会合報告 ITU全権委員会議(PP-14)に向けたAPT準備会合の 結果について 総務省 情報通信国際戦略局 国際政策課 1.はじめに 3.第1回APT準備会合及び第2回会合 ITU全権委員会議は、ITUの全構成国(193か国)の代表 第1回準備会合は、平成25年4月2∼3日に韓国・ソウルで が参加する最高意思決定機関であり、4年に1度開催される。 開催され、今後の審議体制が検討された。結果として、三 会議では、事務総局長をはじめとする選挙が行われるほか、 つのワーキング・グループ(WG)と四つのサブワーキンググ 2016年から4年間のITUの活動方針(戦略計画) 、予算の枠 ループ(Sub WG)が設置され、全体議長、各議長及び副議 組み(財政計画) 、憲章及び条約の改正等について審議が行 長の選出が行われた。 日本は、WG2(法的事項・政策関係)及びWG3 Sub われる。 今次全権委員会議は、本年10月20日から11月7日にかけ て、プサン(韓国)で開催予定であり、これに向けて、アジ ア・太平洋電気通信共同体(APT)が主催する地域準備会 合が4度開催された。 WG ITU-R(無線通信部門)の副議長にそれぞれ選出された (WG3議長については第2回から選出された) 。 続いて、第2回準備会合は、平成25年10月28日から30日 にかけて、オーストラリア・ゴールドコーストで開催された。 本会合では、各WGの議長から提示されたイシューペーパ ーを基に議論が行われたものの、APT共同提案素案の策定 2.会合の位置付け には至らなかった。 全権委員会議には、構成国として単独で提案を提出する こともできるが、事前に賛同する国と調整した上で共同提案 4.第3回APT準備会合 として提出することにより、会議における採択に一層説得力 を持たせることが可能となる。アジア太平洋地域のほかにも、 第3回準備会合は、2014年6月2日から5日にかけて、マレ 米州や欧州をはじめ、旧ソ連諸国、アラブ、アフリカの各地 ーシア・クアラルンプールで開催された。第3回準備会合で 域で準備会合が開催されている。 は、憲章・条約の改正以外の、各国からの寄書による新規 提案のほか、既存の全権決議・決定の修正等が審議された。 表1.APT共同提案一覧 1∼4 5 決議5改正提案:ITUの費用削減策として更なる費用削減のためにAPTとして新規の費用削減策を提案するもの。 6 決議11改正提案:理事会ワーキンググループの統廃合を進めるため、APTとして決議11(理事会WGの創設と管理)の改 正を提案するもの。 7 決議162改正提案:IMAC(Independent Management Advisory Committee(独立管理諮問委員会) )の所掌や年次報告の 扱いを明確化するため、APTとして決議162(IMACに係る決議)の改正を提案するもの。 8、9 ITU憲章・条約の付属の定義の修正について:ITU憲章・条約の付属の定義の修正を行った場合、全権参加者間で大きな 意見の対立を引き起こすおそれがあるとして、APTとしては変更を提案しないもの。 10 ICTの定義:全権においてICTの作業定義が合意された場合、ITUの決議で使用されている“ICT”という用語に対して合 意を反映させる必要がある。このための方策としてAPTとして二つの選択肢を提案。 11 ICTアプリケーションの使用を通じた融合を進めるための新規決議提案 12 モノのインターネットを容易にするための新規決議提案 13 決議182改正提案:ICTの利用の際に排出される温暖化ガスを抑制する観点から、APTとして決議182(気候変動と環境保 護におけるICTの役割)の改正を提案するもの。 14、15 16 46 ITU安定化憲章:憲章安定化作業によってITUの基本文書の法的安定性が損なわれていることを踏まえ、APTとして現行 のITU憲章・条約の維持を提案するもの。 地上からの監視を地上衛星による継続的な航空機の監視によって補完する業務を容易化する提案 決議22修正提案:ネットワーク外部性に基づくプレミアム(途上国のネットワークの拡大により先進国側も利便性が高ま るという考え方の下、途上国側に一定の条件下での接続料金の上乗せを認めるもの)を反映させるべく、決議22(国際電 気通信サービスの提供における収入の指定)の改正を提案するもの。 ITUジャーナル Vol. 44 No. 12(2014, 12) 表1.APT共同提案一覧(続き) 17 決議123改正提案:標準化格差の是正に向け、ITUが特に途上国の人材育成を進めるべきという観点から、APTとして決 議123(途上国と先進国の間の標準化格差の是正)の改正を提案するもの 18 決議131改正提案:ITUが引き続きICTの使用状況に関する包括的な分析を可能とする指標及び統計を収集し普及させるよ う、決議131(ICT指標とコミュニティ接続インディケーター)の改正を提案するもの 19 決議176改正提案:エンドユーザーを保護し、エンドユーザーにとってのより安全なワイヤレス通信環境を構築するという 観点から、決議176(電磁場の人体への被ばく(EMF)及び測定)の改正を提案するもの。 