企業・産業動向レポート = 2015年9月1日~30日の報道内容 = Ⅰ.各分会所属企業、関連企業・関連地域の状況 ◎函館どつく関連 ◆名村造船所/34型バルカー2隻受注【9.29】 ≪ウィズダム・マリン向け、伊万里で建造≫ 名村造船所は、台湾船主ウ イズダム・マリンから3万4000重量㌧型バルカー2隻を受注した。ウィズダムが25日発表した。船価は1隻当たり2,200万 ㌦としている。納期や建造工場は明らかにしていない。情報筋によると、伊万里事業所で建造するとみられる。受注し た3万4,000重量㌧型バルカーは名村造船と函館どつくが共同開発した省エネ仕様のハンディサイズ・バルカー「HIGH BULK34E」シリーズ。従来のヒット商品だった32型バルカーの使い勝手や船体の堅牢さなどの特徴を引き継ぎながら、 燃費性能と積み高を向上させた船型で、一昨年から受注を重ねている。伊万里事業所と函館どつくの両工場で現在建 造しており、函館どつくは34型バルカーを連続建造している。ウィズダムはリーマン・ショック以降もコンスタントに新造 整備を進めており、今年に入ってからも、ジャパンマリンユナイテッド、常石造船、川崎重工業に新造発注を決めている。 ウィズダムが明らかにしているバルカーの新造発注残は、今回表面化した2隻を含めて、ハンディサイズ9隻、ハンディ マックス6隻、パナマックス13隻、ポストパナマックス1隻の29隻となっており、全て日本の造船所で建造する。ウィズダム が公表している支配船隊は現在107隻にのぼるが、このうち100隻が日本の造船所での建造船になり、日本の造船所と のつながりが非常に強い。品質などへの信頼性から日本での船隊整備を継続しているようだ。 ◎いすゞ自動車 ◆いすゞ、タイで新エンジン【9.9】 いすゞ自動車はタイで環境対応の新型ディーゼルエンジンを生産する。100億円以 上を投じ、新エンジンの組み立てラインを導入する。2015年にも生産をはじめ、ピックアップトラックに搭載する。排気量 を小さくした新エンジンに過給器を搭載してダウンサイジングし、燃費性能を高める。環境規制が強化されるなか、トヨ タ自動車など各社も燃費を向上した新型ピックアップを投入しており、環境性能を巡る競争が本格化する。≪ピックアッ プに搭載、環境型ディーゼル生産≫泰国いすゞエンジン製造(バンコク市)に排気量1,900∝の新型エンジンの組み立て ラインを導入する。年産能力は数十万基とみられる。エンジンの素形材は子会社のいすゞエンジン製造北海道(北海道 苫小牧市)などから調達する。新エンジンはタイで生産する世界戦略車のピックアップトラック「D-MAX」に搭載する。排 気量2,500-3,000∝の現行エンジンと比べ小排気量化した新エンジンに過給器を搭載。従来と同等の動力性能を確保 してダウンサイズし、燃費性能の向上やコストダウンを図る。世界的に環境規制が強化されるなか、タイ政府は16年に 車にかかる物品税を従来の排気量別から二酸化炭素(CO2)排出量別への変更を予定する。1㌧ピックアップトラックの場 合、1㌔㍍走行当たりのCO2排出量が200㌘を超えると、税率が2-3%増加する見込みだ。同国ピックアップトラック市場 シェア首位のトヨタは5月、同3位の三菱自動車は14年に車両を全面改良して新型ディーゼルを投入し、主要車型で新税 制に対応する。同2位のいすゞによるダウンサイジングエンジン投入で、環境需要を巡る争奪戦が激しさを増す。 ◎今治造船関係 ◆今治工業高に造船科、来年度から/人材育成へ、実習棟を建設【9.8】 愛媛県立今治工業高校が、来年度から造船コ ースを新設する。造船の集積地の高校として、学生が設計や技能を学べる環境を整え、造船業界や関連業界で活躍で きる人材を育てる。造船技能の実習棟を建設し、造船設計用の3次元CADも導入する予定だ。来年4月に現在の機械科 を「機械・造船科」に改編する。定員や教育内容などは県教育委員会で10月に正式決定する予定だ。これに先立ち、県 が9月補正予算として造船コース新設の準備費として5,052万円を計上。実習棟の設計費や、設計システム導入費、既 存教室の改修経費、教員の研修費用などを盛り込んだ。実習棟は来年度に工事を行う予定。県によると「業界からの要 望もあり、地方創生の独自の取り組みとして地場産業である造船の専門学科を新設する」という。 ◎その他 ◆中国地方3年ぶり増【9.25】 ≪昨年度の舶用工業製品生産≫中国地方の2014年度の舶用工業製品の生産高が前 年度までの減少から増加に転じた。中国運輸局がまとめたもので、管内(山口県の一部を除く中国5県)の生産高は1,59 5億円(前年度比8%増)となり、3年ぶりに増加した。円安傾向の定着、新造船の受注増などが要因と見ている。管内の 主な舶用工業製品は、舶用エンジン、タービン、プロぺラ、艤装品など。省エネ技術に対する高い信頼性なども受注を後 押しした。管内生産高の80%を占める三井造船、シンコー、ナカシマプロペラ、大晃機械工業など主要11社の受注も1,31 4億円(同5%増)と伸びた。 - 1 - ◆納期延期の客船、12月引き渡しへ/三菱重、人件費増で損失【9.2】 三菱重工業が納期を延期した客船世界最大手 の米カーニバル傘下のアイーダ・クルーズ向け大型客船の引き渡しが、12月になる見通しであることがわかった。高い 品質の客船を提供するためとして、9月の引き渡しを納期未定で延期していた。人件費などの増加による損失が発生す るが、影響を最小限に抑える考え。ただ、2016年3月引き渡し予定の2番船への影響もでてきそうだ。大型客船は長崎造 船所(長崎市)で建造しており、13年6月に起工した。当初15年3月に引き渡しを予定していたが、設計や資材の変更で9 月に延期。さらに「設備の品質確認などにもう少し時間をかける」(幹部)として、8月に2度目の延期を決めていた。今 後、試験航海などを経て、12月の納入を目指す。三菱重工は客船2隻で受注額を超える1,300億円超の特別損失を計上 している。 ◆客船の納期は12月に/三菱重工、アイーダと合意【9.3】 三菱重工業は2日、納期を再延期していたアイーダ・クルー ズ向けの大型客船の1番船について、新たな納期を12月とすることでアイーダと合意したと発表した。同船の建造にあ たっては設計・建造作業が遅れ、納期を今年3月から9月に延期した後、納期未定で再度延期していた。三菱重工は今回 の納期延期に伴う違約金などについて、本紙取材に対して「客先と協議している」とコメントし、業績への影響について も「精査中」としている。納期延期の理由については、最高の快適性、エンターテイメント性を備えた高い品質の客船を 提供するために、客先とともに新たな納期を設定することに至ったとしている。アイーダ向けの12万5,000総㌧客船2隻 シリーズは、最先端の省エネ技術や自動化・省人化技術を盛り込み、屋内型ビーチなど設備も充実した次世代客船。一 方で、プロトタイプならではの仕様確定の遅れで工程遅延が深刻化し、三菱の損失が1,337億円に膨らんでいる。アイー ダは、同新造船“AidaPrima”の横浜発の処女航海をキャンセルしており、今年10月から予定していた横浜発ドバイ行きク ルーズと、ドバイ発ハンブルク行きクルーズを実施しないことを明らかにしている。 ◆大型クルーズ客船の納期、1番船12月で合意/三菱重工【9.3】 三菱重工業は2日、長崎造船所(長崎市)で建造中の アイーダ・クルーズ向け大型クルーズ客船2隻の1番船について、新たな納期を12月にすることで合意したと発表した。 先月、予定の9月から先送りすると公表しており、今回新たな納期が決定した。業績影響については「詳細は今後精査す る。影響があればすみやかに開示する」(広報)。すでに8月末に社内的な試運転を終えたという。現時点で2番船の納 期は変えていないが、客先と検討中という。三菱重工は同客船2隻をめぐり、度重なる設計変更などで、累計1,300億円 規模の損失を計上した。1番船は当初、納期を2015年3月としていたが、9月に見直した。しかし先月、「最高の快適性、エ ンターテイメント性を備えた高い品質の客船を提供するために、客先とともに新たな納期を設定することに至った」と して、再延期を公表。ようやく1番船の納期が固まった。 ◆三菱重工/建造中の客船、12月引き渡し【9.4】 三菱重工業は2日、長崎造船所で建造中の独アイーダクルーズ向け 大型クルーズ船「アイーダプリマ」(124,500総㌧、乗客定員3,286人)の引き渡し時期について、12月とすることで発注 先と合意したと発表した。同船は当初、今春の引き渡しを予定したが9月に延期。さらに、8月上旬にはこれを再度延期 することを明らかにしていた。三菱重工では、アイーダ向けのクルーズ船を2隻建造中。今回、12月引き渡しで発注先と 合意したのは1番船。これに続く2番船(船名未定)は来年3月の引き渡しを予定するが、1番船の竣工遅れの影響を電け、 2番船の引き渡しが遅延する可能性もある。 ◆新会社の社名と社長を決定/三菱重工【9.9】 三菱重工業は8日、10月1日付で発足する工作機械事業の製造・販売 部門の統合新会社の社名を「三菱重工工作機械」(滋賀県栗東市)とし、新社長に白尾誠二機械・設備システムドメイン 工作機械事業部長を充てる人事を発表した。今年5月に本体の工作機械事業を分社分割により連結子会社の三菱重工 工作機械販売(大阪市淀川区)に承継させることを決め、社名と社長が固まった。新会社の資本金は30億円。売上高は 500億円規模。 ◆来月設立の新会社の社名決定【9.9】 三菱重工業は10月1日付で設立する長崎市香焼町の船舶建造事業と船体ブ ロック製造事業の新会社について、社名を「三菱重工船舶海洋」(船舶建造)、「三菱重工船体」(ブロック製造)に決めた と8日発表した。 ◆「三菱重工船舶海洋」に決定/三菱重工【9.9】 三菱重工業は8日、長崎造船所の商船事業について、会社分割で連 結子会社MHI船海エンジニアリングに承継させた後の社名が「三菱重工船舶海洋」に決定したと発表した。長崎造船所 の船体ブロック製造事業については、三菱重工が全額出資する準備会社が会社分割で承継。承継後の名称は「三菱重 工船体」となった。船舶建造を担う三菱重工船舶海洋は、所在地が長崎市、横田宏社長、資本金10億円。船体ブロック製 造などを手掛ける三菱重工船体は、所在地が長崎市、村上幸司社長、資本金3億円となる。 ◆分社後は「三菱重工船舶海洋」に【9.9】 三菱重工業は8日、長崎造船所の商船事業分社に伴い、事業を承継する会 社の社名を公表した。船舶建造事業会社は「三菱重工船舶海洋」、船体ブロック製造会社は「三菱重工船体」となる。分 社まで残り1カ月を切り、これで新体制の概要がようやく明らかになってきた。船舶建造事業は、10月1日付で連結子会 社のMHI船海エンジニアリングに承継させ、事業承継後の社名を「三菱重工船舶海洋株式会社」に改める。社長には、原 動機部門出身の横田宏執行役員(長崎造船所長)が就任する。また香焼工場の船体ブロック事業は、7月に設立した準 備会社MHI船体に10月1日で事業を継承する。継承後の社名を「三菱重工船体株式会社」とし、社長には香焼工場の村上 幸司工作部長が就任する。三菱重工は2月に長崎の商船事業の分社方針を公表したが、具体的な分社後の姿は明らか になっていなかった。先月、事業承継への吸収分割契約を結んだ際に、新会社の社長などを公表。その際に未公表だっ た社名を、今回明らかにした。 ◆三菱重工/船舶営業も分割【9.25】 ≪「営業部」廃止でブループに縮小、一部は新会社へ移行≫三菱重工業は10月1 日付の交通・輸送ドメインの組織変更を発表した。これまで船舶関連の営業活動を担っていた営業総括部の「船舶・海洋 営業部」が廃止される。船舶営業の機能は一部が営業総括部にグループの形に縮小して残り、新会社の三菱重工船舶 海洋にも機能が移る。事業分社に合わせて、営業組織も分割される形だ。このほか本社の船舶関連の組織変更では、 - 2 - 船舶・海洋事業部に「商船事業改革推進室」を新設し、「管理部」を廃止、「調達部」を新設するほか、「香焼工作部」を廃 止する。また、同ドメインには「エンジニアリング事業部」が新設される。船舶事業の一部機能が移るもようだ。長崎造船 所での商船事業の分社に伴う体制は来週にも改めて公表される見通しだ。 ◆船体ブロック5割増/三菱重工、生産能力引き上げ【9.28】 ≪長崎再編、新会社が始動≫三菱重工業は10月1日何で 設立する船体ブロック製造事業会社「三菱重工船体」(長崎市香焼町)の設備を増強し、ブロックの生産能力を5割(鋼材 加工重量ベース)引き上げる方針を固めた。他社からの受託製造を視野に入れた”攻め”の増産投資で、自動溶接機の 増設などにより生産効率を高めるほか、協力会社の従業員を増やす。分社による固定費削減効果と、国内最大級の大 型ブロック建造能力を強みに新たなビジネスモデルを構築する。将来、ブロック建造量のうち外販の比率を約半分に高 める。≪委託製造視野に投資≫三菱重工は10月1日付けで長崎造船所の商船事業体制を再編。船体ブロック製造専業会 社と、液化天然ガス(LNG)運搬船などガス船建造主体の三菱重工船舶海洋(長崎市香焼町)の2社に承継させる。赤字 体質から脱却する事業計画が注目されている。船体ブロックは船舶を構成する大型構造物。三菱重工船体は設計、営 業をほとんど置かないシンプルな組織に移行し、大型ブロックの連続建造ならびに生産効率化により競争力を確保。当 面は長崎造船所のLNG船連続建造対応が中心になるが、外販を伸ばすことで、ガス船受注に左右されにくい安定した 経営体質を築く。投資額は明らかにしていないが、鋼材の切断から小組立、大組立、ブラスト、塗装など幅広く老朽化更 新や設備増強を実施する。長崎造船所の規模を生かし、完成した船体ブロックを保管し、ジャストインタイムでまとめて 納入したり、支給材を使うなど創意工夫でコスト低減と顧客満足度向上を両立させる。 ◆三菱重工の造船分社で税軽減措置【9.28】 ≪国交省、事業再編計画を認定≫国土交通省は25日、三菱重工業が 産業競争力強化法に基づいて申請した長崎地区の商船事業分社化に関する「事業再編計画」を認定したと発表した。 