1.新ジョブ・カード作成実習

第Ⅲ部 新ジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティング実習
1.新ジョブ・カード作成実習
■新ジョブ・カード作成実習の概要
新ジョブ・カード作成実習では、実際に相談者の新ジョブ・カード作成支援を行うにあ
たって、新ジョブ・カード様式の特徴を理解するとともに、具体的な作成方法について学
んでいきます。
ここでは、下記の「演習の前提条件」にある結城二郎さんのケースを例に、①「様式2
職務経歴シート」、②「様式1キャリア・プランシート」の効果的な記載の仕方、及び③「様
式1キャリア・プランシート」の<キャリアコンサルティング実施者の記入欄>の記載方
法について学習します。
◆演習の前提条件◆
結城二郎(ゆうきじろう・26 歳・男性)さんがハローワークの紹介
で、事前に記入したジョブ・カードを持参して、ジョブ・カード作成
アドバイザーであるあなたのもとに訪れました。
ハローワークの担当者の事前連絡では、正社員希望だが、まだ将来
について漠然としていること、有期実習型訓練の「CAD設計補助コ
ース」に興味を示したこと、ジョブ・カードの作成を通じて、自己理
解を深めてほしい旨などが伝えられました。
実習①
「様式2 職務経歴シート」の効果的な記載方法
次頁以降の2つの「様式2
職務経歴シート」は、結城さん自身が記述し持参したもの
です。様式2①は結城さんが初回面談時に持参したもので、様式2②は初回面談後、結城
さん自身が修正をして、2回目の面談時に持参したものです。
この2つの様式を比較して、<職務の内容>欄、<職務の中で学んだこと、得られた知
識・技能等>欄等について、様式2①から様式2②に改善するために、ジョブ・カード作
成アドバイザーがどのようなアドバイスを行ったのかを考え、箇条書きでまとめてくださ
い。
57
様式2①【結城二郎さんの初回面談時の職務経歴シート】
58
様式2②【結城二郎さんの2回目面談時の職務経歴シート】
59
実習①
「様式2
職務経歴シート」の改善にあたって、ジョブ・カード作成アドバイザーがどの
ようなアドバイスを行ったと考えられるか、箇条書きでまとめてください。
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
60
実習②
「様式1-1キャリア・プランシート(就業経験がある方用)」の効果的な
載方法
この実習では、
「様式1-1キャリア・プランシート(就業経験がある方用)
」の<自ら
のキャリア・プランに関する本人の記入欄>の効果的な記載方法について学びます。この
欄は、相談者の働く上での強みや今後の課題・目標に向けた姿勢を整理することを支援し
ていく必要があります。
この実習でも、実習1と同様に結城さんが初回面談時に持参した「様式1-1キャリア・
プランシート」と、2回目の「様式1-1キャリア・プランシート」を比較して、<自ら
のキャリア・プランに関する本人の記入欄>を改善するために、ジョブ・カード作成アド
バイザーがどのような支援を行ったのかを考え、箇条書きでまとめてください。
61
様式1①【結城二郎さんの初回面談時のキャリア・プランシート】
62
様式1②【結城二郎さんの2回目面談時のキャリア・プランシート】
63
実習②
「様式1-1キャリア・プランシート」の改善にあたって、ジョブ・カード作成アドバイ
ザーがどのようなアドバイスを行ったと考えられるか、箇条書きでまとめてください。
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………………………………….
64
実習③
「様式1-1
キャリア・プランシート」における<キャリアコンサルティン
グ実施者の記入欄>の記載方法
この実習では、「様式1-1キャリア・プランシート」にある<キャリアコンサルティン
グ実施者の記入欄>の記載方法について学習します。<キャリアコンサルティング実施者
の記入欄>は、本人の了承を得たうえで、本人の自己理解や職業意識、キャリア形成上の
課題についてコメントを記載します。助成金の資料として提出する必要のある場合や、訓
練受講の必要性の有無を判断するためにこの欄の記入が必要となることがあります。
初回面談時については、結城さんからコメントを記載するよう求めたがあったと想定し
て、様式1-1キャリア・プランシート(62 頁)の<キャリアコンサルティング実施者の
記入欄>を記載してください。また、2回目面談時については、助成金の提出書類として
活用するという想定で様式1-1キャリア・プランシート(63 頁)の<キャリアコンサル
ティング実施者の記入欄>を記載してください。
【初回面接時】
【2回目面接時】
65
2.ロールプレイ演習
■新ジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティング演習のポイント
最終的な目標は、キャリアコンサルティング及び新ジョブ・カード作成支援を通じて、
求職者の目標や希望を明確化し、希望するゴール(就職、就職のための訓練受講等)の実
現を支援することです。
そのためには、過去の職務経歴を棚卸しすることにより、興味・関心や価値観等を明確化
するとともに、就職をするまでのロードマップ、たとえば必要なスキルや資格の習得、必
要な情報の収集、就職活動の進め方などについて、どのように実施していくのかといった
ことなどを、求職者とともに確認していくことが求められます。
それとともに、企業や訓練機関に提出する新ジョブ・カードが訴求力のあるものになる
よう、適切な助言が必要となってきます。
これら一連のキャリアコンサルティングを実施するうえで重要なことは、求職者が主体
であり、ジョブ・カード作成アドバイザーが一方的に考え方や情報を押し付けないという
