情報基礎/コンピュータ数学 写像 情報基礎/コンピュータ数学 1 / 19 1 写像とは? 2 全射・単射・全単射 3 恒等写像 4 合成写像 5 練習問題 情報基礎/コンピュータ数学 2 / 19 写像とは? 定義 2.1 A,B を集合とする.A の任意の要素が B のある 1 つの要素に対応して いるとき,その「対応」f を A から B への写像または関数といい, f : A → B と表す.このとき,A を f の定義域,B を f の値域という. f A 情報基礎/コンピュータ数学 B 3 / 19 例 2.1,問 2.1 例 :以下のような,f : R → R はすべて写像である. (1) f (x) = 10 √ (2) f (x) = x2 + x − 2 (3) f (x) = sin x + cos x また,以下の表で示された f : {0, 1, 2, 3, 4, 5} → 2{a,b,c} も写像で ある. x 0 1 2 3 4 5 f (x) {a} {a} {a, b, c} {a, b} {a, c} {b, c} 問 2.1 写像でない例をあげよ. 情報基礎/コンピュータ数学 4 / 19 像 定義 2.2 A,B を集合とし,f を A から B への写像とする.また,A′ ⊆ A とす る.このとき,以下で定義される f (A′ ) を,f による A′ の像という. f (A′ ) = {f (a) ∈ B : a ∈ A′ } f A A0 B f (A0 ) 事実 2.1 f を A から B への写像とすると,任意の A′ ⊆ A について,f (A′ ) ⊆ B . 情報基礎/コンピュータ数学 5 / 19 例 2.2,問 2.2,問 2.3 例 :f (x) = sin x のとき,像 f (R) = [−1, 1]. 以下の表で示された f : {0, 1, 2, 3, 4, 5} → 2a,b,c において, x f (x) 0 {a} 1 {a} 2 {a, b, c} 3 {a, b} 4 {a, c} 5 {b, c} 像 f ({0, 1, 2, 3, 4, 5}) = {{a}, {a, b}, {a, c}, {b, c}, {a, b, c}} である. 問 2.2,問 2.3 f (x) = sin x のとき,像 f ([0, π/2]) を求めよ. 以下の表で示された f : {0, 1, 2, 3, 4, 5} → 2{a,b,c} において,像 f ({0, 1, 3, 4, 5}) を求めよ. x f (x) 0 {a} 1 {a} 2 {a, b, c} 3 {a, b} 情報基礎/コンピュータ数学 4 {a, c} 5 {b, c} 6 / 19 全射・単射・全単射 定義 2.3 A,B を集合,f を A から B への写像とする. f が全射,単射,全単射であるとは,それぞれ以下を満たすときをいう. 全射 f (A) = B . 単射 任意の a, a′ ∈ A について,a ̸= a′ ならば f (a) ̸= f (a′ ). 全単射 全射かつ単射であるとき. f f B BA A f B A 情報基礎/コンピュータ数学 7 / 19 問 2.4 問 2.4 f : R → R を f (x) = x2 とする.f は全射であるか?また,f は単射であ るか? 問 以下の表で示された f : {0, 1, 2, 3, 4, 5} → 2{a,b,c} は,全射であるか?ま た,単射であるか? x f (x) 0 {a} 1 {a} 2 {a, b, c} 3 {a, b} 情報基礎/コンピュータ数学 4 {a, c} 5 {b, c} 8 / 19 命題 2.1 命題 2.1 A,B を有限集合とする.A から B への全単射が存在するときかつその ときに限り,|A| = |B| である. 【証明】以下の 2 つを証明すればよい. (⇒):A から B への全単射が存在するとき,|A| = |B| である. (⇐):|A| = |B| であるとき,A から B への全単射が存在する. 詳しい証明は次スライド. 情報基礎/コンピュータ数学 9 / 19 命題 2.1 の証明 【証明 (⇒):A から B への全単射が存在するとき,|A| = |B| である】 A から B への全単射 f が存在すると仮定すると, f は全射より,|A| ≥ |B| であり,単射より,|A| ≤ |B| である. よって,|A| = |B| が成り立つ. 【証明 (⇐):|A| = |B| であるとき,A から B への全単射が存在する】 |A| = |B| = s とする.一般性を失うことなく,以下のようにできる. A = {a1 , a2 , . . . , as },B = {b1 , b2 , . . . , bs } ここで,写像 f を任意の i (1 ≤ i ≤ s) について,以下のように定義する. f (ai ) = bi この f が全単射になっていることは明らかである. 情報基礎/コンピュータ数学 10 / 19 恒等写像 定義 2.4(恒等写像) A を集合,f を A から A への写像とする. このとき,任意の a ∈ A について,f (a) = a であるとき,f を恒等写像 (または,恒等関数)という. f A A 問 2.5 写像 f (x) = 1 は恒等写像か?