小児アレルギー疾患研究最近の進歩

1’レ′しギー疾患雁患率やアレルゲン感作率が増加している。衛生環境イ反説によれば,都会
で育った人に比べ農場で育った人では生育時に牛や馬の糞などに含まれるエンドトキシンな
ど細菌由来の物質と多く接触するので,乳幼児期にアレルギ」反応を抑制するThl細胞が発
達し,その後,アレルギー疾患発症を発症しにくくなるといわれていた。しかしながら,最
近の疫学調査においてはTh2細胞の活性化によっておこるアレルギー疾患,Thl細胞の活性
化でおこる自己免疫疾患ともに増加しており,従来の単純な衛生環境仮説は崩壊している。
今や,一つの分子や一種顆の細胞ではなく免疫システムを包括的に理解する必要が出てきた
ように思われる。本稿ではアレルギー疾患発症や免疫システムに関わる遺伝子を中心とした
最近の話題を紹介し,アレルギー疾患発症予防のための戦略について考察を述べる。
(小児科臨床 58:969,2005)
日日田■四88日gト
Thl/Th2,Ⅱygiene hypqthe−
Sis,SNP,Epigemetics
はじめに
周知のように喘息などのアレルギー疾患の擢患率
11il−Ohis之IS之1itり
1977勾三3月 東京慈恵会医科大学卒業
1979年5月 東京慈恵会医科大字小児科助手
川H6年2月 米国Johns Hopkins大学Re−
search Fellow
川ドパ年7日 国立小児病院アレルギー科医員
1994年1J」 国立相模原病院小児科医長
1996年5日 周二!王小児病院小児医療研究セン
は増え続けている。国際比較可能な統一された調査
票を用いた全国全年齢階級別気管支喘息有症率調査
によれば,現在,我が国の喘息有症率は全年齢平均
で9.96%である。年齢別では0∼4歳が24.71%,
5∼9歳が15.15%と高値を示している1)。一方,
アレルギー疾患およびその背景となる体質であるア
トピー体質は遺伝しやすいことがよく知られてい
ター・免疫アレルギー研究部部
長
る。つまり,以前は花粉症や喘息などのアレルギー
2002年3月 国立成育医療センター研究所・
免疫アレルギー研究部部長 疾患は特定の家系にのみに集中的に発生していたの
2日2年8月 理研横浜研究所免疫アレルギー
に,最近ではありふれた病気になり,特に家族歴が
科学総合研究センター・アレル
なくとも発症することが多い。最近数十年の間に出
ギー遺伝子研究チーム・ユニッ
トリーダー(兼任)
コ川)ニi年8月 東京慈恵会医科大学小児科客員
教授(兼任)
生した人たちの遺伝子配列がそれまでに比較して大
きく変化することはありえない。したがって環境の
〒157−8535 東京都世田谷区大蔵2−10−1
小児科巨約束1′01.58N口.62仰5 969(【l)
影響を受けて個人の体質(遺伝子の発現しや
すさ)が変化し,アレルギー疾患患児が増加
めであると解釈される。
萎二嘉萎欝慈ll.嘱息アレルギー疾患発症と関連
していることになる。免疫関連遺伝子の発現
する遺伝子
しやすさは胎児期から乳幼児期にかけて決定
喘息などのアレルギー疾患発症と免疫関連
され,成人期では変化しにくいと想定されて
遺伝子に存在する一塩基多型(single nu−
cleotidepolymorphism:SNP)などの遺伝
ルギー疾患の増加を抑制する戦略のなかで小
子のバリエーションとの相関に関する調査結
児科医の果たすべき役割は大きい。本稿では
いる。したがって,今や国民病となったアレ
果は1990年代以降,盛んに報告されている。
アレルギー疾患発症や免疫システムに関わる
そして,Th2細胞から分泌されるIL4の遺
遺伝子を中心とした最近の話題を紹介し,ア
伝子やその受容体遺伝子など多くの遺伝子の