姿勢です。求職者に寄り添いながら、ニーズを汲み取り、その実現に向けてアシストする
という役割が求められていることを常に意識する必要があります。
なお、キャリアコンサルティングを行った経験のない人の場合には、第Ⅱ部(2) キャリ
アコンサルティングの基本的態度(26 頁)をよく読んでから演習するようにしてください。
66
求職者に寄り添いながら、ニーズを汲み取りつつ、
その実現に向けてアシストする
ロードマップの策定
◎求職者が抱えている問題、不安があればその
解決策について検討する
◎就職に必要なスキル、資格を確認し、必要に
応じて習得方法を検討する
過去の職務経歴の棚卸し
◎どのように就職活動を進めるかを検討する
◎習得した知識、技能の気づきを促す
◎やりがいを聴くことにより、興味・関心や価
値観を明確にする
新ジョブ・カードの作成支援
◎訴求力のある記述となるようにアドバイスを
する
◎求人情報や業界動向、資格の体系や試験制度
など必要な情報を提供する
フォローアップ
◎就職活動中も必要に応じて、ジョブ・カード
の再作成や、活動計画の策定、情報提供など
の支援を実施する。
◎訓練受講中も進捗に応じて、訓練成果の確認、
今後の目標設定や就職活動に向けたキャリア
コンサルティングを実施する。
67
■ロールプレイ演習の要領
役割の
分担
3人1組のグループを作り、ジョブ・カード作成アドバイザー役、クライエント役、
オブザーバー(観察者)役を決めます(ケースごとに役割を入れ替えるようにしてく
ださい)
。
■注意■
役 作 り
役割分担決定後、各ケースの設定について説明書きがあります
ので、よく読み込んで役作りをします。説明書きは、キャリアコ
ンサルタント役用とクライエント役用とがありますので、自分の
演じる役に応じて説明書きを読み込んで、ロールプレイに備えま
す。
●ジョブ・カード作成アドバイザー役が読み込むもの
・
「ジョブ・カード作成アドバイザー役用説明書き」
●クライエント役が読み込むもの
・
「クライエント役用説明書き」
・
「新ジョブ・カード様式1~3」
●オブザーバー役が読むもの
・
「キャリアコンサルティングの基本的態度」
(Ⅱ部 24 頁)
・別紙「面接ロールプレイ観察メモ」に目を通し、チェック項
目等を確認しておくようにします。
ロールプレイの実施
●ジョブ・カード作成アドバイザー役
新ジョブ・カードに記載されている内容などについて質問
をしながら、キャリアコンサルティングを進めてください。
●クライエント役
ジョブ・カード作成アドバイザーに質問された内容を中心
に回答するようにして、一方的に話し過ぎないように注意し
てください。説明書きに書いていないことは、アドリブで答
えていただいて結構です。
●オブザーバー(観察者)役が読むもの
ジョブ・カード作成アドバイザー役が適切なキャリアコン
サルティングを行えていたか、
「面接ロールプレイ観察メモ」
でチェックをしてください。
「キ ャリ ア コ
ン サ ル ティン
グ実 施 者 の 記
入欄」の記載
ロールプレイ終了後に、「キャリアコンサルティング実
施者の記入欄」を記載します。クライエント役、オブザー
バー(観察者)役の人も、ジョブ・カード作成アドバイザ
ー役の立場で記載してください。
それぞれの立場から良かった点、悪かった点の振り返り
68
ジョブ・カード作成
ア ド バ イ ザ ー役 の 人
は ク ラ イ エ ント 役 用
の 説 明 書 き を読 ま な
いようにします。
■補足■
制 限 時 間 内に キ ャ
リ ア コ ン サ ルテ ィ ン
グ が 終 了 し なく て も
構いません。逆に、制
限 時 間 内 に キャ リ ア
コ ン サ ル テ ィン グ が
終 了 し て し まう 場 合
は、まだ十分にキャリ
ア コ ン サ ル ティ ン グ
を 行 え て い ない 可 能
性があります。あきら
め ず に 制 限 時間 一 杯
ま で 行 う よ う努 力 し
てください。
ロールプレイ演習1
ここでは、訓練受講前の新ジョブ・カード作成が必須となっている「日本版デュアルシ
ステム」と「有期実習型訓練」の受講希望者を対象にしたケースをあげています。講師の
指示に従い、いずれかのケースについて演習をしていただきます。
なお、公共職業訓練(学卒者訓練、施設内訓練、委託訓練)
、求職者支援訓練等の訓練受
講希望者に対するキャリアコンサルティングについても基本的には同じ要領で実施できる
ので覚えておいてください。
演習①
日本版デュアルシステムへの応募を検討するケース
■訓練への応募を検討するロールプレイ演習方法の概要
日本版デュアルシステムへの応募を検討するキャリアコンサルティングを今田就次さん
のケースで行います。このケースは、ハローワークにおける訓練開始前の送り出し場面で
の新ジョブ・カード作成支援を想定しています。各自の役割を決め、ジョブ・カード作成
アドバイザー役、クライエント役は、それぞれの説明書きを読み込んだうえで、演習を始
めます。また、演習終了後、各自、
「様式1キャリア・プランシート」の<キャリアコンサ
ルティング実施者の記入欄>を記入してください。
◆演習の前提条件◆
今田就次氏(28 歳)は東都大学経済学部を卒業したが、在学中の
就職活動が実らず、フリーターとなって6年が経とうとしています。
今回は、ハローワークで「日本版デュアルシステム」の「短期課程活
用型」を知り、応募を考えています。自分なりに努力をしてジョブ・
カードを書き上げ、あなたのもとに相談に来ました。今回が初めての
キャリアコンサルティングです。
※キャリアコンサルティング実施時期:平成 27 年 10 月の設定
ジョブ・カード作成アドバイザー役用 説明書き
◆クライエントのプロフィール
○今田就次、28 歳、男性
○大学卒業後、6年間フリーター
○真面目そうではあるが、少し暗そうな印象。ボソボソと話します。
