交通事故の空間分布パターン - 東京大学空間情報科学研究センター

C06
Research Abstracts on Spatial Information Science
CSIS DAYS 2015
交通事故の空間分布パターン
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山田 晴利 1,2,柴崎 亮介 1
東京大学 空間情報科学研究センター,2 交通事故総合分析センター(ITARDA)
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(1) 動機: 2012 年から交通事故発生場所の経度・緯
度が計測されるようになり,交通事故の空間的な分
布パターンの分析が可能になった.本研究は,位
置情報をもとにして事故多発箇所(ホットスポット)を
求め,ホットスポットと重大事故(死亡事故と重傷事
故)の分布パターンの違いを分析するとともに,交
通事故をメッシュ単位で集計し事故件数の多いメッ
シュのクラスタリングを見出すことを目的としている.
(2) アプローチ: 2013 年に発生した人身交通事故(死
亡,重傷及び軽傷事故)のうち,一般道路で発生し
た事故(主に一般国道,主要地方道,一般都道府
県道での事故;高速道路,自動車専用道路,市町
村道,農林道,駐車場・広場等での事故は除外)
について ITARDA 区間毎に件数を集計した.
ITARDA 区間は単路と交差点から構成され,単路
の平均長は 300 m 弱である.ITARDA 区間別の事
故件数が 4 件以上存在する箇所を多発箇所として
抽出した(全国で約 1 万 7 千箇所).これらの多発
箇所(単路は中心点で代表させた)の分布パター
ンと死亡事故,重傷事故のパターンをクロス L 関数
を用いて比較した.また,人身事故を 1 km メッシュ
毎に集計し,Local G 関数を利用してクラスタリング
の分析を行った.
(3) 意義: わが国ではこれまで事故発生場所の位置
情報が収集されていなかったため,交通事故の空
間的な分布の分析が困難であった.本研究では東
京都市圏と近畿都市圏を対象に分析を行い,死亡
事故,重傷事故とホットスポットの分布パターンに
違いがあることを見出すとともに,事故件数の多い
メッシュのクラスターを特定した.
(4) 結果: 図 1 に東京都市圏の死亡事故,重傷事故
とホットスポットの分布及びカーネル密度推定の結
果を示した.東京都では重傷事故件数が隣県に比
べ顕著に少ないことがわかる.死亡事故,重傷事
故とホットスポットの分布には統計的に有意な差が
ある.近畿都市圏の死亡事故,重傷事故とホットス
ポットの分布には東京都市圏ほど大きな違いは見
られないが,分布には有意な差が見出された.
図 2 には東京都(島嶼部を除く)を対象に,1 km
メッシュ毎の平日の事故件数と Local G 関数によっ
て特定されたクラスターを示した(半径 r=2 km の円
を使って隣接関係を定義).東京都では都心部に
クラスターが存在することがわかる.この結果は,シ
ミュレーション計算によって各メッシュの Local G 値
の p 値を求めた結果にもとづく.なお,地方部の県
では多くのメッシュで事故件数が 0 となり,クラスタ
ーは都市地域においてのみ見出された.
(5) 謝辞: 本研究は「道路政策の質の向上に資する
技術研究開発」の助成によるものであり,関係各位
に感謝する.
(6) 参考文献:
Brunsdon & Comber (2015) An Introduction to R
for Spatial Analysis and Mapping. SAGE.
図 1:東京都市圏の重大事
故とホットスポットの分布及
びカーネル密度推定結果
左:死亡事故
中:重傷事故
右:ホットスポット
図 2: 東京都の 1 km メッシュ別事故件数(左)とクラスタリング(右)
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