これにより登録免許税の軽減措置が受けられる。造船所の事業再編としては同法の適用第1号となる。三菱重工は10月 1日付で長崎地区の商船事業を、三菱重工船舶海洋と船体ブロック製造の三菱重工船体に分社。新造船はガス船の建造 に集約し、船体ブロックは外販も行う。国交省に提ホした再建計画によると、2017年度までの生産性向上目標として、有 形固定資産回転率を三菱重工船海は62%、三菱重工船体は64%、それぞれ向上させる。同法適用の対象となるのは 今年10月から2018年3月までの2年半。国交省は造船業の再編や事業転換を促すため、以前は産業活力再生法の活用 を勧めており、昨年度からは新たに設けられた産業競争力強化法を適用してきた。産活法ではサノヤス・ヒシノ明昌のホ ールディングス制移行、ユニバーサル造船とアイ・エイチ・アイマリンユナイテッドの合併、常石造船の多度津工場売却の 3件が対象となった。 ◆三菱重工、ガス船特化/競争力高める【9.29】 ≪長崎造船所商船分社2社≫三菱重工は28日、長崎造船所の商船建 造事業を承継した三菱重工船舶海洋(本社・長崎市香焼町、横田宏社長、資本金10億円)、船体ブロック製造事業を担う 三菱重工船体(本社・同、村上幸司社長、資本金3億円)が10月1日で営業を開始すると発表した。長崎造船所で同日会見 した両社長は、ガス船に特化し競争力を高める方針をあらためて強調した。三菱重工船舶海洋は、得意船種であるLNG (液化天然ガス)船、LPG(液化石油ガス)船などのガス船に特化し、同一船種の連続建造により、生産の整流化やサプラ イチェーンマネジメント改革などを通じた生産性の向上を進める。組織をコンパクトにすることで機動性を上げ、部門間 の縦割り意識を排除して全体最適を目指し、コスト競争力強化を狙う。三菱重工船体は、長崎造船所香焼工場の強みで ある大型船体ブロックの生産に特化する。生産規模の拡大、同型ブロックの連続生産、生産合理化投資などを進める。 加えて、他造船所への大型ブロック外販にも取り組み、生産量拡大を狙う。屋内で大型ブロックを製作することができ、 複数ブロックの一括供給が可能。長崎造船所はこれまで、大型商船を幅広く手掛けてきた。新会社2社は今後、これまで の技術・生産・人材面のリソースのフル活用・再構築に注力する。創業の地の祖業を維持。発展させることができるのか 試される。≪記者会見の一問一答≫三菱重工が長崎造船所の商船事業を分社し、10月1日に発足する三菱重工船舶海 洋(横田宏社長)三菱重工船体(村上幸司社長)は28日、同社長崎造船所で記者会見し、新会社がガス船に特化し、連続 建造により競争力を高める方針を明らかにした。一問一答は次の通り。― 長崎県内への影響は?横田「従来と変わら ない。エンジニアリンクなどの人員も含めると、900-1,000人か長崎造船所で働いている。ハートナー(企業)も従来通 り。多少整流化するものの、仕事が増えることはないかもしれないが、特に減ることもない」― ブロック外販の見込 みは?村上「現在商談を進めているので、具体的なことは差し控えたい。船体平行部のブロックをやりたい」― ガス 船の需要がなくなったら、どうするのか横田「ガス船は、シェールガス(非在来型ガス)関連で向こう数年は需要がある とみている。北米以外の『ポストシェール』も出てくる。この3年ほどの間に連続建造で競争力を高める。その先は、市場 ニーズを踏まえて対応する」― 戦略の意思決定はどこが担うのか。横田「ガス船については、三菱重工船舶海洋が 決めていくつもりでいる」― 5-10年後の姿は?横田「走りながら考える」村上「あそこのブロックはいいーと評価さ れる品質。コスト。納期を目指す」― 売上高の予想は?横田「ここ3-4年で1,000億円を目指す」村上「3-4年後に1,00 億円規模としたい」― 少なくとも黒字になるか。横田「黒字を狙う。今年度は(不採算の)資源探査船があるので厳し いが、来年度は黒字化すべきだ」― 賃金はどうするのか。横田「下げない。今までは、いろいろな船種に対応してきた が、新会社はガス船に特化する。余分なもの、ムリ・ムダをそぎ落とす。従来とコスト体質は異なる、と見てほしい」― 新卒採用はどうなるのか。横田「数的規模は減らすつもりはない」― 低コスト・短納期をどう実現するか。村上「コスト は市場レベルがあるので、それに付いていけるようにする。短納期は輸送・納入のタイミングでみた場合、工場内にブ ロックを置けるスペースがあるので、お客さまに一度に納入できる強みがある」― ガス船に特化することで、どの程 度合理化できるのか。横田「何%ということは言いかねる。必要最小限の人間で、決まった設備でやる」― 分社により 1-2割減を目標としていたのでは?横田「売り上げに対する固定費の比率が下がるという意味ではないか」― なぜ このような事態になったと考えているか。横田「長崎は高付加価値船に絞り、固締まりを目指して人も減らした。そのビ ジネスモデルの象徴が客船であり、資源探査船。韓国や中国の造船所には建造できない。しかし、難しくリソースが追い 付かなかった。日本の他の造船会社は船種を絞っている。反省し、ガス船の連続建造をやる。戦略を転換したと言っても いいのではないか」― 年間何隻建造するのか。横田「LNG(液化天然ガス)船を年間5隻、いつでもできるとは限らな - 3 - いので、LNG船を年3-4隻、残りをLPG(液化石油ガス)船で埋める」― 客船を今後も建造する可能性は?横田「可能性 はある。やめる訳ではない。他社で建造するメリットがあるなら、それもある」― 長崎は造船が基幹産業。三菱重工に とって長崎の位置付けは?横田「造船は創業の地の祖業。続けていきたい、守りたいと思っている。ただ、ビジネスとし て成り立たないとしたら、やめることもあり得る。今回の分社は、そうならないための施策。やっていけると思ってい る」― 韓国や中国に対抗可能か。横田「できる。この3年で競争力を付ける」― 新造船受注残は?横田「3年分ある」 ― 客船工作部はいつできたのか。人数は?横田「今年6月に発足した。人員は約500人」― 客船の2番船の建造が 終わったら、その人員はどうするのか。横田「次の客船が取れなければ、配置転換など再構築が必要になる」― 過去 の戦略は失敗した?横田「したと思う」 ◆三菱重工、造船事業にメス【9.29】 ≪社のルーツ 種類絞り黒字目指す≫三菱重工業が、創業の造船事業にメスを入 れる。長崎造船所(長崎市)が手がける商船事業を10月1日に二つの会社に分社し、建造を液化天然ガス(LNG)船と液化 石油ガス(LPG)船に特化してコンテナ船や自動車運搬船などは撤退する。種類を絞りこむことで効率化を図り、赤字の 事業を早期に黒字にするねらいだ。商船をつくる香焼工場に、いずれも100%出資の子会社で、商船建造会社の「三菱 重工船舶海洋」と、船の一部となる船体ブロック製造会社の「三菱重工船体」の2社をつくる。商船建造会社は、LNG船と LPG船のガス運搬船を集中的につくり、船体ブロック製造会社は船体のパーツを他社からも受注することで生産量を増 やす。造船は三菱重工の創業の事業だ。創立の1884年は、政府の長崎造船局を、郵便汽船三菱会社が借り受けた年。そ の後、約130年にわたり、軍艦や客船などをつくり続けてきた。戦艦武蔵の建造でも知られる。だが、中韓メーカーとの 価格競争の激化で、客船事業の業績が低迷。米ゼネラル・エレクトリック(GE)などライバル企業との競争に勝ち残るに は、赤字事業の大胆な見直しが避けられないと判断した。自動車運搬船やコンテナ船、ガス運搬船、客船など棟々なタ イプの船を建造する商船事業は、多くの人員や設備を抱えており、コスト悪化の要因になっていたという。今後は、利益 を確保できるガス運搬船の建造に集中する方針だ。船体ブロック分野は、他社からの受注を強化する。客船事業は商船 事業から切り離して三菱重工本体に残すが、客船を受注した時の建造は、他社への委託も検討し、自前にはこだわらな い。長崎造船所では、防衛省向けの艦艇は、今後も三菱重工本体が手がける。 ◆「3-4年後に売上高1,000億円」【9.29】 ≪三菱重工造船子会社≫三菱重工業は28日、10月1日付で分社する船舶 建造子会社「三菱重工船舶海洋」について、3-4年後に1,000億円規模の年間売上高を目指す方針を明らかにした。新 社長に就く長崎造船所(長崎市)の横田宏所長が同日に記者会見し、2016年度に黒字化するとの見通しも示した。長崎 造船所の商船部門を船舶建造子会社と船体ブロックを手掛ける子会社「三菱重工船体」に分社し、コスト削減や生産効 率の改善に取り組む。船舶建造子会社の売上高は15年3月期べ-スで約747億円あり、今後は液化天然ガス(LNG)など のガス運搬船に特化する。 ◆三菱重工、造船新会社の決意【9.29】 ≪分社後は来期にも黒字化、その先は・・・≫三菱重工業は10月1日の長崎地 区の商船事業分社を目前に控え、28日、長崎で新会社の事業方針を発表した。最大のねらいと位置づけるのがコスト競 争力だが、ガス船への特化によって人員などを必要最小限に絞り込み、生産性も高めることで、賃金水準の引き下げな どを行わずにコスト競争力強化を図る考えを強調。メーンの商船建造会社は、早ければ来年度にも黒字化の方針を示し た。一方で、分社に伴う三菱の船舶事業全体の将来像は、なお見えにくいままだ。10月1日付で三菱重工は長崎地区の 商船建造事業を、建造を手掛ける「三菱重工船舶海洋」と、船体ブロックを手掛ける「三菱重工船体」に分社する。製品 の集中や事業のコンパクト化で競争力を高めるのがねらい。会見で示した主な新会社の事業方針は次のとおり。≪建造 会社≫新会社の「三菱重工船舶海洋」は、香焼工場でのLNG船とLPG船の設計・製造・修理を担う。発足時の社員数は約5 00人。本社は香焼に置いている。ガス船特化が最大の戦略で、資源探査船の建造なども「行わない」(社長に就任する 横田宏長崎造船所長)。売上高は今後3-4年で平均1,000億円規模を目指す。LNG船換算では、年間4-5隻の建造に相当 する。「現時点ではLNG船年5隻が香焼の能力。これより増やすには生産性を上げて取り組む」。アルミ球型タンクの製造 用の設備投資を今後行う計画だ。≪ブロック会社≫ブロック製造会社として分社する「三菱重工船体」。造船他社への外 販を拡大する方針だ。加工量ベースで4-5割の増産を目指し、売上規模としては100億円を目標としている。もともと香 焼工場はVLCCの連続建造を目指した建造工場のため、平行部のブロック製作に強い。今後は船体平行部ブロックを中 心に外販を行う。屋内で最大600㌧の大型ブロックまで製作して一体で出荷できることや、工場内のスペースを活用し て造り置きし、顧客の望むタイミングで複数ブロックをまとめて供給できることが強みとしている。課題となるコストに ついて、社長に就任予定の村上幸司氏は「市場についていけるコストが目標」と語った。増産と生産性向上のための設 備投資として、切断設備や小組立・大組立の溶接設備、増産に向けての塗装工場とブラスト工場への投資を計画してお り、既に一部を進めている。発足時の人数は170人。≪コスト削減策と採算≫会見で横田氏が繰り返し強調したのが、課題 としていたコスト削減への道。「従来の三菱重工の商船事業全体が持っていたコスト体質とは全く異なるものになる」と 話した。分社に伴う賃金水準の引き下げなどは行わない考え。一方で、「従来は高付加価値戦略に伴い、あらゆる船種 に対応するために必要なリソースを全て抱えてきた。新会社はガス船を造るためだけのリソースとなり、人や経営資源 も余分なものをそぎ落とし、必要分に限定していく。無理・無駄や、旧態依然としたシステムも改善する」。これによりコ スト競争力を高めるということだ。不採算に陥っている資源探査船を引き渡したのち、「来年度にも黒字化すべき」との 方針を示す。≪組織上の位置づけ≫長崎の新会社2社は交通・輸送ドメインの「船海事業部」の傘下に位置づけられる。組 織上は、2社に並列する形で、下関での造船事業、設計部隊を担う船海エンジニアリング部と長崎技術部、さらに調達、 品質保証などの部署が並び、客船建造を担う客船工作部も同列に配置される。このため船舶事業全体の方針策定な どは、引き続き船海事業部が担うことになりそうだ。 ◎アスベスト分会関連 - 4 - ◆石綿被害で賠償、ニチアスに命令/岐阜地裁【9.15】 大手建材メーカー、ニチアスの羽島工場(岐阜尾羽島市)に勤 務した元作業員2人が、アスベスト(石綿)による健康被害を受けたとして、計約5,940万円の損害賠償を求めた訴訟の 判決で、岐阜地裁は14日、同社に計約4,180万円の賠償を命じた。ニチアスの石綿訴訟で元従業員の請求を認めた判決 は初めて。ニチアスは「コメントは差し控える」としている。 Ⅱ.国内造船・造機関係の動向 ◆国内受注、リーマン後最高の公算大【9.17】 ≪輪組統計、8月は156万㌧、新規制回避で≫日本船舶輸出組合が16日 発表した8月の輸出船契約実績は27隻・156万総㌧だった。総㌧ベースで前年同月の3.5倍となり、4カ月連続で前年同 月を上回った。来年1月の起工船から対象となるNOx(窒素酸化物)3次規制などを背景に契約実績は高水準が続いてい る。1-8月累計は19%増の1,384万総㌧で、年間実績はリーマン・ショック後最高を更新する公算が大きくなっている。7月 以降の契約船から国際船級協会連合(IACS)の新共通構造規則(調和化船体構造規則:H-CSR)が適用され、6月の“駆け 込み”契約の反動などから受注量が急減速するとしの懸念もあったものの、月間100万総㌧を大幅に上回っている。今 年は2つの大型規制が重なったことで、月間100万総㌧を下回ったのは2月のみとなっている。8月の契約船の内訳は自 動車船2隻、バルカー18隻(ハンディ2隻、ハンディマックス8隻、パナマックス2隻、ケープサイズ3隻、鉄鉱石運搬船3隻)、 LNG船2隻、ケミカル船5隻。27隻のうち純輸出船はわずか3隻で、邦船系が大半を占めた。8月の受注船の契約態様は、 トン数ベースで円建て契約15.6%、外貨建て84.4%だった。