冷蔵保存におけるイタボガキ稚貝の耐性 - AgriKnowledge

冷蔵保存におけるイタボガキ稚貝の耐性
誌名
岡山県農林水産総合センター水産研究所報告 = Bulletin of the Okayama
Prefectural Technology Center for Agriculture, Forestry, and Fisheries
Research Institute for Fisheries Science
ISSN
21859183
著者
清水, 泰子
巻/号
26号
掲載ページ
p. 53-54
発行年月
2011年11月
農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波事務所
Tsukuba Office, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat
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冷蔵保存におけるイタボガキ稚員の耐性
清水泰子
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YasukoSHIMIZU
キーワード:イタボガキ,冷蔵保存
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mlガラスピーカーに収容した。ラップでビーカーに封
シナ海に生息するカキで,大正から昭和前半にかけて播
をして輪ゴムで間定しさらにアルミホイルで包んで暗
磨灘,備讃瀬戸海域で漁獲されていた1.2)。その後減少し
0,1
5,25tのインキュベーター
黒状態にした後に, 4,1
近年ではほとんど生息が確認されていない。岡山県水産
に収容した。各温度でビーカーを 2つ 用 意 し 片 側 に は
6年度から種苗生産3
) や,海域での増
研究所では,平成 1
何も入れずに乾燥区としもう一方には滅菌海水20ml
殖試験4) に取り経んできた。増殖には稚貝の供給が必要
で湿したペーパータオルを敷いて湿潤区とした。ホタテ
だが,イタボガキは天然資源が皆無であるため,供給は
殻は,ピーカー壁面に立てかけるように配置した。
専ら人工生産貝となる。このため,生産施設から供給先
2持間後に稚員をホタテ殻ごと取り出し,滅
開始から 3
への輸送が必要となるが,輸送条件を検討した例は無い。
蕗海水に浸して実体顕微鏡下で稚貝の生死を判別した。
今回冷蔵輸送を想定したイタボガキ誰貝の耐性試験を
生死の判別は,稚貝の殻がほぼ透明であることを利用し
行った。
柄付針で稚貝を刺激し,殻を透かして外套膜の収縮が確
認できたものを生存個体と判断した。
材料と方法
結果と考察
2
0
1
0
年 7月に,水産研究所で麓苗生産を行い,ホタテ
殻採苗板に付着させた平均殻長l.1m mの稚貝を実験に用
いた。稚員はホタテ殻ごと 63~75個体ずつに分け,
5
0
0
各区の生残率を図 lに示した。生残率は, 25tで乾燥
8
.
6,9
7
.
3
%と高く, 15tでは 7
8
.
5,7
4
.
3
湿潤区とも 9
%であった。また, l
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tでは 6
0
.
3,8
3
.
1%
, 4tでは 9
.
2,
2
6
.
8
%と,乾燥区よりも混 i
関匿で 15%以上生残率が高
駁乾燥区
口混潤区
かった。
1
0
0
吉田 5) は,貝類稚貝を輸送する捺には,生活現象が低
生残率(%)
8
0
下し,休眠状態に入る手前の温度が理想的であり,休眠
6
0
状態を超えて温度が低下するとへい死が始まるとしてい
6
.
8
tであり, 25t区は自然水
る。本試験時の海水温は 2
4
0
温に近い条件で,ほとんど死亡が無いことから,活性は
2
0
低下していなかったと考えられた。一方, 15t以下の区
。
で生残率が低下したことから, 15~25t の間に活性が低
4
1
0
温度
1
5
C
c
)
2
5
臨 1 乾燥,湿潤条件におけるイタボガキ稚員の
温度別生残率
下し,へい死が始まる温度帯があるものと考えられた。
5,15tではほとんど差がない
乾・湿条件については, 2
0, 4tでは混i
関区で生残率が高く,水分が活性の
が
, 1
維持に影響を与えたと考えられた。
5
4
マガキ C
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8日
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5
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6日維持される 6) とされ,低温の方がより長
文 献
期の冷蔵に耐える。マガキの生活塩分は1l ~31 で広範間
なのに対しイタボガキが26~34 と狭い 7) のと同様に朝
間帯と海底という両種の生息場所の違いが関係し,イタ
ボガキの方が低温に弱いとも考えられる。しかし本試
験で用いたイタボガキは,殻長約l.lm mと小さいため,
マガキよりも低温に弱いのか
成長段階によって耐性が
変化するのかについては,今後改めて検討する必要があ
る
。
ず 15~25t が適していること,
乾・湿条件にかかわら
l
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t以下にする際には,
湿条件とすることで,生残率を比較的高く保つ事ができ
ることが分かつた。
兵庫県, 3
.
9
.
2)山賀賢一, 2
0
0
6
:イタボガキ種苗生産・養殖試験,香川水試
事報, 6
,6
4
.
6
8
3)清水泰子・杉野博之・植木範行, 2
0
0
9
:イタボガキの稜苗生産,
2
4
.4
4
4
8
4) 清水着手子・山野井英夫, 2
0
0
9 瀬戸内市牛窓地先におけるイ
程度のイタボガキ稚貝
これらのことから,殻長 1mm
2時間以内で輸送する際には
を3
1)兵庫県水産試験場, 1
9
5
8
:兵庫県における浅海増殖の歩み,
タボガキ繁殖試験, 2
4,4
9
5
3
.
5)吉田裕, 1
9
6
4・貝類種菌学.北経館, 8
9
9
0
.
6)郷重蔵, 1
9
2
4
:マガキの空中活力と温度,水産講習所試験報告,
2
3, 1
7
8
1
8
3
.
7) 1
. A~lE MIY人 1928 :E
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