企業・産業動向レポート = 2015年2月1日~28日の報道内容 = Ⅰ.各分会所属企業、関連企業・関連地域の状況 ◎函館ドック労連関連 ◆名村造船、アフラ型タンカー受注/サモス向け1隻、17年納期で【2.2】 名村造船所は、ギリシャ船主サモス・スチーム シップからアフラマックス・タンカー1隻を受注したようだ。サモスが公表した。公表資料によると、引き渡しは2017年。船 型や船価などは明らかにしていない。バルカーの発注が低迷する中、比較的発注残が少ないタンカーの需要が高まっ ているようだ。名村造船は、2013年にもアジア船主から省エネ仕様の11万5,000重量㌧型タンカー2隻を受注している。 サモスは船型を明らかにしていないが、今回受注したアフラマックスも13年に受注した船型とほぼ同型の11万5,000重 量㌧級とみられる。名村造船は、2003年の造船ブーム以降、ケープサイズや大型鉱石船、函館どつくと共同開発した ハンディサイズなどバルカーの受注に軸足を移してきた。このため、しばらくアフラマックス・タンカーの建造が途絶え た時期もあったが、アフラマックスは名村造船の得意船種の1つだ。1990年-2000年代前半には9万-10万5,000重量㌧ のアフラマックスを年間3-4隻のペースで建造していた。とりわけ10万5,000重量㌧型は建造隻数が27隻にのぼるヒット 商品となった。現在、バルカーの新造商談が低迷する一方、アフラマックスをはじめとしたタンカーの引き合いが増えて いる。アフラマックスは発注残比率の低さなどから再び投資機運も高まっている。このため、アフラマックスなどのタン カーのデザインを持つ造船所は、タンカーの営業も積極的に展開しているようだ。サモスは、日本の造船所での建造を を中心に船隊整備を行っている。現行船隊はバルカー8隻とタンカー・プロダクト船13隻で、名村造船のほか、ユニバー サル造船(現ジャパンマリンユナイテッド)、住友重機械、尾道造船、三井造船で建造している。 ◆名村造船所4-12月期、営業益28%増203億円/新造船受注【2.9】 名村造船所の2014年4-12月期連結決算は、営業 利益が203億円と前年同期比28%増だった。円安進行による新造船事業の増収や多額の工事損失引当金取り崩し、修 繕船・鉄構陸機事業などでの収益改善などが寄与した。名村グループでは佐世保重工業が14年10月から連結子会社 化。新造船受注は佐世保重工分を含め25隻に達した。売上高は、佐世保重工分が加わり8%増の965億円となった。新 造船事業では、名村本体分として25万重量㌧型(250型)鉱石運搬船3隻、92型バルカー1隻、34型バルカー4隻のほか、 連結子会社函館どつく建造の34型バルカー1隻、32型バルカー3隻、小型船6隻の計18隻を完工させた。経常利益は20 %増の212億円。工事損失引当金取り崩しに伴う税額減少により、純利益は67%増の151億円に膨らんだ。新造船受注 は、名村本体の建造予定船として82型バルカーなど14隻、函館どつく建造予定船として34型バルカーなど10隻、佐世 保重工建造予定船として85型バルカー1隻の計25隻を確保。新造船受注高は10%減の796億円となった。このほか、佐 世保重工は連結子会社化前の14年4-9月期に78型バルカー1隻、85型バルカー5隻の計6隻を受注している。14年12月 末の新造船受注残高は、佐世保重工分が寄与し、前年12月末比31%増の3,193億円に拡大した。佐世保重工の連結子会 社により未定としていた15年3月期通期連結業績予想は、売上高1,330億円(前期比7%増)、営業利益170億円(同24% 減)、経常利益175億円(同26%減)、純利益115億円(同9%減)とした。年間配当は5円減の年25円配(中間15円、期末10 円)を予定。 ◆名村造船、今期経常益175億円【2.9】 名村造船所は6日、2015年3月期の連結売上高が前期比8%増の965億円、 経常利益が26%減の175億円になる見通しだと発表した。佐世保重工のグループ化後で初となる決算は、円安効果で 採算が改善する一方、損失引当金の積み増しなどもあって減益の見通しとなった。4~12月期の売上高は前年同期比8 %増の965億円、経常利益は20%増の212億円、純利益は151億円だった。新造船事業は、売上高が3%増の758億円、営 業利益は22%増の203億円だった。受注は、名村造船建造分が82型バルカー8隻など計14隻。函館どつく建造分が34 型バルカーなど10隻、佐世保重工建造分はグループ化後に85型バルカー1隻で計25隻。佐世保はこれ以外にグループ 化前の4~9月に6隻を受注している。修繕事業は函館に佐世保が加わり、売上高が47%増の89億円、営業利益が89%増 の6億4,700万円と増収増益になった。 ◆名村造船所3・四半期業績で脅威の利益率/対売上高経常利益率22%をマーク【2.15】 名村造船所の2014年度第3・ 四半期(10~12月)の連結業績は円安の恩恵を受け、対売上高経常利益率は約22%となった。3・四半期の売上高は965 億2400万円、経常利益は212億1600万円、純利益は151億1300万円となった。対売上高経常利益率が22%というのは、 おそらく業界最高益とみられる。通期業績予想は、売上高1330億円、営業利益170億円、経常利益175億円、当期純利益1 1億円の見込み。名村造船所は、傘下に伊万里本社工場、函館どつく、佐世保重工業を擁し、全国列島縦断支配権を掌中 に収めている。加えて円安に伴う多額の工事損失引当金の取り崩しなどで業績は大きく好転、収益性も大幅に回復し ている。現在の工事対象船舶は、250型鉱石運搬船ウォーズマックス、92型バラ積み運搬船、34型多目的バルク、32型バ ルク、小型貨物船などで、第3・四半期期間の工事消化隻数は18隻となっている。また、受注隻数は合計25隻(名村本社 関係14隻、函館どつく10隻、佐世保重工1隻)で、受注・完工とも順調に推移している。事業範囲は新造船事業、修繕船事 - 1 - 業、機械事業、鉄構陸機事業、その他事業で、中核体は新造船事業と将来性が期待されている修繕船事業だ。とりわ け、修繕船事業については、北は北海道から南は九州までリペア基地を重点配置し、官需・民需双方のニーズに的確に 対応している。函館どつく、佐世保重工の子会社化にしても、結果的に改善効果を如何なく発揮、まさに戦略的に才け た一面を保持しているといえる。それにしても、対売上高経常利益率が22%というのは、異例の好業績という外はな い。 ◎住友重機械工業関連 ◆住重船舶、新造舶受注9隻に拡大/第3四半期アフラ3隻【2.2】 住友重機械工業が1月30日発表した2014年4-12月 期連結決算は、船舶部門の新造船受注が9隻に拡大した。第3四半期(10-12月)にアフラマックスタンカー3隻を受注。こ の結果、15年3月期通期の受注高は600億円と前回予想から200億円上方修正した。14年4-12月期の船舶部門の連結営 業損益は8億円の赤字(前年同期は22億円の赤字)だった。連結売上高は前年同期比80%増の187億円。新造船は前年 同期比1隻増の2隻を引き渡した。受注高は2.5倍の598億円だった。15年3月期通期の船舶部門の連結業績は、営業損益 が20億円の赤字、売上高は240億円を見込み、従来予想を変更していない。受注高は従来予想を200億円上回る600億 円となる見通し。住重全社ベースの14年4-12月期連結決算は、売上高が前年同期比10%増の4,667億円、営業利益は8 2%増の340億円、経常利益は83%増の344億円、純利益は95%増の218億円だった。15年3月期通期の連結業績予想 は、売上高が前期比5%増の6,500億円、営業利益は22%増の420億円、経常利益は16%増の385億円、純利益は17% 増の210億円と前回予想を変更していない。 ◆今期受注、アフラ型9隻に拡大/住友重機、手持ち3年半分確保【2.2】 住友重機械は1月30日に発表した2014年4~12 月期決算で、アフラマックス・タンカー9隻を受注したことを明らかにした。期初時点では今期は新造船4隻の受注を目 標としていたが、タンカー市況回復と円安なども背景に10月までに既に5隻を受注しており、年末にかけてさらに4隻の 受注を重ねた。これにより受注残は13隻に増え、2018年半ばまでの手持ち工事を確保した。4~12月期の船舶部門の売 上高は前年同期比80%増の187億円、営業損益は8億円の赤字(前年同期は22億円の赤字)だった。新造船の引き渡し は2隻。また、受注高が拡大したことで、受注高は2.5倍の598億円になった。通期業績は売上高が前期比62%増の240 億円、営業損益は20億円の赤字(前期は30億円の赤字)で従来予想を維持。受注高は前期比89%増の600億円で、従 来予想から200億円引き上げた。前提となる為替レートは1㌦=115円。 ◎いすゞ自動車関連 ◆いすゞ純利益8%減、タイでトラック販売低調/4-12月【2.7】 いすゞ自動車が6日発表した2014年4-12月期の連結決 算は、純利益が前年同期比8%減の824億円だった。主力市場のタイでトラックの販売が低調だったほか、海外の販売網 の整備など将来の成長に向けた費用がかさんだ。売上高は4%増の1兆3,491億円で、4-12月期としては過去最高とな った。国内は東日本大震災の復興需要や20年の東京五輪関連の建設需要でトラックの販売が好調だったほか、サウジ アラビアなど中近東でトラックやピックアップトラックの受注が伸びた。一方で、トラック販売で同社が高いシェアを握る タイでは、現地の消費不振による販売減少が続いた。営業利益は1,229億円と7%減った。利益率の高いタイでの販売が 落ちたことで、全体でみた利益率が下がった。東南アジアや中近東での販売網の拡張や、国内外でのアフターサービ ス体制を整備する費用も増えた。15年3月期の業績見通しは連結売上高が5%増、純利益で16%減の1,000億円とする 従来予想を据え置いた。 ◎静岡・清水地区関連 ◆村上秀造船所/カナサシ重工と一体運営へ【2.15】 内航・近海船を手掛ける伯方島の村上秀造船。工場には新造船 台とドックが各1基あり、新造船台では最大2万5000重量㌧までのバルカーやケミカル船、LPG船などを建造している。ド ックは主に内航船の修繕用だが、友好船主から内航船の新造を依頼されて建造する場合もある。建造量は外航・近海船 が年6隻前後。内航船の新造工事が入ると、その分2隻程度増える。造船ブーム期にも先物まで受注を進めるのは控 え、操業もそれほど高めず適正量を維持した。その分、いまも操業をそれほど落としていない。手持ち工事は10隻強で およそ2年分の工事がある。村上秀造船は大きな転換として昨年、会社更生手続き中のカナサシ重工(静岡県清水市) に約3億円を出資し、完全子会社化した。村上啓二社長はカナサシ子会社化の理由について、立地と設備を挙げる。「東 海地区は修繕ドックが少ないため、カナサシ重工の修繕事業は立地上恵まれている。修繕の船種も当社と違い、漁船や フェリー、官公庁船などがあり、修繕売上は当社の2倍もある」。「設備は亜新造船台2本と修繕ドック1本だが、岸壁が長 く船をたくさん着けられる。新造船用船台も当社より大きく、いずれ3万㌧クラスの新造船はカナサシ重工で建造する という構想もある。一時は相当な仕事量をこなしていただけに設備能力は大きく、塗装工場など新しい設備もある。ま た、いろいろな船種で実績があり、基本設計などもそろっている」と話す。カナサシ重工との協業としては、昨年初めに ブロック製作を一部委託するところから始め、昨年秋から新造船を開始した。まずは村上秀が受注したLPG船2隻の建 造を予定している。人数が少ないため操業はそれほど高めず、当面は年間2隻程度建造するが、将来的には年3隻程度 の建造を目標とする。「今後はコストを下げるため、当社とさまざまな面での協力体制を考える」(村上社長)。もともと 両工場とも、さまざまな船種の建造経験がある。「どのような船でも対応できる。新造船は船台状況によってどちらか で建造するかを決める。修繕は立地や船種が違うためそれぞれ顧客が異なるが、例えば当社で受けられない仕事を カナサシで行うなど両工場でドック繰りを考えられるようになる」。お互いに工場を行き来し、改善点を指摘し合ったり するなど、グループとしての一体運営を始めている。村上社長は「ニッチな分野で勝負するのが基本路線。村上秀造船 とカナサシ重工でお互い強くなっていく」と今後の方針を語る。 - 2 - ◎今治造船関連 ◆今治造船、2万TEU型ULCS連続建造/丸亀新設ドック1・5隻タンデム【2.5】 《今治造船(檎垣幸人社長)は、丸亀事業 本部(香川県丸亀市)に新設する大型ドックで、超大型コンテナ船(ULCS)を連続建造する。2016年10月完成予定のドック は全長600㍍で、全長約400㍍の2万TEU型ULCSを1.5隻同時にタンデム建造する方針。韓国造船大手との激しい受注競 争が続く中、同一船種・船型の連続建造により競争力を高める。》【韓国大手に対抗】今治造船はすでに1万4000TEU型UL CS10隻を川崎汽船、同型船5隻と1万8000TEU型ULCS11隻をエバーグリーンから受注済み。ULCSは、大型ドックを新設す る丸亀事業本部などで建造する。日本国内でドックが建設されるのは、今治造船が西条工場に00年に完成させて以来1 6年ぶり。丸亀事業本部の新設ドックは、吊り上げ能力1200㌧のゴライアスクレーン3基を設置。ブロック工場などを含め、 約400億円を投じ、ドックを建設する。ドック建設は3年前から検討してきたが、約2万TEUのULCSの受注を受け、建設を決 断。ULCSの受注で先行していた韓国造船大手3社(現代重工、サムスン重工、大字造船海洋)に対抗し、日本勢でいち早 く2万TEU型を獲得した。新設ドックは、丸亀事業本部隣接の埋め立て地(約10万平方㍍)に建設する。長さ約600㍍、幅8 0㍍、片開きのドックとなる。りんかい日産建設、大林組、東洋建設の共同企業体が建設、16年10月に完成する予定。一 方、ドライ市況低迷によりバルカーの新造船発注が止まっている中、今治造船はLNG船に加え、VLCC(大型原油タンカ ー)、プロダクト(石油製品)タンカーなどタンカーの新造商談にも積極的に対応していく方針。 ◆長崎の商船事業を2社に分社化/三菱重エ、ガス船建造とブロック会社に分離【2.5】 三菱重工業は4日、10月1日付で 長崎造船所香焼工場での大型商船事業を2つの子会社に分社化すると発表した。長崎をガス船の建造に特化したうえ で、建造に関する営業・設計・調達・製造・修理を事業会社として分社。これとは別に、製造の中で上流工程にあたるブロ ック製造を別の会社として分社化する。艦艇事業や、下関造船所での商船事業は引き続き本体に残し、客船建造はエン ジニアリング事業として本体に残す。客船の赤字に伴う商船事業の「抜本改革」として、事業を「解体」するような形で の分社化で合理化を進める。長崎造船所香焼工場での大型商船の建造を、「中期的に高い需要が見込める」製品とし てLNG船やLPG船に集中する。そのうえで、事業を2つに分社する。香焼工場内に船舶建造事業会社として100%出資の 「MHI船海エンジニアリング」を発足する。船舶・海洋事業部のうち、長崎のガス船に関する営業・設計・調達・製造・修理を この新会社に移管する。今治造船とのLNG船事業会社「MI・LNGカンパニー」は従来どおり船主との営業窓口などの役割 を担う会社として存続する。専業分社により、ガス船の連続建造で生産合理化を進めるほか、組織をコンパクト化するこ とで効率化を図り、機動的な体制の中で業務プロセスを合理化し、コスト競争力強化を目指す。また、香焼工場での生産 部門のうち、船体ブロック製造に関しては別途、ブロック製造事業会社として分社する。準備会社を設立した後、吸収分 割によって発足する予定。船舶建造事業会社向けのガス船の船体ブロックを供給するほか、他の造船所へのブロック外 販も進め、年間生産量を拡大する計画。全体の3割程度を外販とする目標だ。ブロック生産に特化し、同種ブロックの連 続建造、設備更新などで生産性向上を図るという。一方、現在長崎が建造を進めている客船事業については、商船事 業から分離。本社の交通・輸送ドメイン内に新組織を発足し、エンジニアリング事業として運営する。また、下関造船所で 手掛けるフェリーや巡視船などは、引き続き交通・輸送ドメイン内の船舶海洋事業部が手掛ける。このため商船の営業、 設計、調達などは、長崎建造船と下関建造船が分離し、長崎分が新会社に移行する形だ。このほか、長崎造船所立神工 場と神戸造船所での艦艇事業については、引き続き本社の防衛ドメイン内の艦艇事業として手掛ける。三菱重工では客 船の巨額赤字を受けて、商船事業の立て直しが大きな経営テーマになっていた。今回の分社は商船の主力工場である 長崎の構造改革という位置づけ。狙いとして「製品ラインの選択と集中、事業のコンパクト化、持てる生産リソースのフ ル活用などにより、経営の合理化、商船事業の発展に努めていく」とする。三菱重工は船舶事業の競争力強化を「一体 運営」に求めようとしてきたが、昨年の事業ドメイン制への移行と今回の分社化によって、むしろ船舶事業が「艦艇」「客 船」「下関」「長崎のブロック製造」「長崎の商船建造」に解体して、それぞれ別組織として動く形になった。造船事業の 分社の形としては過去に例のない形でもあり、その実効性が問われる。 ◆三菱重工/4~12月は7隻受注【2.5】 三菱重工業の2014年4~12月期の商船の受注隻数は計7隻で前年同期の4隻 から増加した。この結果、12月末時点の商船の受注残は38隻になった。受注残内訳はLNG船5隻、LPG船6隻、フェリー/ 貨客船6隻、巡視船7隻など。4日、決算で明らかにした。三菱は事業ドメイン制への移行に伴い、今期から船舶事業の収 益は開示していない。船舶と航空機、陸上システムなどが属する交通・輸送ドメインの4~12月期連結業績は、売上高が 前年同期比17%増の3769億円、営業利益が40%増の132億円、受注高が72%増の4770億円だった。通期では売上高が 前期比8%増の5000億円、営業利益は9%増の200億円、受注高は2倍の7500億円を見込む。 ◆三菱重工、商船事業など分社/香焼工場に100%出資会社【2.5】 三菱重工業は4日、商船事業、船体ブロック製造事 業を分社すると発表した。10月1日付で長崎造船所香焼工場内に100%出資2社を設立。商船建造は需要拡大が見込め るガス運搬船に特化する。商船事業の規模は全社売上高の3-4%程度で、業績影響はそれほど大きくない。しかし、長 崎造船所を解体する形で祖業を切り出す決断は、火力発電システム事業統合に続き、社内外に対する経営改革への強 い意思表示となる。甘えが許されない新会社。徹底したコスト改革による黒字化が先決だが、他社からの出資受け入れ をはじめ、再編に動くのか注目される。客船を除く商船事業の規模は約1500億円。従来は艦艇などに支えられ、造船事 業の中での商船の損益が見えにくかったが、内実は赤字が慢性化。周期的な液化天然ガス(LNG)船需要に助けられて きたが「民間企業として事業収益性が非常に低く株主や投資家に説明しがたいレベルまで苦しくなってきた」(宮永俊 一三菱重工社長)。分社の引き金は累計約1000億円という巨額損失計上に至った客船事業。こちらは商船専業会社と は別に、エンジニアリング事業として「交通・輸送ドメイン」の新組織に移行する。長崎造船所の商船にかかわる人員は現 状約1100人。一連の構造改革で営業、設計、調達、製造、修理などを行う商船専業会社「MHI船海エンジニアリング」には - 3 - 400-500人が、ブロック製造会社には約200人が異動する予定。事業採算をガラス張りとし、意志決定を迅速化。長さ9 90㍍、幅100㍍という国内最大級のドックや巨大塗装工場をフル活用し「営業、設計、工作の連携を強め1-2割のコスト 改善を図る」(幹部)。船体ブロック製造会社は3分の1程度を外販する意向。具体戦略は近くまとめるが「他社との提携 は今のところ考えていない」(三菱重工広報)。造船事業は艦艇、ガス船、客船、ブロック製造と分断され、下関・長崎の2 造船所が工場となる。身軽になる半面、高い設計開発力が低下する懸念は拭えない。LNG船で手を組む今治造船など との協業深化の可能性はあるが、特定企業と四つに組まず、全方位で設計やエンジニアリングを請け負い、強みを最 大化する生き方もあるだろう。 ◆三菱重工、長崎の商船事業10月分社/船舶建造・ブロック製造2社に移管【2.5】 三菱重工は4日、長崎造船所の商船 事業を2015年10月1日付で分社すると発表した。長崎造船所香焼工場内に100%出資の船舶建造事業会社と船体ブロy ク製造事業会社を発足させ、長崎地区の商船の建造をこれら2社に移管する。受注・建造する新造船についてはガス船 に集中する。客船については、商船事業から分離し、エンジニアリング事業として交通・輸送ドメインに発足させる新組 織で運営する。船舶建造事業会社は、三菱重工100%子会社のMHI船海エンジニアリングを継承会社として発足させる。 営業・設計・調達・製造・修理を行う。新造船は、LNG(液化天然ガス)船」もLPG(液化石油ガス)船に集中する。得意船種で あるガス船の連続建造により、生産合理化、組織のコンパクト化、業務プロセスの合理化を進め、コスト競争力を強化す る。船体ブロック製造事業会社は、準備会社を設立後、吸収分割により発足させる。大型船体ブロックの生産に特化す る。船舶建造事業会社へのブロック供給に加え、ブロックの外販を推進する。長崎地区の商船事業の人員は現在約1100 人。このうち400-500人が船舶建造事業会社、200人が船体ブロック製造事業会社に移る。残る400-500人は、客船 を引き継ぐ三菱重工本体のエンジニアリング事業に残る。三菱重工は1980年代以降、商船市場の変化に対応し、5カ所 あった建造拠点を長崎造船所、下関造船所の2カ所に削減してきた。長崎の艦艇、下関の商船については従来の体制か ら変更はない。長崎造船所の商船事業はガス船に特化することとなり、これまで手掛けてきた大型コンテナ船、VLCC (大型原油タンカー)は事実上、撤退することになる可能性が高い。分社により、長崎の商船・艦艇が分離することで、艦 艇の競争激化を予想する向きも強い。造船業界全体に及ぼすインパクトも小さくはない。三菱重工は戦後・日本の造船 業界をリードしてきた。それは、長崎造船所香焼工場の長さ1000㍍に及ぶ巨大ドックとともに、戦後・世界の近代造船業 のナンバーワンであることを意味した。技術面でも造船業界をリードした。90年代後半に韓国の現代重エ、サムスン重 エ、大字造船海洋などが設備拡張に乗り出してからは、日本勢すべてが厳しい国際競争に直面。日本国内でも競争が 激しくなる中、三菱重工はそれまでの「業界の盟主」から「孤高の三菱」と呼ばれるようになった。そうした三菱重工の スタンスとは逆に、国内造船各社が技術面で三菱重工に寄せる期待はいまだに大きい。そのため、三菱重工長崎・商船 分社後について、造船業界にはぽっかりと穴があくような空虚な雰囲気が一部漂っている。「盟主不在の業界は発展し ない」(造船首脳)との危機感もある。今後の日本の造船業界をリードするのはどこか。三菱長崎の商船分社は、造船業 界全体に重い命題を投げかけている。 ◆三菱重工、「総合研究所」を新設/国内5カ所の組織統合【2.6】 三菱重工業は5日、4月1日付で「総合研究所」を新 設すると発表した。横浜、名古屋、高砂、広島、長崎の国内5カ所の研究所を組織上統合し、業務や設備運用を効率化す る狙いだ。発足時の人員は約1,440人。所長は神戸市に所在し、全体を統括。川本要次執行役員技術統括本部副本部長 が初代所長に就く。材料研究部や製造研究部、化学研究部、強度・構造研究部など10の研究部門を配置する。1964年の 3重工合併以来、国内5カ所に研究所を配置してきたが、事業部門が「ドメイン・SBU制」に移行する中、事業所単位の研 究開発体制では、「十分な人材育成ができない」「設備が分散して効率的な管理運営が難しい」などの状況が生じてい たという。総合研究所の経理・安全・人事・設備などの管理業務は、発足済みの研究管理部で行う。 ◆三菱重工、5研究所を統合/船舶研究は長崎で継続【2.6】 三菱重工業は5日、4月1日付で5研究所を組織統合し、単 一の研究所組織「総合研究所」を新設すると発表した。船舶関連の研究は、曳航水槽などの研究設備を持つ長崎地区 で引き続き行う。三菱はこれまで長崎・高砂・広島・横浜・名古屋の5カ所に研究所を持ち、各拠点の事業所に紐づいた 形で研究開発を行ってきた。ただ、会社全体の組織再編で事業所主体の運営が事業ドメイン体制に移行したことを受け て、研究体制も組織横断的な運営に転換することになった。総合研究所の発足時の人員は約1,440人。研究組織は「材 料研究部」「製造研究部」など技術分野ごとに再編し、10部を新設する。全体を統括する総合研究所長は神戸に所在す る形とし、製品開発支援に責任を持つ副所長を3人配置。また、名古屋と高砂、長崎には関連する各研究部が所管する 「研究室」を配置する。船舶関連の研究はこれまで、長崎研究所の浦上と深堀に試験水槽などの設備があり、ここで行 っている。 ◆業界盟主、聖域にメス/三菱重工、長崎の商船分社を決定【2.10】 三菱重工が2015年10月の分社を正式に決定し た。造船業界の反応はどうなのか。造船、内航、行政などのこの1カ月を振り返る。〈デスク〉三菱重工長崎造船所の商船 分社からいこうか。〈A〉1990年代後半以降は、孤高の三菱と呼ばれてきましたが、わが国造船業界の盟主であったこと に変わりはありませんでした。その三菱重工が大型造船所の長崎の商船を分社するというのは、さまざまな感慨を造 船業界関係者にもたらしています。〈B〉三菱重工の技術力に対する造船各社の期待は、いまだに大きいものがあります から、日本の造船業界が今後どうなるのか、固唾をのんで見守っています。〈C〉これまでも造船業界全体にまとまりが 欠ける雰囲気はありましたが、今後はより一層、リーダー不在というムードが強くなるのではないでしょうか。〈デスク〉 分社後の長崎の商船は、ガス船に特化するということだな。〈A〉長崎造船所香焼工場内に100%出資の船舶建造事業 会社と船体ブロック製造事業会社を発足させ、長崎地区の商船の建造をこれら2社に移管します。受注・建造する新造 船についてはガス船に「集中する」とし、「特化」という表現は避けています。〈B〉マーケットの変化によってはガス船以 外も手掛ける可能性はあるのかもしれませんが、現時点では事実上、大型コンテナ船やVLCC(大型原油タンカー)から 手を引いているので、ガス船特化で間違いはありません。〈C〉客船については、商船事業から分離し、エンジニアリング 事業として交通・輸送ドメインに発足させる新組織で運営する予定です。〈デスク〉分社後の概要は?〈A〉船舶建造事業 会社は、三菱重工100%子会社のMHI船海エンジニアリングを承継会社として発足させる予定です。営業・設計・調達・製 - 4 - 造・修理を行います。〈B〉得意船種であるガス船の連続建造により、生産合理化、組織のコンパクト化、業務プロセスの 合理化を進め、コスト競争力を強化します。ただし、ガス船を建造している造船所ほど業績が良くないのが実情です。コ スト削減は大変な苦労を伴うのではないかと予想されています。〈C〉船体ブロック製造事業会社は、準備会社を設立 後、吸収分割により発足させる予定です。大型船体ブロックの生産に特化し、船舶建造事業会社へのブロック供給に加 え、ブロックの外販を推進する予定です。〈A〉長崎地区の商船事業の人員は現在約1,100人です。このうち400~500人が 船舶建造事業会社、200人が船体ブロック製造事業会社に移ります。〈B〉残る400~500人は、客船を引き継ぐ三菱重工 本体のエンジニアリング事業に残ります。〈C〉長崎の艦艇、下関の商船については従来の体制から変更はありません。 〈デスク〉分社後に何が起こるか。注意深く見ていく必要があるだろう。 ◆商船事業と船体ブロック事業を分社/三菱重工長崎、10月1日付でスリム化【2.15】 三菱重工業はこのほど、本年10 月1日付で同社長崎造船所の香焼工場内に100%出資の船舶建造事業会社と船体ブロック製造事業会社を発足させ、 長崎地区の大型商船建造をこれら2社に移管する方針を決定した。客船については、商船事業から分離し、エンジニア リング事業として、交通・輸送ドメインに発足させる新組織で運営する。下関の商船および長崎の艦艇については、従来 の体制から変更はない。子会社2社のうち、船舶建造事業会社については、同社100%子会社の「MHI船海エンジニアリ ング株式会社」を承継会社として発足、営業・設計・調達・製造および修理を行う。新造船分野については、今後は中期 的に高い需要が見込めるLNG船やLPG船に特化する。長崎造船所の得意船種であるガスキャリア船の連続建造体制に よって、生産合理化と組織のコンパクト化、機動的な体制の中での業務プロセスの合理化など、あらゆる合理化を推し 進め、コスト競争力の強化を図るとしている。また、船体ブロック製造事業会社は、準備会社を設立後に吸収分割方式に より発足させる。香焼工場の強味である大型船体ブロックの生産に特化し、同種ブロックの連続建造と設備更新により 生産性向上を図る計画。同社は、船舶建造事業会社へのブロック供給に加え、ブロックの外販を推進することで、年間 生産量を拡大していく見込み。大手重工業系造船は、一昔前まではVLCCやLNG船などを大型商船建造分野で、当時あ った船台呼称能力の関係から有力中手造船所の参入を阻止した格好となり、その結果、国内市場を独占することが可 能だった。しかし時代の移り変わりと共に、その呼称能力が撤廃されることになり、状況は一遍する。結果的に、現在で は新たに市場参入した中手造船が、人件費などの労務コストの安さと、元々定評が高かった技術力を如何なく発揮する ことで、大型船建造においても国内市場をリードする状況になっている。今治造船が、中手造船として初めてVLCCやLN G船の建造に着手したのち、続いて名村造船所などもVLCC建造に着手、現在は25万重量㌧型鉄鉱石運搬船の連続建造 を手がけるまでに成長した。今治造船もまた、世界初の20000TEU型メガ・コンテナ船11隻の受注に伴い、新ヤード建設 を準備するなど、海外競争力は飛躍的に向上している。一方で、高コスト体質の大手重工系からの脱却を早々に果たし たJMUなどは、造船専業としての地位を固め、安定操業を続けている。今回の三菱重工長崎の分社化は、これら有力中 手造船や大手専業との熾烈な受注競争の結果、必然的に求められた結果ともいえる。三菱重工も1980年代以降、商船 市場の変化に対応して、5カ所あった建造拠点を長崎・下関の2カ所に集約、なかでも神戸が商船事業を撤退したことは 記憶に新しい。神戸の商船撤退においては、海外船級筋から「三菱重工はコンテナ船建造市場において白旗を振った」 と認識されたことで、イメージダウンを世界中に植え付けてしまった。今回の長崎分社化にあたっては、重工系特有の 高い人件費など高コスト体質に、どの程度までメスを切り込めるかがカギになりそうだという見解が多い。長崎造船所 にはこれまで技術的に高度な大型商船の建造に幅広く取り組んできた実績がある。今後は製品ラインの選択と集中、 事業のコンパクト化、持てる生産リソースのフル活用を積極化し、経営の合理化と商船事業の発展を見据えた舵取りを することで、造船業での生き残り宣言を改めて強くアピールした格好となった。 ◆三菱重株、初の10日続伸/受注好調、成長期待高まる【2.26】 25日の株式市場では三菱重工業の株価が小幅高と なり、データをさかのぼれる1977年以降では初めての10日続伸となった。カタールで都市交通システムを4000億円で 受注するなど海外での受注が好調なことを踏まえ、来期以降の持続的な成長への期待が高まっている。終値は前日比 90銭(0・13%)高い660円50銭だった。4日に発表した連結決算で2015年3月期の業績見通しを変更しなかったため、2 月前半は失望売りが目立っていた。続伸した10日間の上昇率は6・4%、年初来では1・4%安にとどまるが、株高の流れが 途切れないのは、このところの好調な受注が好感されているからだ。20日に発表したカタール鉄道からの受注は、日本 勢の都市交通システムとしては過去最大。25日・には英国中部の大規模洋上風力発電計画で風車などの発電システム を数百億円で受注することも判明。受注案件は向こう数年にわたって売り上げに貢献するため、市場では成長への持 続力が出てきたと受け止めている。14年末の受注残高は3月末比253億円増の5兆3991億円。宮永俊一社長が掲げる 「事業規模5兆円の高収益企業」という目標の達成も現実味を帯び始めている。証券会社など17社による三菱重の16 年3月期の予想営業利益の平均値は3020億円で、今期の会社予想に比べた増益率は16%。みずほ証券の若栄正宣シ ニアアナリストは「三菱重は円安による押し上げがなくても成長できる企業。さらなる見直し買いが入る可能性が高い」 と指摘する。 《三菱重工商船部門分社化関係記事》 ◆三菱重工、造船分社の波紋(上)/改革のつまずき、誤算はどこに【2.6】 三菱重工業が、長崎造船所の商船事業分社 を正式に決めた。この10年、高付加価値ヤードヘの転換を図り、事業改革を急いだが、本丸の客船事業でつまずき、理 想とした姿をつくり上げることが困難になった。再起を図るための「分社」プラン。だが、三菱の造船事業には、果たし てどのような未来が見えているのか。〈高コストゆえの戦略〉「日本の造船各社が大宗船で利益を出せる体質に事業体 質を改善してきたが、当社は赤字が継続しており、コスト競争力で大きな後れを取っている」。今回の分社の前提となる 三菱の状況分析にはこうある。三菱重工にとって、割高なコストは長年にわたって解決すべきテーマだった。海外の造 船大手や、国内の専業造船所に比べると、賃金水準や本社経費も高くつく。1,000人という豊富な設計陣を生かし、技 術力で製品に付加価値をつけると言っても、現実的に造船業では、燃費性能などの差別化が追加の利益を生むわけで はない。技術面での参入障壁が高いといわれるガス船やコンテナ船などに活路を見出してきたが、これら船種にも韓 国や中国、国内専業造船が進出し、もはや「高付加価値船」ではなくなった。残る船種は、日本より高コストの欧州造船 - 5 - 業を成立させている客船-。高コストを前提にした事業戦略は、自然とここに行きつく。三菱重工の造船事業戦略は、基 本的に「技術力を生かした高付加価値路線」にあった。これがリーマン・ショック以降にに大きく推し進められ、「一般商 船からの撤退」という方針にまで突き進む。これによりコンテナ船を主体としていた神戸造船所は商船事業から撤退。 設計技術者を生かすため、売上確保にはエンジニアリング事業の強化も必須となった。自社での生産分は、客船などに 特化する。こうした「改革プラン」がわずか数年間という短期間で整えられた。社内外の「改革」の圧力に後押しされる ように、事業転換を急いだ面もあったようだ。だが、この路線が、客船の巨額赤字で早くも躓いた。【高付加価値路線を 実現する力】「なぜ赤字が受注額と同じ規模にまで膨れ上がるのか」。この1年余り、日本の業界内では客船の赤字は大 きな話題の1つとなっていた。1,000億円規模の赤字。最終的には、さらに膨らむとの懸念まで流れる。赤字の背景につ いては、三菱重工がアナウンスしているとおり、プロトタイプならではの度重なる仕様変更や設計確定の遅れなどが原 因だ。現象面ではそうだとしても、そこに至った本当の問題点は見えていない。いまなお長崎造船所では、昼夜を問わ ず客船の建造工事が進んでいる。その中で、総括は難しいが、もしも国内の造船業全体で見られている課題が三菱重 工でも起こっていたとすれば…。例えば、「顧客との交渉力が弱くなっている」という問題。日本造船業は、かつては海 外の石油メジャーやギリシャ船主をはじめとした厳しい要求の中で船を建造し、数多くのトラブルも経験した。だが10年 以上にわたり、国内案件や商社案件が中心になると、外国人と担当者が丁々発止やりあう経験は減っている。三菱重 工が仕様変更や現場での手戻りなどに苦しむ姿は、こうした課題に重なる。あるいは、顧客視点の欠如。