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地域防災力向上のためのハザード
マップのあり方を考える
国土地理院 企画部 分析官
宇 根
寛
2015年1月21日
地図調製技術協会研修会
「減災に役立つ地図はどうあるべきか」
Ministry of Information
Land, Infrastructure,
Transport
Geospatial
Authority
of Japanand Tourism
本日のお話
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•
ハザードマップとは
ハザードマップの整備状況
ハザードマップを信じるな?
あらためて、ハザードマップとは
我孫子市の液状化とハザードマップ
他の市町村も・・・
土地条件図は利用されているか?
減災のためのハザードマップに向けて
業界の役割
災害とは
• 暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土
石流、高潮、地震、津波、噴火、地滑りその
他の異常な自然現象又は大規模な火事若し
くは爆発その他その及ぼす被害の程度にお
いてこれらに類する政令で定める原因(放射
性物質の大量の放出、多数の者の遭難を伴
う船舶の沈没その他の大規模な事故)により
生ずる被害をいう。
(災害対策基本法)
防災とは
• 災害を未然に防止し、災害が発生した場合に
おける被害の拡大を防ぎ、及び災害の復旧
を図ることをいう。
(災害対策基本法)
Hazardとは
• 人命の損失、損傷、資産被害、社会的経済
的破壊、環境の悪化等を引き起こす可能性
のある自然現象及び人間活動。将来の脅威
となる可能性のある潜在的な状態を含む。
(国連国際防災戦略)
ハザードマップ→ハザードのマップ?
ハザードマップとは
• 水害、震災、火山災害などに対し、被害の及
ぶおそれのある範囲や避難施設などを表現
した地図。(地図学用語辞典)
• 災害が想定される範囲とその程度、避難経
路、避難場所等を表現した地図。(測量用語
辞典)
災害対策基本法におけるハザードマップ
第四十九条の九 市町村長は(略)、災害
に関する情報の伝達方法、指定緊急避
難場所及び避難路その他の避難経路に
関する事項その他円滑な避難のための
立退きを確保する上で必要な事項を居住
者等に周知させるため、これらの事項を
記載した印刷物の配布その他の必要な
措置を講ずるよう努めなければならない。
洪水ハザードマップの定義
• 堤防決壊、洪水氾濫等発生時の浸水情報及
び避難に関する情報を住民にわかりやすく提
供することにより、人的被害を防ぐことを主な
目的として作成され、以下の条件を満たすも
のをいう。
a 浸水想定区域が記載されていること
b 避難情報が記載されていること
c 市町村長(特別区を含む。以下同じ。)が
作成主体となっていること。
(洪水ハザードマップ作成の手引き)
ハザードマップは災害種ごとに作成される
•
•
•
•
•
洪水ハザードマップ
土砂災害ハザードマップ
津波ハザードマップ
火山ハザードマップ
地震ハザードマップ
(揺れやすさマップ、液状化ハザードマップ)
• ・・・
法定ハザードマップ(法で作成義務のあるもの)
•
•
•
•
•
洪水ハザードマップ(水防法)
土砂災害ハザードマップ(土砂災害防止法)
津波ハザードマップ(津波防災地域づくり法)
火山ハザードマップ(検討中)
地震ハザードマップ
(揺れやすさマップ、液状化ハザードマップ)
• ・・・
ハザードマップ整備状況
•
•
•
•
洪水ハザードマップ:1,274/1,342市町村
土砂災害ハザードマップ:1,301/1,606市町村
津波ハザードマップ:456/639市町村
火山ハザードマップ:37/47火山
(平成25年3月末現在:平成26年版防災白書による)
ハザードマップ公開状況
洪水ハザードマップ
ハザードマップ公開状況
土砂災害ハザードマップ
ハザードマップ公開状況
津波ハザードマップ
ハザードマップ公開状況
火山ハザードマップ
ハザードマップ公開状況
地震ハザードマップ
ハザードマップ公開状況
液状化ハザードマップ
ハザードマップを信じるな?
