第5学年1組 国語科学習指導案 1 単元名 日本の文化を考える 2 単元でつけたい力 ・日本人は昔から物語とどのように関わってきたかを知り,発表し合う。 ・昔の言葉と,今の言葉を比べたり,リズムや響きを感じたりして言葉の世界を広げる。 3 単元について (1)単元観 本単元は,学習指導要領[第5学年及び第6学年]の[B書くこと]の目標及び内容と「伝統的 な言語文化と国語の特質に関する事項」の(1) 「ア伝統的な言語文化に関する事項」の(イ)と「イ 言葉の特徴やきまりに関する事項」の(イ)を受けて行われる学習である。 目標 (1)目的や意図に応じ,考えたことなどを文章全体の構成の効果を考えて文章に書く能力 を身に付けさせるとともに,適切に書こうとする態度を育てる。 内容 ①指導事項 オ 表現の効果などについて確かめたり工夫したりすること。 カ 書いたものを発表し合い,表現の仕方に着目して助言し合うこと。 ②言語活動 ア 経験したこと,想像したことなどを基に,詩や短歌,俳句をつくったり,物語や随 筆などを書いたりすること。 【伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項】 ア(イ)古典について解説した文章を読み,昔の人のものの見方や感じ方を知ること。 イ(イ)時間の経過による言葉の変化や世代による言葉の違いに気付くこと。 本単元の主たるねらいは,日本の文化を考えることである。教材「『物語』を楽しむ」では, 『竹取 物語』 『更級日記』 『源氏物語』 『平家物語』 『浦島太郎』 『物ぐさ太郎』 『鉢かづき姫』 ,能,狂言,歌舞 伎,人形浄瑠璃が紹介されている。また,「言葉のとびら」では, 「『古典』の言葉にふれよう」 『附子 (狂言) 』 『文学館や資料館をたずねる』が掲載され,本教材とともに読むことで,児童を古典の世界 にいざなうことができる。 教材「 『物語』を楽しむ」では,それぞれの時代の人々が「物語」をどのように楽しんできたかを解 説している。昔から,人々は口承文芸として歌や「物語」を親しんできた。これらはどの時代を通じ ても,底流においては民衆の中に生きていた。それらの一部が文字化されることによって「文学」が 成立するが,それらは識字力のある一部の人々のみが楽しんでいた。しかし,メディアの変化・発展 はそうした文学をより民衆に近づけていった。口承文芸以外にも民衆は「物語」を自分たちのものと して楽しめるようになってきた。そこで,人々が「物語」をどのように楽しんできたかその変遷を知 り,古文にふれながら,その時代を感じ取ったり,それぞれの時代の人々の生活や文化の一端にふれ たりする学習を通して今の自分たちの「物語」との関わりを考えさせていきたいと思う。 (2)児童の実態 本学級は,男子 15 名,女子 10 名(特別支援学級の児童を含む) ,計 25 名で構成されている。 読書を好む児童が多く,時間を見つけては自分の好きな本を読んでいる。しかし,その内容は浅く, 文学的な作品を味わっている児童は少ない。 児童は,3学年の「俳句に親しむ」では有名な俳句にふれ,音読をしたり,様子を思い浮かべ絵に 表したりする学習をした。4学年の「短歌の世界」では,万葉集や古今集・新古今集にふれ,ひびき のよい言葉やリズムを楽しむことができた。その学習を生かして「一つの花」では,ゆみ子や母親, 父親の気持ちを短歌で表すなどの学習を通し慣れ親しんできた。また,5年生での漢文の学習では, 漢字ばかりで初めは抵抗感を感じる児童も多かったが,どのような情景か想像したり,昔の人のくら 5 年- 1 - しを想像したりして楽しむことができた。 本単元を指導するにあたり,アンケート調査を行った。 ①国語は好きですか。 はい…19名 いいえ…6名 ②次のような書き出しで始まる物語を知っていますか。 今は昔,竹取の翁という者ありけり。