現金払い契約は100%、商社契約は2.9%。また、納期別で は2016年度もの35.4%、17年度もの17.4%、18年度もの22.7%、19年度もの24.5%だった。竣工量に相当する通関実績 は、8月が前年同月比31%増の14隻・63万総㌧と、前年同月を大幅に上回った。1-8月累計は7%増の210隻・839万総㌧ だった。 ◆8月受注3.5倍156万総㌧/4カ月連続でプラス【9.17】 日本船舶輸出組合が16日発表した8月の輸出船契約(受注) 実績は、156万総㌧(76万CGT=標準貨物船換算ととなり、前年同月実績の3.5倍(CGTベースで3.9倍)に伸びた。4カ月 連続でプラス。バルカ一に加え、自動車船、LNG(液化天然ガス)船、ケミカル船の受注がみられた。日本造船工業会の村 山滋会長は同日開いた定例会見で、「受注は好調だが、世界的な船腹過剰や中国経済減速などがあり、今年の下半期 は様子見になる」との見方を示した。8月の契約隻数は17隻増の27隻で、このうち海外船主向けの純輸出船は3隻だっ た。全27隻の船種別内訳は、自動車運搬船2隻▽ハンディサイズバルカー2隻▽ハンディマックスバルカー8隻▽パナマ ックスバルカー2隻▽ケープサイズバルカー3隻▽鉄鉱石運搬船3隻▽LNG船2隻▽ケミカル船5隻。契約は全て現金払 いで、トン数ベースの契約形態別内訳(シェア)は円建て16%、外貨建て84%。商社契約は3%だった。納期は16年度35 %、17年度17%、18年度23%、19年度25%。輸出船の竣工量を示す通関実績は63万総㌧(27万CGT)と、31%増(CGTベ ースで28%増)だった。通関隻数は2隻増の14隻。15年8月末の輸出船手持ち工事量は699隻、3,330万総㌧(1,613万CG T)。前年8月末の697隻、2,930万総㌧(1,406万CGT)をわずかに上回った。 ◆輸出船契約4カ月連続増/8月、規制強化駆け込み【9.17】 日本船舶輸出組合が16日発表した8月の輸出船契約実 績は、前年同月の3.5倍の155万7,900総㌧だった。前年同月を上回るのは4カ月連続となった。来年1月以降に起工する 船から、窒素酸化物(NOx)排出量の規制が強化されることもあり、輸出組合は「駆け込み需要の影響が出ているのでは ないか」とみている。 ◆8月の輸出船契約/3.5倍155万7,900総㌧、4カ月連続増【9.17】 日本船舶輸出組合(JSEA)が16日発表した8月の輸 出船契約実績(一般鋼船)は、前年同月比3.5倍の155万7,900総㌧の大幅増で、4カ月連続のプラスとなった。隻数は27 隻(前年同月10隻)。2016年1月から施行される窒素酸化物(NOx)の3次規制に対する駆け込み発注が相次いだ模様。液 化天然ガス(LNG)運搬船などが、全体の受注を押し上げた。内訳は一般貨物船が2隻、ハンディ型ばら積み運搬船2隻、 ハンディマックス型ばら積み船8隻、パナマックス型ばら積み船2隻、LNG船2隻、ケミカルタンカー5隻。納期別内訳は16 年度35.4%、17年度17.4%、18年度22.7%、19年度24.5%。通関実績は14隻、同31.4%増の62万5,797総㌧。8月末時点の 手持ち工事量は699隻、3,329万6,759総㌧となった。 ◆手持ち工事量、3,330万㌧に増加【9.17】 日本船舶輸出組合がまとめた今年8月末時点の手持ち工事量は699隻・ 3,330万総㌧(1613万CGT)で、総㌧ベースで7月末時点から増加した。納期別の内訳は、2015年度引き渡し分180隻・703 万総㌧、16年度235隻・1,068万総㌧、17年度171隻・860万総㌧、18年度80隻・469万総㌧、19年度以降33隻・230万総㌧だ った。 ◆7月の造船統計/竣工33隻【9.18】 国土交通省がまとめた2015年7月の造船主要53工場の鋼船受注・建造実績は、 起工26隻・86万6,000総㌧、竣工33隻・122万総㌧、竣工船価1,203億円だった。竣工船のうち国内船の実績は一般貨物 船1隻、化学薬品船が1隻の計2隻・8,000総㌧だった。輸出船は31隻・121万2,000総㌧で、内訳は貨物船が29隻(一般貨物 船2隻、ばら積み船9隻、コンテナ船1隻、自動車専用船1隻、鉱石兼ばら積み船12隻、木材兼ばら積み船4隻)、油送船は化 学薬品船が2隻だった。パナマやリベリア、マーシャル諸島、フィリピン、香港、シンガポール向けに竣工した。鋼船修繕実 績は123隻で、工事金額は110億円だった。 - 5 - ◎国土交通省海事局 ◆外国人造船就労の受入4,200人【9.24】 ≪坂下海事局長≫国土交通省の坂下広朗海事局長は18日に記者団と懇 談し、今年4月に始まった外国人造船就労者の受け入れの2020年度末までの計画者数が4,200人に達したことを明ら かにした。また、長崎県と愛媛県が海上技術安全研究所の一部機能移転を提案したことについて、「分散で効率が下が る懸念があるが、“近くに”という思いは分かる。業界全体に貢献していく上で何がベストか、自治体とわれわれの双方 が今後考え方を示していく形になるだろう」と述べた。<外国人造船就労者受入事業>▽4月からスタートした外国人 造船就労者受入事業で、国から受入認定を受けた事業者が、今月14日時点で74事業者、20年度末までの受入計画数で 4,200人に達した。これまでに実際に受け入れられた外国人就労者の数は355人。申請は現在も続いており、今後も規 模が大きくなっていく見通し。<COP21>▽年末のCOP21(国連気候変動枠組条約〈UNFCCC〉第21回締約国会合)に向 けたテキストの交渉で、最後の交渉となる10月半ばの会合に対応していく。議論する事項が多く、今月の会合ではテキ ストの審議に至らなかった。10月にどこまで交渉が進むかまだ良く見えないところがあるが、気を抜かず対応していく。 海運業界からの基金拠出案が含まれ、懸念されている。意見を同じくする各国と連携し対応していく。<燃費報告制度 >▽IMO(国際海事機関)の燃費報告制度(MRV)の検討が来年4月の海洋環境保護委員会(MEPC)に向けて進んでいる。 EEDI規制(エネルギー効率設計指標)以降、IMOからはCO2削減の具体的アクションが生まれておらず、MRVの制度確立は 海事産業として対策を示す、対COP21の観点からも重要。温暖化対策の議論は先進国と途上国の対立の中で進むため、 最終局面で意見が割れる可能性もあろうが、IMOが取るべき手を打つよう、日本としてきちんと対応していきたい。<地 方創生>▽政府が掲げる地方創生の一環として、海技研の一部機能移転を長崎県と愛媛県が提案し、国交省にも連絡 があった。今後「まち・ひと・しごと創成本部」が自治体と省庁にヒアリングを行っていく。▽海技研は3つの独立行政法 人で来年統合する法案が今年決まったが、業務を効率化し、成果を追求し、選択と集中を繰り返し、磨きをかけてきた。0 1年に独法となってからも血のにじむような努力をしてきた。それが分散することで、研究開発機能や業務効率が低下 しないかの問題意識は高い。東京では、成果が地方に行きわたらないかというと、そうでもない。▽国交省独自で決め られることではなく、予断を許さない。造船所が多い地域の近くに。という自治体の思いもわかる。一方で海技研の成 果は業界全体にとって重要で、貢献している。何がベストなのか、自治体・省庁がお互いの考え方を示していく中で、政 府として考えていく。<「海の日」造船所見学会>▽造船所見学会が全国37カ所で実施され、計3,809人が参加した。7 月20日からの1カ月問で集中して開催されるのは初。造船所の手弁当でやっていただいた部分も大きく、地方運輸局職 員も含め、関係各方面のサポートを頂いた。そうした努力の成果で、大成功を収められたことに感謝を申し上げたい。 ◎日本造船工業会 ◆下期の新造船発注、中国減速様子見に/村山造工会会長【9.17】 日本造船工業会の村山滋会長(川崎重工業社 長)は16日、都内で会見し、上期(1~6月)の受注量は堅調に推移したが「下期は中国経済の減速などで、新造船発注は 様子見の状況になるだろう」と、市況の推移について慎重な見方を示した。国内造船所はおおむね3年分の仕事量を確 保しているが、「長期的な視点に立って、合理的な経営を続けることが肝要」と指摘した。国内造船の受注量(1~8月)は 1,384万総㌧と、前年同期比約19%の伸び。ただ「船舶と造船能力の双子の過剰は、中長期的には解消に向かうが、短 期では厳しい状況」と分析。需要の大きな伸びが見込めない中、「省エネなどの技術力で競争相手との差別化を図る ことが日本の造船業の基本姿勢」と力を込めた。また、国営石油会社ペトロブラスの汚職疑惑などで混迷するブラジル 造船業については、「早く解決して、今後の方向性が決まることを望む」と話した。 ◆造工会長/「技術力で差別化を」、適正船価の受注も強調【9.17】 日本造船工業会の村山滋会長(川崎重工業社長) は16日、東京都内で開いた定例会見で、船腹と建造能力の「双子の過剰」により短期的には事業環境が依然厳しいこと をあらためて指摘した。日本造船の手持ち工事費は約3年分あり、当面の仕事を確保していることを踏まえ、基本姿勢 として「技術力による差別化、適正価格による苛性」の重要性を強調した。村山会長は、日本船純輸出組合の輸出船契 約実績について触れ、今年1~8月期の日本の受注量が1,384万総㌧と前年同期比19%増だったことを紹介。ただ、これ までの受注は好調だったものの、下半期については船腹過剰、中国経済の減速などもあり、動きが様子見になるとの 見通しを示した。日本が取り組みを強化している海洋事業に関しては、「原油価格が下がり、海洋資源開発は減速して いる。海洋プラントの建造量も下がっている」と説明。「原油価格がいつ回復するかにかかっているが、それが見通せな い。回復までどう耐えていくかは、各社それぞれの判断になる」などと語った。 ◎新造船 ◆新造船価相場/タンカー・バルカー横ばい【9.4】 新造船価相場は、タンカー、バルカーともに弱含み横ばいで推移し ている。7月以降、新造発注は減少しているものの、6月までに新造発注が積み上がり、世界的に船台が埋まったことが 影響しているものとみられる。ただ、足元では解約されたバルカーの新造リセールが中国で表面化しており、ドライ市 況低迷が続く影響によりバルカーで下落圧力が強まる可能性がある。マーケット筋によると、足元のタンカーの新造船 価レベルは、全般的にやや弱含みながら横ばいで推移している。VLCC(大型原油タンカーは9,550万㌦(32万重量㌧ 型)、スエズマックスは6,450万㌦(15万7,000重量㌧型)、アフラマックス5,300万㌦(11万5,000重量㌧型)、MR(ミディア ムレンジ)型プロダクト(石油製品)タンカー3,550万㌦(5万1,000重量㌧型)。バルカーの足元の新造船価レベルは弱含 み横ばい。ドライ市況を反映し、大型船ほど下落圧力が強い。ケーブサイズは4,850万㌦(18万重量㌧型)、パナマックス は2,630万㌦(7万6,000重量㌧型)、ハンディマックス2,480万㌦(6万2,000重量㌧型)、ハンディサイズは2,100万㌦(3万 5,000重量㌧型)。ハンディサイズは直近の底値だった2012年の新造船価レベルと並んでおり、他船型のバルカーも12 年の底値に迫っている。ガス船は、大型LPG(液化石油ガス)船VLGCがやや弱含み横ばいの7,700万㌦(8万2,000立方㍍ - 6 - 型)、LNG(液化天然ガス)船は横ばいの2億㌦(16万立方㍍型)。コンテナ船は、1万3,000TEU型が横ばいの1億1,600万 ㌦、2,750TEU型は弱含み横ばいの3,050万㌦。自動車船は、6,000台積みが弱含み横ばいの5,900万㌦。 ◆新造船価/バルカー・タンカー弱含み横ばい続く【9.11】 新造船価相場はバルカー、タンカーともに弱含み横ばいで 推移している。目先は、タンカー市況が冬場の需要期に移り、新造船価相場も堅調になりそうな半面、バルカーはドライ 市況の低迷観測により、新造船価相場もじり安傾向が続きそう。一方、中古船価相場は、タンカーが運賃市況の先高観 を反映して強含みであるのに対し、バルカーは一部で小幅続落している。マーケット筋によると、足元の新造船価相場 は、バルカーが全般的に弱含み横ばい。ケープサイズは4,850万㌦(18万重量㌧型)、パナマックスは2,630万㌦(7万6,0 00重量㌧型)、ハンディマックスは2,480万㌦(6万2,000重量㌧型)、ハンディサイズは2,100万㌦(3万5,000重量㌧型)。 タンカーは全体的にやや弱含み横ばい。VLCC(大型原油タンカー)は9,550万㌦(32万重量㌧型)、スエズマックスは6,4 50万㌦(15万7,000重量㌧型)、アフラマックス5,300万㌦(11万5,000重量㌧型)、MR(ミディアムレンジ)型プロダクト(石 油製品)タンカー3,550万㌦。ガス船は全般的に横ばい。VLGC(大型LPG(液化石油ガス)船)は横ばいの7,700万㌦(8万 2,000立方㍍型)、LNG(液化天然ガス)船は2億㌦(16万立方㍍)。コンテナ船は、1万3,000TEU型が横ばいの1億1,600万 ㌦、2,750TEU型は弱含み横ばいの3,050万㌦。自動車船(PCTC)は、6,000台積みが若干弱含みながら横ばいの5,900 万㌦。中古船価相場は、バルカーがケープサイズ、ハンディマックスの新造リセールが直近と比べ小幅続落した。ケープ サイズは、新造リセールが100万㌦安の4,600万㌦。船齢5年物、10年物はそれぞれ横ばいの3,500万㌦、2,000万㌦。船 齢15年物は弱含み横ばいの1,050万㌦となっている。パナマックスは全般的に弱含み横ばい。新造リセールは2,800万 ㌦、船齢5年物は1,800万㌦、船齢10年物は1,200万㌦、船齢15年物は650万㌦。ハンディマックスは、新造リセールが50万 ㌦安の2,550万㌦と2週連続下落した。船齢5年物、10年物、15年物は弱含み横ばいで、それぞれ1,550万㌦、1,050万㌦、 600万㌦となっている。ハンディサイズは弱含み横ばい。