鑑賞領域において音楽を味わって聴く力を育てる小学校音楽科学習指導

音楽科教育
鑑賞領域において音楽を味わって聴く力を育てる小学校音楽科学習指導の工 夫
―
想像したことや感じ取ったことを表すためのパフォーマンス課題を取り入れた学習活動を通して ―
呉市立和庄小学校
藤井
眞實
研究の要約
本研究は,鑑賞領域において音楽を味わって聴く力を育てる小学校音楽科学習指導の工夫について考
察したものである。文献研究から,本研究における「音楽を味わって聴く力」を,「繰返し音楽を聴く
中で,その音楽のよさや美しさの理由を音楽の中から自ら明らかにして自分なりの意見や感想を表し,
自分にとっての音楽の価値を見付けて聴くことができる力」とした。この力を育むために,第5学年に
おいて,想像したことや感じ取ったことを表すためのパフォーマンス課題を取り入れ,評価するための
ルーブリックを作成して学習活動を行った。その結果,音楽のよさや美しさの理由を音楽の中から自ら
明らかにし,自分にとっての音楽の価値を見付けて聴くことができる力が向上した。このことから,想
像したことや感じ取ったことを表すためのパフォーマンス課題を取り入れることは,鑑賞領域において
音楽を味わって聴く力を育てるために有効であることが分かった。
キーワード:鑑賞領域 味わって聴く パフォーマンス課題 ルーブリック
Ⅰ
問題の所在
国立教育政策研究所「小学校学習指導要領実施状
況調査 教科別分析と改善点(音楽)」(平成27年)
において,想像したことや感じ取ったことを,音楽
を形づくっている要素(音色,旋律等)と結び付け
て言葉で表し,楽曲の特徴や演奏のよさを理解して
聴いているかを問う問題の通過率は64.2%(うち準
正答47.5%)であった。所属校においても,感受は
できるものの,音楽を形づくっている要素と関わら
せて言葉などで表すことに課題がある。
また,中央教育審議会初等中等教育分科会教育課
程部会報告「児童生徒の学習評価の在り方について」
(平成22年)では,学習評価の現状と課題について,
「学習状況の評価の資料の収集・分析に負担を感じ
る」小・中学校の教師は約63%に及ぶことが報告さ
れており,学習評価を生かした授業改善を行うこと
が今後の課題と考える。稿者自身,音楽を聴いて記
述させた感想を評価する際に,評価の妥当性が曖昧
で,指導に生かすことが難しい現状がある。
さらに,国立教育政策研究所「小学校学習指導要
領実施状況調査」(平成27年)学校質問紙調査では,
42.9%の学校が,児童が自主的・自発的に学習する
ための取組について「『ほとんど』又は『どちらか
といえば』実現できていない」と回答しており,児
童が主体的に活動する学習指導の実現が必要であ
る。
そこで本研究では,音楽を味わって聴く力を育て
るためにパフォーマンス課題を取り入れる。パフォ
ーマンス課題を取り入れることにより,想像したこ
とや感じ取ったことを明確に捉え,その理由を楽曲
の音楽を形づくっている要素から見付けて関わら
せ,それらを自分なりに言葉などを使って表現する
という複数の知識やスキルを使いこなす場面を設定
する。これらのことにより,音楽を味わって聴く力
を育てることができると考える。
Ⅱ
1
研究の基本的な考え方
鑑賞領域における音楽を味わって聴く力
について
(1) 音楽を味わって聴くとは
小学校学習指導要領(平成20年)音楽の第5学年
及び第6学年の目標(3)には,「様々な音楽に親
しむようにし,基礎的な鑑賞の能力を高め,音楽を
味わって聴くようにする。」1)と示されており,基礎
的な鑑賞の能力を高めることが,音楽を味わって聴
くことにつながると捉えることができる。
「基礎的な鑑賞の能力」について,同解説音楽編
(平成20年,以下「解説」とする。)には,「音楽
を聴いて,音楽を形づくっている要素のかかわり合
いや,それによって醸し出される曲想を感じ取り,
味わう能力のことである。」2)と示されている。「曲
想を感じ取る」ことについて中学校学習指導要領解
説音楽編(平成20年)には,「例えば,『この曲は
優しい感じがする』などと直感的に感じ取った際に,
さらに,強弱や旋律に着目して『この曲が優しい感
じがすると思ったのは,弱めの音で滑らかな旋律を
歌っているからだ』などと音楽の構造とのかかわり
において再度とらえ直していく。」3)と示されており,
音楽を聴いて感じたことの理由を,音楽を形づくっ
ている要素の中から明らかにし,音楽の醸し出す感
じを捉えることだと考える。
また,「味わう」について中学校学習指導要領解
説音楽編(平成20年)には,「味わうとは,対象か
ら感じ取ったものの価値を自らの感性によって確認
することであり,ここには価値を判断することが含
まれている。」4)と示されている。また大熊信彦(平
成22年)は,「『味わう』とは対象のもつよさや美
しさなどを自ら確認する行為と言える。」5)と述べて
おり,音楽の醸し出す感じを自らの感性で捉え,よ
さや美しさを確認することだと考える。
これらのことから本研究における「音楽を味わっ
て聴く」とは,繰返し音楽を聴く中で,その音楽の
よさや美しさの理由を音楽の中から自ら明らかに