造船所として 工法改善や調達費削減、新技術開発が先に走り過ぎてしまい、船主との意識にかい離が生まれるという点は、他の造 船所の現場でも問題点として指摘されている。こうした点が客船の現場でもあっただろうか。三菱重工が過去に建造 した客船では、仕上げの美しさや丁寧な工事といった点で、顧客から高い評価を受けた。だが、こうしたクラフトマンシ ップの高さとは異なる点に、客船事業を成功させるポイントがあったといえるかもしれない。「中国造船業は客船参入 に向けて、フィンカンチェリと提携を結んだ。三菱重工もマイヤーベルフトやフィンカンチェリを敵に回すのではなく、“三 国同盟”を結んで市場進出を図る道もあったのではないか」(造船経営者)。そんな分析も聞こえるが、後付けの評論と もいえる。客船プロジェクトはいまなお続いている。実質的にはかなりの短工期となり、長崎の現場でいま日々起こっ ていることは、「日本の造船業に残すべき知見となる」(造船所経営者)との見方もある。一方で、三菱はここからいか に立て直すのか。再建プランについては事前にさまざまな憶測もなされていたが、今回三菱が示した「分社計画」は、 事前に想定されていた部分と、そうでなかった部分がある。 ◆三菱重工、造船分社の波紋(中)/異質の再建策、真意は?【2.9】 【「造船屋の発想ではない」】三菱重工の分社発表か らわずか数日だが、早くもこのプランは波紋を呼んでいる。賛否というより「戸惑い」だ。もともと、三菱の造船分社に ついては、昨年のかなり早い段階から業界内でも推測が広がっていた。だが今回、具体的な分社計画が公表されると、 その内容には「予想外」という声が多い。「狙いが見えない」。造船事業を良く知る同業他社の経営者からも、そんな意 見は少なくない。三菱は香焼工場の商船事業のうち、船体ブロックと、商船事業をそれぞれ分社する。そして商船事業 はガス船に特化する。客船はエンジニアリング事業として本体に残す。長崎造船所の商船事業の人員は約1100人だが、 このうち商船事業会社「MHI船海エンジニアリング」に400~500人が、ブロック会社に200人が移り、これ以外が本体に 残る。「このプラン作成に、船舶の人間は関与していないのではないか」(造船経営者)。そんな声が業界内に広がって いるのは、「ここには造船屋の発想が見えない」(同)からだ。【2つの疑問】この数日間で造船所関係者と話し、三菱のプ ランに関する意見を徴収した。さしあたり、多くの人が共通して口にした疑問点は2つだ。1つは、分社化による香焼のブ ロック製造事業。果たしてこれが事業として成立するのか。全体の3割を外販に出すというが、ブロック製造はやはりコ スト勝負。「日本で最も高い三菱重工のコストで造るブロックに競争力はあるのか」(造船大手幹部)。この点について三 菱重工は、「従来はガス船など艤装工事が中心の船種だったため、香焼工場の内業工場などのキャパシティをフル活用 できておらず割高になっていた。他社ブロックを請け負うことで操業を上げ、競争力を出せる」と解説する。瀬戸内地区 でブロックの単価が高騰していることなどを考慮すれば、十分成立できるとの読みがあるのかもしれないが、それで も、発注が見込まれている専業造船所の外注相場に、三菱重工がコストを合わせることは、簡単ではなさそうだ。もう1 つの疑問点は、「ガス船特化」の方針だ。「得意船種であるガス船の連続建造による生産合理化」が狙いとはいえ、バル カーなどの大宗船への特化ならまだしも、LNG船やLPG船のように需要の山谷が大きい船に決め打ちすることはリスク が高い。「マーケット視点ではなく、メーカー側の論理」(造船営業担当者)にみえる。現実にLNG船では、ごく最近でも2 008~10年の3年間で発注隻数が世界全体でわずか10隻という「谷」があったばかりだ。足元はシエールガス商談が活 況だったが、それも既に一段落しており、原油安も需要見通しに影を落とす。これについて三菱重工は「シエール需要 だけでなく、リプレースにもー定の需要を見込んでいる」と堅実な需要に基づいたものと解説する。【3年は成立する】確 かに今回のプラン、仕事量という面に関していえば、当面は機能しそうだ。LNG船については既に2017年までの仕事量 が確定している。ブロックについても、有力顧客とみられる国内専業造船所らは、向こう数年は相当量の外注工事を必 要としている。三菱重工の次の事業計画は2015年~17年度の3年間が対象。この期間でいえば、ガス船特化とブロック 事業は「成立」する。となれば、これから3年間が勝負ということになる。客船2隻を仕上げつつ、同時に背水の陣でコス トを下げて競争力ある体質に転換し、そして…。いや、仮にそうやって「1~2割のコストダウン」を実現して競争力のある “ブロック製造業者”を作ったとして、その先に三菱重工は何を目指すのだろうか。今回は「身の丈に合った経営スタイル にする」というのが三菱重工による解説だ。ここからは縮小のイメージしか浮かんでこない。分社後の選択肢として考 えられる他社との提携も「考えていない」というだけに、ますます真意は見えない。 ◆三菱重工、造船分社の波紋(下)/外から見えぬ「再生」への絵姿【2.10】 【造船事業の“解体’】巨大化する今治造船 や、統合再編を進めるジャパンマリンユナイテッド(JMU)。海外での事業拡大を追う川崎重工に常石造船。そしてグルー プ化に手を打った名村造船所-。造船事業の勝ち残り策は多様だが、そこに共通しているテーマは「規模による勝ち 残り」と、それを成り立たせるための「一体運営による全体最適化」にある。だがこうした中で、三菱重工業だけが規模 からも一体運営からも背を向けるかのようだ。一昨年来の事業ドメイン制への移行と、今回の分社等の抜本改革策によ - 6 - り、三菱重工の造船事業は、組織の上では「艦艇」「客船」「下関造船所の造船事業」「香焼工場のブロック製造」「香焼 工場の商船建造」に分割される形になる。思えば三菱重工は十数年前までは日本最大の造船事業の規模を持ち、他社 がいま再編などで手に入れようとしているものを、最初から手にしていたわけだ。だが、「規模」が勝ち残りを必ずしも 保証しないということだろうか。70年代の広島や横浜からの新造事業撤退にまでさかのぼらずとも、神戸造船所での 商船撤退から、再建のための「縮小」が続いている。また「規模がなくなる代わりに、従来バラバラだった事業所を“一 体運営”することで勝ち残りを目指す」という近年の方向も、今回の分社で解体という逆方向に転換するかのようだ。 総合重工の分社においては、川崎重工が分社時代の弊害の1つとして「一体感の喪失」を挙げていた。子会社や本社事 業部がそれぞれ短期的な目標に応じた価格設定などを行うため、本社事業部からの調達品も高くつき、研究開発も関 係が薄れたという。「重工会社の本来の強みである総合力が棄損され、全体として競争力を損なった」。これが川重の 造船分社における総括だ。この点を、業界が認識しているだけに、「造船事業ごと分社した川重でさえそうなのだから、 三菱重工のように、グループ内取引がもともと多い企業が解体的分社を行うとなれば、この弊害はさらに大きくなる のでは」(造船関係者)との懸念を生んでいる。「別組織での一体運営は、本当に難しい。最初は協力するが、世代が代 わるたび関係は希薄になる。ましてや事業別・製品別ROIC(投下資本利益率)が社内で重視される風潮では、長期的視 点で他部門と協力することなど誰も考えなくなる」。ある製造業の幹部はそう話す。「組織の三菱」は、一体感を守れる だろうか。あるいは、本来強みとしていた垂直統合型のモデルからは決別するのだろうか。【技術は維持できるか】1000 人の技術者集団による技術開発力。そして、日本最大の艦艇事業。こうした強さもまた、今回の長崎商船分社とは決し て別の話ではなさそうだ。技術開発力について、造船業では「自社生産がセットでなければ技術は維持できない」と一 般的にいわれている。造船所の海外進出戦略における国内のマザーヤードと同様、技術のマザーヤードとなるべき工 場との一体運営が必須だ。このため、「三菱重工の解体的分社は、金の卵を産むガチョウの腹を裂く形にならないか」 (造船所経営者)との懸念の声も上がる。三菱重工が近年、業界内でのパートナーとして選んだのは、同じような業態を 持つ総合重工会社ではなく、専業造船所だった。「技術は三菱、コストは専業」という状況認識がその前提にあるわけ で、他社に技術を販売して売上を立てるエンジニアリング事業が成立するには、技術維持は最低条件だ。新体制では、 開発部隊は比較的集中して残るようだが、造船関連の技術者はそれぞれ違った組織に分散する。組織上は分断される 中で、それぞれの持ち場を超えて連携しながら、技術力を維持できるか。【艦艇への影響は】もう1つの視点は、艦艇事業 への影響だ。前段階の事業ドメイン制への移行では、艦艇と商船が組織の上で分離した。一般的に、艦艇は一般商船と“ 不可分”というのが、造船事業における認識だ。米国造船所のように水上艦の建造が途切れなく続くわけではないた め、艦艇工事には必ず空白が生まれ、仕事の谷にあたる時期には商船を建造せざるを得ない。艦艇建造ヤードの商船 建造コストは高くつく面もある。採算管理は商船・艦艇で別に行えるにしても、人手の融通などで商船との一体的な運 営は欠かせない。三菱重工は一昨年の組織改革で、「防衛ドメイン」に艦艇事業を移管したことに伴い、長崎2工場のう ち立神工場を艦艇に、香焼工場を商船にという形に分離した。別組織となっても「事業の特性を考慮し、有機的に連携 する」との説明が当初はあったが、今回の分社はどう影響するか。他の艦艇造船所の関係者は「運用できないわけでは ないが、手続きなども含めて労力はかなりかかるだろうという印象」と見る。「それも、香焼の商船があることが前提。 仮に香焼が撤退となれば、下船(下関造船所)の商船事業だけが、立神と神戸の艦艇を支えるのは厳しいようにみえ る」(同)。艦艇と商船の連携という点でも、三菱重工は従来と異なる道を進もうとしている。【届かぬメッセージ】“事業規 模5兆円”という目標にまい進する三菱重工。その中で、商船事業は声を失ったかのようだ。「客船1000億円の赤字は、 今後何年間かけてでも、利子をつけて返す」。そういう言葉をいまの商船部門が社内外で口にできないのはやむを得 ないにしても、自己反省のうえに、再生への道筋を感じさせるようなプランだったら、ここまで業界内での動揺は広が らなかっただろう。あるいは、分社によって商船事業の奮起を促す、という上層部の狙いが明確ならば、やはり納得性 があったかもしれない。だが、三菱重工が「再建策」として示した解体的分社という道筋は、何らかの事業再建策の提 示を求めていた外部のステークホルダーには納得性のあるものだったかもしれないが、同じ船に乗る同業他社や顧 客、あるいは、三菱重工の追い落としを狙う海外のライバルに対しては、現状では再建へのメッセージとしては聞こえ ていない。「三菱重工が本来すべきだったのは、艦艇や神戸の商船も含めた“造船事業全体での分社”だ。船舶部門に 責任と武器を与えたうえで、自らの責任と権限の中で血を流して競争力を高めさせ、そこで他社との統合なり本体復 帰を模索すべきだ」。ある造船経営者はこの数年間、そう公言し続けていた。別の造船所幹部は「三菱重工が本気にな れば再編の声に応じる造船所はある」と語っていた。三菱が「抜本改革」に踏み込むというだけに、周囲はこうした策を 期待していた。三菱重工の造船事業の再建は、まずは三菱重工自身の問題である。とはいえ、盟主不在は業界に現実 的な悪影響も生んできた。今治造船などの専業造船所が、規模や利益の点で圧倒するようになったとはいえ、その中 に三菱重工の代わりとなる存在が生まれたわけではない。今回の波紋で明らかになったのは、日本の造船業界がまだ 「三菱のいない造船業」を想定していないということでもある。分社は8カ月後の10月1日。具体的な施策としては、こ れから詳細を詰める部分も多いようだ。今後正式に決定・発表される詳細計画の中に、「三菱重工は、これで本当に再 生するのか」という問いへの明確な答えが、用意されているのだろうか。 Ⅱ.国内造船・造機関係の動向 ◆今治首位、常石がJMU抜き2位/国内新造船竣工ランキング、専業が順位挙げる【2.18】 《本紙がとりまとめた日本 造船業の2014年のグループ別新造船竣工量ランキング(総㌧基準)は、常石造船グループがジャパンマリンユナイテッ ド(JMU)を抜いて2位に浮上した。名村造船所は佐世保重工の系列化により、川崎重工グループ(中国建造分含む)の建 - 7 - 造規模に並ぶなど、専業造船所の躍進が際立った。日本全体では、主力13グループ(29社)の竣工量合計が1548万総㌧ で前年に比べて7%減少した。多くの造船所が操業を落としたことで、建造量としてはボトムにまで落ち込んだよう だ。》2014年のグループ別の新造船竣工量は表のとおり。各社の発表と本紙聞き取り調査などをもとに集計した。連結 対象の会社だけでなく、協力関係の深い企業もグループとして合計した。竣工量が100万総㌧を超えたのは、今治造 船、常石造船、JMU、名村造船、川崎重工の5グループだった。首位は今年も今治造船グループ。操業を再び戻し始めた ことで、前の年から約10%増の433万総㌧を竣工し、2位以下に倍以上の差をつけた。世界全体でも、韓国大手のサムス ン重工を抜いた可能性がある。また、今治造船単体でも341万総㌧で国内トップだった。常石造船は、多度津造船の縮小 に伴い国内建造分が減る一方、海外2工場が建造量を大きく増やしたことで全体では3%増の222万総㌧となった。こ の一方で、2013年に統合によって建造量国内2位だったJMUは、2014年は操業をもう一段落としたことで主力の有明事 業所や津事業所の建造量が減り、20%減の210万総㌧となった。これにより、常石がJMUを抜いて2年ぶりに2位に返り 咲いた。佐世保重工を系列化した名村造船グループは、3社合計で14%減の129万総㌧となった。また、川崎重工は、中 国の合弁2造船所を合わせた建造量が129万総㌧だった。国内工場が操業ダウンで8割減になったことで、大きく減少。 これにより、名村と川重の建造規模はほぼ同じ水準になった。昨年は多くの造船所が竣工量を減らしたが、特に総合重 工系の縮小が際立っている。操業ダウンに加えて、建造船種の端境期にあたったことも影響したようだ。海外建造分を 除く重工系造船5社の竣工量合計は348万総㌧で、前年に比べて24%減少。過去20年で初めて400万総㌧を割り込ん だ。一方で、こうした換業ダウンは昨年がボトムで、今年からは大型船の建造開始や、操業が徐々に戻ることで、建造量 は再び増加に転じる可能性が高い。 ◆1月の受注量、17%減の118万㌧/輸組統計、VLCCやLNG船成約も【2.17】 日本船舶輸出組合(輸組)が16日発表し た1月の輸出船契約実績は12隻・118万総㌧だった。総㌧ベースで前年同月比17%減となり、月間ベースの契約実績は7 カ月連続で前年同月を下回った。ただ、VLCCやLNG船などの大型契約があったほか、邦船社向けの比率も高まってい る。1月の契約船の内訳はバルカー6隻(ハンディ2隻、ハンディマックス2隻、パナマックス1隻、ケープサイズ1隻)、タンカ ーが6隻(VLCC3隻、LNG船3隻)。12隻のうち純輸出船は2隻だった。LNG船などで邦船社の発注が増える一方、海外船主 によるバルカーの発注が減少したことで純輸出船が全体に占める割合は下がっている。14年度のこれまでの実績を振 り返ると、14年4月~15年1月の純輸出船の比率は㌧数ベースで全体の32.2%で、13年度の同期実績の47.1%と比べて 低くなっている。1月の受注船の契約態様は、㌧数ベースで円建て契約30.9%、円・外貨ミックス3.7%、外貨建て65.4% だった。現金払い契約は100%、商社契約は3.7%。LNG船などの契約があった影響で円建て契約が3割超を占めた。ま た、納期別では2015年度もの17.1%、16年度もの3.7%、17年度もの42.2%、18年度もの24.9%、19年度もの12.1%だっ た。19年度納期の成約は初めて。竣工量に相当する通関実績は、1月は前年同月比41%増の39隻・170万総㌧となり、大 幅に増加した。 ◆輸出船契約、1月17.4%減118万940総㌧/7カ月連続で減少【2.17】 日本船舶輸出組合(JSEA)が16日発表した201 5年1月の輸出船(一般鋼船)契約実績は、前年同月比17・4%減の118万940総㌧となり、7カ月連続で減少した。造船各社 は一定の仕事量を抱えており、船価回復を待つ様子見の展開が続いているようだ。15年の新造船マーケットは低調な 滑り出しとなった。契約隻数は12隻。内訳はハンディ型バラ積み運搬船2隻、ハンディマックス型バラ積み船2隻、パナマ ックス型バラ積み船1隻、ケープサイズ型バラ積み船1隻、VLCC(超大型タンカー)3隻、液化天然ガス(LNG)運搬船3隻。 納期別比率は15年度17・1%、16年度3・7%、17年度42・2%、18年度24・9%、19年度12・1%。一方、1月の通関実績は39隻、 同41・3%増の169万9351総㌧。1月末時点の手持ち工事量は646隻、2774万3710総㌧。 ◆1月受注17%減118万総㌧/邦船系向けが拡大【2.17】 日本船舶輸出組合(船舶輸組)が16日発表した2015年1月 の輪出船契約(受注)実績は、118万総㌦(56万CGT=標準貨物船換算㌧)で、前年同月比17%減(CGTベースで15%減)に 落ち込んだ。契約隻数は14隻減の12隻で、バルカー、タンカーが半々となった。このうち、海外船主向けの純輸出船は2 隻にとどまった。14年4月~15年1月の累計受注量の船主系列別割合は、邦船系向けが70%と前年同期の53%から大幅 にアップしている。15年1月の契約隻数12隻の船種別内訳は、ハンディサイズバルカー2隻▽ハンディマックスバルカー2 隻▽パナマックスバルカー1隻▽ケープサイズバルカー1隻▽VLCC(大型原油タンカー)3隻▽LNG(液化天然ガス)船3 隻。契約方法は全て現金払いで、トン数ベースの契約形態内訳(シェア)は円建て31%、円・外貨ミックス4%、外貨建て6 5%。商社契約は4%だった。納期別内訳は、15年度17%▽16年度4%▽17年度42%▽18年度25%▽19年度12%。