新造リセールは2,100万㌦、船齢5年物は1,300万㌦、船齢10年 物は950万㌦、船齢15年物は550万㌦。タンカーの足元の中古船価レベルは強含み横ばい。VLCCは、新造リセールが1億 500万㌦、船齢5年物は8,400万㌦、船齢10年物は5,900万㌦、船齢15年物は4,100万㌦。スエズマックスは新造リセール7, 300万㌦、船齢5年物6,100万㌦、船齢10年物4,200万㌦。アフラマックスは、新造リセール5,700万㌦、船齢5年物4,600万 ㌦、船齢10年物3,300万㌦で推移している。 ◎中古船 ◆バルカー中古船価が反落【9.3】 ≪スクラップ価格は全船型で上昇≫英国ボルチック・エクスチェンジの1日付の中古 船価インデックス(船齢5年)は、バルカー全船型で小幅に反落した。タンカーはVLCCとMR型が続伸した。スクラップ価格 は中国解撤のバルカーを除く全船型で上昇。インド亜大陸解撤のバルカーはライトトン当たり11㌦上昇した。直近のマー ケットレポートでは、バルカーの全船型で中古売買が表面化。18万300重量㌧型“Bao ZhuHai”(2004年旧幸陽船渠建造) がシンガポール船主ウイニング・シッビングに1,860万㌦で、9万1,400重量㌧型“North FortuneⅢ”(00年大島造船建造) が中国のZPMCシッピングに890万㌦で売船された。パナマックスは7万3,800重量㌧型“Star Nicole”(97年住友重機械 建造)が極東筋に370万㌦で、7万2,300重量㌧型“AIpha Glory”(99年今治造船建造)が買主不明で530万㌦で売船され た。ハンディマックスは5万8,700重量㌧型“Tennei Maru”(09年常石舟山建造)が買主不明で1,420万㌦ルで、5万8,000 重量㌧型“Skom-vaer”(10年揚州大洋造船建造)がギリシャのカシアン・マリタイムに1,300万㌦、5万3,300重量㌧型“por t Mouton”(06年新世紀造船建造)がギリシャのセイント・ミカエル・シッピングに670万㌦で売船。4万8,900重量㌧型“A etos”(01年IHI建造)がギリシャのコン・クエストに550万㌦、4万5,500重量㌧型“DS Comander”(01年常石造船建造)がギ リシャ筋に340万㌦で売船された。タンカーの中古船マーケットでは、スエズマックス型で14万9,700重量㌧型“Front Spl endour”(95年三井造船建造)がインドのドーフル・ダナウティツクに1,600万㌦で売船された。 ◆中国ショックが回復基調に冷や水/バルカー中古船価【9.8】 ”中国ショック”が中古船マーケットにも波及している。 バルカー中古船価は大型船を中心に持ち直しの動きを見せていたが、市場関係者によると、中国の株価暴落後に多く の売買船商談が棚上げされ、船価も軟化基調に転じた。中古バルカーの買い手として台頭した中国バイヤーも、同国の 金融情勢悪化などを受けて買船活動を縮小しているという。ケープサイズの中古船価については回復基調は崩れて おらず、今後の用船マーケット次第で上昇に転じるとの見方もある。バルカー中古船価は用船マーケットの低迷を受け て14年春から下落基調で推移し、15年から下げが加速した。夏頃からケープサイズ、パナマックスで上昇に転じ、「ケー プサイズは底値から1割程上昇した」(中古船ブローカー)という。ケープサイズのスクラップ急増などで用船マーケット の回復期待が高まったためで、ギリシャ筋だけでなく、ゾディアックやスイスマリンなどのオペレーターもケープサイズ の中古買船を再開した。ただ、中国の景気減速懸念が強まった先月以降様相が変わり、バルカーの中古船マーケットで は「中国の株価暴落後、状況を見極めたいということで多くの案件がサスペンドされた」(中古船ブローカー)という。 英ボルチック・エクスチェンジの船価インデックス(船齢5年)は先週、バルカー全船型で反落し、ケープサイズが3,275万 ㌦、パナマックスが1,749万㌦、スープラマックスが1,530万㌦だった。市場関係者は今後の中古船価の見通しについて、 「中小型バルカーはしばらく様子見ムードが続くだろう。ケープサイズについては、今後の用船マーケット次第で回復 基調に戻る可能性もある」との見方を示す。中国は中古バルカーの買い手としても近年存在感を増していた。中国荷主 がバックにいる海運会社や、投資目的で3~4社が共同で購入するケースが多いという。ギリシャ船主が新造リセールや 比較的船齢の若い中古船を好むのに対し、中国のバイヤーは船齢10年超の高齢船を積極的に購入していた。ただ、こ のところは中国バイヤーの買船活動は縮小しており、中国の金融情勢の悪化で資金調達が難しくなったことも影響し ているとみられる。ギリシャ船主の買船活動は、同国の財政危機後も目立った変化はないという。欧米のファンド系バイ ヤーは、海運業界に継続的に投資しているプレーヤー以外はほぼ活動を停止。一方で、ベトナム、タイ、マレーシアなど 東南アジア筋の買船が増えており、バルカーの一大バイヤーに育ちつつある。 ◆中古船価、ケープとタンカー下落【9.9】 ≪スクラップ船価続伸≫英国ボルチック・エクスチェンジの7日付の中古船価 インデックス(船齢5年)は、バルカーがケープサイズで続落し、パナマックス、スープラマックスは小幅に反発。タンカー はVLCC、アフラマックス、MRの全船型で反落した。スクラップ船価はバルカー・タンカーともに続伸した。直近のマーケッ - 7 - トレポートで報告されたバルカーの中古売買成約は、8万2,800重量㌧型“unitedJourney”(2009年常石造船建造)を1,7 50万㌦でギリシャのテナマリスが、7万3,900重量㌧型“DaeboTrader”(2002年名村造船建造)を750万㌦でギリシャのツ ァコスが買船。ハンディサイズでは2万8,500重量㌧型“Lilja Bulker”(2003年今治造船建造)を600万㌦でベトナム筋 が、2万8,500重量㌧型“BreezeIsland”(2011年今治造船建造)を1,040万㌦で不明バイヤーが買船した。タンカー中古船 市場では、31万9,000重量㌧型VLCC“PowerD”(2003年現代三湖建造)と同型“Energy R”(同)を不明バイヤーが1隻当 たり4,594万ドルで買船した。MR型は、現代尾浦造船で2007-08年に竣工した3万7,900重量㌧型計7隻を、デンマークの ハフニア・タンカーズが1隻当たり2,130万-2,320万㌦で一括買船。4万7,400重量㌧型“NordOptimiser”(2007年尾道造 船建造)を2,100万㌦で不明バイヤーが買船した。 ◆中古船価、バルカー小幅続落【9.16】 ≪スクラップ船価反落≫英国ボルチック・エクスチェンジの14目付の中古船価 インデックス(船齢5年)は、バルカーが全船型で小幅に下落した。タンカーはアフラマックスが続落し、VLCC、MRが反発し た。スクラップ船価は中国解撤のバルカーを除き全船型で反落した。直近のマーケットレポートで報告されたバルカーの 中古売買成約は、ケープサイズ13隻とパナマックス4隻をカーディフマリンがドライシップスから3億7,700万㌦で一括買 船したほか、7万6,600重量㌧型“New Agility”(今治造船で2001年建造)をパンオーシャンが680万㌦で買船。ハンディマ ックスは4万6,500重量㌧型“simonSchulte”(大島造船で96年建造)を380万㌦で不明バイヤーが買船した。ハンディサ イズでは3万2,500重量㌧型“Kwela”(神田造船で02年建造)をテイラー・マリタイム・ホンコンが680万㌦で買船したほ か、2万9,700重量㌧型“ori-ente Crest”(四国ドックで03年建造)を690万㌦、2万8,300重量㌧型“van orchid”(今治造 船で09年建造)を1,000万㌦で不明バイヤーが買船した。また、現代重工建造の31万9,900重量㌧型鉱石兼油送船“Abb y”と“Elizabeth M”(ともに10年建造)をそれぞれ6,380万㌦、“Rosey R”(11年建造)を6,740万㌦でオリンピック・ショッピ ングが買船した。タンカー中古船市場では、10万5,700重量㌧型アフラマックス“coral Sea”(現代重工で03年建造)をイ ンソン・ホールディングスが3,100万㌦で買船した。5万3,200重量㌧型MR“Maersk Malta”(広州広船国際で10年建造)を 2,700万㌦でトームが買船した。 ◆中古船価、大中型バルカ一反発【9.25】 ≪解撤船価は全船型で上昇≫英国ボルチック・エクスチェンジの21日付の 中古船価インデックス(船齢5年)はバルカーがスープラマックスを除いて反発し、タンカーはMR型が続伸、VLCCとアフラ マックスが下落した。スクラップ船価は全船型で上昇した。直近のマーケットレポートで報告されたバルカーの中古売買 成約は、ギリシャ船主ダイナコムが中国の江蘇突淳集団で2011年建造の7万9,600重量㌧型3隻、浙江造船と揚帆集団 で10-11年建造の5万7,200重量㌧型4隻と5万6,800重量㌧型1隻を約6,810万㌦で一括買船した。ハンディマックスでは 5万3,600重量㌧型“Santa Fe”(今治造船で01年建造)がギリシャバイヤーに425万㌦、5万2,800重量㌧型“Latmar”(尾 道造船で01年建造)がトルコ船主Statu Gemi Kiralamaに420万㌦、5万2,400重量㌧型“0cean Chie”(常石造船で03年 建造)がトルコバイヤーに820万㌦でそれぞれ買船された。さらに買主不明で4万7,600重量㌧型“MarathaProvidence” (大島造船で95年建造)が380万㌦で買船された。このほかハンディサイズで3万700重量㌧型“Emilie”と“Heloise”(とも に山海関船舶重工で10年建造)をカナディアン・フォレスト・ナビゲーションがそれぞれ650万㌦、670万㌦で買船した。タ ンカーの中古船市場では、MRで複数の売買成約が表面化。買主不明で5万3,100重量㌧型“cenito”(広州広船国際<現・ 中船海洋与防務装備>で09年建造)と“Posillipo”(同10年建造)がそれぞれ2,750万㌦で買船されたほか、3万7,000重 量㌧型“MaerskElizabeth”(クロアチアのスリーメイで01年建造)がナイジェリアバイヤーに1,320万㌦で買船された。 ◆中古船価、VLCC小幅下落【9.28】 ≪船齢5-15年物200万㌦安≫中古船マーケットで、VLCC(大型原油タンカー)の 中古船価レベルが小幅下落した。船齢5年物、10年物、15年物がそれぞれ直近と比べ200万㌦安となった。船齢12年物 が相場を下回る水準で成約されたことが響いたものとみられる。マーケット筋によると、足元のタンカーの中古船廟レ ベルは、VLCCが新造リセールは横ばいの1億500万㌦、船齢5年物は200万㌦安の8,000万㌦、船齢10年物は200万㌦安 の5,500万㌦、船齢15年物は200万㌦安の3,800万㌦。5-15年物は値を下げたものの、地合いは小じっかりしている。ス エズマックス、アフラマックスの中古船価レベルは横ばい。スエズマックスは、新造リセール7,200万㌦、船齢5年物6,100 万㌦、船齢10年物4,200万㌦。アフラマックスは、新造リセール5,600万㌦、船齢5年物4,500万㌦、船齢10年物3,000万 ㌦。バルカーの中古船価レベルは、一部で弱含みが続いているものの、全体的に横ばい。ケープサイズは、新造リセー ル4,600万㌦、船齢5年物3,500万㌦、船齢10年物2,000万㌦、船齢15年物1,050万㌦。パナマックスは、新造リセール2,80 0万㌦、船齢5年物1,800万㌦、船齢10年物1,200万㌦。ハンディマックスは、新造リセール2,550万㌦、船齢5年物1,550万 ㌦、船齢10年物1,050万㌦。ハンディサイズは、新造リセール2,100万㌦、船齢5年物1,300万㌦、船齢10年物950万㌦とな っている。 ◆川重、潜水艦設備を増強/神戸工場、修理用に150億円【9.4】 川崎重工業は潜水艦の建造増に備え、2019年度ま でに150億円を投じて修理用設備を増強する。防衛省は潜水艦の配備隻数を増やす方針で今後、潜水艦の修理需要も 拡大する見込み。神戸工場(神戸市)にある5つの棟を順次建て替え、効率的に修理できるようにする。神戸工場は潜水 艦を中心に鉄鉱石などを運ぶばら積み船など一般商船の修理・建造も手掛ける。1995年の阪神大震災を受けて使用で きなくなっていた設備。建屋なども入れ替え、17棟ある工場棟のうち、3割を建て替える。潜水艦を修理する修繕工場の 延べ床面積は従来に比べ3割程度拡大する。部材の加工などにあたる工場棟なども建て替え、効率的に修理できるよ うにする。国内で潜水艦を建造するのは、川重と三菱重工業の2社のみで両社が修理もノウハウを持つ。防衛省は16隻 体制を維持してきた潜水艦を21年までに22隻に増強する方針。既存の潜水艦の修理、改造などが増える見通しだ。 ◆造船この1カ月<上>【9.4】 ≪大島造船、コンテナ船参入の勝算、日本造船の「脱バルク」が本格化か≫過去20年に わたってバルカ一に特化してきた大島造船所が、コンテナ船への参入方針を表明したことは、日本造船業の「脱バル ク」を象徴する案件だ。ドライバルク市況の長期低迷が予想される中、これまで仕事量の8割をバルカーで稼いできた - 8 - 日本が今度どのような製品戦略をとっていくかは大きな課題。タンカーなど他船種への進出が本格化するが、設計な どの課題を乗り越える必要もある。≪大島の一大転換≫司会 大島造船所がフィーダーコンテナ船に進出するという ニュースがあった。― 新しい船種に新規参入するというニュースがこれだけ大きな話題になっているのは、やはり 「バルクの大島」だからだろうね。― バルカ一に特化する方針を示してから、およそ20年になる。これまでに、CABU (苛性ソーダ兼用バルカー)のような特殊バルカーの建造もあったが、基本的には建造船が全てバルカーだったわけ だから、コンテナ船の受注となれば大きな転換だ。