し,自分にとっての音楽の価値を見付けていくこと
だと考える。
(2) 鑑賞領域の学習過程
鑑賞領域における学習過程を,「解説」を基に図
1にまとめる。
楽曲を聴く
繰返し聴く
想像したことや感じ取ったこと
優しい感じがする。
何かに追い
かけられて
いるよう。
…
王様が歩いて
いるみたい。
繰返し聴く
か
か
わ
ら
せ
て
聴き 取った音楽を形づくっている要素
・弱めの音でなめらかな旋律
だからだね。
・速度がだんだん速く なるよ。
・同じ旋律がくり返されるね。
言葉で表すなどして
楽曲の特徴や演奏のよさを理解する
自分にとっての音楽の価値を見付ける
音楽を味わって聴く力
図1
鑑賞領域の学習過程
「解説」の内容「B鑑賞」指導事項(1)ウには,
「楽曲を聴いて想像したことや感じ取ったことを言
葉で表すなどして,楽曲の特徴や演奏のよさを理解
すること。」6)と示されている。そのために,「楽曲
を聴いて想像したことや感じ取ったことの理由を,
音楽の中から見付けて,自分の意見や感想をもつよ
うにすることが必要となる。」7)と示されており,
「曲
想とその変化などの特徴,音楽を形づくっている要
素のかかわり合いから感じ取ったことを,体の動き,
絵,造形,音などで表すなどして,教師や友達と意
見を交換する活動は,楽曲の特徴や演奏のよさを理
解することにつながる。」8)と示されている。
図1にあるように,楽曲を聴いて想像したことや
感じ取ったことを,その理由を楽曲の中にある音楽
を形づくっている要素から見付けて関わらせなが
ら,自分の意見や感想を言葉などで表すことが,鑑
賞領域の学習過程には必要であることが分かる。
(3) 音楽を味わって聴く力とは
(1)(2)から本研究における「音楽を味わっ
て聴く力」とは,繰返し音楽を聴く中で,その音楽
のよさや美しさの理由を音楽の中から自ら明らかに
して自分なりの意見や感想を表し,自分にとっての
音楽の価値を見付けて聴くことができる力と捉え
る。
2
想像したことや感じ取ったことを表すた
めのパフォーマンス課題を取り入れた学習
活動について
(1) 想像したことや感じ取ったことを表すとは
小島律子(2011)は,「楽曲を聴いて想像したこ
とや感じ取ったこと」について,「『楽曲を聴いて
想像したことや感じ取ったこと』とは,『王様が歩
いているみたい』『何かに追いかけられているよう』
『悲しそう』というような,音楽を聴いて想像した
様々な情景や様子,気持ちである。」9)と述べている。
さらに,表す方法について大熊(平成 22 年)は,
「『言葉で表すなど』のように『など』を付してい
ることに留意したい。」10)と述べ,音,体の動き,絵
などによる表現も含め,表していくことも考えられ
るとし,言葉等を使って他者に伝えることにより,
広がりや深まりが出てくると考えられる。
これらのことから本研究における「想像したこと
や感じ取ったことを表す」とは,楽曲を聴いてその
楽曲から想像した情景や様子,気持ちを,楽曲の中
から見付けた理由と関わらせて,言葉や体の動き,
絵,音などを使って他者に伝えることだと考える。
(2) パフォーマンス課題とは
パフォーマンス課題を西岡加名恵(2007)は,「学
んだ知識やスキルをリアルな文脈の中で使いこなす
こと(総合し応用して,表現したり実践したりする
こと)を求める課題である。」11)と定義している。
また,パフォーマンス課題とパフォーマンス評価
について石井英真(2015)は,「パフォーマンス評
価は,狭義には,学習者のパフォーマンスを引き出
し実力を試す評価課題(パフォーマンス課題)を設
計し,それに対する活動のプロセスや成果物を評価
する,『パフォーマンス課題に基づく評価』を意味
します。」12)と述べ,パフォーマンス課題の位置付け
について説明している。
従来の実技テストとパフォーマンス課題の違いに
ついて京都大学大学院教育学研究科 E.FORUM では,
ガスバーナーの操作やドリブルといった単純なスキ
ルを単独で評価するものは,パフォーマンス・テス
ト(実技テスト)であり,それに対して,実験を計
画・実施し,結果と考察を報告する,バスケットボ
ールの試合をするといった一連の活動を行うことを
求めるのが,パフォーマンス課題であると述べてい
る(1)。音楽科においても,楽譜の階名テストやリコー
ダーの運指テスト等の単純なスキルを単独で評価す
るのではなく,思いをもって曲を演奏する等の課題
が考えられる。このように,パフォーマンス課題は,
複数の知識やスキルを使いこなし,実力を発揮する
ことのできる課題である。
(3) パフォーマンス課題を評価するルーブリック
パフォーマンス課題を評価することについて石井
(2015)は,「パフォーマンス課題への学習者の取
り組みには多様性や幅が生じるため,教師による質
的で専門的な判断に頼らざるをえません。よってパ
フォーマンス評価では,主観的な評価にならないよ
うに『ルーブリック(rubric)』と呼ばれる,パフ
ォーマンスの質(熟達度)を評価する評価基準表を
用いることが必要になります。」13)と述べている。ま