• 「従前の想定によるハザードマップが安心材
料となり、それを超えた今回の津波が被害を
拡大させた可能性がある。」(中央防災会議
東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津
波対策専門調査会報告(2011年9月))
• 「ハザードマップを信じるな!」(片田敏孝群
馬大教授)
宮古市総合防災ハザードマップ
宮古市田老の浸水範囲とハザードマップ
中央防災会議「東北地方太平
洋沖地震を教訓とした地震・
津波対策専門調査会報告」
大船渡市の浸水範囲とハザードマップ
中央防災会議「東北地方太平
洋沖地震を教訓とした地震・
津波対策専門調査会報告」
仙台市の浸水範囲とハザードマップ
中央防災会議「東北地方太平
洋沖地震を教訓とした地震・
津波対策専門調査会報告」
津波被災とハザードマップ
港湾空港技術研究所 富田孝史氏資料より引用
津波被災とハザードマップ
津波被災とハザードマップ
ハザードマップを信じるな?
私は子どもたちに「ハザードマップを信じるな」
と言ってきました。ハザードマップすら無いと、
どこにどんな津波が来るかのイメージすらで
きないのでマップは必要です。ですが、これ
はあくまで明治三陸地震が来た場合を想定し
たマップです。マップをうのみにしてはいけま
せん。ハザードマップの浸水想定外のエリア
にある学校でも、もっと大きい津波がきたらそ
こも危ないのです。
(片田教授の教育講演会における発言。パスナ
ビより引用。)
ハザードマップを信じるな?
• 重要なことは・・・
ハザードマップは特定の想定に基づく災害
予測とそれに基づく避難行動指針が示された
ものであること
• 「地震の発生位置や規模、地形状況によりさ
らに深くなったり、着色されていない地域も浸
水する可能性があります」(宮古市総合防災
ハザードマップ)
28
片田教授国土交通大学校講義資料
29
30
片田教授国土交通大学校講義資料
31
片田教授国土交通大学校講義資料
32
片田教授国土交通大学校講義資料
ハザードマップとは
•
•
•
•
住民自らが
地域における自然の営みを知り
自然の振る舞いを予測して
自然の営みとけんかすることをできるだけ避
けて
• 災害の被害を最小限に防ぐ行動を判断する
ための情報
33
災害対策の基本理念(平成25年の災害対策基本法の改正)
二 国、地方公共団体及びその他の公共機
関の適切な役割分担及び相互の連携協
力を確保するとともに、これと併せて、住
民一人一人が自ら行う防災活動及び自
主防災組織その他の地域における多様
な主体が自発的に行う防災活動を促進す
ること。
新たなステージに対応した防災・減災のあり方
(2015年1月20日 国土交通省発表)
雨の降り方が局地化、集中化、激甚化
スーパー台風
都市、人が脆弱化
→少なくとも命を守り、社会経済に壊滅的な被
害が発生しないことを目標とした対応
命を守る:「行動指南型」の避難勧告に加え、
「状況情報」の提供による主体的避難の促
進、広域避難体制の整備等を目指す。
(住民の災害リスクの認知度の向上、避難力の向上、防災
教育、災害リスクを踏まえた住まい方への転換など)
壊滅的被害の回避:最悪の事態を想定・共有
し、国、地方、企業等が主体的かつ連携し
て対応する体制の整備を目指す。
これからのハザードマップは
• 常に想定を超える現象が発生する可能性が
あることを意識しつつ、
• 日常から地域の自然の振る舞いと地形、避
難所の位置などとの関係をイメージし、
• これらの情報とリアルタイムの災害情報に基
づいて住民自らが災害の被害を最小限に防
ぐ行動を判断するための参考資料
36
我孫子市液状化ハザードマップの見直し
• 東北地方太平洋沖地震では内陸部でも地盤の液
