10月26日 配布

最適化手法 講義資料(平成 27 年度 A1 セメスター)
分数計画
A ∈ Rm×n を定行列, b ∈ Rm , c ∈ Rn , p ∈ Rn を定ベクトル,d ∈ R, q ∈ R を定数とする.x ∈ Rn
を変数とする次の最適化問題を,線形分数計画問題という:





p⊤ x + q
min
x
c⊤ x + d
s. t. Ax ≤ b,



⊤
c x + d > 0. 
問題 (1) の最適解は,y ∈ Rn と t ∈ R を変数とする線形計画問題


min p⊤ y + qt


y,t



s. t. Ay ≤ bt,

c⊤ y + dt = 1, 




t≥0
を解くことで得られる.以下では,このことを説明する.
• 以下,試験の範囲外
命題 1. 問題 (1) に最適解が存在するとき,その最適値は問題 (2) の最適値に等しい.
証明. 問題 (1) の目的関数を f1 (x), 最適値を f1∗ とおく.また,問題 (2) の目的関数を
f2 (y, t),最適値を f2∗ とおく.
まず,f1∗ ≥ f2∗ を示す.問題 (1) の任意の実行可能解を x̄ とおく.ȳ および t̄ を
ȳ =
x̄
,
c⊤ x̄ + d
t̄ =
1
c⊤ x̄ + d
と定義する.(ȳ, t̄) は問題 (2) の実行可能解であり,f1 (x̄) = f2 (ȳ, t̄) を満たす.従って,
f1∗ ≥ f2∗ が成り立つ.
次に,f1∗ ≤ f2∗ を示す.問題 (2) の任意の実行可能解を (ȳ, t̄) とおく.t̄ ̸= 0 ならば,x̄ を
x̄ =
ȳ
t̄
で定義すると,x̄ は問題 (1) の実行可能解であり,f1 (x̄) = f2 (ȳ, t̄) を満たす.t̄ = 0 の場
合には,ȳ と問題 (1) の任意の実行可能解 x0 に対して,x̄ を
x̄ = x0 + µȳ,
µ≥0
で定義する.すると,x̄ は問題 (1) の実行可能解であり,limµ→∞ f1 (x0 + µȳ) = f2 (ȳ, 0)
が成り立つ.つまり,問題 (2) の目的関数値にいくらでも近い目的関数値をもつような問
題 (1) の実行可能解が選べる.以上より,f1∗ ≤ f2∗ が成り立つことが分かる.
1
(1)
(2)
次に,問題 (1) の一般化として,最適化問題




min f0 (x)/h(x)
x
s. t.
h(x) > 0,
fi (x) ≤ 0,
(3)


i = 1, . . . , m 
を考える.ただし,fi : Rn → R (i = 0, 1, . . . , m), h : Rn → R である.補助変数 s ∈ R を導入するこ
とで,問題 (3) は次の等価な問題に変形できる:




min f0 (x)/s
x,s
s. t.
0 < s ≤ h(x),
fi (x) ≤ 0,
i = 1, . . . , m.
(4)



ここで命題 1 と同様に考えて y = x/s, t = 1/s とおくと,問題 (4) は y ∈ Rn と t ∈ R を変数とする
次の最適化問題に帰着できる:







min tf0 (y/t)
y,t
s. t.
1 − th(y/t) ≤ 0,
tfi (y/t) ≤ 0,
t > 0.
(5)

i = 1, . . . , m, 




一般に,関数 f : Rn → R に対して関数 g : Rn × R++ → R を
g(x, t) = tf (x/t)
(6)
で定義する(ただし,R++ = {t ∈ R | t > 0} である).このとき,f が凸関数ならば g も凸関数であ
ることを示すことができる.
例 1. 凸 2 次関数 f (x) = x⊤ x に対して,(6) で定義される関数
g(x, t) = t(x/t)⊤ (x/t) =
x⊤ x
,
t
t>0
は凸関数である.このことは,t > 0 に対して


t2


[
]
..

[
tI
.
2 
2
−tx 

2
∇ g(x, t) = 3 
=

tI
 t3 −x⊤
t 
t2


−tx⊤
x⊤ x
O
O
−x
]
⪰O
■
が成り立つことから確かめられる.
分数計画問題 (3) において,f0 , f1 , . . . , fm が凸関数であり h が凹関数(即ち,−h が凸関数)であ
ることを仮定する.このとき,問題 (3) と等価な問題 (5) は凸計画問題に帰着できる.
参考文献
[1] Boyd, S., Vandenberghe, L.: Convex Optimization. Cambridge University Press, Cambridge
(2004).
(2015, 寒野)
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