◆キャリアコンサルティングのポイント
自信が持てなかったり、やる気の出ない求職者に対し、職務経歴の棚卸を中心にこれま
69
での経験を振返り、習得してきた知識や技能に気づかせ、前向きになるようキャリアコン
サルティングを進めます。
◆応募を考えている訓練
○日本版デュアルシステム「短期課程活用型」IT システム企画科
○6カ月間の通学訓練、
○座学内容:JAVA、XML 等のプログラミングを基礎から学ぶ
○企業実習:西東京システム株式会社
(説明書きここまで)
70
クライエント役用 説明書き
◆クライエントのプロフィール
○今田就次、28 歳、男性
○大学卒業後、6年間フリーター
○真面目そうではあるが、少し暗そうな印象。ボソボソと話します。
*詳細は新ジョブ・カードの記載内容を参照
◆性格・興味・関心、気持ち等
○精密機械の組み立てのような細かい仕事への関心が強い人です。
○人との接触に関しては苦手意識を持っており、社会や周囲の人間への関心が極めて低
いタイプです。
○こだわりの強いタイプです。
○アルバイトで稼いだ給料のほとんどを趣味のパソコン周辺機器やゲームソフトの購入
につぎ込んでストレス解消をしています。
○フリーターでいることに対する両親からの風当たりも強く、日増しにプレッシャーと
なり、気持ちだけが焦っています。
○日本版デュアルシステム「短期課程活用型」は、概ね 40 歳未満の「就職活動を続けて
いるが安定的な就業につながらない」者が対象であると聞いて、自分も対象になるも
のと思い、具体的な訓練内容を知りたいと考えています。
○現在、就職活動はしているものの、気持ちが前向きにならず、精力的には取り組めて
いません。
○在学中の就職活動について
・コンピューターシステム会社を中心に、20 社程度受けたが、全て面接で不合格にな
っています。
・それに対する本人の気持ちとしては、
「僕は話が下手だから、人事の人は僕のことを
暗い人間と感じたんだと思う。子どものときからクラスのみんなに“ネクラ”といわ
れていたので、そのことはショックではなかったが、人事の人は外見で判断して僕の
志望動機や気持ちなんか聞こうともしなかったことに腹が立った。就職する前から負
け組のレッテルを貼られてしまったように感じて、就職なんてどうでもいいと思うよ
うになった」
◆応募を考えている訓練
○日本版デュアルシステム「短期課程活用型」ITシステム企画科
○6カ月間の通学訓練
○座学内容:Java,XML等のプログラミングを基礎から学ぶ
○企業実習:西東京システム株式会社
*今田就次さんが書き上げたジョブ・カードは 72~74 頁
(説明書きここまで)
71
様式1【今田就次さんのキャリア・プランシート】
72
73
様式2【今田就次さんの職務経歴シート】
74
演習②
有期実習型訓練への応募を検討するケース
■訓練への応募を検討するロールプレイ演習方法の概要
有期実習型訓練への応募を検討するキャリアコンサルティングを山本律子さんのケース
で行います。このケースも、ハローワークにおける訓練開始前の送り出し場面でのジョブ・
カード作成支援を想定しています。各自の役割を決め、ジョブ・カード作成アドバイザー
役、クライエント役は、それぞれの説明書きを読み込んだうえで、演習を始めます。また、
演習終了後、各自、
「様式1キャリア・プランシート」の<キャリアコンサルティング実施
者の記入欄>を記入してください。
◆演習の前提条件◆
山本律子さんは、6 年前に出産を機に仕事(都市銀行の窓口業務)
を辞めてから、これまで専業主婦をしていました。昨年、離婚し、現
在就職活動中です。ハローワークでジョブ・カード制度の対象訓練で
ある有期実習型訓練の求人を見て、応募を考えています。応募の前に、
就職をするにあたっての不安もあることから、その相談と、ジョブ・
カードの記入内容についてのアドバイスをしてほしいと、あなたのも
とに相談に来ました。
※キャリアコンサルティング実施時期:平成 27 年 10 月の設定
ジョブ・カード作成アドバイザー役用 説明書き
◆クライエントのプロフィール
○山本律子、29歳、女性
○前職(都市銀行の窓口業務)を辞めてから 6 年間、専業主婦
○昨年の夏に離婚。小学 1 年生の息子が1人
◆キャリアコンサルティングのポイント
不安の解消に努めるとともに、新ジョブ・カードが訓練受講、就職に結びつく訴求力の
ある内容になるように、適切なアドバイスを行うようにします。
◆応募を考えている企業
○錦屋友禅本舗株式会社(募集職種:経理、4カ月間の有期雇用、訓練終了後の継続雇用
あり)
○座学内容:ビジネス総合専門学校にて、経理実務に必要な知識を計 10 日間学ぶ
(説明書きここまで)
75
クライエント役用 説明書き
◆クライエントのプロフィール
○山本律子、29 歳、女性
○前職(都市銀行の窓口業務)を辞めてから6年間、専業主婦
○昨年の夏に離婚。小学1年生の息子が1人
*詳細はジョブ・カードの記載内容を参照。
◆現在の状況・気持ち
○過去の貯蓄を切り崩しながら、現在は最低限の生活はできています。しかし、この先の
余裕はないことから、何とか職に就きたいという思いが強くなっています。
○簿記や経理関係の経験を活かして正社員としての就職先を探していますが、以前のよう
に一般事務というような求人が少なく、難しい状況にあります。
○子育てがあるので、なるべく定時に帰宅できる仕事を探しています。
○6年間のブランクに対して不安はありますが、昨年、専門学校でパソコンのスキルを学
んだことで、若干、自信がつき始めたところです。
◆応募を考えている企業
○錦屋友禅本舗株式会社(募集職種:経理、4カ月間の有期雇用、訓練終了後の継続雇用
あり)
○座学内容:ビジネス総合専門学校にて、経理実務に必要な知識を計 10 日間学ぶ。
*山本律子さんが書き上げたジョブ・カードは 77~81 頁