レルギー疾患発症予防のための戦略について
バリエーションが喘息等アレルギー疾患発症
考察を述べる。
と関連すると報告されている3)。一方,ゲノ
薫滋養産l.喘息アレルギー疾患で発現しや
すい遺伝子
ム全体に分布するSNPと喘息等アレルギー
疾患の関連に関する調査も2000年以降,世界
喘息等アレルギー疾患における炎症の場所中で盛んに行われている。この手法では,従
来知られていなかったアレルギー疾患病態に
には好中球よりも好酸球が多く,IgE抗体が
増えているので,マスト細胞は反応をおこし
関わる遺伝子の発見も期待できる。2002年に
報告された ADAM33遺伝子と喘息発症の関
やすい状態である。したがってヒスタミンや
ロイコトリエンD4などのマスト細胞に由来
連4)はその好例である。460の白人家系の解
析により,染色体20p13のマーカーに喘息と
するメディエーターが増加している。免疫細
胞としては,IgE抗体産生やマスト細胞活性
化を刺激するインターロイキン(IL一)4な
気道過敏性との強い関連が認められた。そし
どを分泌するTh2細胞が増加しているのが
くつかのSNPを指標として連鎖解析を行い
特徴である。実際,DNAチップを使用し,
ADAM33が同定された。ADAM蛋白質は
て,20p13に存在する23遺伝子について,い
膜結合型の酵素でサイトカインやその受容体
喘息患者の末梢血や組織の遺伝子発現の状態
を失漬させるなどの様々な機能をもってい
を正常対照と比較し,どの遺伝子の発現が増
る。特にADAM33は,今まで喘息病態の中
加しているのかを網羅的に調べた場合,Th2
細胞のマーカーであるCCR4遺伝子や,Th2
心として考えられてきた炎症細胞や気道上皮
細胞と括抗するThl細胞の機能を抑える
細胞には発現せず,肺の線維芽細胞や平滑筋
SOCS3遺伝子の発現増加が最も顕著であっ
細胞に強く発現している点で興味深い。他の
た2)。
ADAM蛋白質は平滑筋異形成や平滑筋増殖
因子を遊離させることに作用することから
なお,遺伝子発現の増加という意味は,刺
ADAM33も気道炎症ではなく気道リモデリ
激を受け遺伝子が蛋白質をつくるため発現し
ングの過程に作用していると想像されてい
やすい状態になっていることであり,遺伝子
DNAそのものには変化はないことはいうま
でもない。最近のアレ/レギー疾患増加の原因
の大半は,環境の影響を受け,Th2細胞ある
いはそれに関連した遺伝子発現が増え,その
状態が持続している(体質となっている)た
,70(12)
る。また,同様な手法を用い2004年にはプロ
スタグランディンD2(PGD2)受容体遺伝
子(PTGDR)のSNPが最も喘息発症と関
連していたとの報告5)も出ている。PGD2は
アレルギー炎症を惹起するマスト細胞が分泌
するので,この成果は予測されたことではあ
子型をもつ個体が農場で育つと高レベルのエ
る。しかし,全ゲノムに存在するSNPを探
ンドトキシンなどの存在下でTLR4(エン
索しているうちに意図せず発見されたというドトキシンや RS ウイルスの受容体)や
ことで,最初から候補遺伝子として絞り込ん
TLR9などThl細胞や調節性丁細胞を誘導
だ研究成果よりも発見の重要性は高く評価さ
する刺激が入りやすいのではないかと想像さ
れており,また,マスト細胞の喘息病態に及
れる。一方,農場で育ったTLR4や関連分
ぽす影響も再評価されている。
子CD14を高発現している個体では,それを
喘息アレルギー疾患を発症しやすいSNP
受容体とするRSウイルス感染の影響を強く
に関しては多くの報告があるが,人種や地域
受けるので乳児期に気道組織に強い炎症をお
が異なるとその結果が再現されないことがしこしやすく喘息を発症しやすいという疫学調
