フーリエ係数と振幅・位相スペクトル いよいよここからこの章の本題であるフーリエ解析 (スペクトル解析) の説明に入ります。その前にスペクトルについ て話します。 「スペクトル」という単語は皆さんはどこかで聞いたことがあると思いますが、では具体的にスペクトルとは何なの でしょうか? 「スペクトル」の意味は扱う分野によって色々変わってくるのですが、数学や物理、工学の分野では時間領域信号 f (t)、 f [i] に対して、いま習っているフーリエ級数展開やこのあと習うフーリエ・ラプラス変換、DFT/FFT を行なうと出て くる周波数領域信号 F(w)、F[w] のことを「スペクトル」と呼んでいます (周波数領域信号の意味を忘れた人はアナログ 信号の基礎の章の「時間領域信号と周波数領域信号」のテキストを復習して下さい)。 ちなみにスペクトル(spectrum) の語源は wikipedia によるとラテン語のスペクトルム (spectrum) で、幽霊、亡霊、 妖怪、お化け、幻影を意味する英語のスペクター (specter) と同じ語源だそうです。以前書いた通り、周波数領域信号を 人間は見たり聞いたりして感知出来ないのでピンと来ない人が多いと思いますが、お化けとか幻影とかと似た意味であ るスペクトルという名前は確かに合っていると思います。 話を戻しますが、より具体的にいま習っているフーリエ級数展開のスペクトルは何かと言えば、フーリエ係数 1 Ck = T ∫ T/2 −T/2 { } f (t) · e{−j·k·w1 ·t} dt , (k = 0, ±1, ±2, · · · ) です。このフーリエ係数は複素数ですので、極形式で表すと次のようになります。 Ck = |Ck | · e{j·∠ Ck } ここで絶対値 |Ck | のことを「振幅スペクトル」、偏角 ∠ Ck のことを「位相スペクトル」と呼びます。さらに |Ck |2 のこ とを「パワースペクトル」といいます。また「振幅スペクトル」を「振幅成分」、 「位相スペクトル」を「位相成分」とも 呼びます。 ちょっと長くなってきたので一旦ここまでの話をまとめます。 ここまでのまとめ ・時間領域信号に対して○○変換すると出てくる周波数領域信号のことを「スペクトル」と呼ぶ ・周期性アナログ信号のスペクトルはフーリエ級数展開で求まる ・周期性アナログ信号のスペクトルはフーリエ係数 Ck だ ・フーリエ係数の絶対値を |Ck | を「振幅スペクトル (成分)」という ・フーリエ係数の偏角 ∠ Ck のを「位相スペクトル (成分)」という ・|Ck |2 を「パワースペクトル」という 1
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