たルーブリックについて石井(2005)は,「ルーブ
リックとは,成功の度合いを示す数値的な尺度
(scale)と,それぞれの尺度に見られる認知や行為
の特徴を示した記述語(descriptor)から成る評価
指標のことをいいます。」14)と述べており,西岡(2013)
はルーブリックの種類として,特定の課題に対し子
供たちの作品が集まった後に作成する「特定課題の
ルーブリック」と,指導の前に作成する「予備的ル
ーブリック」を挙げている。さらに石井(2005)は,
児童自身にルーブリックを理解させることにより,
児童が見通しをもって学習に取り組み,理解の深ま
りを自己評価しながら自律的にパフォーマンスを遂
行していけると述べている。
これらのことから本研究では,パフォーマンス課
題に対する「予備的ルーブリック」を教師が作成し,
教師と児童が題材の始めに共有することで,児童に
明確な目標をもたせ,自己の到達状況を客観的に把
握させながら主体的に学習に取り組ませる。
(4) パフォーマンス課題を取り入れた学習活動の
効果
石井(2011)は,「パフォーマンス課題のシナリ
オづくりは,子どもの想像を膨らませ,真正の文脈
に彼らを引き込む手段であり,教師が提示した課題
は,リアルあるいは切実な学習課題として,子ども
たちに認識されねばならない。」15)と述べている。設
定されたパフォーマンス課題には,子供達を自然に
課題の状況へと引き込み,考えさせてしまうような
設定が重要であることが分かる。また,G.ウイギン
ズ外(2012)は,パフォーマンス課題のシナリオ作
りに必要な要素について6要素を挙げており (2),西
岡(2008)は,パフォーマンス課題が現実場面の中
で解決される課題であることから,6要素を可能な
限り織り込むことを勧めている。
これらのことから本研究では,楽曲を聴いて想像
したことや感じ取ったことを,音楽を形づくってい
る要素と関わらせて言葉などで表す学習過程にパフ
ォーマンス課題を取り入れる。パフォーマンス課題
を取り入れることにより,児童が主体的に複数の知
識やスキルを使いこなす場面を設定するとともに,
パフォーマンス課題で表された表現を評価し,指導
に生かすことに効果的であると考える。
3
パフォーマンス課題を取り入れた学習活
動の具体について
(1) 本研究におけるパフォーマンス課題を取り入
れた題材構成
パフォーマンス課題を題材にどう位置づけるかに
ついて,西岡(2008)の考えを基に図2にまとめる。
パ ーツ 組 み 立 て型
→ 単元の最後に総合的なパ
フォーマンス課題が位置づいて
いる。
繰 り 返 し型
→ 基本的に同じようなパフォー
マンス課題を繰り返すもの。
折衷型
→ 単元の最初にパフォーマンス課
題に取り組ませ,必要な要素に
ついて洗練させていくような指
導を行い,最後にもう一度パ
フォーマンス課題に取り組ませ
る。
図2
西岡によるパフォーマンス課題の位置づけ(3)
図2のように西岡は,「パーツ組み立て型」「繰
り返し型」「折衷型」の三つの型に分類している。
鑑賞領域では,繰返し音楽を聴く中で,楽曲を聴い
て想像したことや感じ取ったことを,音楽を形づく
っている要素と関わらせて様々な方法で表し他者に
伝えることで,楽曲の特徴や演奏のよさを理解する
ことができる。そこで本研究では,パフォーマンス
課題を「繰り返し型」で位置付けるとともに,繰返
し行った評価を指導に生かしていくこととする。本
研究での題材構成を図3に示す。
時
教材
パ フォーマ ン ス 課 題 及 び
小 課 題 の 位 置 づけ
学習活動
から『だから何なのか?』が見えてくるような問い
でもある。『本質的な問い』を問うことで,個々の
知識やスキルが関連づけられ総合されて『永続的理
解』へと至ることができる。」16)と述べている。西岡
の手順に沿って,本研究における具体を次の通りま
とめる。
児 童 の姿
①
単元の中核に位置する重点目標に見当をつける。
音楽を味わって聴く力
小
題
材
3
小
題
材
2
小
題
材
1
楽
曲
A
○パフォーマンス課題(曲
紹介CMづくりのビデオ)
の完成に向けて,曲紹介
CMの構成をまとめる。
○ルーブリックによる自己
評価をする。
○楽曲の特徴を理解す
る。
○小課題に取り組む。
○ルーブリックによる自己
評価をする。
楽
曲
A
楽
曲
B
楽
曲
A
○楽曲の特徴を理解す
る。
○小課題に取り組む。
○ルーブリックによる自己
評価をする。
○パフォーマンス課題に
向けて見通しをもつ。
○パフォーマンス課題及
びルーブリックを知る。
図3
曲想とその変化などの特徴や音楽を形づくっている要素の関わり合いから,
想像したことや感じ取ったことを言葉
で表すなどして,楽曲の特徴や演奏のよさを理解して聴いている。
○パフォーマンス課題に
基づく各グループが作成
した曲紹介CMの発表を
する。
○ルーブリックによる自己
評価をする。
旋律が重なって繰り返さ
れると,だんだんと力強く
なってくるね。私はこの曲を
聴くと希望がわいてくるよ。
②
「本質的な問い」を明確にする。
◎この楽曲のよさや美しさは,どのように捉えられるのか?
