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観測的宇宙論ゼミ 2006.05.12 柏川
■ Fossils of Reionization in the Local Group
Gnedin & Kravtsov, astro-ph/0601401
を中心に
■ The Impact of Reionization of the Stellar Populations of Nearby Dwarf
Galaxies
Grebel & Gallagher 2004, APJ, 610, L89
■ Local Group Dwarf Galaxies and the Contribution of the First Stars to
Reionization
Tumlinson, astro-ph/0602179
今日の話の概要(決して論文の概要ではない):
宇宙再電離の頃に生まれた銀河は現在までmergingせずに生き残っているか?こ
の問題はCDMモデルのサブストラクチャー問題や、環境に左右されやすいdwarf銀河の形成モデルと
絡んで重要である。最近いくつかの理論グループがこの問題を念頭に、z>8から銀河進化を追いかけ
たシミュレーションを用いてLocal Groupにおけるdwarf銀河の光度ー金属量関係、光度関数などの観
測量を再現しようとしており、部分的には成功している。一方、観測的には近傍銀河内の古い星の年
齢を決定するのは難しく、果たして近傍のdwarf銀河の中に再電離期の生き残りがいるのかどうかわ
かっていない。もしこのような再電離期の「化石」銀河が近傍に見つかれば太古の銀河形成の状況が
わかるかも知れない。現在は理論・観測研究ともにその理解までには程遠い印象があるが、遠方宇宙
の観点からも近傍宇宙の観測が必要になる可能性は残されている。(397字)
0. 超イントロ1: 宇宙の再電離(reionization)
■ z=6-10の頃?に中性水素IGM→電離水素IGM
■ 何が、いつ、どのように再電離を引き起こしたのか全くわかっていない。
■ z>6の銀河・QSOが数多く観測
されるようになってきて、もはや
銀河形成を考える上でも再電離
プロセスの理解が重要になって
きている。
■ レビューは
Loeb & Barkana ARA&A 01,39,19
Fan et al. astroph/0602375
Loeb astroph/0603360
柏川 天文月報 in prep.
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0. 超イントロ2: dwarf銀河
■ ちっちゃい銀河 (M<-18, mass<10^9M_solar)。
■ 重力ポテンシャルが小さいので超新星爆発がおきる
とガスを吹き飛ばしてしまい、それ以降星形成をお
こせない (Dekel & Silk 86)。また周囲のUV輻射が
大きいとガスが冷えずに星を作れない (Babul &
Rees 92, Efstathiou 92)。
■ 周囲の銀河との相互作用で簡単に星やガスを剥ぎ
取られる。
■ レビューは
Ferguson & Binggeli A&APR,1994, 6,67 ???
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0. 超イントロ3: サブストラクチャー問題
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■ 現在標準的とされているCDM銀河形成モデルによると、Local Groupで観測されているよりずっとたくさ
んのサテライト銀河がなければならない( Klypin et al. 1999, Moore et al. 1999 )。
■ 観測がまだまだ足りない(生まれたけどstrippingなどで星が剥ぎ取られたものを観測しているため暗
いdwarfがもっとたくさんある; 下図矢印←方向)のか、それともCDMモデルが間違っている(もともと
low-mass haloには銀河は生まれない; 下図矢印↓方向)のか?
■ 参考文献は
Klypin+ 99, Moore+ 99
Bullock+ 01
Chiba 02
Kravtov+ 04
など。
Moore et al. 1999
predicted
observed
1. イントロ
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■ 宇宙再電離の頃(z=6-10)に生まれた銀河は現在(z=0)まで生き残っているか?