輸出船 竣工量を示す1月の通関実績は170万総㌧(74万CGT)で、41%増(CGTベースで35%増)に拡大した。通関隻数は9隻増 の39隻だった。15年1月末の輸出船手持ち工事量は646隻、2,774万総㌧(1,355万CGT)。前年同月末の621隻、2,664万 総㌧、(1,243万CGT)を上回った。 ◆輸出船契約、1月17.4%減/7カ月連続マイナス【2.17】 日本船舶輸出組合が16日まとめた1月の輸出船契約実績は 前年同月比17.4%減の118万940総㌧と7カ月連続のマイナスだった。ばら積み船を中心に発注が減っている。受注隻数 は14隻減の12隻。ばら積み船6隻、大型タンカー3隻、液化天然ガス(LNG)運搬船3隻だった。1月末時点の手持ち工事量 は2,774万総㌧と前年同期より110万総㌧増えた。 ◆手持ち工事量、2774万総㌧に減少【2.17】 日本船舶輸出組合がまとめた今年1月末時点の手持ち工事量は646隻・ 2774万総㌧(1355万CGT)で、12月末時点から減少した。納期別の内訳は、2014年度引渡分60隻・234万総㌧、15年度28 8隻・1125万総㌧、16年度179隻・779万総㌧、17年度108隻・543万総㌧、18年度以降11隻・93万総㌧だった。 - 8 - ◆造船大手船舶部門、通期4社営業黒字/円安効果も受注確保が課題【2.5】 大手5社の船舶部門の2015年3月期連 結業績は、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)、川崎重工、三井造船の3社が営業黒字を確保する見通しだ。交通・輸送ドメ インとして業績を開示している三菱重工を含めると、計4社が営業黒字となる見込み。各社とも17年いっぱいの仕事量 確保にめどを付けており、海運ドライ市況が極めて低迷するなか、新規の新造船受注確保が最大の課題となる。14年4 -12月期の連結決算は、JMUが営業利益106億円でトップ。ただし、採算の厳しい新造船の建造により、前年同期比では 半減となった。次いで、三井造船43億円、川崎重工33億円。三菱重工が4日発表した14年4-12月期連結決算は、交通・ 輸送ドメインの営業利益が前年同期比40%増の132億円だった(船舶・海洋事業の業績は開示していない)。各社とも、 受注工事損失引当金を戻し入れるなど円安の恩恵を受けた。今期、来期と船価が底値を付ける局面で受注せざるを得 なかった新造船の引き渡しが続くため、各社とも円安で一息つくことができる。今後の最大の課題は、新規の受注確 保。国内船台事情への影響が大きいバルカーの新造発注が、ドライ市況低迷により止まっているためだ。13-14年前半 の新造船発注ブームにより、日韓中の造船国の船台はある程度埋まっている。日本国内も、ほぼ17年いっぱいまで埋ま っており、各社とも3年分の仕事量を確保している。ただバルカーの新造発注ストップを受け、新造船価相場は全体的に じり安基調が続いている。ドライ市況は16年いっぱい厳しい展開が続くとの見方が広がっており、造船各社は新規の新 造船受注確保で相当の苦戦が予想される。円安メリットを利用して、どのように新規受注を確保していくのか。造船各社 の経営判断に注目が集まる。 ◆中堅造船3社/受注残高は全社増加/4~12月期、新造船・修繕など堅調【2.10】 上場する中堅造船3社の2014年4~1 2月期連結決算が出そろった。期間中の受注は、新造船に関して各社が複数確保したほか、修繕なども堅調に推移。こ れにより、3社の修繕を含めた造船事業の受注残高(14年12月末時点)は、それぞれ大きく増加した。名村造船所の14年 4~12月期新造船受注高は前年同期比10%減の796億円だった。グループ全体で25隻を成約。このうち14年10月から連 結子会社となった佐世保重工業分は1隻だったものの、同社はすでに14年4~9月期に78型バルカー1隻、85型バルカー5 隻の計6隻受注。これが反映された名村グループの14年12月末の新造船受注残高は、前年12月末比31%増の3,193億 円に拡大した。名村の修繕船事業も、14年4~12月期受注高は前年同期比33%増の61億円、14年12月末時点の受注残高 が前年12月末と比べ31%増の31億円に増えた。サノヤス造船は14年4~12月期に新開発の89型2隻のほか、82型、60型 を含めバルカー計5隻を成約した。13年4~12月期のバルカー6隻(82型、60型)と比べ隻数が1隻減少したものの、バルカ ー以外に作業船を1隻受注したほか、修繕事業、LPG(液化石油ガス)船用タンク製造などが好調で、造船事業全体の受 注高は前年同期比48%増の301億円に膨らんだ。14年12月末の同受注残高も前年12月末比17%増の716億円(新造船 は工事進行基準)となった。内海造船の船舶事業(改修船工事含む)受注高は、新造船の成約が5隻減の6隻だったこと もあり、前年同期比28%減の284億円に落ち込んだ。一方、14年12月末の同受注残高は前年12月末比19%増の518億円 に拡大した。 ◆一層のシナジー期待/14年4~12月期、名村増収増益【2.10】 〈デスク〉上場の中堅造船3社の2014年4~12月期業績 が発表されたが、どうだったかな。〈A〉14年10月に、佐世保重工業を連結子会社化した名村造船所は増収増益でした。 円安進行で新造船事業の増収効果や多額の工事損失引当金取り崩しがあったほか、修繕船事業などが収益を改善し ました。佐世保重工のグループ入りで、新造船事業の営業、設計・開発、調達などでさらにシナジー(相乗)効果発揮を 期待したいです。〈B〉サノヤスホールディングスは、円安局面を捉えて為替リスクのヘッジを行ったことで、受注済みの 新造船に関する為替変動による受注工事損失引当金の変動が小幅にとどまりました。このほか、市況悪化で新造船受 注に際して受注工事損失引当金の新規引き当てが必要となったことなどもあり、利益全項目で減益となりました。〈C〉 内海造船は、新造船工事で売り上げ対象船が5隻増の14隻となったことなどで、大幅に増収となったほか、損益も前年 同期の赤字から黒字に転換しました。3社の通期業績予想は、内海が黒字化を見込みます。名村は、15年1~3月期に受注 を見込む新造船の工事損失引当金計上、外貨建て売掛金の為替差損などで、通期は14年4~12月期の利益を下回り、利 益全項目で減益です。サノヤスも減収減益予想です。〈デスク〉14年4~12月期の各社の新造船受注はどうかな。〈A〉受 注隻数では、各社前年同期を下回りました。受注内容は、名村が8万2,000重量㌧型(82型)、34型、85型バルカーなど2 5隻(前年同期39隻)、サノヤスが新開発の89型や、82型、60型などバルカー5隻(同6隻)、内海造船は貨物船、自動車 運搬船、RORO船計6隻(同11隻)でした。名村の受注には、佐世保重工が11年10~12月期に受注した85型バルカー1隻が含 まれています。佐世保重工は14年4~9月期に78型1隻、85型5隻を受注しているので、名村の期間中の受注隻数は実質3 1隻です。〈B〉名村の新造船事業の受注高は10%減の796億円ですが、14年12月末の新造船受注残高は、佐世保重工分 がフルに寄与し、前年12月末比31%増の3,193億円になっています。〈C〉サノヤスの期間中の受注高は、修繕船を含め た造船事業でみると48%増の301億円に膨らんでいます。内海造船の14年4~12月期船舶事業(改修船工事含む)受注 高は前年同期比28%減の284億円でした。 ◆造船の今期決算に円安効果/三井・川重が上方修正、JMUは黒字維持【2.25】 造船決算に円安効果が現れそうだ。 総合重工の2015年3月期決算では、川崎重工と三井造船が船舶部門の利益予想を再び上方修正した。また、ジャパンマ リンユナイテッド(JMU)も黒字確保が視野に入っている。円安が足元のドル建て船の採算改善に加えて、受注工事損失 引当金の戻りでも増益効果をもたらしている。総合重工4社の船舶部門と専業造船所4社の2014年~12月期決算と通 期業績予想は表のとおり。三井造船は、連結対象の三井海洋開発の利益が円安などを背景に予想より拡大したことか ら、船舶部門の営業利益予想を上方修正。減益予想から一転して、前期比1%増の100億円になる見通しとなった。川崎 重工は前提為替レートの見直しに伴い船舶部門の営業利益が従来予想から20億円増えて、40億円になる見通しとし た。JMUは通期予想を公表していないが、円安により受注工事損失の戻りが発生することなどから、黒字は維持する見 通しだ。 - 9 - ◎新造船 ◆新造船価/バルカー小幅続落、全船型20~50万㌦安【2.10】 新造船マーケットでバルカーの新造船価相場が小幅 続落した。大型のケープサイズから小型のハンディサイズまで全ての船型で20万~50万㌦安となった。マーケット筋に よると、足元のバルカーの新造船価レベルは、ケープサイズが直近と比べ20万㌦安の5,330万㌦(18万重量㌧型)、パ ナマックスは30万㌦安の2,850万㌦(7万6,000重量㌧型)、ハンディマックスは30万㌦安の2,650万㌦、ハンディサイズは 50万㌦安の2,250万㌦を付けている。ドライ市況が底ばいとなっているのを受け、バルカーの新造発注は世界的にほぼ 止まっている。新造船価は当面、じり安傾向が続くものとみられている。タンカーの新造船価レベルは若干弱含みなが ら横ばい。VLCC(大型原油タンカー)は9,650万㌦(32万重量㌧型)、スエズマックスは6,500万㌦(15万7,000重量㌧型)、 アフラマックスは5,350万㌦(11万5,000重量㌧型)、MR(ミディアムレンジ)型プロダクト(石油製品)タンカーは3,650万 ㌦で推移している。ただし、VLCCで9,600万㌦の成約が9日までに表面化したため、目先は下落圧力が若干強まる可能 性が高い。ガス船は横ばい。VLGC(大型LPG(〈液化石油ガス〉船)は7,850万㌦(8万2,000立方㍍型)、LNG(液化天然ガ ス)船は2億㌦(16万立方㍍型)を維持している。コンテナ船は1万3,000TEU型が横ばいの1億1,600万㌦、自動車船(PCT C)は100万㌦安の6,200万㌦(6,000台積み)となっている。 ◆新造船価/バルカー・タンカー、弱含み横ばい【2.18】 新造船価相場がバルカー、タンカー共に弱含み横ばいとなっ ている。ただ、ドライ市況の低迷を受けてバルカーの新造船価相場はタンカーに比べて全体的に下落圧力が強く、目先 はじり安傾向が続く可能性が高い。マーケット筋によると、足元のバルカーの新造船価レベルは、ケープサイズが5,330 万㌦(18万重量㌧型)、パナマックスは2,850万㌦(7万6,000重量㌧型)、ハンディマックスは2,650万㌦(6万2,000重量㌧ 型)、ハンディサイズは2,250万㌦(3万5,000重量㌧型)と弱含みながら横ばいで推移している。ドライ市況の底ばい局 面入りを反映し、バルカーの新造船価レベルは全船型で2013年末のレベルまで下落している。新造船供給圧力によりド ライ市況は16年いっぱい低迷すると見込まれているため、バルカーの新造船価相場は当面、じり安が続くとみられて いる。直近の底値は、ケープサイズのケースで12年末の4,600万㌦。タンカーの新造船価レベルも弱含み横ばい。VLCC (大型原油タンカー)は9,650万㌦(32万重量㌧型)、スエズマックスは6,500万㌦(15万7,000重量㌧型)、アフラマックス は5,350万㌦(11万5,000重量㌧型)、MR(ミディアムレンジ)型プロダクト(石油製品)タンカーは3,650万㌦。ガス船は、VL GC(大型LPG〈液化石油ガス〉船)は横ばいの7,850万㌦(8万2,000立方㍍型)、LNG(液化天然ガス)船は横ばいの2億㌦ (16万立方㍍型)、コンテナ船は1万3,000TEU型が横ばいの1億1,600万㌦、自動車船(PCTC)は50万㌦安の6,150万㌦(6, 000台積み)となっている。 ◆新造船価、バルカー小幅続落/ケープサイズ80万㌦安【2.25】 《バルカーの新造船価相場がドライ市況の低迷を反 映し、小幅続落した。大型バルカーのケープサイズが直近のレベルと比べ80万㌦安となったのに加え、中型バルカーの パナマックス、ハーンディマックス、小型バルカーのハンディサイズはそれぞれ50万㌦下落した。タンカーの新造船価レ ベルは全般的に弱含み横ばい。》マーケット筋によると、バルカーの足元の新造船価レベルは、ケープサイズが80万㌦ 安の5250万㌦(18万重量㌧型)、パナマックスは50万㌦安の2800万㌦(7万6000重量㌧型)、ハンディマックスは50万㌦ 安の2600万㌦、ハンディサイズは50万㌦安の2200万㌦。タンカーの新造船価レベルはやや弱含みながら横ばい。VLCC (大型原油タンカー)は9650万㌦(32万重量㌧型)、スエズマックスは6500万㌦(15万7000重量㌧型)、アフラマックスは5 350万㌦(11万5000重量㌧型)、MR(ミディアムレンジ)型プロダクト(石油製品)タンカーは3650万㌦で推移している。ガ ス船の新造船価レベルは、LNG(液化天然ガス)船が横ばいの2億㌦(16万立方㍍型)、VLGC(大型LPG〈液化石油ガス〉船) は横ばいの7850万㌦。コンテナ船は1万3000TEU型が横ばいの1億1600万㌦、自動車船(PCTC)は50万㌦安の6100万㌦ と小幅続落した。 ◆新造船価相場/バルカー・タンカー弱含み横ばい【2.6】 新造船マーケットで、新造船価相場がバルカー、タンカーと もに弱含み横ばいで推移している。ドライ市況の極度の低迷により、世界の船台事情に影響が大きいバルカーの発注が ほぼ止まっているため。新造船価相場は当面、下落圧力が続くものとみられている。マーケット筋によると、足元のバル カーの新造船価レベルは、全船型で弱含み横ばい。ケープサイズは5,350万㌦(18万重量㌧型)、パナマックスは2,880 万㌦(7万6,000重量㌧型)、ハンディマックスは2,680万㌦(6万2,000重量㌧型)、ハンディサイズは2,300万㌦(3万5,00 0重量㌧型)となっている。タンカーの新造船価レベルは全般的に横ばい。VLCC(大型原油タンカー)は9,650万㌦(32万 重量㌧型)、スエズマックスは6,500万㌦、アフラマックスは5,350万㌦、MR(ミディアムレンジ)型プロダクト(石油製品)タ ンカーは弱含み横ばいの3,650万㌦(5万1,000重量㌧型)で推移している。新造船マーケットには船価上昇要因が見当 たらない状況が続いている。鍵を握るドライ市況は、2016年いっぱいまで低迷が続くとの見方が支配的。そのため、新 造船価相場全体もじり安基調が続く可能性が高いとみられている。 ◎中古船 ◆バルカー中古船価、下落続く/ファンド、中国勢など退潮【2.4】 バルカーの中古船価の下落が止まらない。直近のピ ークの昨年春から3割以上値下がりし、値上がりする前の2013年並の水準となった。用船マーケットの低迷を受けて中 古船の買い手が減少。特にこれまで中古船マーケットを押し上げてきたファンド勢や中国勢などの買船活動が縮小して いる。邦船オペレーターの一部ではドライ市況の低迷を受けて不採算船の売船や返船を行う方針だが、中古船マーケ ットの低迷は船隊を処分しにくくする。国内船主の売船益が減少することで新造発注にも影響する可能性もある。バル カーの中古船価はリーマン・ショック後下落基調で推移していたが、2013年に反転し、バルカー投資ミニブームを受け て14年から急上昇。船齢5年の中小型バルカーの中古船価は14年春に新造船価に接近した。中古船価はドライ市況の軟 化を受けて下落に転じ、年明け後も下落基調が続いている。新造船価も下落しているが中古船価の下げの方が大きく、 船齢5年船の船価は新造船価の75%に低下した。売買船ブローカーは「この半年の中古船価の値下がりがひどい。例 えばある船主が昨年7月に船齢7年のハンディサイズを売りに出し、1600万ドル以上を希望していたが、出てきた札は15 - 10 - 00万ドル強だったため売船を先送りした。11月に再度売りに出して1500万ドルを死守したいと言っていたが、出てきた札 は1400万ドルだった。最終的には年明けに1150万ドルで売ることが決まった」と語る。昨年春頃の為替レートは1ドル=10 2~103円で、その後2割程度円安が進んだため、国内船主の円建の売船価格は中古船マーケットの下落を吸収できて いた。円安が一服する一方、中古船マーケットの下落が続いていることで、円建ての船価も値下がりし始めた。ドライ市 況の先行き不透明感が強まる中、中古バルカーの買い手が減少しており、「これまでは検船の案内を出すと多い時で1 0社ぐらい集まったが、最近は3社ぐらいしか集まらない」(売買船ブローカー)という。買い手の顔ぶれは「伝統的なバ イヤーであるギリシャ、トルコなどはまだマーケットに出てくるが、数は減っている。顕著なのは中国系のバイヤーが一 頃と比べてかなり減った」(同)。13年~14年の船価上昇を演出したファンド系バイヤーもこのところは退潮気味といい、 「ファンド系のバイヤーはこれまで他社よりも高い値段で買っていたが、最近はかなりトーンダウンしている。船舶に新 たに参入しようとしているファンドはいまだにいるが、かつてのように値段を上げてまで買うつもりはない」(同)。ドラ イ市況の低迷で経営難に陥った船主からの叩き売りを見越した買い控えが中古船マーケット低迷の一因とみられるが、 「長年船舶に力を入れているファンドも今は様子見。ただ、引き続き船舶に投資する意欲はあり、そういったファンドによ る一括買船などが今後出てくるのではないか」(市場関係者)との見方もある。 ◆中古船価、ケープサイズ100万㌦安/ドライ市況底ぼいで続落【2.12】 中古船マーケットでケーブサイズバルカーの 中古船価が小幅続落した。ドライ市況が底ばいとなっているのを受け、直近と比べ100万㌦安となった。マーケット筋に よると、バルカーの足元の中古船価レベルは、ケープサイズが新造リセールは100万㌦安の5,100万㌦、船齢5年物は10 0万㌦安の3,500万㌦、船齢10年物は100万㌦安の2,500万㌦、船齢15年物は100万㌦安の1,500万㌦となっている。