ばしばある。国,地域あるいは主治医により
査結果が生じる8)のではないかと想像され
診断する喘息やアレルギー疾患の診断基準がる。
違っている可能性はこれから解決すべき重要
ヤ禦盤Ill.衛生環境仮説の謎
な課題である。喘息といってもウイルス感染
で増悪するのか,気道組織リモデリングを生
アレルギー疾患確患率やアレルゲン感作率
じたのかなどの詳糸田な臨床情報がこれらの研
が増加しているが,世代間や育った地域環境
究成果の再現性を向上させるためには必要でによる違いも存在する。農場などで乳幼児期
あり,臨床医の積極的な参加が望まれる。
衛生環境仮説Hygienehypothesisによれ
を過ごすとエンドトキシンに曝露されThl
細胞が増加するためであると想定されてい
る。しかしながら,最近,先進工業国におい
は生育時に牛や馬の糞などに含まれるエンド
てはTh2細胞活性化によっておこるとされ
ば,都会で育った人に比べ農場で育った人で
トキシンなど細菌由来の物質と多く接触する
るアレルギー疾患のみならず,1塑糖尿病や
ので,乳幼児期にアレルギー反応を抑制する
クローン病などのThl細胞活性化により引
Thl糸田胞が発達し,その後,アレルギー疾患
き起こされると考えられている自己免疫疾患
発症を発症しにくくなるといわれている6)。
しかし,Ederら7)は,そのような効果がある
確患率も増加していることが報告されてい
のは,細菌由来の物質と反応する Toll様受
容体(TLR)の一つである TLR2のプロモ
る9)。そこで,清潔すぎる環境で乳幼児期を
過ごした場合,Thl細胞Th2細胞ともに抑
制する調節性丁細胞が発達せず,その結果,
ーター領域の16934T/TおよびA/Tの遺
アレルギー疾患も自己免疫疾患も増加してい
ると主張している総説論文10)が増えている。
伝子型をもつ個体だけであり,A/Aの遺伝
子型をもつ個体では農場で育つとむしろ喘息しかしながら,エンドトキシンなどのTLR
を発症しやすくなると報告している。TLR2
はThl細胞よりもTh2細胞を誘導する傾向
刺激物により Thl細胞が誘導される免疫反
応により裏付けられた衛生環境イ反説と遠い大
がある。そして,おそらく A/Aの個体では
TLR2の発現レベ/レが高いと想像される。
きな矛盾も存在する。例えば,衛生的な英国
よりも,エンドトキシン量の多いギリシャの
農場で育ったA/Aの個体は高レベルのエン
ドトキシンなどの作用により,TLRシグナ
ル全体が活性化されていてTLR2を介した
方がThl細胞活性化でおこる自己免疫疾患
が少ない9)のはなぜかということを説明する
Th2細胞の誘導刺激が強く入るのであろう。
一方,TLR2刺激が入りにくいT/Tの遺伝
ことはできない。また,調節性丁細胞は確か
にThl細胞の活性化を抑制するが,Th2細
胞機能全般を抑制するというデータはほとん
小児科應床 Vol.58No.62005 ,71(】3)
衛生的環境
。_′二_一−や:
∴。。
●ふ− @澄塵..二
ナイーヴT細胞
」..:∫
−◆IFN,など・
Thl細胞
\
・●▼B細胞\
細胞性免疫
抗原提示細胞
非衛生的環境
図1Thl細胞とTl12細胞のバランスによる衛生環境仮説の説明
非衛生的な環境で乳児期を過ごすとTI11細胞が発達し,衛生的な環境で育つとTl12細胞しか
発達せず,アレルギー体質となり,そこヘアレルゲンが侵入すると容易にIgE抗体をつくり
アレルギー疾患を発症する.Tl12細胞はIL−4やIL−10を塵生してThl細胞の増殖を抑制し,
Ⅰし12はTh2細胞の増殖を抑制する.このような括抗作用は乳幼児に顕著であるが,成人期に
は消失するといわれている.
