201 5 年度 数学基礎考究2 (落合) 確認小テスト解説 (10/15) 次の問いに教科書やノートを見ずに答えよ. 尚, 数学的な文章を正しく 書ける訓練でもあるので, 読みやすい文字と文章で記すこと. [1] 体 K 上のベクトル空間 V が与えられたとき, 空でない 部分集合 W ⊂ V が K 部分空間であることの定義を 過不足なく 正確に記せ. 定義 W が次をみたすとき, W は V の K 部分空間であるという: (1) W の勝手な元 w, w′ に対して w + w′ ∈ W . (2) W の勝手な元 w と K の勝手な元 a に対して aw ∈ W . 教科書の p.17 の定義と比べて違いがあることに注意しよう. 教科書で は, 上の条件に加えて (3) V の零元 0V は W の元である, という条件がある. W が空集合でないならば, w ∈ W をとると, 条件 (2) より (−1) · w ∈ W である. 条件 (1) より w + (−1) · w = 0 · w ∈ W である. 0 + 0 = 0 より, V の中で 0 · w + 0 · w = 0 · w が成り立つ. 両 辺に V における 0 · w の逆元を加えて, 0 · w = 0V が V で成り立つ. 左 辺は W の元であるから, 0V ∈ W が成り立つ. 逆に, 教科書 p.17 の定 義において条件 (3) があると明らかに W は空集合でない. さて, 実際に部分空間の定義を確かめたり問題を解く状況では, 与えら れた明らかに W が空でないことが多いように思われる. 定義としては 最初のものを用いるのが妥当だろう. [2] U , V が K ベクトル空間であるとき, 写像 f : U −→ V が線型写像 であることの定義を述べよ. 定義 K ベクトル空間 U , V の間の写像 f : U −→ V が線型写像である とは次の条件が成り立つことをいう: (1) U の勝手な元 u, u′ に対して f (u + u′ ) = f (u) + f (u′ ) が成り立つ. (2) U の勝手な元 u と K の勝手な元 a に対して f (au) = af (u) が成り 立つ. 上の定義は教科書 p.38 の定義 2.1.1 と同じである. 教科書 p.47 からの 2.2 節に線型写像の例も沢山のっている. 教科書のこのあたりも参照の こと. [3] U が m 次元 K ベクトル空間, V が n 次元 K ベクトル空間, f : U −→ V が線型写像であるとき, Kerf , Imf の定義を述べよ. Kerf = {u ∈ U | f (u) = 0} Imf = {f (u) | u ∈ U } あるいは, Imf = {v ∈ V | ∃u ∈ U s.t. v = f (u)} 核と像については教科書 p.64 からの 2.4 節を参照のこと. [4] U が m 次元 K ベクトル空間, V が n 次元 K ベクトル空間, f : U −→ V が線型写像であるとき, dim Kerf , dim Imf の間に成り立つ等式を記 せ (次元公式)1. 答え dim Kerf + dim Imf = m. rankf = dim Imf に注意すると, これは教科書 p.67 の系 2.4.9 に他なら ない. 該当部分の証明を参照のこと. 公式をなんとなくは覚えていても正確に思い出せないときがあるかも あるかもしれません. 公式を思い出すには, 「その場で証明を考える」 のが一つの方法です. それ以外には,「手っ取り早い例」を考えて「実 験」してみることも有幸な方法です . ( ) 1 0 0 0 A= のとき, m = 4, n = 2, dim KerfA = 2, dim ImfA = 0 1 0 0 2 である . 1 0 0 1 A= のとき, m = 2, n = 4, dim KerfA = 0, dim ImfA = 2 で 0 0 0 0 ある. 行列で幾つか例を計算していれば正しい式を思い出せるだろう. [5] 次のベクトル空間 V に対して, 次元 d を具体的に記せ. 1Kerf , Imf が K 部分空間であることはここではとりあえずみとめること. (1) 実数体 R 上のベクトル空間としての複素数体 C. 答え d = 2 (2) K 係数の n 次正方行列のなすベクトル空間 V = Mn (K). 答え d = n2 (3) Mn (K) の中で対称行列全体のなす K 部分空間. 答え d = n(n + 1) 2 (4) Mn (K) の中で交代行列全体のなす K 部分空間. 答え d = n(n − 1) 2 (5) U が m 次元 K ベクトル空間, V が n 次元 K ベクトル空間のときの K ベクトル空間 HomK (U, V ). 答え d = mn U の基底 u1 , . . . , um と V の基底 v 1 , . . . , v n を選んで固定する. このと き, fi,j ∈ HomK (U, V ) を fi,j (ui ) = v j であり, i′ ̸= i のとき fi,j (ui′ ) = 0 なる元とする. このとき, (fi,j )1≤i≤m,1≤j≤n が HomK (U, V ) の基底にな る. a1,1 x1 + · · · + a1,n xn = 0 (6) 連立 1 次方程式 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · の解のなす K 部分 am,1 x1 + · · · + am,n xn = 0 空間 (d は等式ではなくある等号つき不等式をみたす) 答え d ≥ n − min{m, n}
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