状化や流動化による大きな被害が発生
• 内陸部の液状化はいずれも土地の成り立ちと被
害が密接に関係
• 千葉県我孫子市で発生した液状化被害と事前に
作成されていた液状化ハザードマップの関係、
その後のハザードマップ改訂の経緯を報告する
関東地方の液状化発生地点
「東北地方太平洋沖地震による関東地方の地盤液状化現象の実態解明 報告書」
(国土交通省関東地方整備局・公益社団法人地盤工学会、2011)
関東地方の液状化
• 千葉県北西部・東京都の東京湾岸で大規模
に発生
• 千葉・茨城県境の利根川下流域、埼玉県・茨
城県の利根川中流部、古利根川流域、鬼怒
川流域、小貝川流域などの内陸部にも被害
が散在
我孫子市布佐における液状化被害
・住宅、店舗等に大きな被害
全壊:113戸
大規模半壊:1戸
半壊:42戸
(2012年1月20日現在、我孫子市調べ)
我孫子市資料
土地条件図にみる我孫子
我孫子市布佐における液状化被害
利根川
我孫子市布佐における液状化被害
・幅100メートル、長さ500メートル程度と
幅100メートル、長さ200メートル程度の
2つの範囲にほぼ限定されて発生
2008年国土地理院撮影
1962年国土地理院
切れ所沼
半左衛門沼
1947年米軍撮影
我孫子市布佐における液状化被害
・被災した地域は1952年まで沼であった範
囲とほぼ一致
・土地の成り立ちをさかのぼると・・
1869年(明治3年)洪水で利根川の堤防が
決壊、押堀を形成
1952年(昭和27年)からの河川の改修工
事による浚渫土砂で沼を埋め立て。土地
区画整理事業により宅地化
我孫子市資料
その他の液状化地点
市内にはこの他にも小規模な液状化が10数ヶ
所で発生
液状化地点と土地条件図
その他の液状化地点
市内にはこの他にも小規模な液状化が10数ヶ
所で発生
→主に手賀沼の埋立地と台地を浸食した谷を
埋めた造成地で発生
我孫子市液状化危険度マップ
2010年、我孫子市は「あびこ防災マップ」を作成、住民
に配布。
その一部として「液状化危険度マップ」が含まれていた。
我孫子市布佐の液状化危険度マップ
液状化危険度マップと液状化発生状況
液状化危険度マップの作成過程
内閣府「地震ハザードマップ作成技術資料(2005年)」
に従い、5万分の1土地分類基本調査の地形分類図を
用いて50メートルメッシュの微地形区分データを作成
中位砂礫台地
低位砂礫台地
切土改変地
斜面
旧河道
氾濫原平野
谷底平野
自然堤防・砂州
盛土改変地
埋土地
高水敷
千葉県 5万分1土地分類基本調査「龍ヶ崎」
液状化危険度マップの作成過程
内閣府「地震ハザードマップ作成技術資料(2005年)」
に従い、中央防災会議による15区分の微地形区分に
読み替え
中位砂礫台地
低位砂礫台地
切土改変地
斜面
旧河道
氾濫原平野
谷底平野
自然堤防・砂州
盛土改変地
埋土地
高水敷
ローム台地
砂礫台地
人工改変地
谷底平野
自然堤防
後背湿地・デルタ
埋土地・干拓地
液状化危険度マップの作成過程
内閣府「地震ハザードマップ作成技術資料(2005年)」
に従い、中央防災会議による15区分の微地形区分に
読み替え
中位砂礫台地
低位砂礫台地
切土改変地
斜面
旧河道
氾濫原平野
谷底平野
自然堤防・砂州
盛土改変地
埋土地
高水敷
ローム台地
砂礫台地
人工改変地
谷底平野
自然堤防
後背湿地・デルタ
埋土地・干拓地
地形分類の読み替え基準
地形分類図の地形区分
中位砂礫台地
低位砂礫台地
切土改変地
斜面
旧河道
氾濫原平野
谷底平野
自然堤防・砂州
盛土改変地
埋土地
高水敷
中央防災会議による微
地形区分
ローム台地
谷底平野
自然堤防
ローム台地
砂礫台地
谷底平野
後背湿地・デルタ
人工改変地
谷底平野
谷底平野
後背湿地・デルタ
谷底平野
自然堤防
人工改変地