場合はIL4を産生するTh2細胞が増加し,
ど存在しない。
アレルギー疾患発症に対し生育時の環境は
IL4の作用によりB細胞が工gE抗体を産生
しやすい状態となる。IL−12はThl細胞を誘
強く影響するが,成人になってからの環境は
あまり大きな影響を及ぼさないということは
導するのみならず,Th2細胞の増殖を抑制
衛生環境仮説が強調している重要な点であ し,Th2細胞はIL−4やIL10(IL1Oは調
る。しかし,なぜ,乳幼児期の環境により,
節性丁細胞の一種も産生する)を介して
アトピー体質が決定されて,成人になると変
Thl細胞の増殖を抑制する。以上のメカニ
更しにくくなるのかというメカニズムについ
ズムにより Thl細胞とTh2離1胞は括抗する
ては,様々な検討が行われているが決定的な
根拠は示されていない。
(図1)。そして,衛生環境ノ仮説の乳幼児期
免疫体質決定仮説を説明するために乳幼児期
妊娠中の移植免疫反応抑制のため新生児期以降,十分に免疫系が発達すると,Thl細
にはヘルパーT細胞としてThl細胞は存在
胞と Tl12細胞の比率が変化しにくくなる機
序が想像されている。
せず,ナイーヴT細胞のみ存在する。ナイー
ヴT細胞がThl細胞へ分化するためにはIL−
12が必要であり,IL−12が抗原提示細胞から
産生されるには,TLRを介した刺激が必要
である。そして分化した Thl細胞はインタ
ーフェロン(IFN)γなどを分泌してR細胞
からのIgE抗体産生を抑制する。一方,乳
幼児期までにThl細胞が誘導されなかった
972(】4)
最近になって,遺伝子配列によらない遺伝
形式であるエビジェネティクスの研究手法の
発展により,環境の影響を受けてゲノム構造
が非可逆的に変化(クロマチン・リモデリン
グ)する現象がしばしば観察されることが判
明しており,成人ではThl細胞やTh2細胞
にクロマチン・リモデリングが生じているの
︵L芦︶栗思朝咄ゝZ山一
︵L芦︶璧翌朝磯トZ]一
lし4産生細胞(Th2)
マウスのThl/Th2細胞の分布
lし4産生細胞(Th2)
ヒトのThl什h2細胞の分布
図2 ヒトとマウスのTlll/Tl12細胞の分布の違い
マウス(左)では,Tl12細胞はIL−4を産生するが,IFNγを産生することはない.しかし,
ヒト(右)では,IL−4を産生しやすい細胞をIFNγを産生しやすい細胞の傾向はあるものの,
両者を産生する細胞がほとんどであり,それらの細胞集団は連続的に存在する.
ではないかと想像されるようになった。実 子のDNA配列がこの間に変化した可能性は
際,マウスのThl細胞やTh2細胞において
低い。しかし,環境は相当大きく変化したこ
はそのような現象が観察されている11)。
しかしながら,ここでも大きな問題があ
る。ヒトでは厳密な意味でのThl糸田胞やTh2
とから,環境の変化がその他の遺伝的要素に
作用することにより Thl/Th2細胞のバラン
細胞は存在しない。IL4を産生する細胞を
スを変化させ,喘息雁患率の急激な増加をも
たらした可能性はある。喘息愕患率の増加
Th2細胞として,IFNγを産生する細胞を
は,環境に応答して一時的に喘息・アレルギ
Thl細胞として便宜的に定義しているのに
過ぎない。ほとんどのヘルパーT細胞はIL
ー疾患関連遺伝子の発現が増加していること
4とIFNγの両者を産生するので,便宜的
Thl細胞と Th2細胞にはマウスにおいて認
められる境界は存在しない。つまり,マウス
ではThl細胞やTh2細胞はクロマチン・リ
のみならず,遺伝子を含む高次元構造である
クロマチン構造の変化が生じ,遺伝子が発現
しやすい状態になっていることも関与する可
能性がある。Zhangら12)は,喘息関連遺伝
子のバリエーションを網羅的に探索した際
に,クロマチン・リモデリングに影響を与え
モデリングを生じ,分化して別な細胞亜集団
になっている可能性が高いがヒトではその可
る遺伝子を同定している。Hamada ら13)は,
能性は低い(図2)。そうすると,なぜ,乳
胎児期に母親をアレルゲンで感作後,負荷
幼児期の衛生環境がその後のアレルギー疾患し,喘息様症状を惹起すると,仔マウスは,
発症を左右するのか説明できなくなる。
IV.妊婦からの喘息等アレルギー疾
患発症予防
この20∼30年間に喘息等アレルギー疾患雁
患率の大幅な上昇が認められているが,遺伝
胎児期にアレルゲンと接触しなかった仔マウ
スに比べ,容易に感作されやすく,そして強
い喘息症状を生じることを発見している。こ
の過敏性は妊娠マウスをIL−4に対する中和
抗体で処理しておくことにより遮断された。
この反応もエビジュネッテイクスにより説明
小児科臨床\′「∩】.58Nn.62005 973り5)
I ・・・・・トト,■
瓜
l ト巨
■
プロモーター領域のシトシンメチル化がおこる
とその遺伝子の転写レベルが低下する
図3 クロマチン・りモデリングによる遺伝子転写制御
クロマチンのヒストンタンパクのリジン9メチル化や図のような遺伝子プロモーター領域のシ
トシンメチル化がおこると遺伝子発現は非可逆的に低下する.