○この楽曲の音楽を形づくっている要素は何か?○この楽曲を聴いて想像した情景や様子,
気持ちはどんなことか?
パ
フ
ォ
ー
マ
ン
ス
課
題
③
小
課
題
低音がくり返される
から,曲を支えて,聴
いていると落ち着くん
だね。
「永続的理解」を明文化する。
楽曲のよさや美しさを理解するためには,音楽を繰り返し聴く中で,音楽を形づくっている要素(旋律,音の重な
り,反復,変化)を聴き取り,感じ取ったことと聴き取ったこととをつないで明らかにし,それらを言葉などで表現
するとよい。
④
パフォーマンス課題のシナリオを作る。
図4
パフォーマンス課題作りの手順に沿った具体
小
課
題
旋律がゆるやかで追
いかけっこをしているよ
うに重なっていたね。だ
から華やかな感じの曲
だな。
また,G.ウイギンズ外(2012)のパフォーマンス
課題のシナリオ作りの6要素を基に,本研究で用い
るパフォーマンス課題について図5にまとめる。
パフォーマンス課題を取り入れた題材構成
シナリオ作りの6要素
児童に提示したパフォーマンス課題
G oal(目的)
何がパフォーマンスのゴール(目的)か?
R ole(役割)
あなたは,音楽キッズ評論家のメ ンバーの一人として曲紹介を
することになります。
役割は何か?
A udience(相手)
幼稚園・保育所から,小学生までの子供たちが対象です。
誰が相手か?
S ituation(状況)
音楽祭でメイン演奏されるパッヘルベルが作曲した「カノンニ
長調」という曲について,曲紹介CMをつくり,曲に興味をもって
音楽祭に来てもらうことができるようにしてください。
想定されている状況は?
曲のよさや面白さを紹介するために,紹介方法をグループで
選び,“みんなに伝えたい!ぼくのわたしのカノン♪”を入れて,曲
紹介CMをつくってください。紹介方法は,図形や体の動き,演奏
等から自由に選んでいいです。
P roduct・Performance(作品)
生み出すべき作品は何か?
S tandard,criteria(評価)
曲紹介CMには,音楽から聴き取った音楽のもとと,あなたが
想像したことや感じ取ったこととをかかわらせて表すようにしてく
ださい。
評価の観点は?
図5
パフォーマンス課題のシナリオ作りの6要素と本研究
で用いるパフォーマンス課題
♪曲紹介CM 構成シート♪~キッズ音楽祭を成功させよう~
5年
組
グループ
こんにちは!今度の夏休みに キッズ音楽祭が行われます。
♪「カノン ニ長調」
みんなが来てくれるように,和庄小学校の5年生が「カノン ニ長調」を紹介するよ!
みんなに伝えたい!
ぼくのわたしのカノン♪
ヨハン・パッヘルベル作曲
この曲は
なところがすてきだよ。
そ れは
(理由が音楽にある)からだよ。
C
M
を
見
て
えっ?!何?!
まあ~!?
ふ~ん!
この演奏は何だろう?
この動きは?この歌声
見るとこんな形?
何だかきれいな動き!
すてきな図形の音楽なん
だねえ!ステキな演奏!
キッズ音楽祭に
行ってみよ~っ
と!
…
先行研究では,香川大学教育学部附属高松小学校
(2010)において,パフォーマンス評価を取り入れ
て授業づくりを行った研究実践がある(4)。附属高松小
学校は成果として,子供のゴールの姿が具体的にな
り指導計画に役立つことや,ルーブリックの共有を
通して何が期待されているかを子供に示すことがで
きる等を挙げている。一方,課題として,ルーブリッ
クによる評価と,一時間の授業ごとの評価の関連を
いかに考えるかという課題を挙げている。パフォー
マンス課題は,様々な知識やスキルを応用して表現
する課題であるが,一時間の授業の評価とはつなが
りにくい。そこで本研究では,図3の,題材を貫く
パフォーマンス課題と,小題材ごとに小課題を設定
して題材を構成する。二つの小課題を設定し,段階
を踏んで知識やスキルの習得状況を把握し,指導に
生かすことで,パフォーマンス課題で表された表現
につなげることができると考える。
(2) パフォーマンス課題及びルーブリックの具体
パフォーマンス課題を作る手順について西岡
(2008)は,図4にある①~④の手続きで作成する
ことを述べている(5)。図4の「本質的な問い」と「永
続的理解」について西岡(2008)は,「『本質的な
問い』は,様々な文脈で活用できるものであり,単
元を越えて繰り返し現れるような問いである。学問
の中核に位置するような問いであり,生活との関連
呉市音楽鑑賞カンパニーから,キッズ音楽祭の来場を呼びかけ
るために,曲紹介CMのビデオをつくって欲しいと依頼がありまし
た。
紹介方法:
紹介方法:
紹介方法:
みなさん,いかがで
したか? キッズ音
楽祭に来てね!
音
楽
の
も
と
CMで使う方法を話し合いましょう。(いくつかを組み合わせてもいいです。)
紹介方法その①:体の動き(
)
紹介方法その②:図形楽譜(
)
図6
紹介方法その③:演奏(
)
その他:
パフォーマンス課題に向けてのワークシート
図5のパフォーマンス課題(曲紹介CMづくり)
を題材の始めに共有するとともに,パフォーマンス
課題となる曲紹介CMの構成ワークシート(図6)
及びルーブリック(表1)も共有した。
表1
体の動き(小課題)
3
ス
ペ
シ
ャ
ル
!
