刑法予習編 第4回目 レジュメ ・結果と因果関係 ・構成要件 刑罰法規を解釈して得られた違法行為の類型 ・構成要件要素 実行行為 結果 因果関係 故意、過失 ・結果 結果犯…ある一定の行為が行われたことに加えて結果が発生してはじめて既遂とな る 挙動犯…ある一定の行為が行われることで犯罪が既遂になる 結果とは、法益が侵害された結果だけではなくて、法益への危険という結果も ある ・因果関係 結果犯では、結果発生を理由として、行為について違法性が強くなる 結果が行為者の行為によって生じたといえることが必要になる ↓ 因果関係 因果関係というのは 結果発生を理由にして当該行為について重い違法評価をすることができるかと いう問題 どのような場合に結果を行為に帰責できるのか 「実行行為の有する危険が結果として現実化した」場合に因果関係が認められる ・因果関係(学説) 1.事実的因果関係、条件関係 2.法的因果関係 1.事実的因果関係 「あれなければこれなし」 問題1 「約 1 時間後に死亡することが確実である重病患者に毒を与えて毒殺した。 毒殺した行為と死との事実的因果関係はあるか。 」 死の結果を抽象化するのではなくて、具体的に把握して条件関係を考える 1 時間早い死と毒殺行為との条件関係は認められる 問題2 「行為者が二丁の拳銃を両手に持って、右手の拳銃で被害者を撃ち殺した。 行為者は両利きで、右手の拳銃が使えなくとも、左手の拳銃を使っていた というような事情がある場合に、行為者の右手の拳銃で被害者を打った行 為と死との条件関係は認められるか。」 仮定的事情の付け加え禁止 左手に拳銃を持っていて、撃つことができたという事情は考慮しない 問題3 「拳銃で撃たれて転倒し、動かなくなっている被害者に対して、さらに第三 者が拳銃で発砲した。 二度目の発砲行為によって被害者は即死したが、一度目の発砲行為と死亡 との条件関係は認められるか。 」 一度目の発砲行為と死亡との条件関係 一度目の発砲行為がなければ被害者は転倒しなかった 転倒しなかったら、二度目の発砲行為の時点では死亡しなかった 問題4 「甲と乙が、偶然、それぞれ独立して、被害者Aを殺すために致死量の毒を 与えて、その毒の作用で被害者が死亡したが、甲と乙のどちらの毒がどの 程度致死的作用を及ぼしたのかが明らかにならない場合に、甲・乙の行為 と死に条件関係が認められるか。」 択一的競合 「あれなければこれなし」の修正 →「甲と乙の行為の両方がなければ、Aは死亡しなかった」 2.法的因果関係 因果関係というのは 実行行為単体より重い違法評価を加えることができるか 「実行行為が有する危険が、結果として現実化した」=相当性 相当性判断 ① 判断資料 ② 判断方法 ① 判断資料 主観説 現実に存在する事情のうち行為者本人が認識しえた事情のみ 折衷説 現実に存在する事情のうち、行為の時点において行為者が認識していた事 情 客観説 + 一般通常人が認識可能であった事情 行為後の事情については一般通常人にとって予測可能であった事情のみを 考慮 + 行為当時に存在した事情に関しては全ての事情 ② 判断方法 「行為の危険が現実化したか」 事例1 「Xは、日頃からYに恨みをもっており、いつかYを痛めつけてやろうと 思っていた。 ある日、Xは、Yを路上で待ち伏せし、Yの顔を殴る等の暴行を加えた。 Xの暴行は、通常であれば、加療 10 日程度の傷を負う程度のものであった が、Yは転倒した際に運悪く後頭部をぶつけてしまい、死亡した。」 路上で暴行等を加えれば、転倒することも、路上がアスファルトで頭を打 てば死亡する虞があることも一般人であれば分かる 事例2 「Xは、日頃からYに恨みをもっており、いつかYを痛めつけてやろうと 思っていた。 ある日、Xは、Yを路上で待ち伏せし、Yの顔を殴る等の暴行を加えた。 Xの暴行は、通常であれば、加療 10 日程度の傷を負う程度のものであった が、Yは極めて特殊な心臓病を患っており、Xの暴行により心臓が停止し、 死亡した。 