わかりやすい悪性腫瘍の話 喉頭がん 喉頭がんの診断

わかりやすい悪性腫瘍の話 喉頭がん
2015.7.3
喉頭がんの診断
1.喉頭について
人間の「のど」は、咽頭と喉頭からでき
ています。このうち喉頭は甲状軟骨(い
わゆる「のどぼとけ」を構成する部分)
に囲まれた箱のような部分で、内面は粘
膜に覆われています。喉頭は舌の付け根
から気管につながっていて、さらに肺へ
と続いています。喉頭の背側には下咽頭
声帯
と呼ばれる部位があり、こちらは食道へ
と続いています。
喉頭の働きは、以下の 3 つです。
① 発声
② 誤嚥防止
③ 気道の確保
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2.喉頭がんとは?
頭頸部(主として耳鼻咽喉科が診療する領域)にできたがんを頭頸部がんといいます。喉頭にで
きたがんを「喉頭がん」とよび、頭頸部がんに含まれます。
喉頭がんが進行すると、発声、誤嚥防止、気道確保などの喉頭の機能が損なわれます。
声帯がある部分を、声門とよび、それより上を声門上、下を声門下といいます。喉頭がんは、そ
の発生部位によって 3 つに分けられます。最も多いのは、60~65%を占める声門がんで、次に、
30~35%を占める声門上がん、声門下がんの発生は、極めて稀です。
782
652
655
男
644
女
524
23 33 49 68 56 37
0
㈱長野メディカルサポート
85歳以上
80-84歳
75-79歳
70-74歳
65-69歳
60-64歳
18
55-59歳
45-49歳
40-44歳
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329
309
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50-54歳
63
35-39歳
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72
地域がん登録全国推計値
喉頭がんの罹患数
(年齢別) 2011
わかりやすい悪性腫瘍の話 喉頭がん
2015.7.3
喉頭がんは、喫煙、飲酒によって罹患リスクが挙がります。喫煙と飲酒はそれぞれが別々に、ま
たは双方が相乗的に働いて、喉頭がんのリスクを確実に高くします。その他、アスベストなどに
職業的に晒されることとの関連が指摘されています。喉頭がん全体の治癒率は 70%、早期発見
であれば、音声を失うことなく治癒することが可能です。
3.症状
発声部位によって異なります。
① 声門がん
ほぼ全ての方に嗄声(させい)という、低いがらがら声、雑音の入ったざらざらした声、か
たい声、息が漏れるような声といった症状がみられます。嗄声が 1 ヶ月以上続くときには、
喉頭がんの疑いが強くなります。症状が悪化すると、声門が狭くなって息苦しいなどの呼吸
困難症状が見られるようになります。痰に血液が混ざることもあります。
② 声門上がん
いがらっぽさ、異物感、食べ物を飲み込んだときの痛みが現れます。進行すると、耳に広が
る痛みが現れることもあります。頸部(首)リンパ節の腫れが最初に出る場合もあります。
がんが声帯に広がると嗄声が起こり、進行すると呼吸困難などの症状が現れます。
③ 声門下がん
進行するまで無症状であるため、発見が遅れがちとなります。
声門がんでは、頸部リンパ節転移が少ないのに対し、声門上がんではリンパ節転移を多く認
めます。まれに頸部リンパ節の腫れが初発症状で病院を受診し、声門上にがんが発見される
こともあります。
4.診断
耳鼻咽喉科を受診して行われる視診と、生検と呼ばれる
病変の一部を採取して行われる組織診断により確定されます。
視診は、口腔内に喉頭鏡という小さな鏡を入れて、発声をし
ながら喉頭内を観察し、腫瘍性病変の有無をみます。
咽頭反射が強いなど所見のとりにくい方には、鼻から細い
ファイバースコープを挿入して観察します。組織診断は施設
により多少方法が異なりますが、咽頭、喉頭を局所麻酔剤で
麻酔し咽頭反射を抑制した後、太いファイバ―スコープを用
いて細かな箇所まで観察し、次いで鉗子により病変の一部を採取します。細胞の病理診断を行い、
がんかどうかが確定します。病変の採取は全身麻酔下で行われることもあり、その場合には入院
が必要です。がんの進行範囲を把握するため視診による直接的な観察の他に、レントゲン撮影に
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2015.7.3
よる検査が必要となります。この検査は、見えにくい部位、深部への進展の程度を判断する上で
非常に有用です。体表から観察する超音波検査は、首(頸部)に行い、頸部リンパ節への転移の
有無を検索します。頸部の動脈や静脈、気管など周囲臓器との関係を調べるために行います。
CT や MRI などの検査や、声帯の振動様式により喉頭の病気を診断する喉頭ストロボスコピー
と呼ばれる検査を行うこともあります。
5.病気(ステージ)
喉頭がんのステージは、声門がん、声門上がん、声門下がん毎に下記のように分類されます。
<T 分類>・・・原発の状態
① 声門がん
T1a:がんが片側の生体にとどまっている。
T1b:両側の声帯にがんがある
T2:がんが声門の上部か下部まで広がっている、または声帯の動きに制限がある
T3:声帯の動きがなく固定している。および/または声門の周囲組織にがんが広がっている。
T4a:がんが喉頭の外側の組織にまで広がっている
T4b:がんが喉頭の外側の組織を越えて、背骨や縦隔、頸動脈全周などに及んでいる
② 声門上がん
T1:がんが声門上部の一部にとどまっている
国立がん研究センター
T2:がんが声門を含む声門上部の外側にまで広がっている
または、声門上部の広い範囲に及んでいる
T3:声帯の動きが完全に失われているか、がんが声門上部
の周辺または声門の周囲にまで広がっている
T4a:がんが喉頭の外側の組織にまで広がっている
T4b:がんが喉頭の外側の組織を越えて、背骨や縦隔、
頸動脈全周などに及んでいる
③ 声門下がん
T1:がんが声門下部にとどまっている
T2:がんが声帯にまで広がっており、その動きが制限され
ている
T3:がんが声帯にまで広がって、その動きが完全に失われ
ている
T4a:がんが喉頭の外側の組織にまで広がってる
T4b:がんが喉頭の外側の組織を越えて、背骨や縦隔、
頸動脈全周などに及んでいる
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T 分類(原巣の状態)と併せ、リンパ
節転移と遠隔転移の状況でステージ
は決まります。