カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)

ステルス型 CRE とは?
Labo Face
2014 年 3 月に大阪の国立病院で CRE のアウトブレイクの報道がありました。その CRE はステルス型と呼ばれる
春季号
耐性であるカルバペネム系抗菌薬が感受性検査では、感性を示し、あたかも有効であるように見え、カルバペネム系
カルバペネマーゼを産生するものでした。ステルスとは隠れたという意味があります。その腸内細菌の獲得したカル
バペネマーゼは感受性検査では、カルバペネム系抗菌薬の MIC 値が比較的低く、感性(S)となる場合があります。
抗菌薬を実際に使用すると耐性を発現し、効果を示しません。このように隠れた耐性であることからステルス型と呼
豊田厚生病院 臨床検査技術科
ばれます。
感染症法
~カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)~
CRE 届出基準
カルバペネマーゼの有無ではなく、以下の基準で検査報告します。
CRE とは
①腸内細菌科細菌の検出
CRE(Carbapenem-Resistant Enterobacteriaceae)は、カルバペネムに耐性を獲得した腸内細菌
②カルバペネム系薬剤及び β ラクタム剤に対する耐性の確認
科細菌の総称です。2014 年 9 月に 5 類感染症に指定され世界的に蔓延が危惧されている耐性菌とし
ディスク法
て今注目を集めています。代表的な菌種としては、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)や大腸菌
①メロペネムの感受性ディスク(KB)の阻止円の ①メロペネムのMIC値が2μg/ml 以上であること。
(Escherichia coli)があげられます。腸内細菌科細菌はヒトや動物の腸管内など酸素が乏しい環境で
※①もしくは②を満たす事
直径が 22mm 以下であること。
も生育できる菌種です。また経口感染によりヒトの腸管内に定着しやすく、食品や、医療環境での感
※①もしくは②を満たす事
②イミペネムのMIC値が2μg/ml 以上かつ、
②イミペネム感受性ディスク(KB)の阻止円の直
染が起こりやすい細菌群の為、私生活、医療現場で注意が必要な細菌です。
微量液体希釈法
径が 22mm 以下でかつ、セフメタゾール感受性
セフメタゾールのMIC値が64μg/ml 以上であ
ること。
ディスク(KB)の阻止円直径が 12mm 以下で
薬剤耐性機構
あること。
CRE の薬剤耐性機構は、カルバペネムを分解する酵素(カルバペネマーゼ)を産生する事などにより
※通常無菌的でない検体は分離菌が感染症の起因菌と判定されることが必要です
ます。このカルバペネマーゼは、ペニシリンやセファロスポリン系のすべての β―ラクタム系抗菌薬を
分解します。また CRE 自身が β―ラクタム系以外のアミノ配糖体系やニューキノロン系などのほとん
ど全ての抗菌薬に対する耐性を保有する事もあります。有効な抗菌薬として、チゲサイクリンが日本で
TOPIC:大腸菌のLVFX感受性率の動向
は使用可能です。コリスチンも海外では使用されていますが、腎毒性や神経毒性が懸念されています。
カルバペネマーゼの種類
カルバペネマーゼの遺伝子型は様々な型が存在します。遺伝子型を世界と日本で比較すると大きな違い
があります。世界で問題となっている NDM-1 や KPC 型 OXA48 型といった遺伝子型はほとんど検出
されておらず、日本では IMP 型や VIM 型(特に IMP 型)が多く占めています。
βラクタマーゼのタイプ
流行地域
検出法
IMP(ClassB)
世界中の各地
EDTA 法、メルカプト法
VIM(ClassB)
欧州
EDTA 法、メルカプト法
NDM(ClassB)
欧州、南アジア
○大腸菌のLVFX感受性率
ESBL 産生株・・・9.0%
ESBL 非産生株・・・70.9%
①材料別LVFX感受性率(ESBL 非産生株)
材料種別
総検出数
感受性率(%)
1
その他
18
83.3
EDTA 法、メルカプト法、
2
血液・穿刺液
90
81.1
変法ホッジ法
3
消化器
19
78.9
KPC(ClassA)
米国、欧州
変法ホッジ法、ボロン酸法
4
呼吸器系
78
70.5
OXA(ClassD)
欧州、北アフリカ
変法ホッジ法
5
泌尿器系
438
68.0
阻止円にくぼみ
メルカプト法
ESBL 産生、非産生を問わず、大腸菌は泌尿器系材
料から多く検出される。またそのLVFXの感受性
率は低く、男性は 40 歳代から、女性は 50 歳代か
ら 8 割を下回る。
②年齢別LVFX感受性率(ESBL 非産生株)
年代
男性
感受性率(%)
女性
感受性率(%)
0
92.9
86.7
10
100.0
92.9
20
66.7
90.9
30
100.0
90.0
40
66.7
82.6
50
55.6
77.3
60
58.0
66.7
70
65.4
71.3
80
67.9
70.6
90
75.0
59.0
全年齢
66.7
73.6
変法ホッジ法
写真引用・堀井俊伸ほか:微生物検査ナビ(栄研化学)