(説明書きここまで)
76
様式1-1【山本律子さんのキャリア・プランシート】
77
78
様式2【山本律子さんの職務経歴シート】
79
様式3-1【山本律子さんの職業能力証明(免許・資格)シート】
80
様式3-2【山本律子さんの職業能力証明(学習歴・訓練歴)シート】
81
ロールプレイ演習2
■ロールプレイの演習方法の概要
ここでは、求職者支援訓練の受講希望者を対象にしたケースを学びます。この演習では、
下記の「演習の前提条件」にある近藤雅子さんのケースについて、通常キャリアコンサル
ティングを行うタイミングである①求職者支援訓練スタート時、②求職者支援訓練の中盤、
③求職者支援訓練修了間近の3ステップのうち、②のケース(中盤)についてロールプレ
イを行います。
ロールプレイ終了後、ジョブ・カード作成アドバイザーが訓練中盤における内容を「様
式1-1キャリア・プランシート」の<キャリアコンサルティング実施者の記入欄>へ記
入します。
◆演習の前提条件◆
近藤雅子さんは結婚を機に7年ほど勤めた会社を辞めて、家庭中心
の生活を過ごしてきた。パートタイマーとして働いていたが、事情も
変わったことから以前のように正社員として働きたいという想いが
日々強くなり、求職者支援訓練を受講することにした。
※キャリアコンサルティング実施時期
求職者支援訓練スタート時:平成 27 年 10 月 5 日の設定
訓練中盤
:平成 27 年 11 月 15 日の設定
訓練修了間近
:平成 27 年 12 月 20 日の設定
82
演習③
求職者支援訓練のケース
ジョブ・カード作成アドバイザー役用 説明書き
◆クライエントのプロフィール
○近藤雅子、33 歳、女性
○結婚を機に、義父の介護をするため株式会社霞ヶ関商会の秘書業務(正社員)を辞め
て、家庭中心の生活を送ってきたが、義父が施設に入所し、自分の時間を今まで以上
もてるようになりました。子どもはいません。
◆キャリアコンサルティングのポイント
a.訓練スタート時
(※この演習に先立ち、下記のポイントに留意したキャリアコンサルティングを訓練スタート時に行っ
ている)
○意欲をもって入学していることを前提に、訓練の目的、習得を目指す知識・技能を
再確認しながら動機づけをします。
○不安感も併せ持つことを理解した上で、今後の成長への期待を滲ませるように話す
ようにします。
○将来像が描かせられるようであれば、話させます。ただし、無理強いはしないで、
次回の宿題にすることでもいいでしょう。
b.訓練中盤(当演習)
○訓練による知識・技能の習得状況・経過を確認します。習得度合が不十分な場合は、
その原因について考え、習得に向けて取り組むべきことを整理するようにします。
○途中の段階で、いろいろな悩みや問題事項を聴き出します。
○意欲が持続している場合もあれば、意欲が減退している場合もありますので、状況
把握をした上で、本人の訓練への対応姿勢に気づかせるようにします。
○本人の強みや良さに気づかせ、チャレンジする姿勢を醸し出すようにします。
○将来像が描かせられるようであれば、話をさせます。ただし、無理強いはしないで、
終了するまでに考えてみようね、などとそれとなく促しておくことでもいいでし
ょう。
○習得した知識・技能を活かした職種の探索・絞り込みを始め、具体的な労働条件、就
業場所等のイメージをもつようアドバイスします。
(説明書きここまで)
83
クライエント役用 説明書き
◆クライエントのプロフィール
○近藤雅子、33 歳、女性
○結婚を機に、義父の介護をするため株式会社霞ヶ関商会の秘書業務(正社員)を辞め
て、家庭中心の生活を送ってきたが、義父が施設に入所し、自分の時間を今まで以上
もてるようになりました。子どもはいません。
◆訓練受講までの経緯、家族状況、性格等
○就職をしたいという想いが強い一方で、パソコンスキルが乏しいため、本当に就職で
きるのかと不安・焦りを感じ、ハローワークに相談。求職者支援訓練の基礎コース・
ITスキル基礎科に応募し、入学しました。
○正社員として働いていた秘書業務はやりがいを感じていました。今後も秘書業務や事
務の仕事をしたいと考えています。営業や企画など、いままで経験したことのない仕
事は難しいのではないかと考えています。
○夫は、近藤雅子が仕事をすることに理解を示しています。
○几帳面な性格です。
◆受講している求職者支援訓練の内容
○日本パソコンスクール学院の基礎コース・ITスキル基礎科(3カ月間)
○実技:エクセル基礎・応用、データベース基礎・応用、アクセスビジネス活用など
○学科:ビジネスマナー、就職支援など
◆クライエントのスタート時の気持ち
「ハローワークで仕事探しをしていたときに、今の時代はパソコンができないと企業で
の勤務は難しいと係の人に言われました。自分でも昔の知識・技能しかないことに気づい
ていたことから、色々と相談をしました。求職者支援訓練という制度ができているので、
パソコンの知識・技能を学び、実務も経験できる制度があるということで本学を知りまし
た。何から勉強をしていいのか全く分からない状況ですが、やる気だけは十分ありますの
で、しっかりと学びたいと思います」
◆クライエントの現在の気持ち
「入学して1カ月半が経ちました。最初は戸惑うことばかりでしたが、ご指導のお陰で
ようやく他の方に追いつけるようになりました。そうはいってもまだまだ自信が持てず、
自分には向いていないのではないか、というような気持ちが生ずる場合もあります。しか
し、パソコン技術を身につけていなければ仕事を得るのが難しいという現実を考え、気を
取り直して頑張っています。この後の応用を学ぶことで更に興味が湧いてくるとの講師の
お話があり、ぜひそうなるようにしたいと考えています。就職については、厳しい雇用情
勢である旨の説明がありましたので、その覚悟でこれからの資格等に挑戦して、希望する