2
合
格
!
予備的ルーブリック
図形楽譜(小課題)
曲紹介CM
情景や様子,気持ちを 情景や様子,気持ちを
体の動きで表し,複数 図形で表し,曲全体の
の音楽のもと(旋律, 変化を複数の 音楽の
音の重なり,反復,変 もと(旋律,音の重な
化など)と関わらせて り,反復,変化など)
他者に伝えている。関 と関わらせて他者に
わらせ方に妥当性が 伝えている。関わらせ
ある。
方に妥当性がある。
曲紹介CMにストー
リーがあり,
複数の音
楽のもと と関わらせ
て,自分にとっての音
楽の価値を見付け,他
者に伝えている。関わ
らせ方に妥当性があ
る。
情景や様子,気持ちを
体の動きで表し,音楽
のもと と関わらせて
他者に伝えている。関
わらせ方に妥当性が
ある。
曲紹介CMにストー
リーがあり,音楽のも
とと関わらせて,
自分
にとっての音楽の価
値を見付け,他者に伝
えている。関わらせ方
に妥当性がある。
情景や様子,気持ちを
図形で表し,音楽のも
と と関わらせて他者
に伝えている。関わら
せ方に妥当性がある。
感じ取ったことを体 感じ取ったことを図 音楽のもと と関わら
1
も の動きで表すことが 形で表すことができ せて,自分にとっての
う できていない。
ていない。
音楽の価値を見付け
少
ていない。
し
Ⅲ
研究の仮説及び検証の視点と方法
1
研究の仮説
想像したことや感じ取ったことを表すためのパフ
ォーマンス課題を取り入れた学習活動を仕組めば,
鑑賞領域において音楽を味わって聴く力を育てるこ
とができるであろう。
2
検証の視点と方法
検証の視点と方法を表2に示す。
表2
検証の視点と方法
視点
検証の視点
視点
1
○パフォーマンス課題を取り入れた学
習活動は,想像したことや感じ取った
ことを表すために有効であったか。
視点
2
○音楽を味わって聴く力を育てること
ができたか
形づくっている要素のうち,旋律,音の重なり,反
復,変化を聴き取りやすい,既習楽曲から用いた。
これらの要素は,本題材の中で扱う要素と同じであ
る。図7に事前テストの一部を示す。
検証の方法
パフォーマンス課題で表
された表現
事前テスト
事後アンケート
事前・事後テスト
事前・事後アンケート
(3)
A→B→Cの作品全体の流れから,この音楽を聴くとどんな感じ
(想像・様子・気持ち)になりますか。またその理由を下の 音楽の
ことばの中から一つ以上使って書き,
自分にとってのおすすめしたい
ところを書いてください。
この曲を聴くと,
(
様子・気持ち)がします。それは,
①
)
感じ(想像・
音楽のことば
〔音色,旋律,反復〕
②
答
え
だからです。
この曲のおすすめは…
③
図7
です。
事前テスト
(2) 事前・事後アンケート
音楽を味わって聴く力についての児童の意識を把
握するため,4段階評定尺度法による事前・事後ア
ンケートを実施した。また事後アンケートには,パ
フォーマンス課題を取り入れた学習活動の有効性に
関する児童の意識を把握するための設問を加えた。
Ⅳ
研究授業について
1
研究授業の内容と計画
○
○
○
期 間 平成27年6月27日~平成27年7月13日
対 象 所属校第5学年(2学級43人)
題材名 楽曲の特徴を感じ取り,よさや面白さ
を味わって聴こう
○ 目 標
楽曲を聴いて想像したことや感じ取ったことを
言葉で表すなどして,楽曲の特徴や演奏のよさを
理解する。
○ 指導計画(全6時間)
時
教材
学習内容
第
一
時
「カノン
ニ長調」
○オーケストラの演奏による「カノンニ長調」の楽曲全体を通し
て聴き,想像した情景や様子などを発表する。○パフォーマンス
課題・ルーブリックを知る。
○楽曲を聴いて体の動きや図形楽譜をつくり,想像したことや感
第 「ファラ
二 ンドール」 じ取ったこととのかかわりを理解する。○パフォーマンス課題に
時
向けて見通しをもつ。
(1) 事前・事後テスト
事前・事後テストでは,音楽を味わって聴く力を
①~③に分け,①想像したことや感じ取ったことを
言葉で表す力,②音楽を形づくっている要素を聴き
取る力,③自分にとっての音楽の価値を見付ける力
について,授業前後でどのように変容したかを把握
するために行った。事前・事後とも同じ問題を用い,
楽曲を聴いて紹介文を書かせる問題を設定した。使
用した楽曲は事前を「動物の謝肉祭」第13曲『白鳥』
サン=サーンス作曲,事後を舞踏組曲「ガイーヌ」
から『剣の舞』ハチャトゥリヤン作曲とし,音楽を
第
三
・
四
時
「カノン
ニ長調」
○パフォーマンス課題・ルーブリックを確認する。○楽曲を聴い
て体の動きや図形楽譜をつくり,楽曲の特徴を理解する。○本時
の課題“今日のカノン”(小課題)に取り組み自己評価すること
で,到達状況を把握する。
第
五
時
「カノン
ニ長調」
○パフォーマンス課題・ルーブリックを確認する。○パフォーマ
ンス課題について,これまでの学習をもとに,楽曲のよさや面白
さを伝えるための曲紹介CMをどのように構成するか考え,練習
する。○自己評価することで,自分の到達状況を把握する。
第
六
時
「カノン
ニ長調」
○グループごとに曲紹介CMを発表する。