埋土地・干拓地
谷底平野
備考
ボーリングデータ、
周辺地形より判断
ボーリングデータよ
り判断
隣接する地形分類
より判断
液状化危険度判定の考え方
【表層地盤の揺れやすさ】
【地盤データの作成】
地形ごとに地震動の 地表付近の軟らかい地盤
平均S波速度を設定す での地震動の予測
る。
【地表面付近の揺れやすさ】
震源から地表面付近に到達する
までの地震動の予測(距離があ
るほど地震動は弱くなる)
液状化危険度マップの作成過程
茨城県南部地震及び仮想直下地震を想定地震として、
メッシュ毎に地表最大速度を計算して微地形区分ごとに
液状化危険度を評価
地表最大速度V=G・PGV600
PGV600 :S波速度600m/s基盤上の最大速度
G:表層地盤の速度の増幅度
液状化危険度=
地表最大速度
液状化が発生する最大地震速度
高い:1.25以上 やや高い:1.00~1.25 低い:0.75~
1.00 対象外:危険度がほとんどなく評価の対象外
液状化危険度マップの作成過程
液状化が発生する最大地震速度(松岡ほか、1993)
○埋立地、干拓地、自然堤防(旧河道)、砂丘末端緩傾
斜面、砂丘間低地:15cm/s
○後背湿地、谷底平野、デルタ:25cm/s
○砂州、緩扇状地:35cm/s
○それ以外の微地形(砂礫台地、ローム台地、人工改変
地):評価の対象外(液状化の危険度がほとんどない)
液状化危険度マップの作成過程
茨城県南部地震及び仮想直下地震を想定地震として、
メッシュ毎に地表最大速度を計算して微地形区分ごとに
液状化危険度を評価
結果的には・・・
高い
谷底平野、自然堤防、後背湿地・デルタ、埋土地・干拓地
評価の対象外(危険はほとんどない)
ローム台地、砂礫台地、人工改変地
千葉県 5万分1土地分類基本調査「龍ヶ崎」
関東地方建設局 2万5千分1治水地形分類図「龍ヶ崎
国土地理院 2万5千分1土地条件図「龍ヶ崎」
その他の液状化地点
市内にはこの他にも小規模な液状化が10数ヶ
所で発生
→主に手賀沼の埋立地と台地を浸食した谷を
埋めた造成地で発生
→これらは「人工改変地」と分類され、液状化
の「評価の対象外」と評価された
→地形分類図で細かい谷が表現されず「切土
改変地」に一括されているものもあった
液状化地点とハザードマップ
我孫子市柴崎台の液状化と旧地形
我孫子市柴崎台の地形分類
危険度評価の問題点
①既存の5万分の1地形分類図のみを用いて地形
区分データを作成したこと
②結果的には地形区分の読み替えにより危険度の
単純な評価を行ったこと
特に、成り立ちの異なる盛土と切土が人工改変地
(本来は切土を想定)に一括されたこと
③空中写真や旧版地図等で比較的容易に知ること
のできる土地履歴の情報が参照されなかったこと
④メッシュ毎に平均化された微地形区分をもとに危
険度の評価を行ったため、仮に小面積の脆弱な地
形の情報を取得しても、それを反映できないこと
その他の利根川下流域でも・・・
神崎町、稲敷市
我孫子市布佐
香取市佐原
神崎町,稲敷市南東部における液状化被害
新利根川
稲敷市
香取市
利根川
神崎町
神崎町,稲敷市南東部における液状化被害
新利根川
利根川
香取市佐原における液状化被害
国道356号線
香取市佐原における液状化被害
国道356号線
あびこ地震ハザードマップの改訂
地震により大きな被害を受けたことを受け、 2013
年に、特に自助と共助の役割を強化することに主眼
を置いた地域防災計画の修正を行った。
併せて、「あびこ防災マップ」を全面的に改訂し、
2013年5月に市民に配布した。
特に、この中の「地震ハザードマップ」(「揺れやす
さマップ」「建物全壊率マップ」「液状化危険度マッ
プ」により構成)については、新たに解析を行い、全
面的に改訂を行った。