パナ マックスは、新造リセールが横ばいの3,100万㌦、船齢5年物は横ばいの1,900万㌦、船齢10年物は50万㌦安の1,350万 ㌦、船齢15年物は50万㌦安の950万㌦。ハンディマックスとハンディサイズは弱含み横ばい。ハンディマックスは、新造リ セール3,000万㌦、船齢5年物1,900万㌦、船齢10年物1,300万㌦、船齢15年物850万㌦。ハンディサイズは、新造リセール 2,450万㌦、船齢5年物1,550万㌦、船齢10年物1,000万㌦、船齢15年物650万㌦となっている。タンカーの中古船価レベ ルは、VLCC(大型原油タンカー)が新造リセールは横ばいの1億500万㌦、船齢5年物は横ばいの8,100万㌦、船齢10年物 は200万㌦安の5,400万㌦、船齢15年物は100万㌦安の3,100万㌦で推移している。スエズマックスは、新造リセールが横 ばいの7,200万㌦、船齢5年物は横ばいの6,000万㌦、船齢10年物は100万㌦安の4,100万㌦。アフラマックスはやや強含 みの横ばい。新造リセールは5,700万㌦、船齢5年物は4,600万㌦、船齢10年物は3,100万㌦となっている。 ◆中古船価、バルカー小幅続落/ケープ高齢船、下げ幅拡大【2.20】 中古船マーケットでバルカーの船価が全船型で 小幅続落した。中でも大型バルカーのケープサイズの中古船価レベルは、ドライ市況の暴落を反映し、高齢船ほど下げ 足がきつく、下落幅がやや拡大。船齢10年のケープサイズは直近と比べ300万㌦下落した。マーケット筋によると、バル カーの足元の中古船価レベルは、ケープサイズが新造リセールは100万㌦安の5000万㌦、船齢5年物は100万㌦安の34 00万㌦、船齢10年物は300万㌦安の2200万㌦、船齢15年物は200万㌦安の1300万㌦を付けている。パナマックスは、新 造リセールが100万㌦安の3000万㌦、船齢5年物は100万㌦安の1800万㌦、船齢10年物は50万㌦安の1300万㌦、船齢1 5年物は50万㌦安の900万㌦。ハンディマックスは、新造リセールが100万㌦安の2900万㌦、船齢5年物は50万㌦安の18 50万㌦、船齢10年物は弱含み横ばいの1300万㌦、船齢15年物は50万㌦安の800万㌦となっている。ハンディサイズは、 新造リセールが100万㌦安の2350万㌦、船齢5年物は100万㌦安の1450万㌦。船齢10年物、船齢15年物はそれぞれ弱含 み横ばいの1000万㌦、650万㌦。タンカーの足元の中古船価レベルは、堅調な運賃市況を映し、全般的に強含み横ばい 基調。VLCC(大型原油タンカー)は新造リセール1億5000万㌦、船齢5年物8100万㌦、船齢10年物5200万㌦、船齢15年物 3100万㌦。スエズマックスは、新造リセール7200万㌦、船齢5年物6000万㌦、船齢10年物4100万㌦。アフラマックスは、新 造リセール5700万㌦、船齢5年物4600万㌦、船齢10年物3100万㌦となっている。 ◆中古船価、バルカー小幅続落/ケープサイズ100万㌦安【2.26】 中古船マーケットでバルカーの中古船価が小幅続 落した。ドライ市況底ばいが主因。大型バルカーのケープサイズは、直近と比べ100万㌦下落した。マーケット筋による と、バルカーの足元の中古船価レベルは、ケープサイズが新造リセールは100万㌦安の4900万㌦と5000万㌦割れとな った。船齢5年物は100万㌦安の3300万㌦、船齢10年物は100万㌦安の2100万㌦、船齢15年物は弱含み横ばいの1300万 ㌦となっている。パナマックスは、新造リセールが100万㌦安の2900万㌦と3000万㌦を切った。船齢5年物、船齢10年 物、船齢15年物は弱含み横ばいで、それぞれ1800万㌦、1300万㌦、900万㌦となっている。ハンディマックスは、新造リ セールが50万㌦安の2850万㌦、船齢5年物は100万㌦安の1750万㌦、船齢10年物は100万㌦安の1200万㌦、船齢15年 物は100万㌦安の700万㌦。ハンディサイズは、新造リセールが50万㌦安の2300万㌦。船齢5年物、船齢10年物、船齢15 年物は弱含み横ばいで、それぞれ1450万㌦、1000万㌦、650万㌦で推移している。タンカーの足元の中古船価レベル は、全般的に強含み横ばい。VLCC(大型原油タンカー)は新造リセール1億5000万㌦、船齢5年物8100万㌦、船齢10年物 5200万㌦、船齢15年物3100万㌦。スエズマックスは、新造リセール7200万㌦、船齢5年物6000万㌦、船齢10年物4100万 ㌦。アフラマックスは、新造リセール5700万㌦、船齢5年物4600万㌦、船齢10年物3100万㌦。 ◆鉄鉱石、国際価格が下落/中国向けスポット、5年ぶり安値圏【2.13】 《鉄鉱石や鉄スクラップなど製鉄原料の国際相 場が下落している。国際指標となる米国産鉄スクラップ価格は大幅下落。米国内が先月から80-100㌦、輸出向けも同6 0-70㌦と大きく下げている。国際指標となる中国向は鉄鉱石(豪州産粉鉱石・鉄分62%)のスポット(随時契約)価格は 足元で㌧当たり62㌦前後で、約5年ぶりの安値圏で推移している。年初からは約14%安い。》【鋼材需給緩和】高炉の製 鉄原料となる鉄鉱石のほか、電炉の原料の鉄スクラップも下落が目立っている。米国産鉄スクラップ価格の大幅下落や アジア市場での需給緩和は国内相場にも波及。関東鉄源協同組合が10日に開いた鉄スクラップ輸出入札(2月契約、船 積み期限4月15日)ではH2相当の落札価格が㌧当たり2万3000円と、約2年4カ月ぶりの安値まで落ち込んだ。鋼材需給 - 11 - 緩和傾向が鉄鉱石などの製鉄原料相場を下押ししている。世界長大の鉄鋼生産・消費国である中国では、構造的な過 剰生産が続き、世界的に市況を下押ししている。【中国の輸出旺盛】中国は、2015年1月からボロン鋼など輸出還付税を 一部撤廃したが、足元でも中国からの鋼材輸出は旺盛で、「効果のほどは不透明」(大和証券の五百旗頭治郎シニアア ナリスト)との見方も根強い。中国国家統計局によると、14年の粗鋼生産量は、伸び率は鈍化したものの、前年比0・9% 増の8億2270万㌧で過去最高となった。景気減速を背景に中国の需要が鈍る、一方、供給は増加。豪英系資源大手BHP ビリトン、英豪リオ・ティント、豪州ヴァーレなど資源メジャーは鉄鉱石生産を増やす計画で、供給過剰感が強まっている。 リオ・ティントなどは豪㌦安や、増産により低コスト生産でも採算が取れると判断し供給力を増強している。【低水準続く】 資源の価格リスクマネジメントコンサルタント会社、マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘代表取締役は、鉄鉱石 価格について、「鉄鋼製品価格の下落や、鉄鉱石メジャーの増産継続による供給過剰から、今後、鉄鉱石価格は現状の 低水準でのもみ合いを続けることになると見ている」と語る。鉄鋼製品と製鉄原料価格の連動性は高い。「鉄鉱石価格 が上昇に転じるには鉄鋼製品価格の需給バランスが調整して価格が上昇することが必要。だが中国の熱間圧延鋼材 など鋼材価格は下落を続けており、製品需給がバランスしている感じはない。今年の下落ペースは例年をはるかに上 回っており、中国の鉄鋼需給は非常に緩和していることを示している」(新村氏)と指摘する。 ◆鉄鉱石続落、鋼材需給緩和が下押し/中国春節入りで市場動意薄く【2.20】 《高炉の製鉄原料となる鉄鉱石の国際 相場が需給緩和を背景に続落している。国際指標となる中国向け鉄鉱石(豪州産粉鉱石・鉄分62%)のスポット(随時契 約)価格は足元で㌧当たり63㌦強で2014年2月から5割近く下がり、約5年ぶりの安値圏で推移している。「鋼材価格の 下落が続いており」鉄鉱石価格を下押ししている。中国勢が正月休み(春節)入りしたため、市場の商いは薄く、動意も 薄い」(マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘代表取締役)との指摘があった。》鋼材需給緩和傾向が鉄鉱石など の製鉄原料相場を下押ししている。世界最大の鉄鋼生産・消費国である中国では、構造的な過剰生産が続き、世界的に 市況を下押ししている。鉄鋼製品価格低下により収益悪化に悩む鉄鋼メーカーは、鉄鉱石、原料炭など原料の買い意欲 に乏しい。鉄鉱石は、景気減速を背景に中国の需要が鈍る一方、供給は増加。豪英系資源大手BHPビリトン、英豪リオニ アィント、ブラジルりヴァーレなど資源メジャーは鉄鉱石生産を増やす計画で、供給過剰感が強まる。リオ・ティントなど は豪ドル安や、増産により低コスト生産でも採算が取れると判断し供給力を増強している。相場下落局面でもBHPビリト ンなど大手サプライヤーは増産をやめない。「コスト競争力の高い大手サプライヤーが、中国勢や中小生産者を市場 から閉め出そうとしている」(英保証有限責任会社のアーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのマイク・エリオット 鉱業・金属セクター・グローバル・リーダー)との見方が多い。大手サプライヤーは生産コストを下げることで、安値を増 産で補い、中・高コストの生産者を排除、価格決定力を高めようとの狙いだ。中国国内の鉄鉱石は、品質が低く加工が必 要のため生産コストが高い。ただ、「中国の地方政府の支援により、競争力が低下しても淘汰が進まず、供給過剰状態 が解消されていない」(マイク・エリオット氏)ことも鉄鉱石相場を下押ししている。鉄鋼原料用石炭(原料炭)も供給過剰 状態にあり、同様な構造が見える。BHPビリトンなど豪州勢の供給力が増す一方、米国、カナダなどの生産は減少。「米 国勢はこれまで量的金融棲和政策(QE)により実力以下にドルが引き下げられていた。このため輸出競争力が高まりア ジアへの供給を増やしていた」(マイク・エリオット氏)。だが、足元では今年中にもFRB(米連邦準備制度理事会)が利上 げを始めるとの見方が強まっており、米ドルは他通貨に対し上がりやすい。相場低迷も相まって競争力を失いつつあり、 米国の鉱山の休止や減産が相次いでいる。ただ、中・長期の鉄鉱石、原料炭相場については、「今後、生産者の淘汰や 新規開発の停滞により供給過剰状態が解消に向かえば、相場は反発に転じる可能性がある」(同)としている。 ◆三井造船、子会社3社を合併、連結経営強化の一環で【2.3】 三井造船(田中孝雄社長)は2日、100%子会社のエム ・イー・エス特機(本社・東京都中央区)、宇野工業(本社・岡山県玉野市)、玉野エンジニアリング(同)の3社を、4月1日付 で合併させると発表した。MES特機を存続会社とし、宇野工業と玉野エンジニアリングを消滅会社とする吸収合併によ り、経営統合する。MES待機は船舶設計、機器製造、施工・運転保守、宇野工業は機器・伸縮継ぎ手の製造、玉野エンジニ アリングは船舶・機械設計が主力事業。今回の合併は、連結経営強化の取り組みの一環。統合各社の技術と要員を融合 することで、統合新会社に一層の競争力を持たせる。これにより、設計から据え付け工事・アフターサービスまでを網羅 し、売り上げの拡大を目指す。統合新会社の商号はエム・イー・エス特機で、本社所在地は東京都中央区築地5-6-4。資 本金は2億9,800万円。出資比率は三井造船100%。従業員約560人。三井造船は、統合新会社の200人規模の造船・機 械設計のリソースを一元管理することにより、玉野艦船工場の主力製品であるバルクキャリアを中心とした商船、官公 庁船、艦船の設計対応力を強化する。加えて、統合新会社を機械工場の舶用ディーゼルエンジン部品の製造拠点として 引き続き活用し、これまで築き上げてきた国内有数の事業所としての位置付けを盤石なものとし、より安定的で収益性 の高い事業展開を目指す。 ◆造船この1カ月〈上〉再編・海外展開のカギ握る「人材」【2.6】 《今年の造船業界にとって、大きなテーマは人材だ。 生産現場や設計・開発の人手不足は、今後造船所が海外を活用したり、他社と協業・提携などを進める要因になり得る。 また、足元で進む原油安は、海洋開発プロジェクトの停滞で造船業に与える影響が大きい。さらに今年は大型の国際規 制が、マーケットや技術開発を左右しそうだ。》【「人材」がキーワードに】司会 年明けから大きなニュースが続いている。 今治造船の大型ドック建設に、三菱重工の香焼分社化だ。今年は造船業界が大きく動きそうな感じがする。 -何が起 こるか分からない部分も多いが、いくつか今年のポイントを挙げて見ようか。まず1つ目のキーワードは「人材」だろう。 足元は人手不足が深刻だ。-今年は昨年よりもさらに造船所の操業が高まる見通しだ。その分、協力工の確保や外注 先の枠取りは激しくなるかもしれない。 -ある造船所が、昔から取引のある加工業者にも「これ以上は無理」と断ら れたとか、いまだに目先の工事の外注が確保できない造船所もいるとか、そういう話はいろいろと聞いている。 - 外注単価も上がっている。 -それもあるし、人手不足は工程混乱や、品質低下、安全面などにも影響を及ぼしかねな - 12 - い。そのあたりは注意が必要だろう。ただ、今年4月からは生産現場での外国人の活用が拡大する。造船所によっては、 かなり増えるようにも聞いている。 -それでも、すぐ解消とはいかないだろう。管理をしっかりしないといけない。設 計も相変わらず多忙だ。設計外注もやはり逼迫している。今年は新規制に向けた開発が本格化するから、人手不足感 は続くだろう。日本の少子高齢化を考えると、人手不足は長期的な課題だ。女性活用やロボット化・自動化という道も本 格的に検討することになるのではないか。 -そうした国内で解決を図る道もあるけれど、やはり海外活用の方向性 も出てくると思う。生産現場での外国人労働者もその1つだが、それ以外に例えば韓国にブロックを外注したり、中国に 設計を外注するような動きが出てくるのではないか。 -ただ、海外の力を借りるとなると、そのためのノウハウが必 要になってくる。同じ外注といっても、これまでのように日本人同士の勝手知ったる世界ではない。-人材を長期テー マと考えるなら、東アジアの造船クラスターという視点で見ても良いのではないかと思うよ。もしも日本造船業がそう やって海外と協業しながら造船を行う方向に進むのならば、今まで以上にプロマネ的な人材が必要になる。早めに手 を打つ必要がある。 -それと、「技術者の拡充」は、最近ではジャパンマリンユナイテッド(JMU)の統合や、名村造船と 佐世保重工のグループ化など、造船再編の大きな要因になっていた。今後も同じような動きが出てくるだろうか。カギ は技術者だけではないかもね。マネジメント層でも、いびつな年齢構成の問題もあって今後は引き継ぎが厳しい時代 になる。オーナー会社の後継者問題も出てくるかもしれない。人材の観点が、造船所の提携などをうながすかもしれな い。【高付加価値への挑戦】司会 今年のもう1つのポイントとしては、日本が高付加価値路線に転換するという点があ る。大型プロジェクトが次々と始まるね。-JMUと今治造船はメガコンテナ船とLNG船の建造が本格化する。川崎重工の オフショア作業船や、IHI愛知工場の海洋案件などもあるし、他にも新規船種への進出がいろいろあって、今年から本格 化する。-これまでバルカー中心だった日本が、一気に変わる。当然、人手不足の構造も変わるだろうし、周辺産業へ の影響も大きいだろう。-日本全体で建造する船の隻数が減るともいわれている。トン数や売上は増えるかもしれな いが、バルカーの連続建造ではなく大型で建造期間の長い船が増えてくるからね。舶用メーカーには「バルカーをたく さん造っていてくれた方が仕事が多くて良かった」という嘆きもある。-とはいえ、日本が将来の成長を見越して挑ん でいるプロジェクトだ。-一方では、やはり気になるのは採算だ。三菱重工の客船や韓国大手の海洋のように、赤字リス クも大きいのではないか。-これまで手掛けていなかった製品だけに、工程が混乱したり、採算が悪化する懸念は当然 あると思う。そもそも受注時に無理した案件もあるから、それなりのリスクはある。-為替が円安という点は採算面で は救いかな。-それに、過去の失敗などをもとに、周到に準備していると思う。あとはそれを実行できる力があるかど うか、ということだろう。【原油安の影響どこまで】司会 気になるのが、この原油安だね。いつまで続くのか。造船業に とっての第二の「オイルショック」になるのかどうか…。-バンカー価格が下かるとエコシップの魅力がなくなるから、代 替需要が見込めなくなる、という見方はあるね。-それもあるが、やはりすぐさま影響があるのは海洋開発関連だろ う。過去の原油下落時に海洋構造物のキャンセルが相次いだ時代を思い出している人もいる。いまのところキャンセル のような話は聞かない。ただ、新規のプロジェクトは止まっているようだね。-海洋は皆が成長市場と位置づけてい た。長期的にはその方向は間違いないのだろうが、直近では厳しいかもしれない。-日本造船所にとっては、ブラジル・ プロジェクトがどうなるかが気がかりだ。-韓国大手も、海洋にかなり比重を移している。これでプロジェクトが止まる と、仕事を埋めるには一般商船を受注する必要がある。といっても、彼らの腹を埋めるほどの商船の需要はないだろ う。VLCCのマーケットが良いと言っても、それだけでは埋まらないからね。ガス船とメガコンテナ船がどこまで出てくる か。こうした分野は日本や中国と競合するが、ウォン高が厳しい。-世界全体では設備能力が過剰だが、韓国と中国が 海洋に一部の能力を割いていたことが、全体として商船の需給ギャップを和らげていた。これが全て一般商船に向か うとなると、競争は厳しくなる。【新規制で駆け込みは?】司会 今年のマーケットや技術で大きなテーマとなるのが、新 規制だ。-今年は、調和型共通構造規則(H-CSR)と窒素酸化物(NOx)の3次規制という2つの大型規制が目前に迫る。 1つの視点は、駆け込み受注があるかどうか、ということだ。-2つの規制を合わせると、船の建造コストは数百万ドル規 模で高くなるといわれている。造船所はコストが上がる前に今のデザインを船主に提案している。-船主もコストアップ は厭だろうが、ただ、駆け込みで発注するかどうかは不透明だね。特にバルカーは、ドライバルク市況がこういう状況 では、いくらコストが上がるとはいえ、船主が発注を急ぐだろうか。