演習問題3

微分方程式Ⅰ 演習問題 3
2015 年度前期
工学部・未来科学部 2 年
担当: 原 隆 (未来科学部数学系列・助教)
確認問題 3-1. (同次形 1 階微分方程式)
以下の微分方程式の一般解を求めなさい。
(1)
dy
6xy − 3x2 + y 2
=
dx
4x2
(2)
dy
x2 + y 2
=
dx
xy
(3)
x
(y)
dy
= y + x cos2
dx
x
※『y = . . . 』の形にすると答えが汚なくなりそうなものは、無理に『y = . . . 』の形に直さなくても良い。
確認問題 3-2.∗ (同次形方程式への帰着)
微分方程式
dy
2x − y + 3
· · · · · · (∗) の一般解を以下の手順に従って求めなさい。
=
dx
x−y+2
(1) 連立方程式 2x − y + 3 = 0, x − y + 2 = 0 の解 (x0 , y0 ) を求めなさい。
dY
dy
(2) X = x − x0 , Y = y − y0 とおいたとき、
=
が成り立つことを確認しなさい。
dX
dx
[ヒント: 合成関数の微分法]
(3) 微分方程式 (∗) を X と Y に関する微分方程式に書き換えなさい。
(4) 微分方程式 (∗) の一般解を求めなさい。
y
チャレンジ問題 3. (曲線群と直交する曲線)
中心 (a, 0), 半径 |a| の円周
Ca : x2 − 2ax + y 2 = 0
は、a の値を動かすと曲線群をなす (右図を参照)。この曲線群の
O
x
全ての曲線 Ca と直交するような曲線 Γ (右図の太線で描かれた
曲線) の方程式を、微分方程式を用いて求めてみよう。
(1) Ca の式の両辺を x で微分して、x, y, y ′ , a に関する式を立式しなさい。
(2) (1) で求めた式と Ca の式から a を消去して、微分方程式を立てなさい。この微分方程式は
曲線群 Ca の生成する勾配場 を表している (つまり Ca 上の各点での「接線の傾き」を表す微
分方程式)。
(3) (2) を用いて曲線 Γ の満たすべき微分方程式を求めなさい。
[ヒント: Γ と Ca の全ての交点で Γ の接線が Ca の接線と直交していることに注意しよう]
(4) 曲線 Γ の方程式を求めなさい。
【略解】
確認問題 3-1.
(1) y = −
2
3Cx2 + x
Cx − 1
2
(C は任意の実数) 及び y = −3x
2
(2) y = x (log(x ) + C)
(y)
※ 途中で 部分分数分解 の計算が出て来たのではないかと思います。
(または y = ±x
(C は任意の実数)
√
log(x2 ) + C)
※ y 2 = 2x2 (log|x| + C) でも可 (4/22 追記)
(C は任意の実数)
(( π
)
(π
)
)
または y = xArctan(log|x| + C)
− + mπ x ≤ y ≤
+ mπ x, m ∈ Z のとき
2
2
(もちろんこんなに苦労して『y = . . . . . . 』の形にしなくても良い)
(3) tan
x
= log|x| + C
確認問題 3-2.
(1) x0 = −1, y0 = 1.
(2) x = X + x0 = X − 1 と表わされるので
dx
= 1 である。したがって合成関数の微分法より
dX
d
dy
dy dx
dy
dY
=
(y − y0 ) =
=
=
dX
dX
dX
dx dX
dx
が成り立つ。
(3) x = X + x0 = X − 1, y = Y + y0 = Y + 1 を (∗) に代入して整理すると
dY
2X − Y
と
=
dX
X −Y
なる。この微分方程式は同次形であることに注意しよう。
Y
とおいて (3) の式に代入して計算すると
X
2−u
u−2
=
u′ X + u =
1−u
u−1
u
−
2
−u2 + 2u − 2
∴ u′ X =
−u=
u−1
∫u − 1
∫
1
u−1
du =
dX = log|X| + C ′ (C ′ は任意の実数)
∴−
u2 − 2u + 2
X
1
となり、u − 1 = (u2 − 2u + 2)′ であることを用いると
2
1
− log|u2 − 2u + 2| = log|X| + C ′
2
と計算できる (まずはここまできちんと計算出来ることを目標にしよう)。したがって
(4) u =
log|(u − 1)2 + 1| = log|X|−2 − 2C ′
′
となるが、(u − 1)2 + 1 は常に正の数なので、C = e−2C (> 0) とおきなおすと
(u − 1)2 + 1 =
C
X2 √
C
−1
X2
√
∴ Y = uX = X ± C − X 2
∴u=1±
が得られる。最後に X = x + 1, Y = y − 1 を代入して整理することで一般解が
y =x+2±
√
C − (x + 1)2
(C は任意の正の実数)
と求まる。
チャレンジ問題 3.
