年頭挨拶 新年を迎えるにあたって 国際電気通信連合(ITU) 事務総局長 て、飛行安全と航路追跡、模造ICT端末対応、ICTと災害 管理、青少年の権利、児童オンライン保護、ICTによるジェ Houlin Zhao ンダーエンパワーメント、エボラ熱対策としてのICT活用、 全ての人が利用可能なインターネット接続などについて新た ITUジャーナルを通じて日本の皆様に御挨拶する機会を得 な決議を採択しました。電気通信業界とインターネット業界 ましたことを光栄に存じます。日本ITU協会は技術標準化 は、2013年世界電気通信/ICT政策フォーラム(WTPF- や無線通信の分野でITUの活動を更に高めていく点でひと 2013)に端を発する友好関係を継続し、更にお互いの理解 きわその価値を示しておられ、その中で世界中を結び付け、 を深めることができました。加えて、世界的な電気通信 最新の通信技術の便益を至る所の人々にもたらす支援を行 /ICTの進展に向けたConnect 2020 Agendaを採択しまし っておられます。 たが、これにより成長と非排他性、並びに持続性に関する最 終目標の下、ユニバーサルな、特定かつ計測可能な開発目 昨年はとりわけ多忙で、かつ実りある1年でした。 標が定められました。 ITUは、世界電気通信開発会議(WTDC-14:UAE)や 規制機関のためのグローバルシンポジウム(GSR:Bahrain) 、 会合の公開性と非排他性を実現するという公約に基づき、 WSIS+10ハイレベル会合(Geneva)やITUテレコムワール 全ての全体会合(Plenary sessions)で字幕とウェブキャス ド2014(Qatar)など、主要なイベントを主催しました。最 トを提供し、正式な委員会の会合は報道機関と一般に公開 も重要な行事は、昨年10月20日から11月7日に開催した釜 しました。会合での議論の進展模様を全ての関係者に逐次 山全権委員会議(PP-14:韓国・釜山)でした。この会合 知らせるため、報道機関への説明会や市民団体に向けた説 で私が大変うれしく思っていることがあります。それは、日 明会を定期的に開催しました。また、環境に配意するとの公 本政府がそのポリシーステートメントの中で提唱した内容、 約に基づき、翻訳文書が6,000ページにわたったにも関わら すなわち、全ての人々がどこからでも自由かつ簡単にアクセ ず、ペーパーレスでの運営がなされました。 スでき、情報と知識を分かち合い価値を創造することのでき る“smart global connected network”の創設を求めるも ITUはとりわけITUテレコムワールドでの各種イベントや、 のでしたが、これはこの会合に対してとても力強い貢献でし デジタル化推進のためのITU/UNESCOブロードバンド委員 た。 会の定期的な会合を通じて、産業界のリーダー層や各国政 府、政策立案先駆者、規制機関、市民団体やその他の国際 全権委員会議には2,500名を超える代表が集まり、これま でで最も参加者の多い会合となりました。ホスト国の韓国は 機関、学術界など各方面と緊密な共同作業を継続していま す。 全権委員会議だけではなく、広範なサイドイベントや行事を 併催する“ICTオリンピック”を開催してくれました。 全権委員会議では、日進月歩で変化の激しい産業にあっ 全権委員会議では2016年から2019年における戦略と財政 て、ITU自身が将来的な機会や挑戦に、より柔軟に対応し 計画が採択され、新たなマネージメントチーム、無線通信規 ていけるように、ICT政策課題の定義付けを進めてまいりま 則委員会(RRB)委員やITU理事国を選出しました。 した。 他方、ITUが定常的に取り組んでいるプログラムに加え 4 ITUジャーナル Vol. 45 No. 1(2015, 1) 昨年11月後半には、世界電気通信/ICTインジケータ・シ また、2015年世界無線通信会議(WRC)を楽しみにして ンポジウム(WTIS)において、 “Measuring the Informa- いますが、そこでは、無線周波数スペクトラムと静止衛星及 tion Society 2014”と銘打ったITUのフラグシップレポート び非静止衛星の軌道の利用を規定する国際条約、無線通信 を発刊しました。この報告書は政策決定や成果観測のための 規則の見直しと、必要に応じた改定がなされます。WRC- ビッグデータによる裏付けを与えるものです。これらのデー 2015では、モバイルブロードバンドや衛星サービスの成長を タが世界銀行や世界経済フォーラムでの各種報告書をはじ 支える追加的周波数の再割当てや、航路追跡のための周波 め、民間セクター、コンサルタントや分析家により広く活用 数、航空無線、艦載基地局に関する海事無線、新たな車載 されていることから、WTISはITUがICTデータの主たる統 レーダーシステムに関する無線測位等、産業界にとって多く 計集約機関であることを確認しています。私はITUの統計 の重要課題が審議されることとなっています。 が、世界で最も包括的で信頼性の高い公平な産業動向デー タであると自負しています。 私どもは2015年5月25日から29日にジュネーブで開催さ れる2015年版WSISフォーラムや、6月9日から11日にガボ さて、G.fast標準の最終案が昨年12月に採択されました。 ンで開催されるGSR-15にも大変期待しています。 これは250mの銅線上で光ケーブルと同等の1ギガビットに至 る伝送速度を実現する重要な開発であり、大変意義深いも さらに今年は、災害リスク軽減(DRR)に関する兵庫行 のです。この技術標準化により従来の“ラストワンマイル 動枠組みについて再度協議が行われます。この条約は災害対 (1.6km) ”から“ラストメートル”へと一歩前進したことを 策分野に関係する機関の今後10年間の枠組みを提供する画 意味します。配信ポイントに向けたネットワーク上では光ケ 期的な条約です。概して申せば、国連の新たな持続可能な ーブルを多用する一方、課題となっている顧客構内へのエン 開発目標(SDGs)と待望の気候変動条約(Climate Agree- トリーポイントで銅線をそのまま使うことで、銅線の全置換 ment)とあいまって、災害管理と気候変動リスク軽減のた を回避でき、結果として世界中の電気通信業界がこの標準 めのグローバル戦略を定める意味において、2015年は大変重 化により10億ドルを超える費用節減が可能になると推定され 要な年になるものと予想しています。 ています。 私は、ITUが行う活動の全てに日本が積極的に参画し続 けていただけると確信していますし、1879年の加盟以来、ず 2015年の幕が開き、ITUはその構成員の要求をかなえる っと継続して御支援いただいていることに感謝申し上げたい 新たな多忙かつ実り多き年の訪れに期待しています。2015年 と存じます。事務総局長として職に就くに当たり、ITUの予 はITUにとって節目となる年であり、5月17日、各国政府と 定行事を通じて2015年により多くの皆様と御一緒すること 民間企業、学術界とその他の関係先の国際協力によって支 を楽しみにしています。また、日本ITU協会の御関係の皆 えられてきた150周年を祝います。150周年の祭典に皆様が 様、その御家族にとり2015年が平和で素晴らしい一年とな 参加されることをお勧めします。 りますことをお祈り申し上げます。 ITUジャーナル Vol. 45 No. 1(2015, 1) 5
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