― 船台は2018年まで埋まっているので、受注するとしても納期は 2019年以降となる見込みだ。いきなりロットでの受注を目指すわけではなく、まずは数隻から、という形になるとみら れている。― 大島のコンテナ船進出は今年早くから業界内で噂になっていたね。他の船種も検討の対象になってい るともいわれていた。それにしても、まさか本当にコンテナ船に出ていくとは思っていなかった。― うん。船種を多角 化するのではなく、客先を多角化することでドライ市況低迷を乗り切るのでは、ともいわれていた。例えばギリシャ向け を解禁するのではとかだ。― それにしても、気になるのは勝算だ。バルカーでの競争力が、果たしてフィーダーコン テナ船でも発揮できるのか。― 確かに、大島のコスト競争力や製品力は、バルカ一に特化しているからこそだった。大 島の現場の人々は20年の習熟効果で「バルカーなら図面を見なくても部材の取り付け位置などがわかる」ともいわれ ていたし、それゆえにあれほど生産性の高い工場になっていた。また、「特化」といっても、数十種類のバルカーの船型 メニューを持っていたし、船主のカスタムオーダーにも応えているという点で、他のバルカーを主体としている造船所 とは違った。この製品競争力も、やはりバルク特化ならではの効果だったと思う。― 高速多数隻建造が大島の特徴 で、今年は40隻を建造する。1本のドックでこれだけの数を引き渡すのは驚異的なピッチだ。ここにコンテナ船がマッチ するかどうか。厳しい船主に当たると工程やコストが狂う。そのあたりをどうするのかだろう。大きな賭けだと思う。― もちろん「賭け」というより、さまざまなことは検証済みのようだし、今後も慎重に進めていくという。もう1つのカギ になるのは、新たに12万㎡の埋立地を取得するということだ。ここをコンテナ船主体の総組場などにして、ドックでの組 立前にかなりの建造を終わらせる、という構想があるようだ。― 工場隣接地の埋立は昔から構想としてはあったけれ ど、実現は難しいといわれていた。― それが一転して、県や市から認められたようだ。地方創生という点も大きいの だろう「ベトナム・プロジェクトを白紙に戻したことで、大島が現在の工場地で今後も生きていくという方向性がはっき りした。― 大島造船所が大きく動いている。埋立地取得とコンテナ船進出は、大きな転機だ。≪過当競争回避には脱 バルカーしかない≫司会 大島の案件は、日本造船業の「脱バルカー」を象徴する案件だ。― うん。「バルカー特化」 は大島だけではないからね。日本の造船所の仕事量の8割がバルカーだ。特に専業造船所は、バルカー比率が高い。ド ライバルク市況の低迷は来年以降も続くといわれているから、今後どのような船を建造するかは大きな課題だ。特に 大島の動向は注目されていたから、今回の決定は、他の造船所にも影響を与えるのではないかな。― ただ、バルカー はマーケットそのものが巨大だから、わずかな代替需要でもそれなりの仕事量にはなる。同じような船種は他にない。 ― ただ、限られたバルカーの需要を奪い合う形になっているのも事実だ。日本の「エコシップ戦略」も、日本同士の仕 事の奪い合いになると、大きな差はない。そもそもバンカー(燃料油)価格が下落したので、正直なところ「エコシップ」 はセールスポイントになりにくくなっている。― バルカー比率が一時9割を占めていた今治造船は、コンテナ船に一気 に転換した。こうした切り替えは早い。大型工場はもう2019年まで線表が伸びたという。JMU(ジャパンマリンユナイテッ ド)もバルク比率を急激に引き下げて、各工場が他の船種に転換している。― やはり脱バルカーといえば、コンテナ船 とタンカーという大宗船が基本だろう。タンカーの新造商談も、足元では若干変調しているが、今年は大きかった。名村 造船所のアフラマックス大量受注のように、タンカーをメニューに持っている造船所が素早く動けた。― 大島が参入 を決めたフィーダーコンテナ船も、大きな需要が期待されている。今治造船がエバーグリーンから2,800TEU型10隻を 受注しているが、常石造船も3,000TEU級のフィーダーコンテナ船の検討を進めていると明らかにした。これ以外にも、 内海造船などが得意とする船型だ。― ただ、このクラスのコンテナ船は、やはり中国や韓国が中心だ。中小造船所の 経営難で有力な建造ヤードが減っているとはいえ、例えば韓国の現代尾浦造船のように建造規模が大きい中堅規模の ヤードがメニューにしている。去年だけでも1,000-3,000TEU級のコンテナ船は、韓国と中国で100隻近い受注があった のではないかな。― それでも、今後もまだ需要はあるといわれている。メガコンテナ船の発注拡大で、フィーダーの 需要がさらに出てくる見込みだ。また、かつて東西基幹航路に投入されていた4,000TEU級がアジア域内航路を中心に 運航されているが、老朽化が進んでおり、この代替船として若干小型の最適船型を求める引き合いが造船所に増えて いる。― 一方では、バルカ一に比べて市場規模は決して大きくはない。日本の造船所の十分な仕事量があるかどう か…。― もちろんどの船種にも心配はある。技術面でも、新しい船種だからリスクはあるだろう。だが、日本の造船所 が新しいマーケットを目指すのは悪くないと思う。日本の中でバルカーの過当競争を繰り広げるよりは、他国の造船所 が得意としているマーケットを開拓する方が良いだろう。 ◆造船この1カ月<下>【9.7】 ≪NOx前“駆け込み”がヤマ場、新造商談、18年船台が主戦場に≫NOx(窒素酸化物)3次 規制の適用まで4カ月を切り、新造船市場では、年内の起工に間に合うよう急ピッチで商談が進んでいる。商談の主戦 場は18年納期以降の船台で、プロダクトミックスを展開する造船所は、商談低迷が続くバルカー以外のタンカーやコン テナ船、LPG船などで営業を展開している。起工までの期間を考慮すると、新規制適用前の駆け込み発注は今後1-2カ 月で趨勢が決まるとみられ、商談のヤマ場を迎えている。≪注目のVLCC商談≫司会 来年1月の起工船から対象にな るNOx3次規制の適用まで残すところ4カ月弱となった。期待されていた“駆け込み”発注の状況はどうだろうか。― 7 月の契約船から適用された新規制、国際船級協会連合(IACS)の新共通構造規則(調和化船体構造規則:H-CSR)を受け て、新造受注は急減速するとの懸念もあったが、NOx3次規制非対応の商談が急ピッチで進んでいる。― 日本船舶輸 出組合の統計をみても、7月の輸出船契約は25隻・145万総㌧と高水準だったね。牽引したのはバルカーではなく、メガ コンテナ船などの大型船だった。― バルカーの新造商談は好転の兆しが見えないが、プロダクトミックスを展開する 造船所はタンカーやコンテナ船、ガス船などバルカー以外の船種の受注営業を重点的に進めている。― 規制対応や 新船型の開発もバルカーよりもタンカーやガス船、コンテナ船などが先行しているね。― 特にガス船やコンテナ船は - 9 - H-CSRの対象外のため、以前から水面下で開発が進められていた。新たにLPG船やフィーダーコンテナ船の製品メニュ ーをそろえた造船所もある。― H-CSRへの対応が必要なタンカーでも開発を先行して進めていた造船所が多く、7月 以降も商談は継続中だ。― 特にここのところ注目を集めている船種の1つがVLCCだ。既に水面下で決まっているも のもあるが、邦船社向けのリプレース需要があることから、国内の造船所の受注が期待されている。― 邦船社向けの 商談は昨年からいろいろと噂になっていた。昨年のうちに発注が表面化したものもあったが、なかなか造船所の思うよ うには進んでいなかったね。― ただ、造船所も商談が後半にもつれ込むのを見越して、H-CSRに対応した船型開発を 既存船型の商談と併行して進めており、規制適用前から開発にめどを付けていた。このため、7月以降も新規制対応のV LCCで営業している。― 新規制前の発注を促している造船所に対して、発注する側は状況を見極めたいという考え が強く、両者にはギャップもあった。NOx3次規制の適用を控えているが、早く決めたい造船所に対して、発注側にはそ れほど焦りはみられないようだ。― 今後の商談では、NOx3次規制への対応を盛り込むかどうかで、造船所の対応は 大きく異なってくるね。― 新規制への対応で建造コストは200万-300万㌦上昇すると言われており、造船所としては ギリギリまで年内起工の商談を進めるだろう。ただ、仮に来年以降にもつれ込んだとしても、建造コスト増は避けられな いが、VLCCなどでは設計の大幅な見直しまでは必要ない見通しだ。大型船は機関室のスペースにも比較的余裕があ り、脱硝装置などの搭載スペースの問題はそれほど深刻ではないようだ。― ただ、発注側もリプレースの計画に合わ せて少なくとも船台を押さえておかなければならないから、リプレース分の発注は年内に済ませる必要があるだろう。 ― 現在、国内のVLCC建造ヤードというと、どこになるのだろうか。― 国内の造船所で一昨年来VLCCの省エネ船型 を市場投入していたのは、ジャパンマリンユナイテッド、三井造船、名村造船所の3社になる。― 国内の造船所ではな いが、川崎重工業の中国合弁造船所の南通中遠川崎船舶工程(NACKS)/大連中遠川崎船舶工程(DACKS)もあるね。 ― 川重は今年の年頭会見で中国2工場でVLCCやメガコンテナ船の受注に注力する方針を掲げていたね。今年もVLC Cを引き渡している。≪18年船台が主戦場に≫司会 今年前半にもそこそこの受注量があったように思うが、造船所は 現時点でどの辺りまで線表を伸ばしているのだろうか。― VLCCやメガコンテナ船など大型船の新造商談は、2018年 納期以降の船台が主戦場になっている。― 年初の時点で2018年後半-2018年いっぱいまでの線表にほぼめどを付け ていた日本の造船所の大型工場に加えて、今年前半に受注攻勢をかけた韓国造船大手も急速に線表を確定している。 ― 今年前半には韓国造船所の16年納期での受注も数件表面化していたよね。― ウォン高という状況がありなが ら、今年前半に韓国造船所がタンカーやメガコンテナ船などで受注攻勢をかけられた背景には、やはり期近な納期を 提示できたことがあるのだろう。運賃や用船市況が好調だったVLCCは船主も手前の納期の船台を要望していた。― 日本の造船所にもVLCCなどの引き合いは寄せられたが、日本が18年後半以降なのに対して、韓国は17年前半の船台。 円安というアドバンテージはあっても、さすがに日本の造船所が受注につなげるのは難しかった。― 今後は年内に18 年船台をどう受注していくかが焦点の1つになるが、日本の造船所は邦船社向けのVLCCなど手持ちの商談を考慮する と、大型工場は既にほぼ18年いっぱいまでめどを付けつつある状況だ。― 中小型船を建造する造船所や工場も新規 での商談は18年納期以降が中心となっているよね。≪ケミカル船商談が盛況≫司会 ケミカル船の新造商談も活発の ようだな。― 6月下旬から流れが変わった。NOx3次規制回避する年内起工ベースの案件で、以前から進めていたもの に加え、新規で寄せられるものも多いという。NOx3次規制前に駆け込み発注が予想されていたが、本格的に動き出し た形だね。― 2万2,000重量㌧級までのケミカル船は全長が150m未満に収まっているので、H-CSRへの対応も問題な い。そうした背景もあってか、1万重量㌧台の引き合いが増えているそうだ。― ケミカル船は需要に波があることか ら、一般的にバルカーなどの太宗船を建造する造船所と比べて線表は短くなりがちだが、年内までに18年いっぱいの 手持ち工事は難なく埋まりそうだ。既に18年がほぼ埋まっている造船所もある。― 船型が小さい上に、配管などが複 雑に入り組んでいるケミカル船は、NOxへの対応となると大掛かりな見直しが必要になる。対応には時間がかかること も想定されるので、時間稼ぎの意味でも手持ち工事は多いに越したことはないのかもしれない。もちろん、先物になれ ば、資材コスト上昇などの懸念もあるが、足元はステンレス価格も落ち着いている。― ケミカル船に限ってみれば、船 主も規制前の発注に前向きだ。用船マーケットの見通しもバルカーと比べて明るい。建造ヤードが限られるため、リプレ ースなどを予定する船主は船台を押さえておく必要がある。NOx規制による燃費悪化やオペレーションコスト増加を懸 念する声も強いね。― バルカーもボックスシェイプ型の多いハンディサイズは既存のデザインで営業を進められる が、ドライバルク市況の低迷で商談はあまり進んでいないようだ。― ただ、H-CSRの対象外ということもあり、NOx規 制前に駆け込みで契約する動きは出てくるかもしれないね。― 新規制の影響の大きさを考えれば、特に設置スペー スの少ない小型船型は対応が大掛かりになるため、できる限りNOx非対応の船で線表を伸ばしておきたいところだ。契 約ではなく起工がポイントになるので、契約から起工までリードタイムが必要になるが、おそらくギリギリまで商談は続 くだろう。― NOx3次規制の適用まで残り4カ月弱となったが、これからがヤマ場だね。 ◆駆け込み反動強まる/新造受注、現場力強化が鍵に【9.4】 〈デスク〉新造船マーケットを振り返るところからいこう か。〈A〉新たな国際ルール「H-CSR(調和共通構造規則)」が7月1日以降のバルカー、タンカーの契約船に適用されるの を受け、この適用を回避しようとタンカーを中心に、またバルカーは少ないながら、新造船駆け込み発注が発生した反 動で、表面化してくる新造船の数は激減しています。夏枯れは例年のことながら、われわれも8月をよくしのいだもの です。〈B〉ここへきて中国経済の減速、その実態への懸念が強まり、ドライ市況、タンカー市況も急落し、特に新造船供 給圧力が引き続き強いドライ市況は、先行きへの悲観的な見方が広がっています。新造引き合いは当面、ホープレスと 言っても過言ではない状況です。〈C〉コンテナ船は、2016年からのNOx(窒素酸化物)3次規制実施の影響で、この適用 を回避しようと水面下で新造商談が進んでいます。〈デスク〉問題は来年だな。駆け込み発注の反動が全船種で出る可 能性がある。