職業に就けるようにしたいと思います」
(説明書きここまで)
84
様式1-1①【近藤雅子さんのキャリア・プランシート(訓練スタート時)】
85
様式1-1②【近藤雅子さんのキャリア・プランシート(訓練中盤)】
86
87
様式2【近藤雅子さんの職務経歴シート】
88
様式3-1【近藤雅子さんの職業能力証明シート】
89
3.実習・演習の解説
[実習①]
「様式2職務経歴シート」の効果的な記載方法(結城二郎さんのケー
ス)(57~60 頁)の解説
「様式2職務経歴シート」の作成においては、これまでの職務や仕事を通じた経験を振
り返るなかで、相談者自身が自己理解を深めて、自己肯定感をもてるよう支援していくこ
とが大切です。
自己理解を深めることは、これからのキャリアを考えていく出発点になるものです。正
しい自己理解により、現在の自分ができること、思い描く自分の将来像、そしてそのため
に何をしなければならないかを明確にするとともに、自分の知識や経験、性格、価値観と
いった「自分らしさ」や「自分の持ち味」を強みとして、相談者が前向きな姿勢となるよ
う促していくことがキャリアコンサルティングのポイントになります。また、職務経歴シ
ートは、求職活動にも活用されることを念頭において、訴求力のある記述内容となるよう
支援していきます。
結城二郎さんの初回面談時の「様式2職務経歴シート」と2回目面談時の「様式2職務
経歴シート」とを比べた場合、ジョブ・カード作成アドバイザーからの助言・支援には以
下のようなものがあったと考えられます。
(1)様式の書式に応じた正式・正確な記述
○霞ヶ関カメラ(株)製造1課 アルバイト
→霞ヶ関カメラ株式会社 製造1課
(アルバイト)
○東西マート
→東西マート株式会社
霞ヶ関店
(アルバイト)
実際に求職活動に活用されることを念頭において、会社名などの固有名詞については略
称を使わず、正式名称で記述するようにし、また、この様式では雇用形態を括弧書きする
ことになっていますので、それに従って記述するよう助言があったものと考えられます。
90
(2)「職務内容」欄、
「職務の中で学んだこと、得られた知識・技能」欄の記述内容の追加・
充実
キャリアコンサルティングによる丁寧な振り返りによって、①新たな職務経歴の追加、
②職務の内容の充実・具体化、表現方法の的確化・普遍化、③職務のなかで学んだこと(知
識・技能)の気づき、といったことへの支援があったものと考えられます。
(3)新たな職務経歴の追加
○平成 26 年 12 月~平成 27 年2月
部門
社会福祉法人さくらだ
調理飲食
(アルバイト)項の追加
職務経歴を年月順に追ってみて、空白期間がある場合にはその期間について相談者に質
問してみる必要があるでしょう。その結果、職務経歴として記載すべきものがあれば追加
するようにします。また、一勤務先の勤続期間が長い場合には、職務内容が大きく変わっ
ていることもあります。その場合には、項を改めて記述することも検討するようにします。
(4)職務の内容の充実・具体化
○カメラ工場の検査
→精密機械工場における製造補助
(製品の点検、組み立て)
○コンビニ
→コンビニエンスストアにおける接客、レジ打ち、在庫管理
職務内容が漠然としている場合には、質問をするなどして、具体的な職務内容について
話をしてもらい、的確に記述するよう支援します。その際、すでに記載されている職務以
外にも職務を行っているようであれば、出勤から退社するまでの1日の仕事内容を話して
もらうようにし、記述すべきものが漏れていないかを確認するようにします。また、1日
のルーチンワークでない場合は、時期ごとに仕事内容を話してもらうようにするのもよい
でしょう。
なお、職務の記述にあたって、特に職務経験の少ない若年者などの場合には、複数の課
業から成る職務のまとまりが把握できなかったり、その的確な表現方法が分からなかった
りすることがありますので、そうした場合にも必要に応じて支援する必要があります。
91
(5)職務のなかで学んだこと(知識・技能)の気づき
○特になし
→製品の点検、組み立て等を正確に素早く行う力を身につけること
ができた。
アルバイトの新人に対して仕事を教える担当となり、数十人の新
人に対して責任を持って仕事を教えることができた。
○チームの中で協力して迅速に作業する力を身につけることができ
た。
○レジ打ち
→接客マナー、在庫管理にかかる基本的な知識を身につけることが
できた。
キャリアコンサルティングを通じて、学んだこと、得られた知識・技能について、多様な角
度、話題から気付きを得られるよう支援していくことが重要になります。
特にアルバイトやパートタイマーなどの雇用形態で働く人の場合、その勤務先での職務
経験について「誰でもできることしかやっていない」と決めつけて、記述する知識や技能
はないものと考える傾向があります。このため、きめ細かなキャリアコンサルティングの
なかで、経験した職務の意義やそのなかで培った知識や技能に気づかせ、
「職務の中で学ん
だこと、得られた知識・技能」欄への記述を支援していく必要があります。
また、この欄の記述は、単に習得した知識・技能ばかりでなく、職務を遂行するうえで
必要となる上司や同僚、部下や後輩といった職場における人間関係も含めた広い意味での
働く能力の視点から、学んだことや習得したことについて記述するよう支援していくこと
が求められます。
[実習②]
「様式1-1キャリア・プランシート」の効果的な記載方法(結城二
郎さんのケース)(61~64 頁)の解説
「様式1キャリア・プランシート」は、求職活動や能力開発のための訓練受講といった
今後の就業に関する目標・希望について記述するものです。長期のキャリア・プランの記
述というよりは、現状を踏まえたうえで、当面の課題や能力開発の目標について具体的に
記載していきます。結城二郎さんの初回面談時の「様式1キャリア・プランシート」と2