される現象である。クロマチン・リモデリン
ルギー疾患発症と強く相関する15)ことに関し
グの機序の一つに遺伝子プロモーター領域の
ては諸家の報告は一致している。したがっ
シトシン塩基のメチル化(図3)がある。シ
て,今後は,妊婦へのアレルゲンの侵入が,
トシン・メチル化がいったん生じると,その
どのような磯序を介して子ビものアレルギー
発症に影響しているのか検討していく必要が
変化は糸田胞分裂を経ても長く持続し,その道
伝子の発現が抑制された状態が長く持続す ある。
る。実際,妊娠マウスにメチル化された塩基
済撃欝∨.喘息気道における組織リモデリ
を多く含む食事を与えると,生まれてくる仔
ングとクロマチン・リモデリン
マウスの毛の色は母親マウスと異なった色に
なることも報告されている14)。しかし,ヒト
グ
でもこのような現象はおこるのであろうか。 喘息病態における気管支粘膜細胞の杯細胞
過形成,気管支平滑筋の過形成異形成,気道
妊娠中の食事が子どもの食物アレルギー発症
に影響するという説は一般に広まっている 上皮下基底膜肥厚などを総称した気道リモデ
その報告はほとんど再現性がない。しかリングは,以前は成人喘息のみで認められる
母親のアレルギーの有無は子どものアレとされていたが,一部の症例では小児期にお
974(Ⅰ6)
いても認められることが判明した16)。気道平
な予防治療方法を開発するためには,もはや
一つの分子や1種類の細胞ではなく,免疫シ
滑筋の過形成や基底膜肥厚に関しては好酸球
を欠損するマウスにおいて認められないの ステム全体,アレルギー疾患発症に関わる分
で,少なくとも喘息モデルマウスにおいては
子をすべて把握する必要があるように思われ
好酸球の働きが重要である17)ことが判明して
きた。一方,ステロイド薬に反応しにくい杯
る21)。
文
献
細胞過形成の機序に関しては,マスト細胞か
1)青田明子他:全国全年齢階級別気管支喘息有症
ら分泌されるアンフィレギュリンが重要岬で 率調査 アレルギー 54(2−3):印刷中(第17
回日本アレルギー学会春季大会特集号),2005
2)SekiY et al:Suppressor ofcytokine signar
気道リモデリングの中には,明らかに可逆
ling3(SOCS3)regulates onset and mainteL
的な変化と非可逆的な変化が存在する。
nanceoftype2helperTcellmediatedallerglC
responses.NatMed 9:1047∼1054,2003
Roth ら19)は組織リモデリングの進行した患
3)Shirakawa T et al:Atopy and asthma;
者由来の気道平滑筋細胞においては C/
geneticvariantsofIL4andIL13signalling.