解析業務は「国土地理院防災情報支援チーム」
の支援、協力のもと、市の委託を受けた民間コンサ
ルタントが実施した。
改訂作業の流れ
①地盤情報の整理
我孫子市の地盤を昔の地形などを使って整理します。
②揺れやすさマップのデータ作成
地表付近の軟らかい地盤
での地震動の予測
震源から地表面付近までの
地震動の予測
想定地震の予測
想定した複数の地震について、地表の震度を予測します
それぞれの地域での最大震度
揺れやすさマップ
③建物全壊率マップのデータ作成
建物データ(構造別・建築年次別)
揺れの大きさと全壊被害の関係
建物全壊率マップ
④液状化危険度マップのデータ作成
液状化危険度マップ
地盤情報の整理(微地形区分図の作成)
微地形区分図(背景図は昭和3年)
液状化危険度の判定
「液状化危険度マップ」については、メッシュ化により
地形区分の情報が平均化されることを避けるため、
微地形区分図のポリゴンデータから直接微地形区
分と液状化の可能性の関係を示す判定基準表を用
いて危険度が判定された。
液状化危険度の判定基準
地盤表層の液状化
可能性の程度
微地形区分
(国土庁,平成11年1月)
極 液状化の可能性は 埋立地,盛土地,旧河道,旧池沼,ポイントバー(蛇行洲),
大 非常に大きい
砂泥質の河原,人工海浜,砂丘間低地,堤間低地,湧水地
大
液状化の可能性は 自然堤防,湿地,砂州,後背低地,三角州,干拓地,緩扇
大きい
状地,デルタ型谷底平野,谷底平野の盛土地
小
液状化の可能性は 扇状地,砂礫質の河原,砂礫洲,砂丘,海浜,扇状地型谷
小さい
底平野
無 可能性無し
台地・段丘,丘陵地,山地
液状化危険度マップ
あびこ地震ハザードマップ(平成25年版)
地震ハザードマップの作成過程を公開
地震ハザードマップにこれらのマップがどのように
作成されたのかをわかりやすく解説するコラムを表示
解析のもととなった微地形区分図と地震ハザード
マップ解析業務概要報告書が我孫子市ホームページ
にそのまま掲載
市民が土地の成り立ちを理解し、地域の災害特性
を把握して、自らの判断であらかじめ適切な防災・減
災行動をとることを促すことに資する
他の市町村のハザードマップにも・・・
既存ボーリング資料
(N値、粒度、地下水
位)から判定(PL法)
微地形分類による
判定
実際には判定に使える既存ボーリング資料はわず
か。ボーリング地点の評価と微地形分類の面での評
価の統合は困難。
→ボーリングデータが存在する周辺だけ危険度が高
い評価となっ地形とまったく整合しない例もみられる。
他の市町村のハザードマップにも・・・
危険度評価にあたっては,定量的評価に加えて,
微地形区分を通じて土地の履歴についての十分な
検討を行う必要がある。
空間的な広がりも踏まえつつ,豊かな想像力を
もって土地の成り立ちを思い描くことが適切な評価
につながる。
地形区分を通じて土地の成り立ちを示す地図
→土地条件図
土地条件図は利用されているか?
ハザードマップ作成に際して土地条件図を参考にし
たか?(2012年度に国土地理院がアンケート)
%
土地条件図は必要なかった?
土地条件図は必要なかったのではなく、ハザード
マップ作成にあたって土地の成り立ちや性質を理解
する情報が必要であるという認識が十分浸透してい
ない!
作成者側も土地条件図に示されている情報がど
のように利用できるかを広く紹介する等の取組みが
不十分!
そうは言っても先立つものが・・・
新たに独自の詳細な土地の分析を行う予算が・・・
神奈川県寒川町の「e-まっぷさむかわ」
(2014年度電子国土奨励賞)
地理院地図と国土地理院の地理空間情報を用いた
簡易な防災マップ
寒川町地震防災マップ
寒川町地震防災マップ
寒川町地震防災マップ
寒川町地震防災マップ
国土地理院災害情報支援チームとは?