回目面談時の「様式1キャリア・プランシート」とを比べた場合、ジョブ・カード作成ア
ドバイザーからの助言・支援には以下のようなものがあったと考えられます。
92
(1)自己理解を深める
○カメラ会社のアルバイト経験から、工場で働くことが自分の性格に
あっていると思った。
→これまでの職業経験の中では、アルバイトではあったが霞ヶ関カ
メラ株式会社において製造補助に従事し、自分は特に製造関係の
職務に関心が強いことを認識した。
「工場で働くことが自分の性格にあっていると思った」という記述について、キャリア
コンサルティングのなかで、
「一口に工場で働くといってもどんな仕事が自分の性格に合っ
ていると思ったのですか?」といった質問がなされたと考えられます。これにより自己理解
を深め、
「自分は特に製造関係の職務に関心が強いことを認識した」と明確になりました。
また、その根拠として、具体的に「霞ヶ関カメラ株式会社において製造補助に従事」をあ
げています。
(2)ポジティブ・リフレーミング(ポジティブに捉え直すこと・思い込みの修正)
○カメラの会社は上司が替わって人間関係のために辞めてしまった
が、人間関係や接客については自信がないので、製造関係で正社員
として働きたい。
→その後、正社員として同業種における専門的な技能を身につけた
いと考えていたが、技能を向上させる機会に恵まれず就職に結び
つかなかった。このため、有期実習型訓練のCAD設計補助コー
スを受講することを希望している。
初回面談時の「様式1キャリア・プランシート」は、「カメラの会社は上司が替わって人
間関係のために辞めてしまったが、人間関係や接客については自信がない」とありますが、
「どうして人間関係や接客については自信がないと思っているの?」
「カメラ会社の上司と
はたまたま、そりが合わなかったということではないのですか?」など、職場の人間関係
の不満などを思い切り話してもらい、これを傾聴したうえで、人間関係や接客に対する苦手
意識が結城さんの思い込みによるものではないかをよく考えてもらったのではないかと思
われます。これによって、
「技能を向上させる機会に恵まれず就職に結びつかなかった」と
いう表現に変わっています。
また、初回面談時の「様式1キャリア・プランシート」では「製造関係で正社員として
働きたい」とありますが、この意思を肯定的に受け止めたうえで、「正社員として働くため
にはどうしたらいいと思っていますか?」など、そのためには何が必要かを具体的に考え
てもらい、その結果「有期実習型訓練のCAD設計補助コースを受講することを希望して
93
いる」という具体的な訓練受講の希望に結び付いたものと考えられます。
さらにキャリアコンサルティングを通じて、自分の「強み」を理解し、人間関係面につ
いてもカメラ会社での新人への指導経験を踏まえてポジティブな姿勢に変わっています。
これにより、2回目の面談時には「これまでの経験から業務を迅速に、正確に進めること
について自信があり、新人に対して業務を教える担当となる等、責任を持ってこなすこと
ができた。今後はさらに専門的な技能が必要とされるCAD設計補助にかかる訓練を受講
して、知識及び技能を深めていきたい」との記述になっています。
[実習③]
「様式1キャリア・プランシート」におけるキャリアコンサルティン
グ実施者の記入欄の効果的な記載方法(結城二郎さんのケース)(65 頁)の解説
「様式1キャリア・プランシート」の「キャリアコンサルティング実施者の記入欄」へ
記載する例としては、それぞれ以下のようなものが考えられます。
「様式1キャリア・プランシート」
キャリアコンサルティング実施者の記入欄
記入例(初回面談時)
当人は、ハローワークで紹介された職業能力形成プログラムの有期実
習型訓練「CAD設計補助コース」に興味を示し、今回キャリアコン
サルティングを受けたものである。今回は学生生活や職場生活につい
ての振り返りを通して、自らの興味関心、強み、業務知識とスキル等
の洗い出しと、設計補助業務関連の仕事についての理解を深めた。
次回までに、棚卸した職務内容、身につけた知識・技能を再整理し
記入しなおすことを約束した。また、就業することを踏まえ、何に関
心があるか、何ができそうかも考えてきてもらうことにした。
訓練受講の見極めについては、次回行うことが妥当である。
「様式1キャリア・プランシート」
キャリアコンサルティング実施者の記入欄
記入例(2回目面談時)
すべての職歴を詳細に棚卸し支援することにより、関心の強い職務
を絞り込みすることができた。また、今までの職歴を通じて「強み」
や「自信」も認識することができた。就業に当たっては、関心のある
ことに挑戦し専門性をもつことが大切であることも共有できた。
キャリアコンサルティングを通じ CAD 設計という職種に挑戦するこ
とを確認でき、それに該当する訓練の絞り込みを行うことができた。
就業に関する一定の基礎的能力(職務規律の遵守、チームワークの
大切、仕事の進め方における正確性と迅速性の重要さなど)は有して
いると考える。一層コミュニケーション力を養うと共に今後は特に専
門的能力の習得が課題と思われる。第一ステップとして有期実習型訓
練の CAD 設計補助コースへの参加に対する強い希望を確認した。関心
度合いが高く、職歴を確認したところ職業能力形成機会に恵まれない
者と認められることから受講は可能と判断する。
94
[演習①]日本版デュアルシステムへの応募を検討するケース(今田就次さん)
(69~74 頁)の解説
日本版デュアルシステムへの応募を検討するケース(今田就次さん)でのキャリアコン
サルティングのポイントとしては、以下のような点があげられます。
(1)意欲的でない面をどのように動機付けするかの支援
①
自己理解のための支援(強みの理解)
「人との接触に関して苦手」発言→働くことの意義、コミュニケーション能力の必要性、
