最適化手法 講義資料(平成 27 年度 A1 セメスター) 分数計画 A ∈ Rm×n を定行列, b ∈ Rm , c ∈ Rn , p ∈ Rn を定ベクトル,d ∈ R, q ∈ R を定数とする.x ∈ Rn を変数とする次の最適化問題を,線形分数計画問題という: p⊤ x + q min x c⊤ x + d s. t. Ax ≤ b, ⊤ c x + d > 0. 問題 (1) の最適解は,y ∈ Rn と t ∈ R を変数とする線形計画問題 min p⊤ y + qt y,t s. t. Ay ≤ bt, c⊤ y + dt = 1, t≥0 を解くことで得られる.以下では,このことを説明する. • 以下,試験の範囲外 命題 1. 問題 (1) に最適解が存在するとき,その最適値は問題 (2) の最適値に等しい. 証明. 問題 (1) の目的関数を f1 (x), 最適値を f1∗ とおく.また,問題 (2) の目的関数を f2 (y, t),最適値を f2∗ とおく. まず,f1∗ ≥ f2∗ を示す.問題 (1) の任意の実行可能解を x̄ とおく.ȳ および t̄ を ȳ = x̄ , c⊤ x̄ + d t̄ = 1 c⊤ x̄ + d と定義する.(ȳ, t̄) は問題 (2) の実行可能解であり,f1 (x̄) = f2 (ȳ, t̄) を満たす.従って, f1∗ ≥ f2∗ が成り立つ. 次に,f1∗ ≤ f2∗ を示す.問題 (2) の任意の実行可能解を (ȳ, t̄) とおく.t̄ ̸= 0 ならば,x̄ を x̄ = ȳ t̄ で定義すると,x̄ は問題 (1) の実行可能解であり,f1 (x̄) = f2 (ȳ, t̄) を満たす.t̄ = 0 の場 合には,ȳ と問題 (1) の任意の実行可能解 x0 に対して,x̄ を x̄ = x0 + µȳ, µ≥0 で定義する.すると,x̄ は問題 (1) の実行可能解であり,limµ→∞ f1 (x0 + µȳ) = f2 (ȳ, 0) が成り立つ.つまり,問題 (2) の目的関数値にいくらでも近い目的関数値をもつような問 題 (1) の実行可能解が選べる.以上より,f1∗ ≤ f2∗ が成り立つことが分かる. 1 (1) (2) 次に,問題 (1) の一般化として,最適化問題 min f0 (x)/h(x) x s. t. h(x) > 0, fi (x) ≤ 0, (3) i = 1, . . . , m を考える.ただし,fi : Rn → R (i = 0, 1, . . . , m), h : Rn → R である.補助変数 s ∈ R を導入するこ とで,問題 (3) は次の等価な問題に変形できる: min f0 (x)/s x,s s. t. 0 < s ≤ h(x), fi (x) ≤ 0, i = 1, . . . , m. (4) ここで命題 1 と同様に考えて y = x/s, t = 1/s とおくと,問題 (4) は y ∈ Rn と t ∈ R を変数とする 次の最適化問題に帰着できる: min tf0 (y/t) y,t s. t. 1 − th(y/t) ≤ 0, tfi (y/t) ≤ 0, t > 0. (5) i = 1, . . . , m, 一般に,関数 f : Rn → R に対して関数 g : Rn × R++ → R を g(x, t) = tf (x/t) (6) で定義する(ただし,R++ = {t ∈ R | t > 0} である).このとき,f が凸関数ならば g も凸関数であ ることを示すことができる. 例 1. 凸 2 次関数 f (x) = x⊤ x に対して,(6) で定義される関数 g(x, t) = t(x/t)⊤ (x/t) = x⊤ x , t t>0 は凸関数である.このことは,t > 0 に対して t2 [ ] .. [ tI . 2 2 −tx 2 ∇ g(x, t) = 3 = tI t3 −x⊤ t t2 −tx⊤ x⊤ x O O −x ] ⪰O ■ が成り立つことから確かめられる. 分数計画問題 (3) において,f0 , f1 , . . . , fm が凸関数であり h が凹関数(即ち,−h が凸関数)であ ることを仮定する.このとき,問題 (3) と等価な問題 (5) は凸計画問題に帰着できる. 参考文献 [1] Boyd, S., Vandenberghe, L.: Convex Optimization. Cambridge University Press, Cambridge (2004). (2015, 寒野) 2
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