ImmunoIToday 21:60∼64,2000
EIiPαという転写因子の遺伝子発現が低い状
4)Van Eerdewegh P et al:Association of the
態になっていること,この低発現状態は他の
ADAM33genewith asthma and bronchial
組織細胞では認められず,培養を継続しても
hyperresponsiveness.Nature 418:426∼
430,2002
維持されることを報告した。C/EBPαが低
5)OgumaTetal:RoleofprostanoidDPrece−
発現であると気道平滑筋の増殖はステロイド ptor variantsinsusceptibility to asthma.N
薬で処理しても抑制されず増殖を続けた。す EnglJMed 351:1752∼1763,2004
6)GeredaJEetal:Relationbetweenhousedust
なわち,気道リモデリングの中でも,気道平
endotoxin exposure,typelTCelldevelop−
滑筋の過形成は非可逆的なクロマチン・リモ ment,andallergensensitisationininfantsat
デリングを伴う組織リモデリングである可能 high risk of asthma.Lancet 355:1680∼
1683,2000
性がある。
7)Eder W et al:Toll1ike receptor2 as a
major gene for asthmain children of Eurn
感夢ヂぉゎりに
Opean farmers,J Allergy ClinIrnmuno】
113:482∼488,2004
1970年代後半から我が国の乳児死亡率は世
8)SigllrSN etal:Severerespiratorysyncytial
界一の低水準を維持している。いわば人類史 virusbronchiolitisininfancyandasthmaand
上かつてない清潔な環境下においてわれわれ allergyatage13.AmJRespirCritCareMed
171:137∼141,2005
は乳幼児を育んできた。そして,今や青年と
9)Stene LC,Nafstad P:Relation between
OCCurrenCe Of typeldiabetes and asthma.
なった彼らのアレルゲンによる感作率は
Lancet 357:607∼608,2001
80∼90%近くに達し,花粉症治療を受けてl)
10)WillsKarp M,SantelizJ,Karp CL:The
る割合も約半数に及んでいる。また,クロー
germlesstheoryofallergicdisease;revisiting
the hygiene hypothesis.Nat RevImmunol
ン病などのThl病といわれる疾患も増加し
l:69∼75,2001
ている。人類の進化の過程において細菌やウ
11)Yamashita M et al:Interleukin(IL)4in−
イルスの侵入など日常的な擾乱に対して発達 dependent maintenance of histone modifica−
tionoftheIL4genelociinmemoryTh2cells.
した免疫系などの生体システムは,想定して
JBioIChem 279:39454∼39464,2004
いない擾乱,すなわち抗生物質による無菌状
12)ZhangYetal:Positionalcloningofaquanti−
態下における大量の花粉飛散などの状態に対 tative trait locus on chromosome 13q14 that
influencesimmunoglobuIin Elevels and
して極めて脆弱である20)。したがって,増加
asthma.NatGenet 34:181∼186,2003
あることが判明した。
し続けるアレルギー疾患病態を理解し,適切
小児科蘭床 Vol.58No.620n5 975(17)
13)Hamada K et al:Allergenindependent
maternaltransmission of asthma susceptibilL
ity.JImmunol170:1683∼1689,2003
14)WaterlandRA,JirtleRL:Transposableele
1TlentS:targetsforearlynutritionaleffectson
epigenetic gene regulation.MoICellBio1
23:5293∼5300,2003
15)LoweLetal:Specificairwayresistancein3
year01d children:a prospective cohort
Study.Lancet 359:1904∼1908,2002
16)Payne DN et al二Early thickening of the
reticularbasementmembraneinchildrenwith
difficultasthma.AmJRespirCritCareMed
167:78∼82,2003
17)HumblesAAetal:Acriticalroleforeosino−
philsin allerglCairwaysremodeling,Science
305:1776∼1779,2004
18)Okumura S et aI:Fc epsilon Rトmediated
amphiregulinproductionbyhumanmastcells
increasesmucingeneexpressioninepithelial
Cells.JAllergyClinImmuno1115:272∼279,
2005
19)RothMetal:DysfunctionaIinteractionofC/
EBPalpha and the glucocorticoid receptor in
asthmatic bronchialsmooth−muSCle ce11s.N
EnglJMed 351:560∼574,2004
20)Kitano H:Systems biology;a brief overr
view.Science 295:1662∼1664,2002
21)SaitoIi,AbeJ,Matsumoto K:Allergy−
relatedgenesin“micro”array.JAllergyClin
Immunol.2005:inpress
⊆NIHONKOH
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97(I(18)