(1) 陰関数定理より 2x − 2a + 2yy ′ = 0
(2) (1) の式を x 倍して Ca の式から消去すると −x2 + y 2 − 2xyy ′ = 0 となるので、y ′ =
ついて整理して
dy
に
dx
dy
x2 − y 2
=−
dx
2xy
が得られる。
(3) 曲線 Γ は Ca の全ての曲線と直交するのであるから、曲線 Γ の接線の傾きにより生成される
勾配場は (2) の微分方程式で表される勾配場と直交しているはずである。互いに直交する直線
の傾きの積は −1 であったから、Γ が満たすべき微分方程式は
dy
2xy
= 2
· · · · · · (♯)Γ
dx
x − y2
となる。
図 1 曲線族 Ca の生成する勾配場 (左図) とそれに直交する勾配場 (右図)
*1
「傾き」
*1
dy
の分母が 0 になってしまう箇所 (左図では直線 x = 0, y = 0, 右図では直線 y = ±x) で解の描画にノイ
dx
ズが入りこんでしまっていることが観察できる。これはコンピューターが近似計算を行って解曲線を出力していること
によるものであろう。
(4) 微分方程式 (♯)Γ を解こう。これは同次形の微分方程式であるから u =
u(u2 + 1) ̸= 0 を仮定しておく)
2u
1 − u2
2u
u3 + u
∴ u′ x =
−
u
=
1 − u2
1 − u2
∫
∫
1
−u2 + 1
dx = log|x| + C ′
du =
∴
u(u2 + 1)
x
y
とおいて (一旦
x
u′ x + u =
と計算出来る。ここで部分分数分解により
(C ′ は任意の実数)
−u2 + 1
1
1 (u2 + 1)′
2u
=
=
である
−
− 2
u(u2 + 1)
u u2 + 1
u
u +1
から
u = log|x| + C ′
log 2
u + 1
′
u
∴ 2
= Cx (C = ±eC ̸= 0 とおいた)
u +1
となる。u =
y
を代入して整理すると
x
x(x2 + y 2 − 2by) = 0
· · · · · · (♯♯)Γ
1
とおき直している)。ここで定数関数 x = 0 は (♯♯)Γ の解ではあるが、
C
直線 x = 0 は全ての Ca と 接する 直線であるので Γ の性質を満たさない。したがって
となる (2b =
x2 + y 2 − 2by = 0 (但し b ̸= 0), すなわち y 軸上の点 (0, b) を中心とする半径 |b| の円周 が
求める曲線 Γ となる。
最後に u(u2 + 1) = 0, 即ち u =
y
= 0 の場合を考える。直線 y = 0 は確かに全ての Ca と
x
直交するので、直線 y = 0 も Γ の条件を満たす。
以上より Γ の満たすべき方程式は
x2 + y 2 − 2by = 0 (ただし b ̸= 0) または y = 0
となる。
注意
y
実際に Ca と (直線 y = 0 とは異なる) Γ の交点のうち原点
O と異なるものを P とし、Ca , Γ の中心をそれぞれ A, B とおくこ
とにすると、三角形 ABO と三角形 ABP が合同となる (三辺相等)
ことから ∠AP B が 90 度となることが分かる。つまり Ca と Γ の半
P
B
径はそれぞれ他の曲線と接していることになるので、Ca と Γ が直交
していることが確認出来る。
O
A
x
babababababababababababababababababab
【自由研究】 曲線族に直交する曲線
余力のある人は、以下の問題にも取り組んでみましょう。
(1) 双曲線群 x2 − 2ax−y 2 = 0 に直交する曲線の方程式を求めてみましょう。
(2) m を自然数とするとき、楕円群 m2 x2 − 2m2 ax + y 2 = 0 に直交する曲線の方程式
を求めてみましょう (m = 1 の場合が チャレンジ問題 3. の状態)。
(3) (2) で形式的に m =
√
2 として得られる楕円群 2x2 − 4ax + y 2 = 0 に直交する曲
線の方程式を求めてみましょう。この場合は他の場合とは大分様相が異なっている
ことを観察しましょう。
(2) Cy m + (m2 − 2)x2 − y 2 = 0 (C は任意の実数) または y = 0
(3) x2 + (log|y| + C)y 2 = 0 (C は任意の実数) または y = 0
※ (3) の場合だけ 対数関数 が解曲線の式の中に残ります!!!
2
(1) y(y 2 + 3x2 ) = C (C は任意の実数)
【略解】
(1) の曲線群と直交曲線
(2) の曲線群と直交曲線 (m = 3 の場合)
(3) の曲線群と直交曲線