○自己評価することで,到達状況を把握する。
2
教材について
本研究で扱う教材は,旋律,音の重なり,反復,
変化を捉えやすい教材である。表3にまとめる。
表3
教材について
表5
楽曲の特徴
楽曲(作曲者)
先行するなめらかな旋律を,一定の間をおいて正確に模倣
「カノンニ長
する手法により構成されている。またそれらを低音の旋律が
調」(パッヘ
反復することにより,より落ち着いた楽曲の雰囲気となって
ルベル)
いる。旋律の変化により演奏のよさを感じることができる。
堂々として迫力のある旋律と,軽やかな旋律は,特徴の違
「ファランド いがはっきりしているため,それぞれの旋律を聴き取りやす
ール」
(ビゼー) い。また,二つの旋律が交互に反復して現れたり重なったり
することで変化をもたらし,楽曲の面白さに気付きやすい。
Ⅴ
「授業で音楽を聴くとき,その音楽の特徴や演奏のよ
さを友達に伝えようとしていますか。」に対する児童の
意識の変容
7
どちらかといえば
そう思う
3
どちらかといえば
そう思わない
0
7
6
6
0
20
事後
事前
そう思う
どちらかといえば
そう思う
どちらかといえば
そう思わない
そう思わない
そう思う
計(人)
そう思わない
計(人)
0
10
3
0
16
5
4
0
15
1
1
0
2
15
8
0
43
研究授業の分析と考察
1
パフォーマンス課題を取り入れた学習活
動は,想像したことや感じ取ったことを表
すために有効であったか
(1) パフォーマンス課題で表された表現や記述
本研究でのパフォーマンス課題を取り入れた学習
活動は,曲紹介CMを発表し合う活動である。曲紹
介CMの表現及び記述を表4の判断基準で分析し,
事前テストの結果との比較を,図8にまとめる。
表4 「曲紹介CM」発表の判断基準
(児童と共有した表1を基に,より具体化したもの)
評価
判 断
A
(十分満足で
きる。)
B
(おおむね満
足できる。)
C
基
準
①想像したことや感じ取ったことの理由を音楽の中から複数
見付けて発表または記述している。それらに妥当性がある。
②想像したことや感じ取ったことを,理由に表出された音楽を
形づくっている要素と,適切に関連付けて紹介している。
③①②を踏まえ,自分にとっての音楽の価値を発表または記述
している。
①想像したことや感じ取ったことの理由を音楽の中から見付
けて発表または記述している。それらに妥当性がある。
②想像したことや感じ取ったことを,理由に表出された音楽を
形づくっている要素と,適切に関連付けて紹介している。
③①②を踏まえ,自分にとっての音楽の価値を発表または記述
している。
Bの①②の判断基準について,一つ以上が到達していない。
(人)
事前テスト
パフォーマンス課題
0%
9
14
20
20%
40%
A
図8
20
21
B
60%
80%
表5から事後では,音楽の特徴や演奏のよさを友
達に伝えようとする意識が高まった児童が増えたこ
とから,曲紹介CMづくりというパフォーマンス課
題を取り入れた学習活動は,音楽を聴いて想像した
ことや感じ取ったことを様々な方法で他者に伝える
ことに有効であり,そのことにより,音楽の特徴や
演奏のよさについての児童の考えに広がりや深まり
をもたらしたと捉えることができる。
(1)(2)から,本研究におけるパフォーマン
ス課題を取り入れた学習活動は,想像したことや感
じ取ったことを表すために有効であったと考える。
(3) 事後アンケート・パフォーマンス課題の表現
及びルーブリックによる分析
事後アンケートによる,パフォーマンス課題に取
り組むことついての児童の意識を図9に,その理由
の記述を図10にまとめる。
パフォーマンス課題(曲紹介CMづくり)に取り組むことは,音楽を聴い
て想像したことや感じ取ったことを表すことにつながりましたか。 (人)
事後
25
13
5
0%
20%
40%
60%
80%
100%
パフォーマンス課題(曲紹介CMづくり)に取り組むことは,自分にとっ
ての音楽のよさを見付けることにつながりましたか。
(人)
事後
27
12
4
0%
20%
40%
60%
80%
100%
2
100%
C
事前テスト・パフォーマンス課題の結果
図8から,95%の児童がパフォーマンス課題の表
現や記述においてA・B評価であった。本研究の題
材構成では小題材ごとに小課題を設定し,小課題の
評価を指導に生かしたことも,パフォーマンス課題
の表現につながったと考える。パフォーマンス課題
を取り入れた学習活動は,想像したことや感じ取っ
たことを表すために有効であったことが分かる。
(2) 事前・事後アンケートによる分析
また,アンケートでの児童の意識の変容を表5に
まとめ,パフォーマンス課題が想像したことや感じ
取ったことを表すために有効であったか分析する。
図9
パフォーマンス課題についての質問結果(事後)
「パフォーマンス課題に取り組むことは,音楽を聴いて想像したことや感
じ取ったことを表すことにつながりましたか。」についての肯定的回答の
理由記述
○音楽をきいて,分かったことなどを人に伝えようとしたから。
○曲紹介CMのビデオをつくるために,じっくりと想像したこと