-一方では、造船所が規制発効後に新デザインを用 意できるか、という問題もある。船型によっては技術的に対応が難しく、かなり先になる可能性もあるという。-造船所 の開発要員が不足しているという話がまた出てくる。そもそも規制内容に無理がある、という見方もある。昨年の騒音 規制にしても、小型船はいまだに解決策が出ていない状況だ。はっきり言って、おかしな規制が次々出ている。-ます ます先が見えにくくなっているね。 ◆造船この1カ月〈下〉今治が世界最大の2万TEU型受注/バルカー低迷でタンカーへのシフトも【2.7】 《年明けの新造船 市場は、メガコンテナ船やVLCC、LNG船などの大型案件が相次いで表面化した。特に水面下で動いていた“世界最大級 ”の2万TEU型のメガコンテナ船の大型商談を今治造船が受注するなど、日本の造船所の受注案件も相次いで表面化し た。その一方で、バルカーは2014年後半からの停滞が依然として続いており、バルカーとタンカーの双方の製品メニュ ーをそろえる造船所は、比較的引き合いのあるタンカーの商談に注力する動きもあるようだ。》【時代は2万TEU型へ】司 会 新造船市場は昨年の流れを引きずったまま低調だが、年明けから大きなニュースがあったな。-大きなニュースと いえば、やはりメガコンテナ船の大型商談だ。今治造船が2万TEU型をエバーグリーンから11隻、商船三井から2隻を受 注した。また、これと同時に全長600mの大型ドックを丸亀に新設する計画も公にした。 -以前から今治の2万TEU型の 受注は有力視されていたけれど、大型ドックの新設と、“世界最大”の2万TEU型を韓国大手ではなく今治造船が受注し たということで、国内外の多くの関係者の注目を集めた。今治造船には海外からも問い合わせがあったと聞くよ。-今 回は商船三井向けの2万TEU型4隻をサムスン重工業が受注したものの、エバーグリーン向けの商談では今治造船が圧 倒していたようだ。グループ会社の正栄汽船のスキームを使うことで競争力を高め、受注を重ねている。-今治造船 はこのほかに1万4000TEU型の受注残が計15隻あり、メガコンテナ船がバルクと並ぶ主力船種の1つになった印象だ。 -これまでメガコンテナ船は韓国大手が主導してきた船種だった。メガコンテナ船の商談はある程度のロットでの対 - 13 - 応が必須になってくるから、建造キャパシティの大きい韓国大手や中国大手への発注が集中していた。ロットでの対応 ができなければ、入札にも参加できないが、日本の造船所は納期面や大きなロットになかなか対応できなかった。これ に超円高という背景も重なり、メガコンテナ船の商談では出遅れていた。-日本の造船所のメガコンテナ船では、ジャ パンマリンユナイテッド(JMU)が1万4000TEU型8隻を昨年受注している。JMUは統合により、呉工場をコンテナ船の建造 に注力させることでロットに対応した。ロットへの対応ができるようになったことや、円安の定着という追い風もあり、日 本の造船所がメガコンテナ船市場で存在感を増している。話は変わるけど、JMUといえば、明治海運からVLCCl隻を受注 したね。日本の造船所にとっては久々の国内向けVLCCの案件になった。国内向けの案件は、JMUが2012年に受注した共 栄タンカーや出光タンカー、JXオーシャンのインダストリアルキャリアから各1隻を受注した後はしばらく途絶えていた。 ここ数年の日系造船所のVLCCの受注実績としては、JMUがリードしている。JMUは昨年末にもジョン・フレドリクセン氏率 いるフロントライン2012からVLCC2隻プラス・オプション2隻を受注した。既にファーム2隻は契約の調印も済ませたよう だ。ここ5年の竣工実績でも旧ユニバーサル造船や旧IHIMUを含めると、7割超がJMUだ。VLCC建造実績のある2大ヤー ドが統合したのだから、当たり前といえば当たり前だが、国内では頭1つ以上抜けている。ただ、JMU以外の国内造船所 もVLCCの省エネ船の開発を進めている。水面下では商談も進んでいるようだよ。JMU以外の国内造船所は、これまで 邦船社向けの案件が中心だった。インダストリアルキャリアを除く邦船社がしばらくリプレースを見合わせていたため、 なかなか案件がなかったが、今回のように国内向けが出てくれば、その他の造船所の受注も出てくるのではないか。 邦船社も発注の検討を本格的に進めているようだ。司会 メガコンテナ船やVLCCのほかに大型案件としてはLNG船の 成約があったな。-先日も三井物産のキヤメロンLNG向けで、三菱重工が2隻を正式に受注した。日本の米シエールガス 輸送向けの調達商談は固まりつつあるんだよね。-今年3月までに大半が決着する見込みだ。東京ガス、三井物産に続 き、三菱商事、中部電力、大阪ガス、関西電力の交渉が最終段階に入っている。-今後は、米シエールガスの欧州荷主向 けを中心に海外に商談の軸足が移行する。邦船大手は海外向けの商談にも積極的に食い込んでいくだろうが、日本の 造船所がどこまで海外向けの案件に入っていくのか注目だ。当然、韓国大手との競合になるわけだけど、今年に入って からも大字造船海洋が着々と受注を重ねているね。既にLNG船5隻を受注した。-昨年表面化したLNG船の新造発注は、 過去最大隻数を記録した2004年と並ぶ水準だったが、大字1社で年37隻を受注したことがこれほどまでに押し上げた。 勢いは衰えていないようだ。-原油価格がこの調子だと新規の海洋案件の進捗はあまり期待できそうもないから、今 年も商船中心に受注するのかもしれないね。昨年に受注目標を達成したのは、商船受注にシフトした大字だけだったわ けだし。現代重工業は今年の受注目標を昨年から大きく引き下げ、海洋の比率も減らしている。一方、サムスン重工業は 昨年を少し上回る受注目標を打ち出しているようだ。大字はまだ今年の受注目標を明らかにしていないが、今年も昨 年同等かそれ以上の目標になるだろう。そうなると、やはり商船中心の受注になるだろう。商談での日本の造船所へ の影響も避けられないかもしれない。【タンカー成約は散見】司会 大宗船の商談はどうか。-新造船市場の動きは相 変わらず閑散としたままだ。例年この時期はそれほど商談が盛り上がる時期ではないのかもしれないが、特にバルカ ーは全船型とも低調で、引き合いも極めて少ない。-これほど用船市況が悪いとさすがに船主も発注しようという気 にならないのだろう。今の用船料では船価を到底サポートできない。リプレースも昨年、-一昨年に終えたところが大 半だ。-中国造船所の受注も全くと言っていいほど聞かれなくなった。昨年のこの時期は毎日のように中国の64型バ ルカーの受注があったが、安値での受注も表面化しなくなった。-中国船舶工業行業協会(CANSI)の統計でも、昨年の 受注量は約6000万重量トンだったが、四半期ごとにみると、10~12月は1000万重量トンを大きく下回るなど急減速して いる。その流れがそのまま続いている。日本船舶輸出組合の統計によると、日本の受注量も昨年は1500万総トンに迫る 水準で、リーマン・ショック後最高を更新した。ただ、1000万総トン以上を上半期に受注しており、騒音規制前の駆け込み が受注量を押し上げたことが統計からもうかがえた。-今年7月以降の契約船から新共通構造規則(調和化船体構造 規則、H-CSR)、来年1月以降の起工船から窒素酸化物(NOx)3次規制が適用されるが、規制回避の発注の動きもまだそ れほどない。造船所は既に積極的に提案しているが。-船価に先高感もない上、まだ規制適用まで時間があるので、船 主側としてももう少し様子を見たいのだろう。司会 VLCCやアフラマックスなどのタンカーはバルカ一に比べれば動き もあるようだ。-VLCCではJMU以外に大字のアンジェリコシス向けがあった。アフラマックスでは、住友重機械が年末に かけて4隻を受注したほか、名村造船所の受注も表面化している。-やはりアフラマックスもここ数年発注が少なかった ことから、発注残も少ない。投資機運も高まっている。-名村造船は造船ブーム以降、ケープサイズや大型鉱石船、ハ ンディサイズなどバルカーの受注に軸足を移してきたが、バルカーの低迷を受けて得意船種の1つであるアフラマック スの受注にも注力しているようだ。国内の造船所としては、住友重機械、名村造船のほか、常石造船もアフラマックスを 受注していきたいとしている。省エネ船のデザインを持つ造船所は、バルカーの低迷を受けてタンカーの営業も積極的 に展開しているようだ。-夕ンカーは用船料も上昇しているし、バルクに比べて発注残も少ない。市況低迷からリプレ ースを見合わせていた船社もあり、今後の発注に期待したいところだ。 ◆日本貿易保険、船舶輸出金融の支援拡大/14年度過去最高30隻突破【2.17】 日本貿易保険(NEXI)の船舶輸出ファ イナンス支援が拡大している。2014年度引き受け実績(LNG(液化天然ガス)船を除く)は現時点で過去最高の31隻に達 し、既に前年度実18隻の1・7倍に増加。08年秋のリーマン・ショック以降、欧州金融が船舶融資を縮小したことに伴う日本 金融機関のプレゼンス向上に加え、円安や燃費効率に優れたエコシップ需要を追い風とした日本造船業の競争力復活 が背景にあるとみられる。NEXIは01年4月に発足した独立行政法人。国内企業の海外投資やリスクに対し、民間保険で は救済できない案件をカバーする保険制度を運営している。船舶輸出ファイナンス支援は、日本造船所に新造船を発 注する海外船社に対し日本の金融機関が資金を融資する「バイヤーズクレジット」をサポート。バイヤーズクレジットは 国際協力銀行(JBIC)と民間銀行の協調融資の形で実施され、NEXIはこのうち民間銀行を対象に非常リスクや信用リス ク発生で償還不能となった場合の損失をカバーする。引き受け案件31隻はすべてバルカーで、うち2隻は日本造船所 の海外子会社が建造。発注者はパシフィックベイスン(香港)、タイ・チョン・チャン・スチームシップ(同)、ベルゲバルク(シ ンガポール)、独オルデンドルフ、ウルトラバルク(チリ)など。 - 14 - ◆造船設備融資など3月に12件81億円/日本財団【2.19】 日本財団は18日、造船関係事業の2014年度第2回設備資 金など計12件81億940万円の貸し付け(3月実行予定)を決定したと発表した。内訳は、第2回設備資金貸し付けが10件6 0億7500万円、中小企業経営革新支援法に基づく「経営革新支援資金貸し付け(設備資金)」が1件20億円、東日本大震 災の被災地区造船所復興のための「第3回災害支援資金貸し付け」が1件3440万円。このうち、第2回設備資金は、中小 造船会社のドック拡張・新設・大型クレーン設備増強などの大規模設備資金借り入れがあり、貸付金額は前年同期を上回 った。経営革新支援資金貸し付け、災害支援資金貸し付けは、ともに前年度の実績がなかった。 ◆国内造船業、残る17年船台が焦点/市況低迷で規制前駆け込みトーンダウン【2.26】 《バルカーをはじめとした新造 商談が低迷するなか、17年船台を確定していない造船所は頭を悩ませている。国内造船所の多くは18年以降の納期で 新造商談を進めているものの、中型以上の商船を建造する造船所でも工場によっては17年船台に一部空きがある状況 だ。多くの造船所関係者が今年7月から適用される新規制を見越した駆け込みを想定していたが、バルカーの用船市況 の長期低迷により急激にトーンダウンしている。駆け込みが不発に終わり、商談再開が先送りになれば、工場によっては 今年後半に手持ち工事が2年を割り込むことになる。》2013年、14年の大量受注により、線表を急ピッチで進めてきた日 本の造船所。線表を先行させていたオーナー系の専業造船所のほか、総合重工系の造船所もバルクに加えLNG船やメ ガコンテナ船、海洋といった大型案件を受注しており、既に営業の中心は18年以降の船台に移りつつある。ただ、一部 の専業や総合重工系は17年後半の船台をまだ確定していない。バルカーを建造する総合重工系は工場ごとの線表に ばらつきや間隙があり、大型船を建造するドックの線表を18~19年に伸ばす一方、中小型船を中心に建造する工場の17 年船台には余裕がある。足元の新造船市場は、17年船台を残していたヤードにとっては誤算だった。「バルカーは安値 を提示してもなかなか受注できない。これほどまでの状況は想定していなかった」(市場関係者)。専業はもちろん総合 重工系もパナマックスやハンディマックスなどの中型バルカーを中心に残りの17年船台を埋めていく方針だったが、昨 年後半から新造商談は沈静化。国内外の造船所とも受注できたバルカーの案件は少ない。ここにきて大きな誤算の1つ となっているのが、今年6月末までの駆け込み発注が市況低迷に伴って不発に終わる可能性が強くなっていることだ。 今年7月から適用される国際船級協会連合(IACS)の調和化船体構造規則(H-CSR)前の駆け込みに多くの造船所関係 者が期待を寄せていたが、ここにきて急激にトーンダウンしている。「契約書のネゴなど受注までに要する期間を考え れば、今の時点で商談を始めていないと6月末までの契約は厳しくなる。ただ、今のところ商談に動きはない」(国内造 船関係者)。H-CSRは、コスト面など規制でのインパクトが騒音規制以上ともいわれ、手持ち工事を確保していた国内の 造船所の多くが、規制適用による建造コストの増加分を船価に上乗せしていく考えで、規制適用前の発注を積極的に提 案してきた。船主もある程度規制を見据えながらリプレース分などの発注を計画していたようだ。ところが、現在は状 況が一変しており、「以前から進めていた案件でもすぐに契約という雰囲気ではなくなっている」「円安を受けて日本 の造船所への値下げ圧力も強く、商談を進めづらい」(国内造船関係者)という。全くないとは言い切れないが、昨年の 船内騒音規制前のような駆け込みをH-CSRでは期待できなそうだ。さらに、足元ではバルカーだけでなく、原油安の 影響でガス船や海洋の商談の動きも鈍い。タンカーの受注にシフトする動きもあるが、「バルカ一に比べれば良いが、商 談がそれほど活発なわけではない」(国内造船関係者)。新造船市場の分岐点となった昨年6月の段階では、船社も造 船所もこれほどの用船市況の低迷は想定外だった。騒音規制の駆け込みも発注の大前提となったのは、建造コストの 増加による船価の上昇で、市況上昇の可能性を想定したものだった。今後の商談再開が期待できる要因の1つに来年1 月の起工船から適用されるNOx3次規制前の駆け込みが指摘されている。NOxについては、造船所だけでなく、船社や 舶用メーカーの動向とも深く関連しており、駆け込みを依然として見込む声も多いが、用船市況低迷下での発注を疑 問視する見方もある。商談再開の兆しが見えてこなければ、造船所としても今年後半には手持ち工事を確保するため に何らかの対応をとる必要性が出てきそうだ。 Ⅲ.各国造船業の動向 ◆14年の新造船、08年並み水準に/IHS統計、前年比2割減の8500総㌧【2.23】 《IHS(旧ロイド)統計速報値によると、 昨年の世界の新造船受注量は計2747隻・8375万総㌧(約4605万CGT)で、造船ブーム最終年の2008年並みの高水準 となった。新規制前の駆け込みの影響や中国の春先の大量受注などが受注量を押し上げた。中国、韓国、日本の順位は 変わらなかったものの、日本の受注シェアが20%台を回復した。また、新造船竣工量は日韓中とも前年を下回り、2011 年のピーク時と比べて4割近く世界の建造量が減少した。》2014年の新造船実績は表のとおり。IHS統計の1~9月実績の 確定値と10~12月速報値の合計になる。史上2番目の水準となった2013年と比べると、受注量は総㌧ベースで20%減 となったものの、昨年7月の契約船から適用された船内騒音規制を回避するための駆け込みなどで受注量を伸ばし、2 年連続で高水準となった。四半期ごとの受注量推移をみると、第1四半期が全体の4割を占めており、後半にかけて失 速した。国別の受注量は、中国が前年比28%減の3247万総㌧、韓国が31%減の2500万総㌧、日本が35%増の1943万 総㌧だった。世界シェアはそれぞれ39%、30%、23%で、2013年実績と同様の順位だったが、唯一受注量が前年を上回 った日本がシェアを奪い返し、久々に20%台に乗せた。また、日本船舶輸出組合の輸出船契約実績は1484万総㌧と、IH S統計とは開きがあるが、これは同組合に加盟していない中小型船主力の造船所の受注量が規制前の駆け込みなどで 増えたことが背景にありそうだ。船種別の受注量では、バルカーが計799隻・3751万総㌧で、全体の45%を占めた。中 国や日本が主力の1つとする造船所が多いウルトラマックスが13年に引き続き好調で、6万~8万5000重量㌧型は計37 年隻・1467万総㌧となった。ケープサイズは中国が中心となって受注を重ね、13万重量㌧超が148隻・1533万総㌧とな った。タンカーの受注も計373隻・1619万総㌧と好調だった。ケミカル船を中心とした1万~4万重量㌧級とスエズマック スが前年を大きく上回った。さらに、ガス船は過去最高の受注隻数を記録したLNG船や大型LPG船(VLGC)が牽引し、179 - 15 - 隻・1074万総㌧だった。タンカーやガス船は韓国が5~7割超のシェアを占めており、スエズマックス・タンカーは韓国の 寡占状態だった。竣工量は3カ国とも1割前後減少しており、世界全体の新造船の竣工量は前年比8%減の6427万総㌧ (3593万CGT)だった。国別では中国が2254万総㌧、韓国が2251万総㌧、日本が1341万総㌧。中国がかろうじて1位を維 持したものの、建造量のピークだった2011年と比べて4割以上落ち込んでいる。竣工量の減少を受けて、手持ち工事量 は増加した。12月末時点の世界の手持ち工事量は1億9739万総㌧(1億815万CGT)で、1年前と比べて約1500万総㌧増加 した。昨年の竣工量をベースにすると、約3.1年分の工事量に相当する。国別では中国が3.6年分、韓国が2.7年分、日本 が2.5年分に相当する工事量を確保している。ただ、中国の受注量は解約による減少も多いとみられ、造船所ごとの手 持ち工事量はみかけほど多くないものとみられる。 ◆中国造船、竣工量ピーク比5割減/14年のCANSI統計、受注も失速【2.5】 中国船舶工業行業協会(CANSI)はこのほ ど、2014年の中国造船業の年次報告書を公表した。新造船竣工量はピークだった2011年と比較して5割減となる約400 0万重量㌧で、操業の減速がより一層鮮明になった。新造船受注量も後半の失速が影響し、前年を下回った。2014年1~1 2月の新造船実績は、竣工量が前年比14%減の3905万重量㌧、受注量が14%減の5995万重量㌧だった。12月末時点で の手持ち工事量は1年前と比べて14%増の1億4890万重量㌧となった。竣工量の減少により手持ち工事は増加した。ま た、新造船の受注量は約6000万重量㌧と高水準だったものの、四半期ごとにみると、1~3月が2584万重量㌧、4~6月 が1496万重量㌧、7~9月が1168万重量㌧、10~12月が747万重量㌧となり、受注のペースは急減速した。2015年の見通 しについては、世界の新造船竣工量を1億1000万重量㌧、受注量を8000万重量㌧、手持ち工事を2億8200万重量㌧と 予想している。また、中国の竣工量は14年並みの4300万重量㌧、受注量は減少し、手持ち工事量は1億3000万重量㌧規 模になると想定している。2014年実績のうち輸出船は、竣工量が7%減の3311万重量㌧、受注量が14%減の5551万重 量㌧、手持ち工事が24%増の1億4280万重量㌧で、竣工・受注・手持ち工事量に対して輸出船が85%、93%、96%を占 めている。輸出船の船種別金額ベースの内訳は、バルカー33%、コンテナ船21%、タンカー8%、その他38%だった。一 定規模以上の船舶関連企業1492社の1~11月の実現主営業務収入は11%増の5627億元(約10.6兆円)。このうち造船所 9%増の3506億元(約6.6兆円)、舶用メーカーは12%増の943億元(約1.8兆円)、修繕ヤードは1%増の227億元(約4287 億円)で、いずれの業種とも増収となった。同期間の一定規模以上の船舶関連企業の実現利潤は21%増の244億元(約 4608億円)。このうち造船所が20%増の147億元(約2776億円)、舶用は16%増の47億元(約887億円)、修繕は8%増の 5億元(約94億円)。中国の造船・舶用・修繕とも増益となった。ただ、昨年と比べて対象となる一定規模以上の船舶関連 企業数は172社減となっている。また、人件費は10年前の2004年と比べて2倍となったとしている。 ◆現代重工、昨年の営業損3,500億円/過去最大の赤字、海洋・商船で【2.16】 韓国の現代重工業は12日、2014年12月 期の連結営業損益が3兆2,495億ウォン(3,500億円)の赤字だったと発表した。海洋構造物の大規模赤字に加えて、自 社やグループ造船所が手掛ける一般商船でも採算が悪化。損失引当処理も行った結果、創業来最大の赤字に陥った。 受注も目標に届かず、厳しい1年となった。現代重工の連結業績には、グループ造船所の現代三湖重工と現代尾浦造船 が含まれる。売上高は前の期に比べて3%減の52兆5,824億ウォン、税引前損益は3兆1,050億ウォンの赤字、純損益は2 兆2,061億ウォンの赤字だった。単体の受注高は28%減の198億㌦。このうち、造船部門は35%減の62億㌦、海洋部門が 8%減の60億㌦だった。受注目標は造船が92億㌦、海洋が69億㌦だったが、いずれも届かなかった。これ以外にグルー プの現代三湖重工建造分の受注が27億㌦あった。現代重工の新造船の受注は計60隻で、内訳はLPG船26隻、タンカー1 8隻、LNG船6隻、コンテナ船5隻、バルカー3隻、艦艇・特殊船2隻。12月末時点の受注残は145隻。 ◆韓国造船大手、受注姿勢に差/現代は受注目標減、大字は今年も強気【2.24】 韓国造船大手3社の受注方針に差が 出ている。昨年は3社とも前年実績を上回る強気の受注目標を掲げたが、今年は現代重工業が前年目標を大幅に下回 る目標を設定する一方、サムスン重工業が前年目標並み、唯一年間目標を達成した大字造船海洋は昨年実績を上回る 水準を掲げているようだ。今年に入ってからの実績をみても、大字造船やサムスン重工は商船の受注を重ねており、受 注方針や受注環境の差が表れ始めている。年間の受注目標は、現代重工が前年の年間目標296億ドルを大幅に下回る 229億5000万ドルとしている。サムスン重工と大字造船は例年年初に公表している受注目標を今年は明らかにしてい ないが、韓国現地紙の報道を基にすると、サムスンが前年の受注目標並みの150億ドル弱、大字は150億ドルを上向る水 準を掲げているようだ。商船や海洋プラントの不振を受けて現代重工は受注目標を昨年に比べて大幅に引き下げたよ うだ。ウォン高や原油安に加え、海洋部門の巨額の赤字計上や労使問題などの影響が重なったことで、受注には慎重 にならざるを得ず、競争力のある船価を提示しづらい状況が続いているとみられる。昨年の実績は、単独で前年比28 %減の198億ドルを受注するにとどまり、年初の受注目標を100億ドル近く下回った。部門別の受注目標は造船が92億ド ル、海洋が69億ドルだったが、受注実績はそれぞれ62億ドル、60億ドルといずれも届かなかった。また、グループ会社の 現代三湖重工業は今年の受注目標を38億ドルとしている。韓国大手で唯一受注目標を達成した大字は、海洋商談の低 迷を受けていち早く商船の受注にシフトしたことが功を奏しており、今年も強気の目標を掲げている。昨年は69隻・149 億2000万ドルを受注し、年初の目標を5億ドル近く上回った。ただ、海洋案件の受注は1件のみ。原油安などを背景とした 海洋案件プロジェクトの遅れなどの影響から大字は今年も商船中心に受注していく方針とみられる。サムスン重工は、 昨年並みの受注目標を設定したと韓国現地紙では伝えられているものの、昨年の受注高は前年比5割減の73億ドルと みられ、年初の目標には及ばず、韓国大手3社で最も受注高が少なかった。商船や海洋の詳細な内訳は不明だが、極端 に商船に傾注していくことはないと現地紙では報じられている。今年に入ってからの受注状況をみると、大字がLNG船 やメガコンテナ船、VLCCなど、サムスンがLNG船やメガコンテナ船を受注している。ただ、3社ともLNG船やメガコンテナ - 16 - 船などの商船を受注しながら海洋案件の低迷をカバーしていくとみられるが、このまま海洋案件が停滞すれば受注目 標の達成は厳しい展開となりそうだ。 ◆韓国造船大手、海洋関連の受注失速/今年も商船が先行【2.26】 《韓国造船大手による海洋関連の受注が失速し ている。2014年の受注実績をみると、現代重工業ではオフショア・エンジニアリング部門が前年比マイナスだったほか、 造船(シップビルディング)部門にカウントされるリグ(掘削装置)、ドリルシップ(掘削船)がゼロ。大字造船海洋は海洋プ ラントの受注が1基にとどまった。今年に入っても韓国取引所への告示ベースで海洋の受注はゼロとなっており、商船契 約が先行する形だ。》現代重工の14年の受注高は、造船部門が35%減の62億㌦、オフショア・エンジニアリング部門が8 %減の60億㌦。13年は造船部門受注高が55%増の95億㌦で、半潜水型のセミマーシブル・リグ1基が入っていたほか、 オフショア・エンジニアリング部門受注高が3倍の65億㌦に拡大していた。大字の14年の新造船・海洋プラント受注高は1 0%増149億㌦となった。このうち海洋プラントは67%減の27隻。隻数は1隻(基)だった。13年の同受注高は5%減の136 億㌦で、このうち海洋プラントは23%減の81億㌦。隻数は11隻だった。サムスン重工業の14年1-11月の新造船・海洋プ ラント受注高は、前年同期比50%減の66億㌦。金額ベースの内訳は、海洋44%(生産設備24%、ドリルシップ20%)、コン テナ船16%、LNG(液化天然ガス)船15%、タンカー14%、その他11%だった。13年通年の同受注高は前年比39%増の133 億㌦。金額ベースの内訳は海洋65%(掘削機器40%、生産設備25%)、LNG船22%、コンテナ船9%、タンカー2%、洋上 風車設置船2%となっていた。 Ⅳ.造船・造機以外の産業動向 ◎外航海運 ◆ばら積み船運賃最低/バルチック指数、資源荷動き鈍く【2.12】 資源や穀物などを運ぶばら積み貨物船のスポット (随時契約)運賃が過去最低に下がった。総合的な値動きを示すバルチック海運指数(BDI、1985年=1,000)は11日時点で 553と、86年7月の過去最低をさらに下回った。鉄鉱石や石炭など資源の荷動きが鈍いことや、原油価格の下落が波及 した。指数は英バルチック海運取引所が主要海域の運賃や用船料(海運会社が船主から船を借りるチャーター料)の情 報を基に算定する。海運需要が活発だった2007~08年には10,000を超えたが、リーマン・ショックを契機に低迷し13~14 年は700~2,000台で推移。直近の高水準をつけた14年11月上旬からは6割下がった。鉄鉱石などを運ぶ大型船「ケープ サイズ」の用船料は前年同期に比べて3割安い。世界最大の鉄鉱石需要国である中国の14年の輸入量は前年比で14% 伸びたが15年1月は9%減と減速感が強まっている。 ◆中国の旧正月控え、ばら積み船運賃一段安/4日連続で最低更新【2.18】 鉄鉱石・石炭や穀物を運ぶばら積み船の スポット(随時契約)運賃が一段安となっている。総合的な値動きを示すバルチック海運指数(BDI、1985年=1000)は16 日時点で522となり、4営業日連続で過去最低値を更新した。直近高値を付けた2014年11月上旬に比べて6割以上低い。 特に鉄鉱石や石炭などの荷動きが鈍い。中国の旧正月を控えて輸送需要が縮小している。海運指数は英バルチック海 運取引所が主要海域の運賃や用船料(海運会社が船主から船を借りるチャーター料)の情報を基に算定している。海運 需要が活発だった07~08年には10000を超える時期もあったが、リーマン・ショックを境に下落基調に転じた。11日には5 53を付け、28年7カ月ぶりに過去最低値を更新した。海運指数に大きく影響する鉄鉱石運搬船、ケープサイズの用船料 (海運会社が船主に支払うチャーター料)は、1日あたり4900㌦前後と前年同期の水準に比べて4割前後低い。ケープサ イズ用船料と連動する鉄鉱石のスポット運賃も、代表的な航路のオーストラリア-中国間で1㌧あたり4・4㌦前後と前年 同期比で約4割安い。毎年1~3月は鉄鉱石などの輸送需要が少ないほか、旧正月の休暇前後は「スポット契約の引き合 いが一段と減少する」(アナリスト)ことが多い。今年は、世界各地から天然資源を輸入している中国経済の減速懸念も 重なり、市況が低迷している。 ◆大型ばら積み船、用船料6割安に/中国の需要鈍る【2.26】 鉄鉱石などを運ぶ大型ばら積み船、ケープサイズのス ポット(随時契約)運賃相場が弱含みで推移している。運賃の算定基準となる用船料(船会社が船主に払うチャーター 料)は主要航路平均で1日あたり4400㌦前後と前年同期に比べて6割安い。最大の鉄鉱石輸入国である中国需要に陰 りが出ているほか、季節的に荷動きが少ないことも影響している。用船料と連動する鉄鉱石のスポット運賃も代表的な 航路であるオーストラリア-中国間で1㌦あたり4・4㌦前後で推移し、前年同期に比べて5割安い。中国の輸入量は、昨 年10月まで20カ月連続で前年実績を上回っていたが、頭打ち感が強くなっている。 ◎内航海運 ◆建造申請、油送船低調/14年度、4年連続「大台」はクリア【2.10】 〈デスク〉日本内航海運組合総連合会(内航総連) がまとめた2015年1月期の船舶建造募集に対する組合員(内航事業者)からの建造申請(改造・転用含む)は、全船種合 わせ21隻・3万6,400対象㌧(貨物船・重量㌧、油送船・立方㍍、曳船・馬力など)となった。これで14年度の5回の建造募 集が終わった。通年度の申請数はどうなった。〈A〉1月期の申請数を加えた14年度の建造申請隻数は改造、転用含めち ょうど100隻です。11年度以降、4年連続で100隻に到達したことになります。〈B〉改造や転用を除けば100隻には届きま せんでしたが、申請数自体は「大台」となりました。〈C〉13年度は116隻で、08年のリーマン・ショック以降最多を記録。今 年度はそれよりは減少しましたが、貨物船を中心に一定の応募がありました。〈デスク〉14年度の建造申請の特徴は。 〈A〉5月期の応募が突出したことですね。41隻とリーマン・ショック以降最高を記録し、活発な応募状況に7月期以降の 動向が注目されました。しかし、7月期12隻、9月期13隻、11月期13隻とペースダウン。l月期は21隻と20隻を超えました が、最終的には5月期を除けば前年実績を下回りました。〈B〉一般貨物船の応募は堅調でした。申請隻数(1月期を除き 認定ベース)は67隻で、前年を10隻上回りました。5月期に28隻の大量申請があったほか、7月期以降もコンスタントな応 募が続きました。建造意欲を持っている船主が代替建造を図ろうとしている動きが少しずつ出ているようです。〈C〉13 - 17 - 年度の申請数を押し上げた油送船の建造の動きは低調でした。14年度は14隻で、13年度(42隻)の3分の1にとどまりま した。昨年は「エネルギー供給構造高度化法」を受け、石油元売り各社が製油所再編を進めました。これにより、輸送距 離が拡大することになるため5,000~6,000立方㍍型といった大型船の建造も目立ちました。〈A〉今年度は一転、今後の 石油需要の先行き不透明感もあり、応募が大幅に減少し低調でした。〈デスク〉来年度の全体の建造申請はどうなるの か気になるな。〈A〉内航総連が昨秋に内航船を建造している造船所に対して行った建造動向調査によると、15年度の 受注量(暫定事業納付金対象船)は83隻と一定の隻数が建造される計画が出ています。不透明な要素もありますが、1 5年度も14年度並みの船が造られる可能性があります。〈B〉船種別では一般貨物船は59隻、石油タンカーとケミカルタ ンカー合わせ16隻の受注量です。貨物船、油送船とも今年度と同じような傾向となりそうです。 ◆3月期解撤交付金、来月1日から申請受け付け/内航総連【2.19】 日本内航海運組合総連合会は、3月1-20日を募 集期間に、暫定措置事業規程に基づき組合員(内航事業者)から3月期の解轍交付金交付(引き当て資格の買い上げ)申 請を受け付ける。3月期の交付金申請受け付けは、内航総連が実施する2014年度の第4回買い上げ募集。14年度は年4 回(14年5、9、11月、15年3月)受け付ける。14年度の1対象㌧(貨物船・重量㌧、油送船・立方メートル、曳船・馬力など)当た りの解撤交付金単価額は、一般貨物船3万1000円、油送船1万6500円、特殊油送船(IMO)8250円、曳船3100円などと設 定している。 ◆内航総連14年度建造認定量/前年比17隻減の93隻【2.24】 日本内航海運組合総連合会(内航総連がまとめた暫 定措置事業での建造認定量調査によると、2014年度の隻数は93隻(改造や100総㌧未満船など除く)と前年度比17隻 減少した。一般貨物船は9隻増の61隻と拡大したが、油送船は27隻減の13隻と振るわなかった。一般貨物船と油送船で 状況に大きな違いがみられた。認定量は、15年1月期申請分を全て認定されたという前提で算出されている。建造認定 隻数が100隻を下回るのは、リーマン・ショック後の景気低迷の影響が見られた10年度以来4年ぶり。ただ、90隻を超える 申請があったため、「一般貨物船を中心にそこそこの建造の動きがあった」(内航関係者)とみている。一般貨物船、油 送船以外の船種の建造認定船はRORO船、コンテナ船といったモーダルシフト船が7隻(前年度比1隻増)、砂利・土運船2 隻(同1隻増)。14年度の一般貨物船(ガット付き船も含む)の建造認定隻数61隻(転用含む、改造除く)は、1998年度の暫 定事業開始以降最多だった07年度と13年度の52隻を9隻上回った。内航船の主力の499総㌧型を含む300-500総㌧ 型未満クラスは36隻で、前年度比8隻増加した。ガット付きの一般貨物船の建造が増えたことも要因。そのため、海運組 合などの関係者は「14年度のガット付き船を除くこのクラスの一般貨物船の建造意欲は、前回申請数が多かった06、07 年度の水準には及ばない」と説明した。その他の船型は、小型船の100-300総㌧未満型は11隻(前年度比2隻、749総㌧ 型などの500-750総㌧未満の船型は12隻(同3隻増)と過去最多だった。一方、油送船は応募が全船型にわたり大幅に 鈍化。前年度に建造の動きが旺盛だった1000総㌧以上の大型船は5隻の認定にとどまり、11隻のマイナス。300-500総 ㌧未満型の小型船も3隻と10隻減少した。今回のまとめでは、プッシャーバージを1隻としてカウントし、バージの船型で 算入しているほか、100総㌧未満船は認定隻数集計から除外されている。 ◆推定鉄骨需要量は約38万トン/2カ月連続で前年下回る【2.9】 国土交通省の12月の建築着工統計調査報告による と、全着工床面積は前年同月比18・5%減(前月比5・4%減)の1030万平方㍍となった。構造別(※表1)では、S造が同15・ 6%減(同7・9%減)の367万2000平方㍍、SRC造は同24・1%減(同67・7%増)の16万6000平方㍍。全床面積中のS造、SR C造の比率は37・3%、推定される鉄骨需要量は約37万6000トンの水準(前年同月は約44・6万トン、※表2)と2カ月連続 で下回った。 ◆国内エンジン生産量、7年ぶり増/14年は6%増・796万馬力、受注残は前年並み【2.18】 《本紙調べによると、国内デ ィーゼル主機メーカー11社の2014年の生産実績は、前の年と比べて生産馬力ベースで6%増の919台・796万馬力だっ た。新造受注の回復を背景とした国内造船所の操業水準の引き上げを受け、07年をピークに減少傾向にあった舶用主 機のエンジン生産量が増加に転じた。受注残は横ばいで946万馬力。14年の生産量をベースにすると手持ち工事量は 約1.2年分で13年末と比べて約1カ月分減少した。》メーカー別の生産量は三井造船が177台・343万馬力で1位。2位に日 立造船、3位にマキタ。従来は三番手につけていた川崎重工を抜き、三井造船サプライセンシーのマキタが浮上した。