〈A〉バルカーは前述の理由により、来年も期待できません。この7月の一時的なドライ市況反発。上昇は、ま ったく参考にならなかったようです。〈B〉タンカーは運賃市況が比較的良好なのを受け、VLCC(大型原油タンカー)、ア フラマックス建造ヤードの間で、H-CSRを取り込んだ新設計船の開発が始まっていますが、実際に新造発注が出てくる かどうかは、特に市況性の高いアフラマックスでは運賃市況次第となる可能性があります。中国経済減速が世界経済に - 10 - 及ぼす影響次第では、タンカー市況の来年の見通しは変わってくる可能性があります。〈C〉コンテナ船は年末に向け、N Ox3次規制回避の駆け込み発注が予想されています。今年のコンテナ船の新造発注はすでに全世界で200隻を超え、 ブームとなっています。来年はその反動で、激減するとの見方が支配的です。〈デスク〉日本の造船各社が相当程度、 船台を埋めていることがせめてもの救いといったところか。〈A〉17年にはバルカーのサプライ。プレッシャーが低下し、 ドライ市況が底を打ち、新造発注が戻ってくるとのシナリオは、中国要因により、かなり不安視されるようになりました。 〈B〉新造船マーケットが仮に低迷したとしても、そういうときこそ現場力の強化が重要になってきます。造船各社に期 待したいところです。〈C〉受注できるときに受注する。ブームのときも、市場が冷えているときも、造船の鉄則はやはり 変わらないようです。〈デスク〉これからは何が起こっても不思議ではないという意識で、業界を見渡し、取材していこ う。 ◆バルカー受注厳しく/中堅各社、他船種に営業拡大【9.4】 〈デスク〉さて、日本船舶輸出組合の7月輸出船契約実績 が出たが、新ルール「H-CSR(調和共通構造規則)」適用後の状況はどうだった。〈A〉6月実績は前年同月比2桁増でし た。7月は145万総㌧(76万CGT=標準貨物船換算㌧)で2.6倍(CGTベースで2.8倍)となりました。7月以降に契約を結ぶ タンカー、バルカ一に適用される新ルール前の駆け込み発注が6月まであり、その反動で大きく落ち込むとの予想があ りましたが、数字上はあまり影響がなかったようです。〈B〉前年も同様にルール適用がありました。船内騒音規制適用 前の6月実績が339万総㌧(169万CGT)と2.4倍(CGTベースで2.1倍)に膨らんだ後、7月は56万総㌧(27万CGT)と、52% 減(CGTベースで50%減)に落ち込んでしまいました。〈C〉今年は駆け込み発注がなかったわけではないですが、限定 的だったといえるでしょう。〈デスク〉今後の受注についてはどうなるのかな。〈A〉7月以降、中堅造船の定例会見が相 次いで開催されていますが、各社首脳は、状況を厳しく捉えています。今治造船では、コンテナ船の引き合いは堅調 で、バルカーなど他船型でも受注を目指す半面、バルカーのマーケットが非常に悪く、受注は今年も厳しいとの見方を 示しました。今年度はすでに100万総㌧弱を受注しています。手持ち工事は2018年末までを確保しました。〈B〉名村造船 所も、ドライ市況の先行きがなかなか見通せないなどとし、本体、連結子会社の佐世保重工業ではパナマックス型を中 心としたタンカーで営業活動を進めていることを紹介しています。決算資料によると、4~6月期に大型船1隻、中型油送 船6隻の計7隻を成約しました。手持ち工事は約3年分を確保しています。〈C〉3万~10万重量㌧のバルカ一に特化した大 島造船所も、リプレース(代替建造)需要は底堅いものがあるとしながら、今後2年は状況が厳しいとみています。今年1 ~6月には34隻受注し、手持ち工事は18年末まで確保しました。今年度は19年の船台を埋めることを目指します。同社は 1隻ごとにカスタマイズされた船種を4隻同時並列建造しています。操業率を落とさない方針で、これを実現するため にはバルカーだけでは難しいため、3,000TEU以下のコンテナ船建造に乗り出します。 ◆三井造船、独社を買収【9.29】 ≪220億円 中小型設計に強み≫三井造船は28日、液化天然ガス(LNG)などを運ぶ 中小型ガス運搬船の設計を手掛ける独TGEマリンを買収すると発表した。買収額は約1億6,400万ユーロ(約221億円)。 温暖化ガスの排出量が少ない天然ガスは今後、世界で需要が広がる見通し。三井造船は技術力の高いTGEマリンを取 り込み、成長市場のガス運搬船の事業拡大を狙う。主要株主の投資ファンドなど3社から、TGEマリンの発行済み株式の 約99・36%を10月1日付で取得する。残りの株式も個人投資家などから取得し、完全子会社化を目指す。TGEマリンの201 5年3月期の連結売上高は1億7,762万ユーロだった。TGEマリンは中小型のガス運搬船の設計、機器調達を手掛け、特に 小型LNG運搬船や、小型エチノレン運搬船、小型液化石油ガス(LPG)運搬船の設計を得意とする。三井造船はガス運搬 船では大型船を主力にしており、中小型はほぼ手掛けていない。今後は東南アジアや地中海などで近距離輸送用の中 小型のガス運搬船需要が広がるとみて、TGEマリンを取り込み、製品開発に生かすことにした。三井造船はガス燃料を 使う船舶用エンジンなども手掛けており、こうしたガス運搬船向け機器の販売面での相乗効果も期待する。英調査会社 クラークソンの調べではLNG運搬船の竣工量は14年で360万総㌧。足元でばLNG運搬船の供給過剰感もあるが、今後は 米国のシェールガス開発も進み、中長期的にはガス運搬船市場は拡大すると期待されている。三井造船はTGEマリンの 買収で幅広い品ぞろえで同市場で攻勢を強めたい考え。 Ⅲ.世界・各国造船業の動向 ◆中国が拡大、三井造船が5位に【9.4】 ≪世界造船所売上ランク、本紙調べ≫本紙がまとめた2014年度の世界の造 船・海洋事業の売上高(邦貨換算)ランキングでは、前の年から売上規模を増やす造船所が目立った。特に中国の国営 造船所が、再編などの影響で大幅に売り上げを拡大した。トップ10社は前年と同じで、日本からは三井造船、今治造船、 ジャパンマリンユナイテッド(JMU)の3社が10位内に入った。順位には変動があり、三井造船が子会社の三井海洋開発の 大幅増収によって船舶部門の売り上げが今治造船を上回り、初めて世界5位に浮上した。一般商船の建造を主体とした 世界の造船所のうち、業績が明らかになっている主要造船所46社の2014年度売上高を取りまとめた。陸上関連事業な どを手掛ける企業は造船事業と海洋事業の売上高を抜きだし、造船専業の会社は会社全体の売上高を示した。2013年 は全体的に減収傾向が強かったが、この反動で、2014年は売り上げが増加する企業が大半を占めた。船価回復後の船 が売り上げに立ったり、操業を再び増やしたことや、海洋事業で大型建造工事が始まった点などが増収につながった ようだ。日本造船所の場合は、円安が売り上げを押し上げた。トップ10社は前年と同じ顔ぶれで、韓国4社、日本3社、欧 州1社、中国2社だった。トップ3は韓国大手で、順位は変わらず。首位の現代重工業は、損益面では創業来最悪の赤字に 落ち込んだが、売り上げはほぼ前年から横ばいで、2兆円規模を維持した。2位の大宇造船は海洋の拡大で売り上げを 伸ばしたが、3位のサムスン重工は若干の減収となった。4位は前年に続いてフィンカンチェリ。子会社のヴァルド(旧STX OSV)によるオフショア船建造拡大などで売り上げが増えた。5位には初めて三井造船が浮上した。単体では売上規模が 1,000億円前後と推定されるが、子会社の三井海洋開発が円安効果などで50%増収を果たしたことで、順位が前年か - 11 - ら1つ上がった。6位には中国国営グループ中国船舶重工集団(CSIC)傘下で最大の大連船舶重工が初めて入った。大型 船建造などで売り上げを増やしたとみられる。前年5位の今治造船は7位に後退した。建造量が抑制傾向だったことで 若干減収だった。JMUは前年と同じく8位。操業回復により売り上げ規模は3,000億円を回復した。中国船舶工業集団(CS SC)傘下で最大手の上海外高橋造船は前年と同じ10位だった。今回は中国国営造船所の増収が際立っており、国営の 広州広船国際(現・中船海洋与防務装備)が前年比2倍、武昌船舶重工が2.4倍、江南造船が31%増などとなっている。 中小規模の造船所を国営大手に集約したことなどが売り上げ拡大の背景にあるとみられる。邦貨換算で1,000億円を 超えた造船所は、表1のとおり判明分で21グループ。これ以外に業績非開示の企業にも1,000億円超の造船所が複数あ るとみられ、STXからフィンランドの造船所を買収したドイツのマイヤー・ベルフト・グループが2,000億円規模(15億ユー ロ)、中国国営の滬東中華造船が1,500億円規模(130億元)などと推定される。また三菱重工業は造船事業の業績を非 開示にしたため詳細不明だが、14年度は売り上げ規模が1,000億円前後とみられる。 ◆世界造船業の利益率ほぼゼロに【9.11】 ≪昨年0.3%に低下、韓国の赤字拡大で≫本紙試算によると、2014年度の 世界主力造船30社の造船・海洋事業の売上高営業利益率は平均0.3%だった。同じ30社の前年平均に比べて0.9ポイ ント低下し、ほぼ収支均衡(利益ゼロ)のレベルにまで落ち込んだ。韓国大手が海洋事業の悪化に伴い、大幅に採算が悪 化していることが影響している。その中で、日本の専業造船所は利益率が低下したものの10%超を維持しており、世界 的にみても稼ぐ力が突出している傾向が続いている。決算開示資料などで売上高と利益数値が明らかになっている造 船所として、日本11社、韓国10社、中国6社、その他3社の計30社から、造船事業の収益力を示す売上高営業利益率を試 算した。30社には連結対象やグループ傘下の造船所の売上・損益も含まれており、実質的には世界の50超の造船所の 平均となる。建造量(総㌧ベース)では世界のおよそ7割弱をカバーしている。30社のうち利益率が10%を超えたのは5 社のみで、全て日本の専業造船所だった。最も高かったのは新来島どっくで、18%を超えた。前年20%近い利益率で世 界トップだった大島造船所は、利益率が落ち込んだものの10%超を維持。また前年に続いて名村造船所、常石造船、今 治造船も利益率2ケタを超えた。新来島以外は利益率が低下したが、為替予約のタイミングや損失引当金の基準など で利益の山谷がずれたことが背景にあると推測される。この結果、日本の中堅・専業の7社平均の利益率は12.2%とな った。前年の15.6%からは3ポイント程度落ち込んだが、世界的には突出している。日本の総合重工系4社の平均利益率 は2.4%で、前年から1.8ポイント増えた。円安に伴う受注工事損失の戻りに加えて、不採算案件の解消もあり改善した。 重工系ではジャパンマリンユナイテッド(JMU)の利益率が3.3%で最も高かった。なお三菱重工は船舶部門としての業 績を非開示としたため、今回から除外している。韓国主力5社(実質7社)は平均でマイナス3.7%となり、赤字が拡大し た。最大手の現代重工業が海洋部門の大規模な赤字に陥り、グループの現代尾浦造船と現代三湖重工も赤字決算と なったことが響いた。中国は2大国営グループである中国船舶工業集団公司(CSSC)と中国船舶重工集団(CSIC)の持 ち株会社の造船・海洋事業が若干の減益となったが、民営造船所の回復などで全体としては利益率が改善した。今年 は韓国造船所で採算悪化がさらに深刻化しているため、世界全体でも減益基調が続く見通しだ。 ◆中国1~8月、新造船受注68%減/バルカー激減が直撃【9.17】 中国の2015年1~8月の新造船受注は、前年同期比6 8%の大幅減だった。ドライ市況低迷による世界的なバルカ一新造発注の激減が主因とみられる。新造船マーケット筋 には、中国建造船のパフォーマンスを見極めた海外船主が、ドライ市況低迷と相まって中国造船への発注を避けている との指摘もある。造船大国となった中国はこれまで、バルカーを中心に新造船を受注してきた。しかし、13~14年前半の 大量発注の影響によってドライ市況は当面低迷が続くとの見方を受け、14年後半以降、世界的に激減している。一方、15 年7月1日以降のバルカーとタンカーの契約船には、鋼材重量増加と燃費性能低下を招く新ルール「H-CSR(調和共通構 造規則)」が適用され、これを回避する新造船駆け込み発注が6月までに発生した。ただ、発注は限定的だったため、こ れが中国の1~8月受注量激減の主因になったとみられる。長引くドライ市況低迷により、バルカーの発注激減は当面続 くと予想され、中国の新造船受注減少は続く可能性が高い。 ◆中国造船/1-8月受注量7割減【9.18】 ≪CANSI統計、8月わずか100万重量㌧≫中国船舶工業行業協会(CANSI)に よると、今年8月の中国造船業の新造船受注量は前年同月比37%減の105万重量㌧だった。100万重量㌧割れとなった 4月に次ぐ低水準で、バルカーの商談停滞による中国造船業の受注低迷が浮き彫りになった。単月ベースの受注量は11 カ月連続で前年同月を下回っている。1-8月累計は前年同期比68%減の1,505万重量㌧となった。竣工量は8月が前年 同月比85%増の262万重量㌧、1-8月累計が前年同期比15%増の2,531万重量㌧量㌧としており、昨年に比べて上向い ている。手持ち工事量は受注低迷に伴って減少が続いており、8月末時点で1億3,514万重量㌧で、7月末時点と比べて1 56万重量㌧減少。1年前と比べると1,856万重量㌧減少した。重点観測企業とする造船54社の1-8月の受注量は前年同 期比70%減の1,367万重量㌧、竣工量は12%増の2,341万重量㌧、手持ち工事量は13%減の1億3,283万重量㌧だった。 船舶関連の重点観測企業とする88社の1-8月の完成工業総生産額は4%増の2,750倍元(約5兆1,900億円)。このうち 造船関連が2%増の1,320億元(約2兆4,900億円)、舶用が2%増の220億元(約4,200億円)、修繕が2%増の86億元(約 1,600億円)としている。また、主要事業収入は5%増の1,890億元(約3兆5,700億円)で、利潤総額は29億元(約550億 円)で14%減少した。 ◆韓国造船、海洋人員を増員【9,3】 ≪昨年、造船・海洋部門で11%増の18.6万人≫韓国造船所12社の人員調査によ ると、昨年末時点の造船部門と海洋部門の総人員数(協力工含む)は18万6,266人で、前年末に比べて11%増えた。海洋 部門が約1万人増えており、海洋事業で各社が巨額の損失を出す中でも、技術者を中心に増員している。韓国造船海洋 プラント協会(韓国造工)が会員10社と非加盟の造船2社を対象に、部門別・職制別の人員状況を取りまとめた。前年ま - 12 - で非加盟だった成東造船が新たに会員に加わったが、統計対象企業は前年と同じ。造船部門の人員数は7%増の13万 2,385人で、4年連続で増加した。大手が現場の技能工や協力工の人数を増やした。海洋部門は6社合計で22%増の5万 3,881人。大手3社はいずれも、海洋技術者の陣容を拡大した。3社合計では前年から873人増えて、4,265人となった。ま た、現代三湖重工が海洋工事の開始に伴い協力工を大量に増やした。 ◆韓国船舶輸出/8月52%減17億㌦、掘削船の納期延期など影響【9.3】 韓国の産業通商資源部がまとめた輸出入実 績(速報ベース)によると、船舶関連の8月の輸出額は前年同月比52%減の17億㌦だった。金額が大きい海洋プラント関 連(掘削装置、生産設備など)で予定されていたドリルシップ(据削船)2隻の引き渡しが、船主の要請で延期されたこと などが影響した。前年同月にはドリルシップ2隻、FSRU(浮体式LNG(液化天然ガス)貯蔵・再ガス化設備)1基などの引き 渡しがあった。船舶関連輸出額の1~8月累計実績は、年初に海洋プラント引き渡しが集中したことで、前年同期比7%増 の276億㌦とプラスを確保した。韓国全体の7月の輸出額は、主要13品目のうち無線通信機器、半導体がブラスだった ものの、それ以外は船舶を筆頭にマイナスとなり、前年同月比15%減の393億㌦に落ち込んだ。海洋プラントの受注は、 原油価格低迷などを受けて世界的に失速している。厳しい状況下、韓国造船では唯一、サムスン重工業が大型案件を6 ~7月に相次いで成約。内訳は海洋プラットホームデッキ2基、LNG(浮体式LNG生産・貯蔵設備)3隻の船体、半潜水型浮体 式石油。ガス生産システム-の3件。LNGは、実際の建造までに一定の条件が付くものの、受注額は3件で計約61億㌦規 模に達する。 ◆韓国、造船の研究開発費390億円【9.14】 ≪過去最高を更新、研究者数も増加≫韓国造船海洋プラント協会(韓国 造工)の統計によると、韓国造船業の2014年の造船関連の研究開発投資額は3,885億ウォン(390億円)となり、過去最 高を記録した。研究者の人数も増加して過去最大。業績が悪化する中でも、海洋関連を中心に研究費を積み増したもの とみられる。韓国造船所では金融危機後に開発費が絞られ、2013年にも減少する傾向にあったが、14年は大幅に拡大し た。売上高に占める研究開発費の比率は1・69%にまで高まった。造船所の研究者の人数は、博士が大幅に増え、合計で 前年比85人像の2,127人となった 政府系研究所と合わせた人数は87人増の計2,262人だった。なお各社の事業報告 書では、主力5社の昨年の研究開発投資額は前年から減少していた。非造船事業での研究予算を減らしたものとみられ る。 ◆韓国造船、進む人員整理/技術者の再雇用先、中国や日本も?【9.15】 韓国造船所が経営再建の一環として、役員 や管理職を中心とした人員整理を進めている。事務系が中心とみられるが、技術者が退職し、韓国以外の造船所も含 めて転職する可能性などにも注目が集まっている。韓国では昨年から今年にかけての海洋事業での大規模な赤字を 背景に、人員と組織のリストラが進んでいる。現代重工業は今年初頭に課長級以上の事務系社員を対象に希望退職を 募集し、約1,000人が退職。3月にも女性社員160人が退職した。役員については昨年時点で相当数を削減した。大宇造 船海洋も事務系の部長職約1,000人と、専門職300人を対象に希望退職と勧告辞職を実施。現地紙によると、サムスン 重工も今月初めの役員退職に続いて、社員の希望退職を検討していることが伝えられる。一連の人員整理は社内組織 のスリム化と並行して行われており、重複していた管理系業務の統合などに伴う事務系社員のリストラが中心とみられ る。この一方、関係者によると、技術系社員でも退職者は少なくないという。かつて日本造船所では不況期に技術者が 退職し、韓国造船所や他造船所に移った例があったが、「韓国の技術者も、韓国の中小造船所だけでなく、人手不足の 日本や、技術が欲しい中国の造船所に再雇用先を求める例が出てくるのではないか」との見方が出ている。 Ⅳ.造船・造機以外の産業動向 ◎外航海運 ◆鉄鉱石用船料が上昇【9.29】 ≪8月下旬比2倍≫鉄鉱石などを運搬する大型ばら積み船、ケープサイズの用船料 (海運会社が船主に支払うチャーター料)が上昇した。主要航路の平均は現在、スポット(随時契約)で1日あたり1万4,00 0㌦前後で推移。直近の安値を付けた8月下旬のおよそ2倍に上がっている。前年の同じ時期に比べると1割高い。10-12 月は中国の製鉄会社が冬場に備えて原材料の在庫を積み増す傾向があり、需要期に向けた船の引き合いが増えてい る。中国経済は減速感が出ているが、鉄鉱石が値下がりしたこともあり、荷動き自体は堅調に推移している。用船料に 連動する鉄鉱石のスポット運賃も代表的な航路であるオーストラリア西部-中国問で1㌧あたり6㌦前後と、8月下旬に比 べて4割上がった。ケープサイズは市況低迷が長引き、維持費の負担に耐えられない船主が老朽船の退役を早めた。こ のため「需給バランスは徐々に改善している」(国内海運大手)。ただ、中国の粗鋼生産に頭打ち感が出ており、需要期 の荷動きがどこまで伸びるかは不透明だ。 ◆第一中央汽船が経営破綻【9.29】 ≪民事再生法申請へ調整、負債2,000億円超≫海運中堅で東証1部上場の第一 中央汽船は、民事再生法の適用を申請することで最終調整に入った。29日にも東京地裁に申し立てる見通し、石炭や 鉄鉱石を運ぶ事業を主力としているが、運賃低員数は約400人。石炭迷で経営状態が悪化。中国景気の減速を受けて 自力再建を断念した。法的枠組みのもとで経営再建をめざす。負債総額は簿外も含めると2,000億円を超える可能性 がある。現在、再生法の適用申請に向け準備を進めており、申請時の負債総額は1,200億円程度にのぼり、簿外債務も 入れるとさらに膨らむ。ただし再建手続きを進める上で十分な資金を確保できない恐れもある。29日に東京地裁と調 整したうえで、臨時取締役会を開いて正式に決定する。第一中央は約170隻を運航し、国内では売上高5位の海運会社。 従業員数は約400人。石炭や鉄鉱石などを運ぶばら積船に特化している・中国の資源需要拡大を背景に運航隻数を増 やしてきたが、ここ数年は市況低迷などを背景に業績が悪化。2015年3月期まで4期連続で最終赤字になっていた。同 社は借りた船の用船料が、資源を運んで得られる運賃を上回る逆ざやが続いている。法的枠組みを活用してこれらの 契約を見直し、収益回復を目指す考えだ。 - 13 - ◎内航海運 ◆内航総連/9月期建造申請、序盤は応募弱含み【9.8】 日本内航海運組合総連合会は、9月期の船舶建造(改造、転 用含む)の募集を開始した。今期の建造申請は暫定措置事業規程に基づき、内航総連が実施する2015年度第3回申請 受け付けで、期限は20日。1日からスタートし、これまでのところ、一般貨物船などの申請の動きは弱含みで推移してい る状況だ。内航関係者からは「内需低迷で粗鋼生産が減少するなど内航を取り巻く景況が厳しいため、建造申請の動 きは鈍いのではないか」との声が出ている。今年度の建造申請は、比較的堅調な滑り出しだった。第1回建造申請の受 付期だった5月期は1年前の41隻に及ばなかったものの、一般貨物船の応募が比較的多く、35隻を記録。7月期は例年と 同様、5月期の申請が多かった反動で15隻にとどまったものの、14年7月期を2隻上回った。海運組合などの関係者は 「全体としてはほぼ前年並みの申請水準だった」と分析していた。こうした中、9月期申請の動向が注目されているが、 現段階では動きは鈍い模様だ。ただ、内航の一般貨物船は1990年代前半から中盤に建造された船が多く、代替期を迎 えており、内航船主は船員確保の観点からリプレース(代替)を図りたいという潜在的な需要もある。厳しい経営環境下 で、こうした需要がどれだけ建造の動きにつながるかが注目される。他方、今年度は、小型船が中心の申請となってい る油送船の建造の動きは弱含んでいる。石油需要の見通しの不透明さや石油元売りの再編などもあり、「申請の動きは 鈍い」(内航関係者)状況。船種別に見た1対象トン(貨物船・重量㌧、油送船・立方メートル、曳船・馬力など)当たりの15 年度の建造納付会単価は、一般貨物船5万6,000円、油送船3万8,500円、曳船5,600円。 ◆7月期建造申請、17日の理事会で認定へ/内航総連【9.15】 日本内航海運組合総連合会(内航総連)は、17日に開く 理事会で傘下組合員(内航事業者)が2015年7月期の船舶建造募集に申請した船の建造認定を行う。7月期の応募船舶 は15隻・3万8,400対象㌧(貨物船・重量トン、油送船・立方メートル、曳船・馬力など)。15日に開かれる建造認定委員会の 審査結果を踏まえ理事会で審査し、認定船を決める。申請船15隻の船種別内訳は、一般貨物船10隻・1万9,800重量㌧、 油送船3隻・3,100立方㍍、自動車専用船1隻・3,400重量㌧、曳船1隻・1万2,200馬力。前年7月期(13隻・2万6,900対象㌧) に比べ、隻数は2隻増、対象トン数は1万1,500対象㌧増えた。申請船の多くは小型船で、一般貨物船の申請船は10隻中8 隻が499総㌧以下の船、油送船は申請船3隻とも499総㌧以下だった。7月期の船舶建造募集は、暫定措置事業規程に 基づき実施。15年度に実施する第2回建造申請受け付け(募集期間は7月1~20日)として行われた。 ◆推定鉄骨需要量は約48万㌧【9.7】 ≪再び前年実績を上回る≫国土交通省の7月の建築着工統計調査報告による と、全着工床面積は前年同月比2・9%増(前月比5・2%減)の1,158万3,000平方㍍となった。構造別(※表1)では、S造が 同5・5%増(同0・1%増)の451万6,000平方㍍、SRC造は同94・8%増(同406・4%増)の49万2,000平方㍍。全床面積中の S造、SRC造の比率は43・2%、推定される鉄骨需要量は約47万6,000㌧の水準(前年同月は約46万㌧※表2)と再び前年 を上回った。 ◆太平洋クロマグロ/生後1年未満に漁獲規制ルール【9.3】 クロマグロの資源管理を議論する国際会議「中西部太平 洋まぐろ類委員会(WCPFC)」の北小委員会は3日午前、日本が提案した漁獲規制ルール導入で合憲した。生後1年未満 のクロマグロが大幅に減少した場合、禁漁を含めた漁獲規制を緊急に実施するというものだ。12月開催予定のWCPFC の年次会合で正式に決定する。札幌市で開かれていたWCPFC北小委員会は規制導入で合意し閉幕した。規制は2016年 に策定する。発動の条件など詳細は今後詰める。同市内で会見した水産庁・資源管理部の遠藤久審議官は「発動の契 機や規制の仕方について検討が必要との声はあったが、参加国の支持が得られ進展があった」と話した。一方、資源管 理を巡って米国は30年までに親魚の資源量(12年は約2万6,000㌧)を約12万㌧まで増やすという高い目標を提案して いた。これに対し日本は「算定方法などの考え方が違う。過去の経験に沿って評価する必要がある」(遠藤審議官)とし た。溝は埋まらず、来年にかけて継続して議論する。会合には日本のほか中国、韓国、米国など6力国・地域が参加した。 クロマグロはすしネタとして人気が高く、乱獲の影響で資源量は近年低水準で推移している。 ◆工作機械8社受注 8月4・6%増437億円【9.10】 ≪本社まとめ 24カ月連続増加≫日刊工業新聞社が9日にまとめ た工作機械主要8社の8月の受注実績は、前年同月比4・6%増の437億7,900万円となった。プラス成長を24カ月連続に 伸ばしたが、外需は同8・2%減の225億2,500万円で、2カ月ぶりの減少。7社が前年を下回った。中国経済の減速に伴 い、中国だけでなく、米国でも一部で買い控えがあるという。右肩上がりにきた工作機械の世界市況は風向きが変わっ てきた。全体額の減少は7月の2社から4社に増えた。内需が同22・7%増の212億5,400万円と上向く中、外需の減退が響 いた。ツガミは外需が大きく落ち込んだ。「中国経済の不透明感につきる」(管理部)と、スマートフォン向け以外でも中 国地場企業からの受注が停滞した。OKKは中国経済の不透明感が米国市場にも波及したと推測する。顧客の慎重な姿 勢が目立ち、買い控えも出てきた。同社は外需の減少で内外合計が7カ月ぶりに減った。一方、中国の堅調さを指摘す る声もある。東芝機械の外需は同38・6%減。減少幅が大きいのは前年に欧州が好調だった反動だ。中国は「しばらく厳 しかったが、7、8月と案件が出てきた」(総務部)と、ここにきて金型向けを中心に大型機が増え出した。ジェイテクトは 「車がけん引し、さはど大きな変化はみられない」(広報部)とし、DMG森精機も「高性能機の受注に大きな変化はない」 (広報・展示会部)と声をそろえる。内需は幅広い産業分野が依然として底堅いが、8月は特に車向けが活発だった。ジ ェイテクトは部品加工ラインを複数受注。牧野フライス製作所は「車部品向けのマシニングセンター(MC)が目立った」 (業務部)ことが、国内受注を押し上げた。今は外需を再度押し上げる好材料に乏しく、当面は外需下ブレの局面が続き そうだ。 - 14 - ◆工作機械受注、8月16%減1,070億円【9.10】 ≪日工会まとめ 23カ月ぶり減少≫日本工作機械工業会(日工会)が9 日に発表した8月の工作機械受注実績(速報値)は、前年同月比16・5%減の1,070億2,100万円で、23カ月ぶりに減少し た。