■ 宇宙初期に生まれた銀河は小さかったはずなので現在まで生き残っていればdwarf銀河クラス。
■ 再電離の前後で背景UV輻射が大きく変わったはず。そして(小さな)銀河の形成も大きく影響を受けた
はず。
1)背景輻射の小さい再電離以前では軽いhost haloでも星を作ってしまえば銀河になれる。
2)背景輻射の大きい再電離以降では十分重いhost haloであれば銀河になれる。
■ この背景輻射の効果による小さな銀河のできかたの違いを考慮すればサブストラクチャー問題は解決
できる(Bullock+ 01など)。1)の場合には軽い銀河も生き残れるが、その後はほとんどのものについ
てがmergingを経験しどんどん大きな銀河に成長していくと考えられる。しかし、いくつかのものはz=0
まで何もinteractionせずに生き残ると考えられる。もしこのような銀河が見つかれば、それは再電離期
の「化石」で宇宙初期の銀河形成についての情報を含んでいる。
2. Grevel & Gallagher (2004)
■ Local Groupのdwarf銀河の年齢をMSTO (Mainsequence turnoff) から推定したところ、すべての
dwarf銀河が>10Gyrの古い星を持っていた。
■ しかしMSTOの精度は~1Gyr, また>10Gyrくらい古い
と年齢を決定できない。
■ LGのdwarf銀河の金属量にはかなりばらつきがある。
→ 星形成は比較的長期(2-4Gyr)にわたって
続いたのではないか?再電離の影響なんてない。
2. Gnedin & Kravtov (2006)
■ 高空間分解能 Simulation
(900Ms 24pcまで分解できる)
w/ feedbacks. Ricotti et al. (2002ab)
■ 再電離以前の銀河のための2つの条件:
1) haloがz=8にもz=0にも存在する
・この確率を回転速度V_circ(銀河のmassに相当
する)の関数として書いたのが図6→。
・5-15%くらい生き残る。
・central galaxyからの距離が遠いほど生き残れる。
2) V_circ<V_threshold
・ある質量より軽いと再電離以降星形成できない。
・このような背景輻射が星形成を抑制する効果には
上限のthreshold-mass(回転速度)があることは、これ
までの多くのシミュレーションから明らかになっている
(Thoul & Weinberg 96など)。
・実際、今回のシミュレーションでz=0まで生き残った
host haloを調べると図5のようにthreshold velocity
(V_rt)が存在する。今回はV_rt=30km/sに設定。
■ こうして定義されたfossil銀河のLFを描いて観測と比
較する。
モデルの方のLFはzs(再電離z)やV_rfの取り方では
あまり変わらない。
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■ 観測データ:
Local Group dwarfs
Mateo(98), McConnachie&Irwin(05):
・Ricotti & Gnedin 05で扱ったdwarfの3分類→。
1) Survivors --- もともとhigh mass haloでできたけど
後にtidally strippedされた。
2) True fossils --- 再電離期の化石。
3) Polluted fossils --- 化石だったけど(mergingも
ちょっとだけ経験して)大多数の星は再電離以後に
作った。
True fossilsとしては、
・Milky Way subgroup --Draco, Phoenix, Sculptor,Sextans, Tucana, UMinor
・Andromeda subgroup --And I-III, V, VI, IX, Antlia, Cassiopea, Cetus,
SGB0427, SagDIG
・もちろんこれらすべてがfossilだという保障はなくて
10-12Gyrの古い星が実際にどれくらいの年齢なのか
はわかっていない。観測のエラーバーには距離のエ
ラー、パワッソンノイズが入っている。
Ricotti & Gnedin 05
■ 結果: 光度関数とradial分布
1.Lv>10^6Lではよく一致している。
2.10^5<Lv<10^6では、d<100kpcでは合っているけど、d<300kpc,d<1Mpcではmodelの方が
factor2-4多い。
MW / And. だけでやっても結果は同じ。
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■ 議論:
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1)観測が悪い
Willman et al.(2004) 観測サンプルのincompletenessはfactor3くらいはありうる。→ちょうど合う
2)モデルが悪い
再電離がz>10に起こったとすると小さなmassで星生成おこせる銀河は減る。逆に将来このモデルと
観測をちゃんとあわせることができれば再電離の時期を制限できる。
3)空間的バイアス
結果をそのままとればlow-luminous銀河ほどparent銀河に近いところにいる。これはfeedbackからは
考えにくいがもともとそういうbiasがあったと解釈できなくもない。
3. Tumlinson (2006)
■ 光度ー金属関係も再現できました。
要するに、金属度の高いものは
survivors/polluted fossilsに押し付
けて、あとはSFR(モデル内でfactor
3のばらつきを考慮した。)による分散
を考慮すれば説明できる。
■ 金属度をシミュレートするには
dwarf銀河における超新星
feedbackを考慮せねばならず
さらにモデルdependentが強いこと
が期待されたが、あまり変なことを
考えなくても再現できた(?)。
■ これらfossilsの再電離における寄与。
図5(再電離に必要な光子数vs.fossilsのそれに対する寄与)
z_end=6だと、5%くらい。→そんなに寄与は大きくない。
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□ スピーカー今日のの感想:
再電離の前後でdwarf銀河の形成が大きく変わることは理論的に(Wyithe & Loeb 06など)予想され
ており、もしかしたらz>6を遡っていくと、光度関数のfaint endが急になったり、その結果、星形成密度
が逆に大きくなったりしていくかも??これが観測できると面白い。