野洲病院の患者様ならびに地域住民の皆様へ

野洲病院の患者様ならびに地域住民の皆様へ
この度JR野洲駅南口に計画されていました「(仮称)野洲市立病院」建設計画が、
11月5日の野洲市議会にてその関連予算が僅差で否決され、その結果、野洲市は本
計画を断念することになりました。
本計画は、当院が直面する耐震性、施設・設備の老朽化、医師確保、狭溢な駐車
場など様々な問題のもとに提案された「新病院基本構想2010」を契機に検討が進めら
れたものでその経過や今回の決定に対する当院の見解についてお知らせいたしま
す。
特定医療法人社団御上会野洲病院は、「地域の皆様が安心して受診できる心の通
った医療を提供し、健康と福祉の向上に貢献する」を病院理念として地域住民の健康
と疾病予防また高齢化社会に対応する医療と福祉に貢献するように、一貫して精進し
て地元に密着した病院として発展してきました。
当院は昭和55年から三期に渡って増改築工事を実施していますが、野洲市は野洲
病院を地域医療の中核的な役割を担う公立病院に位置付け財政的支援を行い、その
後も支援を継続していただいております。
野洲病院は、「新病院基本構想2010」を平成23年4月に野洲市に提出し、野洲市は
この提案書を受けて野洲市に野洲病院のような中核病院が必要か否かについて滋賀
医科大学学長を委員長として地元医師会長などを委員とする専門委員会に諮問しま
した。そして委員会の検討結果として一定の役割をもつ病院は必要との報告書が出さ
れましたが、「野洲市は新病院構想のコンセプトなど医療サービスに対する基本的な
考え方は一致しているものの、運営形態に課題があり、基本構想は採用しがたい」と
当院に回答してきました。さらに「今後の市民への医療サービス提供のあり方を考えて、
新病院の整備を含めた検討を引き続き行いたい、また地域医療における貴院の貢献
と実績、貴院が持つ医療資源を充分に考慮して上で検討を進めていきたい」との付記
がありました。
これを踏まえて野洲市新病院整備可能性検討委員会が発足し必要とされる病院像
を具体化して、野洲市が運営する場合の収支シュミュレーションなど行い市民に受益
があるか、市の財政負担が生じるかの検証について委員会が開催され、また市民懇
談会も開催されました。
その結果として
①中等度の症状で入院が必要な市内患者の対応、
②大学病院などの急性期で重度の医療を担う病院と自宅療養の間つなぐ役割、③
在宅医療を推進する上で診療所等の後方支援の役割を持つ病院が新病院のコンセ
プトとして一定の条件(野洲駅南口の立地条件、運営形態、民間病院なみの価格での
材料等の調達、医療スタッフの確保、市財政の中長期見通しなど)で持続可能な運営
ができるとの報告書が市長に出されました。
野洲市はこの報告書に沿った基本方針案を平成 24 年 12 月の野洲市議会に提出し、
議案は過半数(12/19)の賛成多数で可決承認されました。
しかし市長は病院整備の重要議案に1/3を越える議員の反対があり、構想策定予
算の見送りなど検討作業の一次凍結の厳しい決定を行いました。
その後基本方針案の凍結に対して地元医師会と市議会議員との懇談会、市民アン
ケート、市民懇談会の実施を経て平成25年8月に凍結を解除して、野洲市中核的医
療拠点のあり方に関する基本方針を公表し野洲市市立病院整備基本構想検討委員
会で再び検討が開始され、その結果、平成26年2月に提言書がまとめられました。
これを受けて野洲市立病院整備基本構想を作成し、野洲市議会の可決承認を経て
平成26年度に野洲市立病院整備計画が作成され特別委員会で審議が行われ承認さ
れました。しかし、平成27年3月に基本設計等の予算案が上程されるも、継続審議に
なり、5月の議会で否決されました。野洲市は平成27年度に整備計画の基本的な部分
の精度を向上させ改めて11月5日の議会に諮りましたが、同予算案は否決され、その
結果として野洲市は本計画を断念することを決定しました。
野洲病院が野洲市に提案した新病院構想に端を発し、野洲市の高齢化社会に向
かう地域医療の在り方が専門委員会で詳細に検討され、その中で一定の役割を持つ
中核病院の必要性とその運営実施の可能性が確認されました。
3度の専門委員会や市民懇談会での議論、野洲市議会での野洲市立病院基本方
針案の可決承認など約4年半の長い時間と多大な労力かけての検討・審議にもかか
わらず、11月5日の野洲市議会で野洲市立病院整備の基本設計の補正予算案が反
対理由を明確にされないままに否決され、本計画が断念された今回の理不尽な決定
は誠に残念かつ遺憾なことでありますし、また野洲の地域医療にとっても大変残念な
ことと思っております。
しかし私どもは、開設以来50年以上にわたって野洲市および地域住民の皆様に対
して、心の通った医療を提供してきたという自負と誇りを持っています。
今回の決定に左右されず、今後とも、安心・安全かつ快適な医療・看護・介護を提
供し、地域住民の皆様から厚い信頼と満足を得るように、職員一同が一丸となって研
鑽していく所存です。つきましては、皆様方に今回の事情に理解をいただき、当院に
対する益々のご協力とご支援を賜りますよう心からお願い申し上げます。
平成27年11月25日
特定医療法人社団御上会野洲病院
理 事 長
渡 邉
信 介