野山にまじりて竹を取りつつ,よろづのことに使ひけ り。 名をば,さぬきの造となむいひける。 その竹の中に,もと光る竹なむ一筋ありける。あやしがりて寄りてみるに,筒の中光りたり。 それを見れば,三寸ばかりなる人,いとうつくしうてゐたり。 知っている…7名 知らない…18名 ③次のものを知っていますか。 知っている 見たことがある 能 8名 0名 狂言 7名 1名 21名 2名 5名 0名 歌舞伎 人形浄瑠璃 ④漢文・論語の学習はどうでしたか。 難しかった…11人 楽しかった…14人 ⑤昔の物語で知っているものを書いてください。 桃太郎 金太郎 浦島太郎 さるかに おむすびころり 耳なし法一 ねずみのよめいり つるのおんがえし 西遊記 源氏物語 枕草子 <考察> アンケートの結果から, 「国語が好き」と答えた児童は「自分の考えを発表できる。」 「物語を読むの が楽しい。 」 「話し合いが楽しい。 」 「漢字がすき。」 「知らない言葉や新しいことを知ることができる。 」 という理由を挙げている。しかし,授業の中で自分の意見を進んで発表する児童は限られている。ま た「きらい」と答えた児童は「漢字が嫌い。 」 「作文を書くのが苦手。」 「文章を読むのが苦手。 」という ことを挙げていた。 『竹取物語』の書き出しを読み, 「知らない」と答えた児童の中で,想像し『竹取物語』と答えられ た児童は8名いた。 能・狂言・人形浄瑠璃を知っていると答えた児童は8名程,歌舞伎については多く21名であった。 能や狂言,人形浄瑠璃については,知っていると言っても「能」や「狂言」という言葉が聞いたこと があるという程度で,児童にとっては非常になじみが薄い。また,歌舞伎についてはテレビのコマー シャルなどで,隈取りや見得を切っている様子を見たことがあるという程度である。実際に舞台を見 たことがある児童は2名であった。昔の物語で知っているものについては, 『桃太郎』や『金太郎』 『浦 島太郎』というものが多く,子どもたちは童話として感じていて,伝統的な文化としてとらえていな い。 (3)指導観 古文には,今は使わない言葉が多く存在していたり,表現の違いがあったりして,文語調の文章に なじみの薄い子どもたちにとっては読みづらいものである。しかし,音読や暗唱活動を行う中で,古 文には独特のリズムや美しい語調が備わっていることを実感し,内容をつかんでいくことの楽しさを 5 年- 2 - 感じる「よい出会い」としたい。また, 『浦島太郎』『竹取物語』を取り扱うことで,なじみのある童 話が伝統的な古典であることで,興味をもつきっかけとなると考える。 読書活動推進補助教員と連携し,学校図書館や市立図書館から古典作品や解説書などを集めてもら い,いろいろな作品に触れることができるようにしたい。また,読書活動推進補助教員に, 『竹取物語』 を読み聞かせてもらい,作品のおもしろさを味わわせていきたい。ICTサポーターにも協力しても らい映像資料を活用し,能・狂言・歌舞伎・人形浄瑠璃などを鑑賞することで,理解を深めるように する。 本単元では,多様な古典にふれ,古典を楽しむ言語活動として児童を「伝統文化発見堂」の店員と して,学校図書館や地域の図書館から古典作品を探し出し,紹介し合う活動を設定する。紹介の仕方 は,ポスター作りや絵本・絵巻物作り・劇化・台本作りなど,児童の主体性に任せたい。 このような言語活動を行うことで,昔の人のものの見方や考え方を知るということだけでなく,実 際に自分たちも古典作品を楽しむことにつながると考える。 特別支援学級の児童も一緒に学習するため,担任もT2として全体の指導を行う。 【仮説とのかかわり】 <仮説> 児童の思いや考えを大切にしながら,単元(教材)構成を工夫し,様々な言語活動を 意図的に取り入れることで,伝え合う意識が高まり,豊かに表現する力が育つだろう。 ◇児童の思いや考えを大切にするための工夫 ・自分の選んだ作品を紹介できるように,個人やグループで発表するようにする。 ◇言語活動の取り入れ方の工夫 ・ 「伝統文化発見堂」の店員となり,古典作品の良さや違いを紹介するようにする。 ◇効果的に伝え合うための工夫 ・準備の段階で,同じ発表方法のグループで交流する機会をもつようにする。 ◇読書活動の取り入れ方の工夫 ・読書活動推進補助教員に図書室や市立図書館から代表的な古典文学作品の本を選んでもらい,朝 の読書タイムなどを利用して並行読書に取り組ませる。 ◇単元構成の工夫 <単元の姿> 「 伝 統 文 化 発 見 堂 」 を 開 こ う 。 ・ 「 伝 統 文 化 発 見 堂 」 の 開 店 準 備 を し よ う 。 ・ 人 々 と 物 語 の 関 わ り に つ い て 読 も う 。 5 年- 3 - ○ 単 元 計 画 並 行 読 書 古 典 作 品 を 紹 介 し 合 お う 。 「 伝 統 文 化 発 見 堂 」 の 店 員 と し て , 古 典 の 世 界 を 楽 し も う ○ 単 元 の め あ て 日 本 の 文 化 を 考 え る 4 5 単元の目標 (関心・意欲・態度)○古文の響きやリズムへの関心を高め,伝統的な言語文化の魅力を伝えよ うとしている。 (書くこと) ○書いた物を発表し合い,表現の仕方に着目して助言し合うことができる。 (伝統的な言語文化と国語の特質に関する言語事項) ○伝統的な言語文化がどのように変遷してきたのかを,生活や文化ととも に知ることができる。 指導計画(7時間扱い) 課 時 主な学習活動 程 間 1 ・ 「 『物語』を楽しむ」の内容をつかみ, 取り上げられている作品などにつ 見 いて話し合う。 ・ 「言葉のとびら」の「 『古典』のこと 出 ばにふれよう」を読み,それぞれの 時代の言葉の違いや共通点につい て話し合う。 す (1) ○今の時代と比較することで,物語の変遷を考え させる。 ○能や狂言のビデオを見ることで, その特徴や違 ・ 「 『物語』を楽しむ」の内容をつかみ いを知らせる。 取り上げられている作品の年代や ◎物語の変遷について理解することができたか。 その特徴などについてまとめる。 (ワークシート) (2時間) おさえたいこと 人々と物語のかかわりについて, 読もう。 2 え 3 (2) ○読書活動推進教員に「竹取物語」を紹介しても らう。 (読書タイム) ○「伝統文化発見堂」の店員となり古典作品を紹 介し合う」という学習のゴールをとらえさせ る。 ◎文章の姿をとらえることができたか。 (ワーク シート) ◎学習の見通しをもつことができたか。 (観察) 「伝統文化発見堂」の店員として,古典作品を紹介し合おう。 考 る 支援(〇)と評価(◎) <竹取物語> 千百年ほど前 ・日本で最も古い物語 ・今もなお読み継がれている <源氏物語> 千年ほど前 ・作者は紫式部 ※印刷の技術がなく,人からもらう か借りるか,書き写す <平家物語> 八百年ほど前 ・琵琶法師によって広まった。 ※耳から入ってくる言葉を楽しむ。 <能・狂言> 六百年ほど前 <歌舞伎・人形浄瑠璃>四百年ほど前 ※歌や芝居などで物語を楽しむ。 <浦島太郎等> 三百年ほど前 ※版木,寺小屋の役割 <伊曽保物語> 四百年ほど前 ※海外から 5 年- 4 - 百五十年ほど前 ※小学校,印刷機械 現在 ※まんが・アニメーション・ゲーム 映画・テレビ・しばい・人形劇 ○自分が紹介したい文学作品や発表 ○アンケートを採りグループ構成を考える。 方法を決める。 (チャレンジタイム) 深 4 め 5 る (3) 6 本 時 ま と め あ げ る (1) 7 ○発表したい作品や方法ごとにグループを構成 「伝統文化発見堂」の開店準備を するようにする。 しよう。 ・教科書で取り上げている物語や図書 ○発表し合い,どのような意見や考え方があるか 整理させる。 館の本などから作品を選び,発表の 仕方を考え発表の準備をする。 ・発表方法が同じグループごとに集ま ○同じ方法で意見を交換することによって視点 り,意見交換をする。 をはっきりさせる。 ○その作品の特徴や良さが表されているか着目 させるようにする。 ◎他のグループの発表をよく聞き,自分の意見を 伝えることができたか。 (観察・カード) 「伝統文化発見堂」を開店しよう。 〇友だちの作品の良さや感想を「カード」に書い て伝えるようにさせる。 ・自分が選んだ作品を友だちに紹介す ◎友だちの良さを発見したり,自分の感想を伝え る。 たりすることができたか。 6 本時の指導(6/7) (1)目標 関心・意欲・態度 ○進んで交流することができる。 書く ○発表し合い,表現の仕方に着目して助言し合うことができる。 伝統的な言語文化と国語の特質に関する言語事項 ○古典的な文学の語感や現代との言葉の違いに気付くことができる。 (2)展開 時配 2 学習活動と内容 支援(〇)と評価(◎) 1 本時のめあてを確認する。 「伝統文化発見堂」の開店準備をしよう。 ○同じ発表方法のグループごとに意見を交換し, よりよい発表にすることを確認する。 5 2 代表グループの発表に対して,全体 ○最初に1グループを取り上げて学級全体で意 で意見交換をする。 見を交換することで,視点を明確にさせる。 ・物語の良さがはっきり伝わってこな い。 5 年- 5 - ・今の時代の物語と比較しているとこ ろがいい。 15 3 同じ発表方法のグループごとに意見 ○時間を確保できるように,2~3グループで意 交換する。 見交換をさせる。 ・音読グループ ○意見交換をしているグループを見て回り,適切 ・映像グループ な意見を発表している児童を評価し,他の児童 ・絵巻物グループ の参考となるようにする。 ○特別支援学級の担任・読書推進指導教員がT2 T3として入り,きめ細かにグループの指導を していく。 ○付箋に意見を記入し,相手のグループに渡すよ うにさせる。 ○よくできているところと,なおした方がよいと ころで付箋の色を変え,わかりやすいようにす る。 ◎自分の意見を明確にし,進んで意見交換ができ たか。 (カード・観察) 5 4 交換した意見を発表する。 ○他のグループで出た意見を聞くことで,その後 の「発表の手直し」に生かすようにさせる。 ○次時の発表を聞くときの視点にもなることに 気付かせる。 10 5 発表の手直しをする。 ○意見カードを参考にしながら,発表原稿を直し たり発表方法の手直しをしたりさせる。 ◎友だちの意見を参考にして,発表する物語の特 徴に気付くことができたか。 (ワークシート・観察) 5 6 感想を書く。 ○ワークシートに感想を書くことで,意見交換の ・○○さんのグループは,物語のおも 大切さや友だちの視点のよさを確認させる。 しろさがよく伝わってくる音読だっ た。 ・△△さんのグループは,映像の使い 方がよいので,物語の雰囲気がよく 伝わってきた。 3 7 次時の予告をする。 ○次時は,「伝統文化発見堂」を開店することを 知らせる。 ○保護者にも発表を聞いてもらうことを知らせ, 意欲を持たせる。 5 年- 6 - (3)板書計画 他 の グ ル ー プ か ら 5 年- 7 - ( 例 ) △ 言 葉 の リ ズ ム 感 が 伝 わ っ て こ な か っ た 。 音 読 で 伝 わ っ て き た 。 ○ 狂 言 の 特 徴 で あ る 話 の お も し ろ さ が ○ 会 話 の 特 徴 が よ く つ か め て い た 。 ○ ○ グ ル ー プ ( 音 読 ) 学 「 伝 「 統 伝 文 統 化 文 発 化 見 発 堂 見 」 堂 の 」 準 の 備 開 を 店 し 準 よ 備 う を 。 し よ う 。 日 本 の 文 化 を 考 え る
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