花茎径 0 0 6月 7月 8月 9月 10月 11月 無摘花茎径 図1 摘花の有無と商品果収量・茎径の推移(平成24年) 図2 生育初期の摘花法 ・2節までは必ず着果初期までに摘む。 ・3節果以降は放任着果させ、奇形果や障 害果を早めに摘む。 表2 台木品種の収量性と青枯病発病株率 試験区 1a当たり収量1) 青枯病発病株率 実施 台木品種・ A品 B品 規格外 総収量2) 8月前期 9月後期 年度 系統名 (kg) (kg) (kg) (kg) (%) (%) 安濃交2号 143 78 288 509 (-) 0 0 H23 スケットC3) 174 111 340 626 (-) 0 0 - 22 自根4) 168 97 294 559 (-) 安濃交2号 230 174 165 569 (95) 0 0 H24 スケットC3) 322 220 142 684 (115) 0 0 自根 288 187 122 597 (100) 0 0 安濃交2号 170 7 27 204 (165) 0 0 H25 スケットC3) 145 4 22 171 (138) 43 79 自根 100 6 18 124 (100) 57 86 1) 収穫調査期間:H23は10月21日、H24は10月16日まで。H25は青枯病が多発 したため8月12日に打ち切り。 図3 収穫初期の生育と支線 (マイカー線)の設置 2)総収量( )は、対自根比 3)スケットCは青枯病耐病性をもつピーマン台木 4) H23の自根は、健全株数を調査株数に換算した数値。 ・果実が重く、多数着果するため、支線 で株を挟むようにして枝を支える。 [その他] 研究課題名:1 新規設立法人の経営資源を効率的に活用する経営発展方策の解明 2 中山間地域における継続可能な園芸生産技術の確立 3 野菜茶業研究所育成系統評価試験 予 算 区 分:1 県単事業(地域農政推進課)、2 県単経常、3 独法委託 研 究 期 間:1 平成19~21年度、2 平成22~24年度、3 平成23~25年度 発表論文等:なし
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