第 25 回和漢医薬学会学術大会 市民公開講座 講演要旨 元気に生きる ― 砂漠の人参“カンカ”― 近畿大学・薬学総合研究所/薬学部 教授 村岡 修 中国新疆ウイグル自治区にあるホータンは、サハラ砂漠に次ぐ世界第 2 位の 面積を誇るタクラマカン砂漠の西南部に位置するオアシス都市で、“砂漠人参” とも称されるカンカニクジュヨウの生産地として知られています。カンカニク ジュヨウ (Cistanche tubulosa) はベニヤナギ(紅柳、タマリクス)の根部に 寄生するハマウツボ科の植物で、 “カンカ”とはその日本での通称です。ウイグ ル語で「入ったら二度と生きて戻れない」ことを意味するタクラマカン砂漠に ありながら、ホータンは世界有数の長寿郷であり、100 歳を超えても寝たきりや 認知症にかからない元気なお年寄りが多く暮らしています。ホータンに住む 人々は、昔から過酷な環境で生き抜くためカンカを薄く切って羊肉の鍋で煮込 んで食用したり、お茶やお酒に漬けて飲用したりして常食しています。我々は、 伝承される“カンカ”のアンチエイジング効果に着目し、これまでに含有成分 を精査した結果、9 種の新規化合物を単離・構造決定するとともに 30 種の既 知成分を単離・同定し、それらの成分に血管収縮抑制活性や肝保護作用など、 “カンカ”の機能性食品素材としての有用性を示す知見を得ています。 一方、世界各地の乾燥地帯では深刻な砂漠化が進行し、ホータンもその例外 ではありません。現地政府は“カンカ”の宿主であるタマリクスが防砂に適し た植物であることから、地域産業の育成と防砂の両観点からタマリクスの植樹 を推奨しています。本講演では、近畿大学・薬学総合研究所が中国新疆中薬民 族薬研究所およびホータン地区政府などが協力して進めてきたホータンの長寿 食“カンカ”の機能や有用性に関する研究とともに、砂漠緑化と“カンカ”人 工栽培の両立を目指した取り組みについて紹介します。
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