外需が同31・1%減の593億8,300万円に落ち込んだ。スマートフォン向けが減った上、中国の経済の減速が重なった ようだ。内需は26カ月連続の増加、外需は3カ月連続の減少だった。合計額は好不調を分ける目安の1,000億円をわず かに超え、「決して悪い水準ではない」(日工会事務局)と合格ライン上にある。外需が下降線の中、内需は同13・6%増 の476億3,800万円と堅調。今回の2ケタ増は国内の底堅い設備需要を裏付けた。今後の内需は、政府によるものづくり 補助金の需要創出が期待される一方これまでに需要を先金いしてきた懸念もある。決算月で盛り上がるべき9月受注 の好不調が、年内の先行きを判断する材料になる。 ◆中国減速も健全水準【9.17】 ≪8月の工作機械受注「落ち込み限定的」牧野日工会副会長≫日本工作機械工業会 (日工会)が16日発表した8月の工作機械受注実績は、23カ月ぶりの前年割れとなった。先行きに不安が広がったが、受 注合計は1,070億3,800万円で1,000億円を目安とする健全水準を保っている。牧野二郎日工会副会長は「非常に大き な落ち込みはないだろう」と規模、期間ともに限定的な減少にとどまるとみている。外需は前年同月比31・2%減の593 億700万円で3カ月連続の減少だった。外需と全体の足を引っ張ったのは中国受注だ。現地のスマートフォンを含む「電 気・精密」が大幅減だったほか、市場規模が大きく、中小ユーザーの多い「一般機械」も同15・7%減と低迷した。現地で は日本製中大型の高級機が依然堅調だが、一部の小型機では中国経済の減速によるマイナス影響が出ている。米国、 アジア、欧州はそろって減少。米国では中国経済の混乱や主要経済指標の低迷、エネルギー・農業の需要減の三つの懸 念があり、ユーザーがまとまった設備投資に慎重になっているという。ただ、牧野副会長の話では、米国製造業の活性 が先々期待できるという。このため、今回の減少が大規模にならず年内までの一時的な動きになるとみる。一方、内需 は同13・8%増の477億3,100万円で26カ月連続の増加。5-7月に寄与した省エネ補助金による需要創出効果が薄れる 中、2ケタの増加と健闘し、国内の底堅さを鮮明にした。10月以降はモノづくり補助金を利用した受注が期待できそう だ。1-8月の累計額は前年同期比9・3%増の1兆462億2,700万円。日工会が年初に定めた年間受注目標額1兆5,500億円 の達成には、月平均1,200億円超が必要だ。 ◎産業機械 ◆産機受注57%減3,508億円 7月【9.11】 日本産業機械工業会(産機工)が10日発表した2015年7月の産業機械受 注額は、前年同月比57・1%減の3,508億9,500万円となり、4カ月連続で減少した。内需は同15・4%減の2,196億1,200万 円で3カ月ぶりに減少に転じ、外需は同76・5%減の1,312億8,300万円で6カ月連続のマイナスだった。内需のうち製造 業向けは同24・8%増、非製造業向けは同33・9%減、官公需向けは同42・5%減、代理店向けは同4・4%増。外需はプラン トが大きく落ち込んだ。一方、主要約70社の輸出契約高は同77・8%減の1,211億1,300万円で、6カ月連続のマイナス。地 域別構成比はアジア75・6%、中東12・3%、北米4・7%、欧州3・3%、オセアニア1・6%、南米1・4%。 ◎環境装置 ◆環境装置受注46%減【9.10】 ≪官公需低調、2カ月ぶり減、7月≫日本産業機械工会が10日発表した2015年7月の環 境装置受注実績は、前年同月比46・0%減の287億8,300万円で2カ月ぶりに減少した。民需は製造業、非製造業とも好 調で同25・8%増の51億5,900万円だったものの、官公需は前年同月に都市ゴミ処理装置などの受注が多かったことか ら同59・1%減の190億3,200万円と落ち込んだ。外需は排煙脱硫装置が伸びて同71・7%増の45億9,200万円だった。民 需の内訳は製造業が同30・4%増の34億900万円、非製造業が同17・7%増の17億5,000万円。製造業は化学産業向けな どの産業排水処理装置、非製造業では産廃処理業者向けの事業系廃棄物処理装置が好調だった。主な装置別の内訳 は大気汚染防止装置が同89・5%増の47億6,200万円、水質汚濁防止装置が同2・6%減の125億8,200万円、ゴミ処理装 置が同70・0%減の113億1,900万円。 ◆国内4輪生産5・9%減【9.1】 ≪7月 国内販売の回復遅れ≫日本自動車工業会(自工会)が31日発表した2015年7月 の生産輸出実績によると、4輪車の国内生産は前年同月比5・9%減の84万1,812台となり、13カ月連続で前年水準を下 回った。輸出は同0・4%増で若干前年を上回ったが、国内販売の回復が遅れ、生産低迷が続いている。車種別には前年 の生産台数の多かった軽乗用車が同25・5%減と落ち込みが大きく、全車種で前年を下回った。農家など個人事業者に 購入者の多い軽トラックは増税の影響が大きく、統計開始以来50年間で7月として過去最低を記録した。バスは統計開 始以来で上から3番目の高水準ながら5カ月ぶりに前年を下回った。4輪車の輸出は北米向けが全体をけん引し、2カ月 連続で前年を超え、同0・4%増の41万5,735台だった。ただ、車種別には前年を超えたのは普通乗用車と乗用車の合計 だけ。現地生産化の進む小型乗用車は同12・6%減の2万32台で過去最低を更新し、バスは同20・0%減。好不調はまだら 模様だ。2輪車の国内生産は同18・3%減の4万795台、輸出は同23・4%減の2万8,050台となった。 ◆新車販売8カ月連続減【9.2】 ≪8月国内1・9%マイナス、軽が苦戦、増税の影響続く≫自動車販売会社の業界団体が 発表した8月の国内新車販売台数(軽自動車を含む)は前年同月比1・9%減の32万7,049台だった。前年割れは8カ月連 続。特に4月から軽自動車税が増税となった軽が8・8%減と大きな減少が続いている。排気量660CC超の登録車は同2・ 3%増の21万1,303台で、2カ月ぶりに増加した。軽は11万5,746台で8カ月連続で減少した。総販売のブランド別では、国 内の乗用車9ブランドのうち5ブランドが減少した。「CX-3」や「ロードスター」などを発売したマツダと、レクサスが2桁の 伸び率だったほか、小型ミニバン「シエンタ」を発売したトヨタ自動車(レクサス除く)は2カ月ぶりに増加した。日産自動 車は8%減、ホンダは11%減だった。軽の減少率は7月(18・1%減)に比べ少なくなったものの、4月からの軽自動車税の 増税の影響がなお続いている。3月までに購入すると新年度以降に買うよりも年3,600円税金が少ないため、購入の前 - 15 - 倒しが広がった。2014年度の首位を巡り、3月までスズキとダイハツ工業が激しい販売競争をしていた反動も続いてい る。≪トヨタ中国新車、8月販売20%増≫トヨタ自動車は1日、中国での8月の新車販売台数(小売台数)が、前年同月比20 %増の9万4,200台だったと発表した。前年を上回るのは5カ月連続。8月12日に天津で大規模な爆発事故が発生し、近 接する主力の天津工場で同月26日まで生産中止を余儀なくされたが、中国市場全体が弱含む中、販売面への影響は ほぼ出なかった。主力車「カローラ」が依然好調で、前年同月比53%増の2万2,000台を販売した。小型車「ヴィオス」も 売れ行きがよく、同40%増の1万2,000台だった。天津に2拠点ある主力工場はいずれも正常稼働に戻っており、今後も 爆発事故の影響が生産、販売面に出ることはないという。 ◆新車販売、8月1・9%減【9.2】 ≪軽の落ち込み響く≫日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国軽自動車協会連 合会(全軽協)が1日発表した8月の新車販売台数は、前年同月比1・9%減の32万7,049台だった。前年同月割れは8カ月 連続。軽自動車の増税で軽の落ち込みが響いた。下げ幅は7月に比べ縮小したが、9月も軽自動車の不振が足を引っ張 りそうで改善の兆しは見えにくい。軽自動車は同8・8%減の11万5,746台で、登録車が同2・3%増の21万1,303台。登録車 はトヨタ自動車が増加に転じたことやマツダの好調もあり、2カ月ぶりに前年超えとなったが、軽の落ち込みを補うこと はできなかった。とはいえ、軽は4月から4カ月続いたニケタ減から一ケタ減となった。このため、登録車と合わせた販 売台数も、7月の同7・6%減と比べ減少幅が減った。だが、全軽協は9月の見通しについて、「昨年9月は過去最高を記録 して今年の9月がマイナスになることは間違いない」としており、楽観できない情勢だ。 ◆普通トラッタ5・6%増【9.3】 ≪8月販売 5カ月連続プラス≫トラック業界がまとめた8月の普通トラック(積載量4㌧以 上の大中型トラック)の販売台数は前年同月比5・6%増の6,355台で、前年同月実績を5カ月連続で上回った。箱型に架 装を施したバンなどのカーゴ系車両が全体を押し上げた。大型トラックの販売台数は同11・9%増の3,767台と好調に推 移した。一方、カーゴ系車両よりダンプなど建設系車両の比率が高い中型トラックは、同2・4%減の2,588台。2カ月連続 のマイナスとなった。建設関連需要は引き続き堅調に推移するが、これまで市場をけん引してきた伸び率からは一服感 もみられる。全体を引っ張るカーゴ系車両はシンクタンクによる年度を通じた堅調な荷動き見通しを背景に、燃料代の 落ち着きや運賃の改善が進んだことから「運送業者の経営が安定し、購入意欲が高まっているのではないか」(業界関 係者)と分析する。 ◆車8社、世界生産2・3%増【9.30】 ≪8月 国内落ち込み海外補う≫乗用車メーカー8社がまとめた8月の生産・販売・ 輸出実績によると、世界生産は前年同月比2・3%増の198万5,333台となった。前年実績を超えるのは3カ月連続。トヨタ 自動車が天津港の爆発事故で中国生産が減少した一方で、ホンダが同じ中国で過去最高を記録するなど各社各地の 生産の増減はまちまち。ただ海外生産はトヨタと三菱自動車を除く全社が過去最高を記録しており、おおむね国内生産 の落ち込みを海外生産が補う構図が続いている。国内生産は同4・9%減の56万8,932台で14カ月連続の前年割れとな った。国内販売の不振と生産の海外シフトが響く。日産自動車は主力SUV「エクストレイル」の輸出増の効果が一巡したこ とで9カ月ぶりに輸出が減少し、国内生産も同15・1%減となった。ホンダは7月に欧州向け小型車の生産を始めたことで 輸出が増えたが、前年の消費増税前の駆け込み需要で国内向けの受注が高水準にあった反動が響き、同22・5%減とな った。トヨタの国内生産は2カ月ぶりに増加。ロシア向けが減少したが、高級車ブランド「レクサス」の「NX」の増加で中国 への輸出が10カ月ぶりに増加に転じたことなどで輸出を微減にとどめた。富士重工業は輸出と国内生産ともに8月と して過去最高を記録。マツダはメキシコ工場に生産を移管したが国内販売が好調で国内生産も増加した。海外生産に ついて、トヨタは天津港の爆発事故の影響で、中国での生産が同3割減となった。中国の販売で苦戦する日産とスズキ も生産が減少。米国生産はトヨタとホンダが減少し、日産と富士重が増加した。世界生産は日産、ホンダ、マツダ、スズ キ、富士重が過去最高を記録した。 ◆白物家電の出荷額13.9%増【9.25】 日本電機工業会は24自、8月の白物家電の国内出荷額は、1,862億円となり、 前年同月比13.9%増だったと発表した。前年同月を上回るのは4カ月連続。気温が高い日が続き、エアコンが14.0%増、 冷蔵庫が13.6%増と好調だった。洗濯機も18.5%増となり、出荷額の約7割を占める3製品が全体を押し上げた。 ◆8月、粗鋼生産5・8%減/在庫調整長引く【9.21】 日本鉄鋼連盟によると、8月の粗鋼生産量(速報)は前年同月比5・ 8%減の880万1,200㌧で、12カ月連続の前年割れ。鋼材の在庫調整が長引き、依然として生産水準は低いまま。1日当た りの生産量は28万3,900㌧で、7月を0・5%下回った。炉別では高炉系の転炉鋼が前年同月比6・7%減の692万3,300㌧、 電炉鋼が同2・6%減の187万7,900㌧。それぞれ6カ月連続、9カ月連続の減少で、特に電炉鋼は2013年8月以来の190万 ㌧割れとなった。鋼種別では普通鋼が同5・3%減の687万6,400㌧特殊鋼が同7・6%減の192万4,800㌧。それぞれ6カ 月連続、9カ月連続の減少。需要は依然、弱含んでいるものの、減産効果で在庫調整も徐々に進んでいる。前年同月比 のマイナスが一巡したこともあり、9月まではやや厳しいものの、10月以降は前年並みの水準まで回復するとの見方が 強い。 ◆鉄鋼輸出3・5%減【9.30】 ≪8月普通鋼はプラス≫日本鉄鋼連盟が財務省貿易統計を基にまとめた8月の鉄鋼輸 出実績は、前年同月比3・5%減の342万9,820㌧で、2カ月ぶりにマイナスに転じた。普通鋼鋼材は同4・9%増の234方2,9 19㌧と9カ月連続で増えたものの、特殊鋼鋼材や半製品が落ち込んだため。仕向け先別では韓国やタイ、中国、台湾、 米国の主要国向けが軒並み減少した。特殊鋼鋼材は同12・5%減の64万6,239㌧、半製品が同25・0%減の35万3,517㌧ で、二次製品なども落ち込んだ。対照的に、普通鋼鋼材は関連会社への原板供給などが引き続き堅調。主要品目では、 全体の半分を占める熱延広幅帯鋼が同15・3%増で13カ月連続のプラス、冷延広幅帯鋼が同5・6%増で2カ月連続のプ ラス。造船などに使われる厚板も同6・3%増で6カ月連続のプラス。一方、亜鉛メッキ鋼板は同16・5%減で18カ月連続の - 16 - 減少だった。また、普通鋼鋼材の輸入量は同6・7%増の37万1,896㌧で10カ月ぶりに増加した。中国からアジア市場にあ ふれ出た鋼材が玉突きで一部が流入してきた格好。中国からは0・5%減だが、韓国からが同12・8%増と10カ月ぶりに増 えた。 以 - 17 - 上
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