生徒商業研究発表大会 閉会式 審査委員長講評 大 林 誠 (東京都立第

生徒商業研究発表大会 閉会式 審査委員長講評
大
林
誠
(東京都立第四商業高等学校長)
○
どの研究発表も地域の活性化や企業と連携した商品開発、店舗経営など商業高校で学んだ学習の知
識を活かした意義のある調査研究であった。
○
報告書については、しっかりと実践を重ねてきた報告の内容にはどれも説得力があった。昨年度は
限られたページ数にあれもこれもと細かな字で内容を詰め込みすぎた報告書があったことを講評の
場でも指摘したが、今年度は分りやすくまとめたものが多かった。
○ 一方、プレゼンテーションについては、昨年度と同様にやや早口の発表もあり、どの点を一番アピ
ールしたいのかが伝わりにくい内容もあった。喋りたい事を全て話すのではなく、伝えたい事を絞
ってしっかり伝えるということが大切だと思う。
○ プレゼンテーションも昨年度あたりから、ソフトウェアを駆使した新たな使い方が目立つようにな
った。それ自体は素晴らしい工夫だと思う。ただし、効果的な使い方であるかは是非考えていただ
きたい。効果的に使えればインパクトも強いが、そうでなければ逆効果にもなる。
○ 私たち審査員の立場からすると、限られた時間のなかで大会直前に報告書を読み、この会場で発表
を聞くことで取組を理解するため、伝えたい内容に絞り込んだシンプルな報告書や、聞き取りやす
いプレゼンテーションの方が理解しやすい。
○
また、一部の研究では、仮説設定や検証結果の導き方が強引に思えるものがあり、何故そのように
考えたのか説明できていない報告があった。この生徒商業研究は研究成果の発表の場であるので、仮
説・調査研究・実践・検証の過程を大切にしてほしい。
○ 実践がどんなに素晴らしくても、報告書や発表で調査研究としての位置づけが不十分であると、評
価としては厳しい点数となってしまう。
○
最近は、海外に目を向けた実践や地球環境に目を向けるなどスケールの大きなテーマも見受けられ
る。現代のビジネス社会では、グローバルな視点で物事をとらえることは大切である。しかし、審査
の過程では世界に目を向けた取り組みも、地域に根ざした取り組みも同じように評価をしている。よ
りスケールが大きい取組みが優れているというわけではない。あくまで、商業高校で学んだことをど
のように活かした研究であるかという点を公平に評価している。
○
生徒商業研究に長く取組んでいる学校では、過去の先輩たちからの事業を継続して実施しているケ
ースも多い。そうした学校では研究の題材が前年と被らないように、これまでは毎年のように新しい
ことにチャレンジしていた。そのため、これまでの取組を継続しつつ、新しいことに挑戦することで
年々大変さが増した。
○
前年と全く同じ内容を今年も同じように取り上げる、ということは好ましくないが、昨年度の取組
を今年度のメンバーで分析し、そこから改善の方策を検討し、新たな仮説を立て、調査研究を重ね、
実践の成果を検証することは、今年度の活動として十分に評価できる。昨年度に、このことを講評の
場で話したこともあり、今年度は過去の研究を引継ぎ、改善する内容の発表を行う学校は多かった。
内容もよくまとめてあってよかった。
○ ただし、分析や仮説、成果検証の部分が不十分であったり、実践ばかりが目立つ報告内容であると
前年の焼き直しと映ってしまうので、注意いただきたい。
<入賞作品の寸評>
最優秀賞
旭川商業高校
地域の活性化を図書カフェに結びつけた着眼点が独創的で、研究過程の道筋がきちんと通っており、
単に商品開発に落とし込まない取組みにも創意工夫を感じた。報告書も数値による検証がされており、
活動の成果に説得力があった。
優秀賞
岡山南高校
過疎化が進む地域の活性化に、村と企業の橋渡し役を高校生が担っている。これまでの活動実績が
新たな展開に発展している。報告書や発表で企業が主体となった部分と生徒が主導した部分の切り分
けが昨年度のように示されていると更に良かった。
徳島商業高校
海外に目を向けたスケールの大きい活動である。これからも続くと思われる活動なので、その年に
計画し、実施した内容を評価している。共同開発した商品をどのようにカンボジアの学校の自立に生
かして行くのか経年の計画性を明らかにし、成果を数値に基づき分析するとより説得力がある。
高崎商業高校
単に商品開発にとどまらず、現状分析から始まり、理論の学習やリサーチを経て、パン屋さんの信
用を得た上で経営コンサルタントまで至ったことは評価できる。経営は短期的な分析だけでは済まな
い部分もある。中長期の計画の基づく短期の分析であると更によかった。
鳥栖商業高校
プロジェクションマッピングという手法とその技術力に目を見張った。正直、報告書のまとめ方や
研究の体裁としては必ずしも評価の高いものではないが、企業も注目する発想力や技術力が研究の質
を高めた。繰り返し説明している生徒商研究のあり方からは外れているが、研究の着眼点や研究の成
果、研究発表、総合評価などで高く評価された。
<まとめ>
賞としての評価は、あくまで審査基準に準じて点数化した結果でしかない。それぞれの調査研究はど
れも素晴らしいものであり、さすがに全国の商業高校の中でも代表としてふさわしいものばかりであっ
た。高校生の視点での着眼点や実践の大胆さは、大人の想像を超える素晴らしさがあり、皆さんが商業
で学んだ知識を実践的に学習する研究活動を通して、社会で十分役立つ能力をしっかりと身に付けてい
るのがわかる。
最後に、ぜひ、今後も様々な機会・場面で商業高校で学んだことを生かしてほしいとお願いし、私か
らの講評とさせていただく。