平成 24 年度南伊豆町有害鳥獣対策調査委託 業務概要書 1. 業務概要 1.1 業務目的 本業務は、近隣や類似団体の対応事例や町内の現況を調査することにより、有害鳥獣の駆除個 体の処理に対する方針を決定するための基礎データを収集することを目的とする。 1.2 業務内容 ①計画準備、②現状調査(処分状況の把握、他市町村事例把握、成分検査、需要調査、 動物用焼却炉に関する情報収集)、③解析、④報告書作成 表-1 内容 資料調査 処分状況の ヒアリング調査 把握 センサーカメラ調査 現状調査数量 数量 備考 南伊豆町における有害鳥獣駆除資料整理 賀茂猟友会南伊豆分会へのヒアリング 動物による残渣利用状況把握 アンケート調査による被害状況、被害防止対策、 他市町村事例把握 50 市町村 * 処理方策、処理施設有無等の把握 成分検査 イノシシ 8 検体 栄養、風味(脂肪酸、アミノ酸、核酸) 需要調査 5 店舗 町内の精肉を取り扱う店舗への聞き取り調査 大型鳥獣の焼却が可能な焼却炉の取り扱い業者 動物用焼却炉に関する情報収集 一式 からの情報・資料収集 *:処理施設を有する全国の 40 市町村及び伊豆地域獣害対策連絡会加盟の 10 市町 一式 一式 2 箇所×2 週間 2. 調査概要・結果・解析 2.1 調査結果まとめ 本業務で実施した各調査結果の総括は、表-2 に示すとおりである。 表-2(1) 項目 調査結果総括 内 容 【猟友会ヒアリング情報】 ・残渣を廃棄した場合は、比較的早く無くなることがある。 ・捕獲個体の処分手段を持たない会員は処理施設の必要性を感じ、自ら獲物を解体すること ができる会員は必要性が低いと感じている可能性がある。 ・処理施設を作り、イノシシ肉を販売する場合は、販売価格が高くなる可能性がある。 処分状況の把握 【センサーカメラ調査結果】 ・哺乳類はタヌキとイノシシ、鳥類はトビとカラス類が残渣を食べる。 ・山林ではタヌキが頻繁に訪れ、開放地(山際の造成裸地)ではカラス類の飛来が多い。 ・解体した後の肉や内臓は、10 時間程度で消失。処分個体を丸ごと廃棄した場合は、肉や内 臓に比べて消失までに時間がかかる(5 日~10 日以上)。 回答 ・50 通送付のうち 36 通の返信あり(返信率 72.0%) ・農産物被害状況は、イノシシ、サル、シカ、カラスの被害が多い。被害額では、稲、果樹、 野菜、いも類が多い。 被害 状況 ・林産物被害状況は、イノシシとシカの被害が多い。タケノコ、シイタケ等に被害が発生し ている。 他市町村 被害 ・対策として、猟友会委託の駆除、駆除報奨金・奨励金交付、防護柵設置補助金交付を行っ 事例把握 対策 ている市町村が多い。 ・年間(一部は年度途中集計)では、イノシシは 500 頭以下、サルは 50 頭以下、シカは 500 頭 以下の捕獲数の市町が多い。 有害 捕獲数 ・最も多いのは、イノシシが長崎県佐世保市の 5,210 頭、シカが京都府京丹後市の 1,637 頭、 サルは千葉県鴨川市の 395 頭。 表-2(2) 調査結果総括 項目 内 容 ・イノシシは、処理施設を所有する市町村では埋設(山林等の任意場所で処理)、自家消費、 食肉加工処理施設での処理が同程度、伊豆地域では自家消費の傾向が強い。 処理 ・サルは、処理施設の有無を問わず、埋設(山林等の任意場所で処理)が多い。 状況 ・シカは、処理施設を所有する市町村では埋設(山林等の任意場所で処理)がやや多く、伊豆 地域では自家消費の傾向がやや強い。 他市町村 事例把握 ・焼却施設:専用施設を所有している市町村は 1 箇所。 ・埋設場所:専用の埋設場所を設置している市町村なし。 処理 ・食肉加工処理施設:専用施設を所有している市町村は 21 市町村。 利活用 建設費は約 200 万~8,000 万超と幅がある。施設の所有者は民間が多い。 課題として販売ルートや安定した供給量の確保、品質等が上がっている。 ・南伊豆町産のイノシシ肉 8 検体を分析。 成分検査 ・島根県産等との比較では、捕獲時期が異なるものの、ロース及びバラの脂質の割合が高い。 ・町内 5 店舗のうち、1 店舗で 1 年間だけイノシシ肉取り扱いの情報あり。 需要調査 ・地域での需要が少ないため、取り扱っていない店舗が多い。 ・3 社からカタログ等の試料及び情報を入手。 焼却炉情報収集 ・イノシシ及びシカを解体せずに焼却処分可能な焼却炉は大型で、維持・管理に費用がかか る。 2.2 解析 現在行われている捕獲者による山林の任意の場所への廃棄では、比較的早く廃棄場所から消失 しており、廃棄残渣が堆積して周辺に悪臭を放ったり、水質を汚濁する等の大きな問題は発生し ていないと推察される。 イノシシは今後継続的に処分量が増加することはないと推察されるが、シカは個体数及び処分 量の増加が推察されるため、シカ捕獲数の推移を注視していく必要がある。 2.3 有識者ヒアリング 大橋正孝氏(静岡県森林・林業研究センター上席研究員)からは、「静岡県内で利活用を積極的 に進めているのは伊豆市だけである」、「行政が係る場合は、維持管理に多額の経費がかかること を覚悟する必要がある」、「伊豆地域のイノシシは、販売戦略を練ることで、販路は開ける可能性 はある」、 「 今後 5 年先を考えるとシカの方が問題になってくると思われる」等の助言が得られた。 3. 今後の課題・提案 3.1 現状の処理方法について 山林等の任意場所への廃棄の際には、毛皮を剥いだり、足・胴体等に細分化することで、野生 動物による早期採食を促す。 3.2 特定の場所への廃棄 廃棄場所の設置にあたっては、周辺に民家や耕作地、遊歩道等の人間活動が無い場所や、簡易 水道や耕作地の水源に影響が無い場所に設置し、人目に付きにくい構造を採用する等に留意する ほか、並行して焼却炉導入等の別の処理方法も検討することが望ましい。 3.3 焼却炉導入 焼却炉導入を検討する場合は、事前に処分するイノシシ及びシカ等の量と焼却頻度を推定し、 運用面、費用面で適切な焼却炉を検討することが望ましい。また、焼却炉費用以外に必要な工事 費用や各種法令対応についても考慮する必要がある。 3.4 利活用 先進事例では、販売ルートや安定した供給量の確保、品質等の課題を抱え、有識者からも「採 算がとれない」等の助言が得られている。 食肉加工処理施設の導入にあたっては課題が多く、南伊豆町においても同様の問題が発生する 可能性が高いと考えられるため、現時点では利活用施設の設置は避けることが望ましい。
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