また,写像 f (x) = x は恒等写像か? 情報基礎/コンピュータ数学 11 / 19 逆写像 命題 2.2 A,B を集合,f : A → B を全単射とする. このとき,次のような写像 g : B → A が存在する. 任意の b ∈ B について,g(b) = a.ただし,a ∈ A は,f (a) = b を満たす. 【証明】g : B → A を以下のように定義する. a ∈ A について,f (a) = b であるとき,g(a) = b. あとは,この g が確かに写像となっていることを示せばよい. f が全単射であることより,任意の b ∈ B に対して,f (a) = b を満たす 唯一の a ∈ A が存在する.このことから,B の任意の要素が A のある 1 つの要素に対応していることがわかる.これは g が B から A の写像と なっていることを意味する. 情報基礎/コンピュータ数学 12 / 19 逆写像 定義 2.5(逆写像) A,B を集合,f : A → B を全単射とする.このとき,前のスライドの命 題 2.2 を満たす写像 g : B → A を,f の逆写像(または逆関数)といい, f −1 で表す. f A g=f B A 1 B 問 2.6 f : R → R を f (x) = 2x − 1 とする.このとき,f −1 (x) を求めよ. 情報基礎/コンピュータ数学 13 / 19 合成写像 定義 2.6(合成写像) A,B ,C を集合,f を A から B への写像,g を B から C への写像とす る.このとき,g ◦ f を f と g の合成写像(または合成関数)といい,次 のように定義する.任意の a ∈ A について, (g ◦ f )(a) = g(f (a)) A x f B f (x) g C g(f (x)) 問 2.7 f (x) = x + 1,g(x) = x2 + 2x − 3 とする.このとき,合成写像 g ◦ f を 求めよ. 情報基礎/コンピュータ数学 14 / 19 命題 2.3 命題 2.3 A,B を集合,f : A → B を全単射とする. このとき,合成写像 f −1 ◦ f および,f ◦ f −1 は恒等写像となる. 【証明】f −1 ◦ f が恒等写像となることを示す. (f ◦ f −1 も同様の証明. ) A から任意の要素 a をとりだす.b = f (a) とすると,逆写像の定義より, a = f −1 (b) が成り立つ.よって, (f −1 ◦ f )(a) = f −1 (f (a)) = f −1 (b) = a 任意の a ∈ A について,(f −1 ◦ f )(a) = a が成り立つので,f −1 ◦ f が恒 等写像であることが示される. 情報基礎/コンピュータ数学 15 / 19 命題 2.4,命題 2.5 命題 2.4 f : X → Y ,g : Y → Z を全単射とする.このとき,合成写像 g ◦ f : X → Z は全単射である. 【証明】略.教科書を参照すること. 命題 2.5 f : X → Y ,g : Y → Z を全単射とする.このとき, (g ◦ f )−1 = f −1 ◦ g −1 である. 【証明】略.教科書を参照すること. 情報基礎/コンピュータ数学 16 / 19 練習問題 練習問題 1 以下の表で示された各 f : {0, 1, 2, 3, 4} → 2{a,b,c} は写像であるかないか 答えよ.写像でない場合は,その理由も答えよ. x 0 1 2 3 4 (a) f (x) {a} {a, b} {a, b, c} {b, c} ∅ (b) x f (x) 0 {a} (c) x f (x) 0 {a, b} 1 {a, b}, {a, c} 1 2 {c} 2 {a, b, c} 3 {a, b, c} 3 {b, c} 4 {b} 4 {b, c} 練習問題 2 f (x) = log2 x とする.このとき,f ([2, 4]),f [ 12 , 1]),f ([512, 1024]) を求 めよ. 情報基礎/コンピュータ数学 17 / 19 練習問題 練習問題 3 以下の写像 f : R → R は単射,全射,全単射またはそのいずれでもない か答えよ.また全単射であるならば,その逆写像を求めよ. (a) f (x) = x (b) f (x) = sin x (c) f (x) = x2 練習問題 4 以下の写像 f (x),g(x) について,合成写像 f ◦ g を求めよ. √ (a) f (x) = x,g(x) = x4 − x2 + 1 (b) f (x) = log2 x,g(x) = 2x 情報基礎/コンピュータ数学 18 / 19 練習問題 練習問題 5 以下の表で示された各 f : {0, 1, 2, 3, 4} → {0, 1, 2, 3, 4} について,合成写 像 f ◦ f を求めよ. (a) x f (x) 0 1 1 2 2 3 3 4 4 0 (b) x f (x) 0 3 1 1 2 4 3 0 4 2 情報基礎/コンピュータ数学 19 / 19
© Copyright 2024 ExpyDoc