20 決議137改正提案:途上国においてNGNを進める観点から、APTとして決議137(途上国におけるNGNの展開)の改正を 提案するもの。 21 決議136改正提案:途上国において、緊急災害時におけるネットワークのモニタリング及びマネージメントに関する訓練プ ログラムを進める観点から、APTとして決議136(早期警戒、防災、減災及び救助のため、その状況の監視及び管理のた めの電気通信/ICTの利用)の改正を提案するもの。 22 無線通信規則委員会(RRB)の手続と作業方法に関する提案:不必要な利害衝突の発生を防ぐ観点から、全権において RRBの手続や作業方法について議論することに反対するもの。 23 全権はセクター間の問題及びITU全体の活動に関するハイレベルな政策を対象としており、個別セクターに関する議論を すべきでないとして、interference and monitoring of emissionsの議論に反対するもの。 表2.憲章・条約に係るもの以外の主なAPT共同提案一覧 24、25 ITU安定化憲章:憲章安定化作業の結論が出るまでは、憲章・条約に対する個別修正を行うべきではないとする旨の提案 26 ITUの文書公開:ITU文書の情報公開を促進するための提案で、ITU文書を八つのカテゴリーに分類し、カテゴリーごと に公開範囲を定める旨の提案。 27 決議169の修正提案:ITUへの参加形態の一つであるアカデミアカテゴリーの継続のために必要な決議169の修正提案。 28 決議25の修正提案:地域オフィスは2016-2019戦略計画及びドバイアクションプランとの関連性を考慮してITU-Dの4箇年 計画に寄与し、その履行のための計画やイベントを毎年ITUのWebサイトに公表する旨、決議25を修正する旨の提案。 29 決議58の修正提案:ITU地域会合とITUの関係を強化する一環として、ITU全権準備に向けた地域間準備会合を開催する 旨の提案を行うもの。また、ITUの主要な会合の前後において準備会合を開催し、会合での主要論点の特定及び主要論点 における地域間の意見集約を図ることも併せて提案。 30 決議140の修正提案:前回の2010全権以降に実行されたWSIS+10ハイレベルイベント(2014年6月)等のWSIS関連の活動 を反映すべく、決議140の修正を提案。 31 決議183の修正提案:E-healthに関連する本決議183に関連して、主に次の3点に関しての修正提案。①前回の全権(2010年) 以降にITU-Tで実施された活動とこれに関連する決議78(WTSA-12)について反映する修正、②WTDC-14(Dubai)にお いて採択されたE-healthを含むEアプリケーション関連の新決議54を反映する修正。③E-health関連の活動に関して、これ までのWHOやITU三部門だけでなく外部機関とも連携して活動し、更にE-healthを推進するための修正提案。 その結果、23本の提案がAPT共同提案の素案として承認 され、その後各国への回章を経て、ITUに提出された(表1 参照) 。 に議論が行われAPT共同提案素案として承認された。 上記を含む、8本の提案が、APT共同提案の素案として承 認された。 5.第4回APT準備会合 6.全権委員会議の予定 第4回準備会合は、2014年8月18日から22日にかけて、タ ITU全権委員会議は10月20日∼11月7日にかけて韓国 イ・バンコクで開催された。前回共同提案の素案の策定に至 (釜山)で開催された。選挙日程は下表の通り。その詳細に らなかった議題を中心に議論が行われた。 特に日本からは、①ITUの文書公開を進める観点から全権 ついてはITUジャーナル2月号で別途掲載される予定だ。 日程 予定 2014の文書とITUの財政関連文書の一部の公開を求める寄 10月23日(木) 事務総局長選挙 書を提出するとともに、②ITUの参加区分に関しては、前回 10月23日(木)∼24日(金) 次長選挙 の全権以降トライアルとされていたアカデミアでの参加区分 10月24日(金) 各局局長選挙 について、今後も継続を求める寄書を提案し、日本案を基 10月27日(月) RRB及び理事国選挙 ITUジャーナル Vol. 44 No. 12(2014, 12) 47
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