や感じ取ったことを表すことについて深く考えたから。
「パフォーマンス課題に取り組むことは,自分にとっての音楽のよさを見
付けることにつながりましたか。」についての肯定的回答の理由記述
○だんだんCMづくりをしていると,音楽が好きになったから。
○CMでカノンの特徴等がよく分かり,音楽のもと(せんりつな
ど)によりそうことができたから。
○練習やCMづくりのときに何度も音楽をきいて,その様子や理
由を考えることができたから。
○自分にしかできない見付け方がわかったから。
図10 アンケート設問の回答に対する理由
図9から,パフォーマンス課題についての二つの
質問項目とも,肯定的回答をした児童が,88%,91%
と,ともに高い数値となった。また図10の理由記述
から,パフォーマンス課題を取り入れた学習活動に
より,児童は,想像したことや感じ取ったことを表
したり,音楽のよさを見付けたりする学習活動に意
欲を高め,主体的に取り組むことができたと考える。
また,図9の質問項目と,パフォーマンス課題で
表現された評価とをクロス集計したものを,表6に
まとめる。
(1) 事前・事後テストによる分析
事前・事後テストでは,楽曲を聴いて児童に紹介
文を書かせた。表7は,事前・事後テストの判断基
準である。図12は,表7を基に児童の紹介文を評価
し,事前・事後の比較をグラフに表したものである。
表7
判
A
(十分満
足でき
表6
「パフォーマンス課題に取り組むことは,自分にとっ
ての音楽のよさを見付けることにつながりましたか。」
とパフォーマンス課題の表現のクロス集計
課題
4
3
2
1
A
18
2
0
0
B
8
9
4
0
C
1
1
0
0
計(人)
27
12
4
0
計(人)
20
21
2
43
質問
表6から,質問項目において肯定的回答をした児
童の95%の児童が,パフォーマンス課題においてB
以上の評価であった。このことから児童は,パフォ
ーマンス課題のシナリオに引き込まれて主体的に活
動し,音楽を味わって聴く力を高めることができた
と考える。また,表1の予備的ルーブリックによる
評価の変容を図11にまとめる。
10
第3時
27
16
20
第4時
第6時
0%
20%
6
24
21
40%
60%
100%
A
B
C
図11 ルーブリックによるB評価以上の児童の人数の変容
図11から,題材が進んでいくごとにB評価以上の
児童の人数が増え,C評価の児童が減少しているこ
とが分かる。児童がルーブリックで到達状況を把握
しながら学習を進める一方,指導者は評価を生かし
て指導を改善していった。ルーブリックを共有する
ことは,児童にゴールの姿を明確にもたせて主体的
な活動を引き出すことができるとともに,児童の自
己評価と教師の評価との差違の原因を考え,それら
を生かして指導を改善することができたと考える。
(1)(2)(3)から,パフォーマンス課題を
取り入れた学習活動は,児童が主体的に想像したこ
とや感じ取ったことを表すために有効であったと考
える。
2
る。)
B
(おおむ
ね満足で
きる。)
C
9
事前
事後
0%
断
基
準
①想像したことや感じ取ったことの理由を音楽の中から複数見
付けて記述している。記述に妥当性がある。
②想像したことや感じ取ったことを,理由に表出された音楽を形
づくっている要素と,適切に関連付けて記述している。
③①②を踏まえ自分にとっての音楽の価値を記述している。
①想像したことや感じ取ったことの理由を音楽の中から見付け
て記述している。記述に妥当性がある。
②想像したことや感じ取ったことを,理由に表出された音楽を形
づくっている要素と,適切に関連付けて記述している。
③①②を踏まえ自分にとっての音楽の価値を記述している。
Bの①から③の判断基準について,一つ以上が到達していない。
27
14
20%
7
40%
A
60%
B
20
80%
(人)
9
100%
C
図12 事前・事後テストの結果
図12から,A評価の児童が増加し,C評価の児童
が減少していることから,音楽を味わって聴く力は
高まったといえる。また図13は,事前テストでC評
価から事後はA評価になった児童aの記述である。
(人)
3
2
80%
記述した紹介文を検証する判断基準
評価
音楽を味わって聴く力を育てることがで
きたか
《事前テストの紹介文の記述》
この曲のおすすめは,曲の「なか」の部分が古い感じがして,
すごかったところです。
《事後テストの紹介文の記述》
この曲を聴くと,おどりたくなる気持ちになります。強弱の変
化がはっきりしていて,金管の音色がきれいですっきりするから
です。始めと終わりが激しく,迫力があるところがおすすめです。
※下線は稿者 波線は音楽のよさや美しさ,実線は児童が聴き取った音楽を
形づくっている要素,点線は要素について感じ取ったこと,二重線は自分に
とっての音楽の価値を示している。
図13 C評価からA評価になった児童aの記述の変容
児童aは,事前テストでは,音楽の価値について
が「古い感じがしてすごかった」と記述し,その理
由もない。事後テストでは,「踊りたくなる」の理