ト ップの三井造船の生産量は馬力ベースで前の期比3%減、受注残は8%増の403万馬力となった。日立造船の生産量は 86台・138万馬力で、生産量が落ちていた13年に比べて大幅に拡大、11年の生産量91台・168万馬力に迫るまでに回復し た。一方、赤阪鐵工所は45台・20万馬力でともに生産量を落とし、生産移管を進める三菱重工舶用機械エンジン(MHI- MME)の生産量は2台に留まった。三菱重工(MHI-MME)UEエンジンの移管先である神戸発動機の生産量は35台・45万馬 力(13年は29台・36万馬力)で増加。ディーゼルユナイテッド(DU)やマキタ、川崎重工、阪神内燃機の生産量は前年並み となっている。国内造船所の受注回復を受け、エンジン受注残は三井造船、マキタ、阪神内燃機などで生産台数、馬力 ともに増加。一方、赤阪鐵工所と三菱重工舶用機械エンジン(MHI-MME)は受注残でも減少している。本紙調査はアンケ ート形式の任意回答で、対象は舶用主機を手掛ける赤阪鐵工所、川崎重工業、神戸発動機、JFEエンジアリング、DU、新 潟原動機、阪神内燃機工業、日立造船、マキタ、三井造船、MHI-MMEの11社。調査は1975年から毎年実施している。 ◆8社受注458億9900万円/工作機械1月13%増、17カ月連続増加【2.13】 日刊工業新聞社が12日まとめた1月の工 作機械主要8社の受注実績は前年同月比13・0%増の458億9900万円だった。17カ月連続で前年を上回った。1月は国内 稼働日が少なく、海外の期末翌月に当たるが、オークマなどが前年同月だけでなく前月を上回った。2015年の工作機 - 18 - 械市場は内外ともに一昨年からの堅調さを維持したままスタートを切った。これまで全体額を押し上げてきたスマート フォン(スマホ)関連の受注もみられた。内外別は国内が、18カ月連続増、海外が8カ月連続増だった。オークマは国内で 大型機の受注を重ね、小型機も活発だった。合計額は8社中首位だった。米国と中国事業を中心に輸出は同16・8%増。 前月比でも0・7%増と微増ながらプラスを確保した。牧野フライス製作所も輸出が前月比3・7%増のプラス。単月で過去 4位の高水準だった。中国を含むアジアの増加が顕著で、自動車の量産部品向けの大型マシニングセンター(MC)や家 電・情報機器向けの金型加工用が好調。ジェイテクトも同じく輸出が前月から伸び、全体額を前年同月比51・6%増と伸 ばした。スマホ関連で代表銘柄のツガミは輸出が同14・4%増。14年11月から、中国の新興スマホメーカー向けのまとま った受注がある。中国スマホ向けは春節の影響で2月分の一部が1月に前倒しで入っている。東芝機械の前年割れは前 年に国内であった大口受注の反動が主要因という。また、三菱重工業の海外は高水準だったが、前年の水準が大口受 注で一段と高かった。 ◆工作機械1月受注/20%増、拡大基調続く【2.13】 日本工作機械工業会が12日まとめた1月の工作機械受注実績 (速報値)は前年同月比20・4%増の1211億円となった。16カ月連続で前年を上回った。5カ月ぶりに1200億円台に落ち着 いたが「1月は国内稼働日が少なく、海外は期末明け。数値が低くなる傾向がある」(日工会事務局)と季節要因を指 摘。内需は同12・2%増の385億円、外需は同24・7%増の826億円だった。それぞれ19カ月連続、15カ月連続のプラス。5 カ月ぶりの1200億円台は季節性に加え「過去最高だった12月の反動減」(同)という。1000億円が好不調の境界であり、 1月の実績は健全水準と言える。ただ、「物足りなさがある」(工作機械メーカー幹部)との声も複数ある。日工会の14年 目標額は1兆55000億円。月当たり約1290億円が必要額だ。内需は5000億円規模を目指しており、同じく約420億円が 「合格点」となる。それでも1兆5093億円に終わった14年は、1月に月当たりの必要額を20%ほど下回ったのも事実。今 年は「今後補正予算などもあり、右肩上がりに伸びていくだろう」(同)と予測する。1月は工作機械主要8社のうち、OKK と東芝機械の受注が前年割れだった。OKKは部品加工と金型向けで国内を同73・6%増と伸ばしたが、全体では同6・6% 減。輸出が過去1年で最少だった。「各地域でまんべんなく受注したが、それぞれのボリュームが少なかった」(OKK総務 課)。東芝機械は合計が同48・3%減。プレス機向け大口受注が前年あり減少幅がふくらんだ。両社とも受注環境そのも のは良いとしている。 ◆工作機械受注、1月20%増1211億円/内外需とも2ケタ増【2.19】 日本工作機械工業会(日工会)が18日発表した工 作機械の1月受注実積は、前年同月比20・4%増の1211億300万円となり、1月の過去最高を記録した。16カ月連続で前年 実績を上回った。国内は設備投資を支援する補助金や昨秋の大型見本市の効果が薄れつつあるが、内外需ともに前年 同月比で2ケタ増の伸び。日工会の花木義麿会長は「大変順調な滑り出しとなった」と指摘。高い受注水準が今年に入 っても続いている。内需は前年同月比12・2%増の384億7700万円で19カ月連続増、外需は同24・7%増の826億2600万 円で15カ月連続増だった。内需は見本市や補助金の寄与がほぼ終了し、8カ月ぶりに400億円を割り込んだ。業種別は 自動車向けが18カ月連続増となった。外需はベトナムが172億6800万円で、中国の179億2700万円、米国の173億900万 円に次ぐ上位3位に入った。増産基調にあるスマートフォン(スマホ)向けが中心とみられる。欧州は減少。ドイツが21カ月 ぶりの30億円割れだった。欧州はロシアの経済問題で、「経済全体が少し弱含んでいる。一番の懸念だ」(花本会長)と の認識を示した。ただ、国内外合わせた世界市場は「2月、3月が落ち込むとは見ていない」(同)と成長維持を織り込む。 ◎産業機械 ◆産機受注、昨年19%増/5兆6975億円、3年ぶりプラス【2.13】 日本産業機械工業会(産機工)が12日発表した2014 年1-12月の産業機械受注実績は前年比19・3%増の5兆6975億円となり、3年ぶりにプラスに転じた。このうち内需は同 11・2%増の3兆1720億円で、2年連続のプラス。外需は同31・4%増の2兆5255億円となり2年ぶりのプラスとなった。内需 は全12機種で前年実績を超え、減少した機種はなかった。内需の内訳は、製造業向けが同1・7%増の9593億円で3年ぶ りのプラス。非製造業向けは同22・7%増の1兆2275億円で2年連続で前年実績を超えた。官公需向けは同13・9%増の69 06億円、代理店向けは同2・5%減の2944億円だった。主要約70社の産業機械輸出高は欧州、北米、南米、アフリカ、オセ アニア、ロシア・東欧で増加し、同32・8%増の2兆3901億円で2年ぶりのプラス。一方、14年12月単月の受注実績は前年同 月比21・8%増の4828億2400万円で3カ月ぶりのプラスに転じた。うち内需は同25・6%増の3128億3800万円、外需は同 15・4%増の1699億8600万円。主要70社の輸出契約高は同19・9%増の1580億1200万円で4カ月連続プラス。地域別構 成比はアジア56・4%、北米23・4%、オセアニア7・6%、中東6・6%、欧州2・5%。 ◎環境装置 ◆環境装置受注/12月、9・4%減【2.13】 日本産業機械工業会が12日発表した2014年12月の環境装置受注実績は、 前年同月比9・4%減の520億9700万円で5カ月連続で前年同月を下回った。全体の8割弱を占めた官公需が都市ゴミ 処理装置などの減少で、同16・4%減の411億1400万円と落ち込んだのが響いた。14年1-12月累計は前年比11・5%増の 5841億2600万円と2年連続で増加した。12月の民需は同5・6%減の64億5400万円。内訳は、製造業が機械向け大気汚 染防止装置関連機器などの減少で同19・2%減の38億4100万円、非製造業が電力向け排煙脱硫装置の増加で同25・4% 増の26億1300万円。外需は産業排水処理装置が好調で同3・1倍の45億2900万円だった。装置別では、大気汚染防止装 置が同30・2%増の26億1700万円、水質汚濁防止装置が同49・9%増の241億8200万円。一方、ゴミ処理装置は同35・8% 減の251億6300万円。 ◆民生用電子機器、国内出荷21.9%減/1月【2.20】 電子情報技術産業協会(JEITA)が19日発表した1月の民生用電 子機器の国内出荷額は、前年同月比で21.9%減の894億円だった。マイナスは10カ月連続。2014年1月は消費増税前の - 19 - 駆け込み需要で伸びたため反動が出た。13年l月に比べると1.7%減だった。29型以下の小型の薄型テレビは33%増の1 3万7,000台と伸びた。ケーブルテレビが今春、アナログ放送をデジタルに変換するサービスを停止するため、ブラウン 管テレビからの買い替えが起こっているためとみられる。 ◆白物家電出荷/l月は22%減【2.24】 日本電機工業会(JEMA)が23日に発表した1月の白物家電の国内出荷額は前 年同月比22・1%減の1381億円だった。4カ月連続で前年実績を下回った。前月よりもマイナス幅は12・1ポイント拡大した。 製品別ではエアコンが24・2%減の3・50億円で9カ月連続のマイナスとなった。 ◆昨年の国内4輪生産、2年ぶりプラス【2.2】 《「軽」3年連続 最高更新》日本自動車工業会(自工会)がまとめた2014 年(1-12月)の生産・輸出実績によると、4輪車の国内生産は前年比1・5%増の977万4,558台となり、2年ぶりに前年を上 回った。消費増税前の駆け込み需要と、その受注残が寄与。7-12月の単月生産は6カ月連続で前年同月を下回ったが、 通年ではプラスを確保した。一方、小型乗用車などの海外生産移管が進んだ影響もあり、6年連続で1,000万台を割り込 んだ。車種別では軽乗用車の生産が同11・0%増の186万8,410台で、3年連続で過去最高を更新した。バスも同5・4%増 の13万9,834台と過去最高だった。一方、小型乗用車の生産は同7・3%減の175万895台で、1966年の統計開始以降で下 から4番目の低水準だった。4輪車の輸出は同4・5%減の446万5,635台で2年連続のマイナス。小型乗用車の輸出は同5 2・1%減の23万9,198台と過去最低だった。2輸車の国内生産は同6・0%増の59万6,982台。新車の投入や輸出の伸びが 貢献し、4年ぶりに前年を上回った。 ◆増税後初の2ケタ減【2.3】 《1月新車販売 乗用車低迷続く》日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国軽自動車 協会連合会(全軽協)が2日発表した2015年1月の新車販売台数は、前年同月比19・1%減の40万1,366台と2カ月ぶりに 前年同月実績を下回った。前年にあった消費増税前の駆け込み需要の効果が抜け落ち、減少幅が拡大。消費増税後で は初めて減少幅が2ケタに悪化した。登録車は同18・9%減の23万7,170台で、6カ月連続で前年同月を下回った。このう ち乗用車は同21・4%の20万7,635台で6カ月連続のマイナス。トラックは同4・4%増、バスは同26・7%増と堅調で、乗用 車の低迷が全体の足を引っ張る傾向が続いた。軽自動車の販売は同19・4%減の16万4,196台で、2カ月ぶりに前年同月 を下回った。1月としては14年1月に次いで過去2番目に多い台数となった。ただ、スズキとダイハツ工業が14年暦年販売 の首位攻防を年末まで繰り広げた反動で、14年12月比17・9%減と、前年同月比、前月比ともに約2割減となった。自販連 の担当者は「サンプル調査によると登録車の純受注も、販売同様に1月は前年同月比約21%減と厳しかった」と指摘。「2 月と3月の販売が1月と同様の減少率になると仮定して試算すると、14年度の販売は前年度比10・2%減の308万台。東 日本大震災のあった11年度を若干上回る程度にとどまる」と説明した。 ◆普通トラック12%増、1月販売9カ月連続プラス【2.4】 トラック業界関係者がまとめた1月の普通トラック(積載量4㌧ 以上)販売台数は前年同月比12・1%増の5,463台となり、9カ月連続で前年同月実績を上回った。建設関連需要が底堅 く、ダンプトラックやミキサー車などの販売が伸びた。荷台部分を手がける架装メーカーの生産能力が上がり、ダンプ など特装車の供給能力が増え、トラックの販売を押し上げた。車種別では大型トラックが同6・2%増の3,110台、中型トラッ クは同21・0%増の2,353台だった。メーカー別では日野自動車が大型トラックで同2・9%減の1,023台、UDトラックスは中 型トラックで同3・8%減の150台だった。今後の見通しについて業界関係者は消費増税前の駆け込み需要が2014年3月 にピークを迎えた影響で、1-3月は前年実績を下回るが「14年10-12月と合わせた14年度下期全体では昨年並みにな る」との見方を示した。 ◆1月、車8社の生産・販売/世界生産2カ月ぶり減【2.27】 乗用車メーカー8社が26日発表した2015年1月の生産・販売 ・輸出実績によると、8社合計の世界生産は前年同月比0・2%減の219万9325台となり、2カ月ぶりに前年水準を下回っ た。国内販売が14年4月の消費増税後で最大の落ち込みとなったことで、8社合計の国内生産も同10・3%減と消費増税 後で2番目の減少幅となった影響が大きかった。企業別ではトヨタ自動車とホンダ、ダイハツ工業の3社で世界生産が 減少した。海外生産は全体的に増加傾向が続くが、国内生産や輸出によって明暗が分かれた。トヨタは海外生産は1月 で過去最高だったが、輸出の減少が国内生産を同14・3%減まで押し下げ、世界生産は2カ月ぶりに減少した。ホンダも 海外生産は過去最高だったが、低い輸出水準と国内販売の減少により、国内生産の減少幅は8社の中で最大となった。 ダイハツは国内と海外生産の両方が減少した。一方、日産自動車は海外、世界生産ともに1月として過去最高となった。 メキシコや中国の好調な販売に加え「エクストレイル」の輸出増加により国内生産が8カ月ぶりに増加。富士重工業は新 型「レガシィ」などが好調で、国内と海外、世界の生産と輸出が1月として過去最高を記録した。三菱自動車は軽自動車 生産の増加により、国内生産が6カ月ぶりに増加した。マツダとスズキは国内生産の減少を海外生産の増加がカバーし て世界生産は増加した。4月にエコカー減税基準の変更や軽自動車増税が控えるが、目立った駆け込み需要は見られ ない。国内生産が増加に転じるかは難しい状況だ。 ◆普通鋼鋼材受注、昨年12月6.2%減【2.10】 日本鉄鋼連盟が9日発表した2014年12月の普通鋼鋼材の受注量は、前 年同月比6.2%減の604万1,000㌧で5カ月連続のマイナスだった。内需は同12.0%減の369万6,000㌧で5カ月連続のマ イナス。建設向けが2割弱のマイナスとなったほか、製造業用も自動車向けでマイナス基調が続いている。用途別では 製造業用が同9.2%減の169万3,000㌧で2カ月連続、建設用が同18.2%減の89万2,000㌧で3カ月連続のマイナス。製 造業用は船舶用が同3.5%増の39万7,000㌧で2カ月ぶりのプラスとなったが、自動車用は同10.7%減の74万9,000㌧ で3カ月連続のマイナスだった。 ◆1月の粗鋼生産、5カ月連続減/製造業向け鈍化【2.20】 日本鉄鋼連盟が19日発表した1月の粗鋼生産量は、前年同 月比4・0%減の902万3000㌧となり、5カ月連続のマイナスとなった。建築・土木向けや自動車を中心とする製造業向け - 20 - の鋼材需要が全般的に鈍化し、受注が弱含んでいる。鋼材在庫も高止まりしており、鉄鋼各社が減産基調を強めている ことも影響した。14年1-3月は消費増税前の駆け込み需要があったこともあり、2月以降も前年割れが続く見通しだ。 炉別では高炉系の転炉鋼が前年同月比3・6%減の710万㌧で5カ月連続のマイナス。電炉鋼は同5・3%減の192万3000 ㌧で2カ月連続のマイナスだった。品種別も軒並みマイナス。建設向けの条鋼類が同5・6%減の155万4000㌧で5カ月連 続のマイナス。製造業向けの鋼板類も同4・1%減の477万2000㌧で3カ月連続のマイナスだった。粂鋼類の主要品種のH 形鋼は、同4・0%減で6カ月連続のマイナス、小形棒鋼は同9・2%減で5カ月連続のマイナス。鋼板類は最大のウエートを 占める広幅帯綱が同3・7%減と3カ月連続のマイナス。造船向けがメーンの厚板も同5・0%減で2カ月ぶりのマイナス、 自動車向けが多い亜鉛メッキ鋼板も同6・9%減で6カ月連続のマイナスだった。2月の粗鋼生産もマイナスが継続しそう だ。先行指標である普通鋼鋼材の14年12月の受注量が同6・2%減で5カ月連続のマイナスと低調だ。経済産業省がまと めた国内鉄鋼各社の1-3月期の粗鋼生産計画は2730万㌧となっており、900万㌧前後の粗鋼量が続きそうだ。 ◆世界粗鋼生産2.9%減、けん引役の中国伸びず/1月2カ月ぶりマイナス【2.24】 世界鉄鋼協会がまとめた1月の世界 (65カ国・地域)粗鋼生産量は前年同月比2・9%減の1億3310万2000㌧で2カ月ぶりのマイナスとなった。けん引役の中 国が減少し、全体でもマイナスとなった。だが中国の鋼材輸出は高水準で、通貨安を背景にロシアが輸出を拡大すると の見方もあり国際市況への悪影響を懸念する声もある。主要国・地域は中国が同4・7%減の6550万㌧で2カ月ぶりのマ イナス。だが6000万㌧台は25カ月連続で、1月の鋼材輸出も1029万㌧と高水準が続く。そのほか米国は同0・4%増の73 5万5000㌧で11カ月連続のプラス。インドは同0・3%増の707万㌧で8カ月連続のプラスで1月単月で過去最高を更新し た。またロシアは同6・0%増の613万㌧で1月単月では過去3番目の水準。ブラジルも同7・7%増の296万5000㌧で過去2 番目の水準だった。ともに国内経済が低迷する中で高水準の生産が続いている。一方、欧州28カ国は同1・1%減の1444 万6000㌧、韓国は同5・0%減の578万㌧だった。 以 - 21 - 上
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