能力をどう磨くかについて話し合います。具体的には、なぜフリーターを続けてきたかに
ついて、キャリアコンサルティングを通じて整理しながら話し合います。そのなかから自
己概念を明らかにしてもらいます(例:自己理解のための「キャリア・アンカー(才能・
能力、動機・欲求、価値・態度)
」のツールを活用)。強みを引き出せたら、ジョブ・カー
ド作成アドバイザーはその強みを明確化して本人に伝え、評価・激励します。プラス思考
で考える状況になるよう支援します。
趣味やボランティアなどを通じた「仕事以外の経験」についてもさらに引き出します。
この面でも「強み」があれば引き出し、前向きにさせます。
②
自分を肯定的に受け止め、課題を整理できるように支援
20 社に挑戦したことを、まず評価し、自己肯定感をもたせます。また、自己否定をされ
たと受け止めているので、不採用ということが人格を否定しているわけではないことを理
解させる必要があります。一方で、次につながるように、自分の不足していた点や問題点
について分析するよう促します。採用面接とはどういうものか、基本に立ち返りながら一
緒に考え、再チャレンジする際の課題を明らかにします。
③
仕事理解のための支援
メーカーの品質管理を希望していますが、このような職務について詳細に現実の業務内
容や役割を調べさせます(自分の能力とのギャップを正確に理解させる→「日本版デュアル
システム」受講のインセンティブを高める)。知人に同様の仕事をしている人がいれば、直
接会って話を聞くことも勧めます。知人が見当たらぬようであれば、可能であれば、ジョ
ブ・カード作成アドバイザー自ら紹介することも考えます。
(2)「様式2 職務経歴シート」の引き出し中心に支援
①
職務内容の整理
「様式2職務経歴シート」はフリーター時代の職務内容をできるだけ詳しく引き出しま
す。その際、自信をもって取り組んだ仕事から聴きだすのも効果的な方法です。どのよう
な仕事でも、きちんと実務をこなしていたことの証を明らかにすることは、本人のこれか
らの仕事選びにおいても、強みや適性につき自己理解を深める上でも重要です。本人が“当
たり前”と思っていることでも重要なキャリアが隠れている場合もあり、見逃さないよう
95
にします。引き出し後には、表現方法を具体的にアドバイスします。
(引き出し例)スーパーの仕事であれば、1 日を朝出勤時から丁寧に語ってもらい、具体的な職務内容や本
人の役割を引き出します。
②
訴求力のある書き方をアドバイス
「職務の中で学んだこと、得られた知識・技能など」に書かれている表現では、職務経
歴を語るには程遠いといえます。今までの職務経歴を踏まえ、熱意をもって意欲的に取り
組んだこと、他者から評価されたこと、チームワークで何かを成し遂げてきたこと、忍耐
力を養ったこと、人間関係づくり(コミュニケーション力強化)で工夫したことなどを引
き出します(『新ジョブ・カード制度編』参考資料1-3に掲載した「経験能力評価基準」
もツールとして活用できます)
。キャリアコンサルティングの過程では些細なことでも努力
したことを評価し励ましながら進めます。このままでは、積極的に仕事に取り組んだ姿が
感じ取れないため、引き出し後には、表現方法を具体的にアドバイスします。
(例)「ものごとは手順が大切である」→「マニュアルを順守する重要性を学ぶ」
「単純作業で気楽だが、自分で工夫しないと飽きてしまうこと」→「不良品事例を念頭に作業マニュア
ル順守及び安全マニュアルの順守の重要性を学ぶ」
「様式1キャリア・プランシート」
キャリアコンサルティング実施者の記入欄
記入例
もともと IT 分野への興味が強かったこともあり、日本版デュアルシ
ステム「短期過程活用型」の IT システム企画科で訓練を受け、スキル
の習得を目指すことになった。
(その他特記事項)
・正社員としての勤務経験が乏しく、能力形成機会に恵まれなかっ
たと認められる。
・正社員として働く意欲があり、知識・技能を磨く意志も強い。
[演習②]有期実習型訓練への応募を検討するケース(山本律子さん)(75~81
頁)の解説
有期実習型訓練への応募を検討するケース(山本律子さん)でのキャリアコンサルティ
ングのポイントとしては、以下のような点があげられます。
(1)キャリアの棚卸と「仕事と子育て両立」の整理
①
スキルの棚卸を支援
仕事を 12 年離れていたが、社会的な適応性や職業能力としての基本スキルが鈍っていな
96
いことを引き出すことがポイントです。特に正社員として働いた5年半の基本スキルを整
理します。そのためには、銀行員時代に培ったもので、現在も活用できる実務経験、実務
能力を引き出します(『新ジョブ・カード制度編』参考資料1-(3)に掲載した「経験能力
評価基準」
(P.101)をツールとして活用できます)
。
また、基本的スキルのほかに、ブラッシュアップすれば戦力になりうる能力がないか話
し合います。
②
前向きな取り組みを評価する
ブランク期間中のパソコンスキルを学んだ点を評価します。
③
棚卸の幅を広げる
ブランクの期間、主婦として母親として取り組んだことを聴くことにより「長所」や「強
み」を引き出し、今後の職業生活に活かせるものがないかを一緒に考えます(趣味を通じ
て培ったこと、PTA活動を通じて培ったこと、町内会の行事企画に参加して培ったこと
など)
。それによって協働性(チームワーク)等を際立たせることによりブランクを求人側に
感じさせぬよう、いかに印象付けるかを話し合い支援します。
④
求職者が抱えている問題、不安を整理する
子育てとの両立について、求人先に質問されてもきちんと応えられるようキャリアコン
サルティングを通じ整理させるようにします。
(2)ジョブ・カードにおける問題提起とアドバイス
①
職務経歴欄シートにPR材料にできることを書き出せるよう支援