由を強弱・音色と二つの要素を知覚して記述し,自
分にとっての音楽の価値についても「始めと終わり
が激しく,迫力があるところ」とつながりが妥当で
ある。
なお,C評価の児童が事後テストにおいて9人い
た。これらの児童は,音楽のよさや美しさに対する
理由が音楽の中から見付けられていなかったり,音
楽の価値の記述に妥当性がなかったりする状況であ
ることから,知覚・感受させる段階から聴き取る要
素を焦点化して指導を行う必要があると考える。
以上のことから,音楽を味わって聴く力は高まっ
たと考える。
(2) 事前・事後アンケートによる分析
図14は,事前・事後アンケートを基に,授業前後
の児童の意識の変容をグラフに表したものである。
【注】
(1) 京都大学大学院教育学研究科E.FORUMホームページ「用語
解説」に詳しい。http://www.educ.kyoto-u.ac.jp/ e-forum
/kenkyu_seika/1402/
(2) G.ウイギンズ/J.マクタイ著
西岡加名恵訳(2012):
『理解をもたらすカリキュラム設計-「逆向き設計」の理
授業で音楽を聴くとき,その音楽の情景や様子を感じ取っていますか。
(人)
事前
13
20
9
1
事後
21
18
4
0%
20%
40%
60%
80%
20%
40%
60%
80%
(3) 西岡加名恵(2008):『「逆向き設計」で確かな学力を
保障する』明治図書 pp.10-13に詳しい。
100%
授業で音楽を聴いて情景や様子を感じ取ったとき,その理由を音楽の中か
ら見付けようとしていますか。
(人)
事前
9
16
16
2
事後
17
22
4
0%
論と方法』日本標準 pp.190-191に詳しい。
(4) 香川大学教育学部附属高松小学校(2010):『活用する
力を育むパフォーマンス評価~パフォーマンス課題とルー
ブリックを生かした単元モデル~』明治図書 pp.12-24に詳
100%
しい。
図14 事前・事後アンケートの結果
事前・事後アンケートを比較すると,事後では,
どちらの質問項目においても肯定的回答をした児童
が増加している。このことから,授業を通して,想
像したことや感じ取ったことを音楽の中から見付け
た理由と関わらせて自分なりの意見や感想を表すこ
とができるようになったという意識が高まったこと
が分かる。(1)(2)から,児童は,音楽を味わ
って聴く力が高まったと考える。
(5) 西岡加名恵(2008):前掲書 pp.17-23に詳しい。
【引用文献】
1)
文部科学省(平成20年a):『小学校学習指導要領』文
部科学省 p.79
2)
文部科学省(平成20年b):『小学校学習指導要領解説
音楽編』教育芸術社 p.21
3)
文部科学省(平成20年c):『中学校学習指導要領解説
音楽編』教育芸術社 p.25
4) 文部科学省(平成20年c):前掲書 p.43
5) 大熊信彦(平成22年):「これからの鑑賞領域の学習指
Ⅵ
研究の成果と課題
導~中教審の答申,新学習指導要領の目標,内容を中心と
して~」『季刊
1
研究の成果
パフォーマンス課題を取り入れた学習活動は,想
像したことや感じ取ったことを表すことに有効であ
り,パフォーマンス課題を取り入れた学習指導の工
夫を行うことにより,音楽を味わって聴く力を育成
できることが明らかになった。
また,ルーブリックを作成し,形成的評価で積極
的に活用したことで,児童の指導に成果がみられた。
音楽鑑賞教育vol.1』音楽鑑賞振興財団
p.25
6) 文部科学省(平成20年b):前掲書 p.63
7) 文部科学省(平成20年b):前掲書 p.63
8) 文部科学省(平成20年b):前掲書 p.64
9)
小島律子(2011):『新訂版
小学校音楽科の学習指導
-生成の原理による授業デザイン-』廣済堂あかつき p.25
10) 大熊信彦(平成22年):前掲書 p.27
11)
西岡加名恵(2007):「『逆向き設計』論にもとづくカ
リキュラム編成-中学校社会科における開発事例-」『教
2
今後の課題
研究授業を通して,音楽のよさや美しさの理由を
音楽の中から見付けられにくい児童もいたことか
ら,想像したことや感じ取ったことを音楽を形づく
っている要素と関わらせて伝え合う活動を取り入れ
たり,それらを整理したりして理解を深める学習を
継続する。また他の題材,領域においても,パフォ
ーマンス課題を取り入れた学習活動を構成,実践し
ていく。さらにルーブリックにおいては,評価を短
時間にでき,児童にフィードバックできるようなル
ーブリックを作成・検討していく。
育目標・評価学会紀要
第17号』 p.17
12) 石井英真(2015):『今求められる学力と学びとは-コ
ンピテンシー・ベースのカリキュラムの光と影-』日本標
準 p.57
13) 石井英真(2015):前掲書 p.60
14) 石井英真(2005):『やわらかアカデミズム・〈わかる〉
シリーズよくわかる教育評価』ミネルヴァ書房 p.48
15) 石井英真(2011):『パフォーマンス評価
思考力・判
断力・表現力を育む授業づくり』ぎょうせい p.24
16) 西岡加名恵(2008):前掲書 p.20