」 折衷説 Xが心臓病を知っていた場合 → 判断資料に含む → 法的因果関係 肯定 Xが心臓病を知らなかった場合 → 判断資料に含まない → 果関係否定 客観説(判例) 特殊事情の認識や認識可能性に触れることなく、因果関係肯定 法的因 事例3「Xは、日頃からYに恨みをもっており、いつかYを痛めつけてやろうと思 っていた。 ある日、Xは、Yを路上で待ち伏せしていたところ、Yを発見したのでYの 前に飛び出し、顔面を殴った。Xは空手の有段者で、あまりに強い殴打に驚 いたYは路上に倒れた。Xは倒れたYに馬乗りになり、Yの意識がなくなる まで顔を殴ったところ、Yは特殊な脳疾患を有していたので、暴行により脳 細胞が破壊され、死亡するに至った。」 Xの暴行が事例2よりも危険なもの Xの暴行がそれ自体相手を死亡させる危険が高い場合、特殊な事情(心臓 病、脳疾患)を判断資料に含めることができなくとも、法的因果関係肯定 事例4 「Xは、日頃からYに恨みをもっており、いつかYを痛めつけてやろうと 思っていた。 ある日、Xは、Yを路上で待ち伏せしていたところ、Yを発見したので、 Yの前に飛び出し、顔面を殴った。 XはYを数発殴ったところで、恨みも晴れて満足したので、その場を立ち 去って行った。 XがYを殴っている際、その場を偶然Zが通りかかった。 ZもYに日頃から恨みを持っていたので、Xが立ち去った後、落ちていた 鉄パイプを持ってYに近づき、Xの暴行で路上に倒れているYの頭部を目 掛けて、鉄パイプを振り下ろした。 その結果、Yは頭部に重大な障害を負って、死亡した。」 Xの暴行後、Zの暴行 Xが立ち去った後に、ZがYを鉄パイプで殴る行為というのは、行為者も 一般人も認識しえない(折衷説参照) 的因果関係否定 → 判断資料に含まない → 法 事例5「Xは、日頃からYに恨みをもっており、いつかYを痛めつけてやろうと思 っていた。 ある日、Xは、Yを路上で待ち伏せしていたところ、Yを発見したので、 Yの前に飛び出し、顔面を殴った。 XはYを馬乗りになって殴り続け、Yの意識がなくなったところで、その 場を立ち去って行った。 XがYを殴っている際、その場を偶然Zが通りかかった。 ZもYに日頃から恨みを持っていたので、Xが立ち去った後、落ちていた 鉄パイプを持ってYに近づき、意識のないYを鉄パイプで殴り死亡させた。 Yは、Xの暴行により脳に重大な障害を負い、そのまま放置されれば死亡 するという状態だったが、Zの暴行によって死期が早まった。」 Xの行為それ自体、死の危険を発生させる危険が高い →Xの行為が持つ死発生の危険が現実化していると評価できる →法的因果関係肯定 事例6 「Xは、日頃からYに恨みをもっており、いつかYを痛めつけてやろうと 思っていた。 ある日、Xは、Yを路上で待ち伏せしていたところ、Yを発見したので、 Yの前に飛び出し、顔面を殴った。 Yは突然のXの暴行に驚いたが、YもXに恨まれていることを認識してい たので、Xから逃げなくてはと思い、すぐにその場から逃げだした。 Yが逃げ出すと、Xも後を追いかけてきた。 Yがどこまで逃げても、Xは追いかけてくるので、Yは逃げ切るために、 電車の線路に逃げ込んだが、Yは逃げることに必死で電車が接近している ことに気づかず、電車に轢かれて死亡した。 」 Xの行為から考えると、今回のY自身の行為を誘発する可能性が十分にあ ったと評価できる →Xの行為の危険は、Yの行為を経由して現実化したと評価できる →法的因果関係肯定 ・法的因果関係を検討する際のポイント 判断資料に含めることができる事情、できない事情 → 個別具体的な検討 全ての事情を判断資料に含めることができる場合 →問題となる行為の危険が現実化したと評価できる 全ての事情を判断資料に含めることができない特殊な事情がある場合 →その事情を除いた上で、なおその行為の危険が現実化したかどうかを判断 ・行為の持つ結果発生の危険性の程度(事例3、事例5) ・実際に発生した結果への寄与度(事例6) (レジュメここまで)
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