「様式2 職務経歴シート」の職務内容の記載が弱いといえます。窓口業務や審査部での
職務内容をさらに詳細に引き出すことが必要です。異なる職務を経験していれば、別欄に
記入することも提案します。「仕事を通じて学んだこと、得られた知識・技能」も不十分で
あり、より一層の引き出しが必要です。
「資格・免許」欄を見ても「銀行業務検定」で幅広
い銀行業務の基本を学んでおり、もっとアピールできることがあるはずです。
②
求人側の立場の理解
訓練後に、正社員としての採用を希望しているのであれば、
「正社員として働くことの意
味」を、公私ともに環境が変化していることを踏まえ、一緒に整理しながら共有すること
が重要です。求人側の立場を理解することをアドバイスします。
「様式1 キャリア・プランシート」
キャリアコンサルティング実施者の記入欄
記入例
・有期実習型訓練の錦屋本舗の求人票の対象であり、本人の強い希望
も確認できた。
97
[演習③]求職者支援訓練のケース(近藤雅子さん)(83~89 頁)の解説
演習③では求職者支援訓練の訓練中盤におけるキャリアコンサルティングを取り上げま
したが、以下では求職者支援訓練の a.スタート時、b.中盤(演習②におけるケース)、c.訓
練終了間近
の各段階におけるキャリアコンサルティングのポイントについて解説します。
a.求職者支援訓練スタート時
求職者支援訓練スタート時のキャリアコンサルティングのポイントとしては、以下のよ
うな点があげられます。
(1)仕事意識を膨らませる
まずは自分なりに考えて記入してきたことを認めます。文章量が少なかったり、具体性
に欠けた内容であったとしてもヤル気なく適当に記入したとは限りません。棚卸がしっか
りとできていなかったり、そもそもこのような文章を書き慣れていないことが原因だった
りすることもあるので、この段階では新ジョブ・カード作成の直接的な指導を行うよりも、
本人の考えている将来像などについて口語で自由に語ってもらい、キャリア意識を膨らま
すことが効果的といえます。
(2)訓練受講の動機付けを行う
どのような職種に就きたいのか、そのためにどのようなスキルを求職者支援訓練で身に
つけるのかを明確にするよう促し、訓練受講のモチベーションを一層高めるようにします。
(3)ラポール(信頼関係)を構築する
コンサルタントとクライエントのラポール(信頼関係)を良好に築くためには、スター
ト段階が肝心です。クライエントがどのような不安を抱えているのか、どのような価値観
をもっているのかじっくりと聞き出し、クライエントを理解することが信頼構築の一歩と
なります。
b.求職者支援訓練中盤
(1)職務経験をもとにした棚卸を支援
企業側に提出することとなった場合には訴求力のある新ジョブ・カードとなるように、
「様式2職務経歴シート」をもとにして職務内容をできるだけ詳しく聞き出し、これまで
の職務経験から身につけた能力・スキルを本人にも自覚をさせるようにします。
(2)身につけてきた能力をアピールできるようアドバイス
身に付けてきた能力を就職してからどのように活かすことができるのかを記入できれば、
企業に対するアピール効果が高まります。いきなり文章にすることが難しいようであれば、
キーワードとなる単語やフレーズを書き出して、整理してから文章にすることを勧めるの
も1つの方法です。
(3)能力形成のステップの明確化
求職者支援訓練によってどのようなスキルを学んでおり、どのようなことができるよう
98
になり、今後の課題はどのようなものであり、そのためにはどのような努力が必要なのか
を明記するようアドバイスし、能力形成のステップを自覚するよう促します。
(4)どのような職業・職務に就きたいかの明確化
どのような職業・職務につきたいか価値観をもとに具体化します。これまでの職業経験
が乏しい求職者の場合、職業・職務のイメージが広がらないので、インターネットなどの
職業情報ツールを紹介するのも効果的です。
「様式1キャリア・プランシート」の<キャリアコンサルティング実施者の記入欄>へ
近藤さんから求められてコメントを記入する場合には、下記のような内容が考えられます。
「様式1キャリア・プランシート」
キャリアコンサルティング実施者の記入欄記入例
本人の努力により、着実にパソコンスキルを習得している。今後は、
実際の職場を想定し、どのような場面で、どのようなスキルの活用が
効果的か、自分で考えながら演習に取り組むことで力がついていくこ
とをアドバイスした。
希望する職種を明確にするため、職歴の棚卸を更に深めて、自分の
興味や強みについて、じっくりと考えるように促した。
就業を希望する職務について、次回面談までに自分なりに絞り込ん
でみることを約束した。
c.求職者支援訓練終了間近
(1)求職者支援訓練での習得スキルを文章化するようアドバイス
求職者支援訓練でどのようなスキルを習得し、どのような業務に役立てることができる
のか具体的に記載するようアドバイスします。
(例)
「ITスキルを向上させてきた」⇒「表計算から図表の作成まで統計資料の作成に役立つITスキル
を向上させてきた」
(2)就職活動の行動計画を立てるよう支援
これから就職活動をするのであれば、具体的な行動計画を相談します。ハローワークで
の求人情報の確認、業界・業種の研究、応募書類の作成など、今後の活動について洗い出
しをして、それをどのようなスケジュールで実施していくのか、計画に落とし込みます。
(3)「様式3-2 職業能力証明(学習歴・訓練歴)シート」の記載を支援
応募先企業へ提出する可能性がある「様式3職業能力証明(学習歴・訓練歴)シート」
の<④内容等欄>について、自己アピールとして十分な記述内容となっているかを確認し
ます。不十分であればこれまでのキャリアコンサルティングを振り返り、アピールポイン
トについて表現方法も含めて話し合い、アドバイスします。
99
100