国の機関・都道府県市町村など、防災行政に責務を
負っている機関、及び行政機関と連携して地域の防災
力向上に努めている学識経験者を対象に、各機関の実
施する防災行政・プロジェクトを支援する活動を行ってい
ます。
具体的には、国土地理院内の防災情報に関する専門知
識を有する職員がプロジェクトチームを結成し、各機関
によるハザードマップ作成や広域防災計画策定などの
防災に関する行政施策遂行に関して、国土地理院等が
保有する情報を中心に、防災に関する地理空間情報の
存在とその具体的活用法と活用事例を紹介するととも
に、関係機関のハザードマップ作成などのプロジェクト
全期間にわたって防災情報アドバイザーとして継続的に
対応しています。
国土地理院災害情報支援チームとは?
自然の営み
•
•
•
•
•
自然の営みは当たり前の物理現象である。
自然の営みは予測できる。
自然の営みは人には止められない。
自然の恵みがなければ人は生きられない。
自然の営みと人の営みがけんかすると災害
が発生する。
被害を軽減するためのハザードマップに向けて
住民が災害に備え、災害時に適切な行動をと
るためには、住民自らがその土地における自
然の営みを十分に理解しておくことが重要。
ハザードマップはそのための参考資料と考え
るべき。
このためのハザードマップは・・・
被害を軽減するためのハザードマップに向けて
•
•
•
•
住民自らが
地域における自然の営みを知り
自然の振る舞いを予測して
自然の営みとけんかすることをできるだけ避
けて
• 災害の被害を最小限に防ぐ行動を判断する
ための参考資料
104
被害を軽減するためのハザードマップに向けて
地形発達史を踏まえた土地の成り立ちが理
解できる地図であること
メッシュによる評価は場合によっては平均化
により地域のリアリティを失わせることになる
こと
を意識すべき
ハザードマップで地域防災力を高めよう
• 住民が地域の災害特性をよく把握し、それを
共有することが不可欠
• そのため、地域コミュニティのレベルでハザー
ドマップを用いた勉強会を促進するなど、地
域防災力向上のための取り組みを強化する
べき
106
ハザードマップで地域防災力を高めよう
• 今回の津波に際しては、中学生が小学生の
避難を助け、また、中学生の避難行動が周囲
の住民の避難を促すなどの事例もあった
• 地域防災の担い手としての児童・生徒という
観点も含め、防災教育に積極的に取り組む
べき
107
業界の役割
• 国や学識経験者がすべての市町村を直接支
援するのは困難。
• 市町村の防災担当者と直接接する専門家と
して、知識と経験を生かして、ハザードマップ
の作成方法や地域防災力の向上のあり方を
積極的に提案していただきたい。
• 専門家の養成、事例の情報交換など、ハザ
ードマップの向上と活用にための積極的な活
動を期待する。
108
宮城豊彦教授のエピソード
• 『宮城県七ケ浜町花渕浜地区の住民は、町内に住む宮城豊彦
東北学院大教授の指導のもと、自主的に避難場所を決めるな
ど、防災に取り組んできた。集落には高齢者が多いことから、避
難場所は県が想定する最大の3.3メートルの津波からようやく
逃れられる近所の寺にした。
• 地震後、住民は寺の駐車場に集まった。じっとラジオに耳を澄ま
せていたリーダーの鈴木さんは、他の地域に到達した津波が「5
メートル」と知り、「県の想定に比べて大きすぎる。これじゃ危な
い」と、宮城さんと勉強してきた津波のことが頭に浮かび、急い
で移動を決断。高齢者を近くの幼稚園のバスに乗せ、集まった
仲間に移動を呼びかけ、数百メートル離れた高台に60人を移し
た。その途端、避難場所の寺が津波にのまれた。
• 津波から一週間後、避難所で人々の生活を支える鈴木さんを
訪ね、宮城さんは言った。「結果的に、適切な避難場所を伝えら
れなかったことは申し訳ない。でも、学んだ知識を生かし、みん
109
なを救ってくれた。素晴らしかった」』
2011年3月23日付朝日新聞より
ご清聴ありがとうございました。
110