都市防災対策とビッグデータ(大島氏)(pdf形式:2.6MB)

都市防災対策とビッグデータ
平成27年1月
国土交通省 都市局 都市安全課
都市防災対策企画室 課長補佐 大島 敦仁
Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism
目次
•  主な過去の震災と今後想定される地震
•  都市防災対策の概要
•  ビッグデータの活用可能性
•  国土交通省都市局における調査検討
主な過去の震災と今後想定される地震
関東大震災(1923年)
阪神・淡路大震災(1995年)
東日本大震災(2011年)
・死者:約14万人(火災が9割)
・死者:約6,400人(倒壊が8割)
・死者:約1.9万人(津波が9割)
・全半壊:約25万戸
・全半壊:約21万戸
・全半壊:約40万戸
・焼失市街地:約3,500ha(約44%)
・焼失市街地:約7,500戸
・帰宅困難者:約515万人(首都圏)
・建物倒壊による道路閉塞
・広範囲で液状化・滑動崩落被害
被災後の様子(東京都京橋)
被災後の様子(神戸市)
被災後の様子(気仙沼市)
首都直下地震(被害想定(※))
南海トラフ地震(被害想定(※))
・死者 :最大約2.3万人(火災7割、倒壊3割)
・死者 :最大約32.3万人(津波7割、倒壊3割)
・要救助者 :最大約7.2万人(揺れ)
・要救助者 :最大約34万人 (揺れ9割、津波1割)
・全壊・焼失:最大約61万棟(火災7割、揺れ3割)
・全壊・焼失:最大約239万棟(揺れ6割、火災3割他)
・帰宅困難者:最大約800万人
・帰宅困難者:最大約380万人(京阪神7割、中京3割)
・避難者 :最大約720万人(うち避難所4割)
・避難者 :最大約950万人(うち避難所5割)
・被害額 :約96兆円
・被害額 :約220兆円
※出典:「首都直下地震の被害想定と対策について(中央防災会議首都直下地震対策検討WG)」(平成25年12月19日), 「南海トラフ巨大地震の被害想定
について(第一次報告)(中央防災会議南海トラフ巨大地震対策検討WG)」(平成24年8月29日)において想定する被害が最大となるケース
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都市防災対策の概要①
1.密集市街地の改善整備
全国に地震時等に著しく危険な密集市街地が計約6,000ha存
在。(平成32年までに概ね解消することが目標)
【主な取組み】
○避難地・避難路の整備 ○建物の不燃化促進
○市街地の面的整備 ○都市公園の整備・活用
東京都の例(1,683ha)
密集市街地(墨田区京島)
2.宅地の防災対策
東日本大震災では、関東や東北の広範囲で、宅地盛土の
崩壊や擁壁の損壊、液状化などの宅地被害が発生。
【主な取組み】
○大規模盛土造成地の滑動崩落防止対策 ○宅地の液状化防止対策
宅地の滑動崩落
(仙台市青葉区)
液状化(浦安市舞浜)
2
都市防災対策の概要②
3.避難対策
広範囲にわたる建物倒壊、市街地大火、津波などが想定
されるため、迅速な避難が不可欠。
津波避難タワー
(高知県四万十市)
津波防災マップ
(大阪府貝塚市)
【主な取組み】
○避難路・避難場所の整備 ○都市公園の整備・活用
○ハザードマップ作成 ○避難訓練 ○備蓄倉庫・耐震性貯水槽の整備
地域避難訓練
(東京都千代田区)
4.復興まちづくり
首都中枢機能が被害を受ける首都直下地震や被害が広範囲に
及ぶ南海トラフ地震では、迅速な復興まちづくりが不可欠。
自治体の復興まち
づくり計画策定
高台移転(宮古市田老地区) 区画整理(女川町中心部地区)
【主な取組み】
○復興まちづくり事業
・土地区画整理事業
・防災集団移転促進事業
・被災宅地の復旧など
○自治体の復興まちづくり計画作
成支援
3
都市防災対策の概要③
5.都市の拠点となる地域での防災対策
都心部の主要駅周辺や地下街等においては、多数の避
難者や帰宅困難者の発生が想定され、避難・誘導や医療
救護機能の確保など、発災時の安全確保が必要。
【主な取組み】
○地下街における安全確保 ○主要駅周辺等における安全確保
○エネルギーの面的利用の推進
地下街の
避難訓練
の様子
東日本大震災に
おける帰宅困
難者の様子(
新宿)
把握が難しい来街者も含
む都心部の滞在者の数や
分布の把握が可能となれ
ば、実態を踏まえた的確な
対応が可能に
<民間事業者による取組事例>
大手町フィナンシャルシティ
(東京都千代田区)
○ 大規模民間都市開発にあわせて、発災時の避難
者・帰宅困難者の受入れを可能とする施設・設備
を整備。
<主な施設・設備>
・アトリウム空間(屋内約1,300㎡)
・公開空地(屋外約950㎡)
・防災備蓄倉庫(地階約200㎡)
○ 施設内の診療所や調剤薬局と「災害対策に係る
基本協定」を締結し、要救護者も含めた周辺の就
業者・居住者、来街者の受入れを想定。
備蓄倉庫
アトリウム空間
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ビッグデータの活用可能性①(メリット)
これまでの対応
○パーソントリップ調査のデータを活用して滞在者数や分布、徒歩帰宅者のシミュレーションを実施。
<徒歩帰宅者シミュレーションの例>
徒歩帰宅者の帰宅方
面別の発生量の推計
(PT調査ベース)
施策効果の検証(帰宅抑制や安否情報の提供等)
ボトルネックとなる箇所の把握(歩行安全性の検証)
ビッグデータ活用のメリット
<特徴>
○GPSなどの位置情報は、短時間ごとの人や車の動きを長期間、広範囲にわたって蓄積
○データの収集が継続的に行われ、その集計が容易
<メリット>
○最新データの入手が可能(PT調査は概ね10年に一度)
○都市圏外からの来訪者も把握が可能(PT調査は都市圏内のみ)
○調査日以外の任意の日のデータが入手可能(PT調査は特定の日のデータのみ)
○移動経路の把握が可能(PT調査は起点・終点等のみ把握可能)
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ビッグデータの活用可能性②(全体像)
○リアルタイムに情報を集計・分析することにより、様々なビッグデータの事後対策(避難誘導や負傷
者救助、被災・交通状況の把握など)への活用が想定される。
○特に携帯電話等による人の位置情報については、事前対策(帰宅困難者の推計、帰宅者の安全確
保、避難スペースの確保等)への活用が想定される。
事前対策
大分類 中分類
人
小分類
○
○
幅広い事後対策への活用
交通系ICカード
○
○
携帯電話GPSデータ
○
○
○
○
入出館ICカード
車両
空間情報
広域シミュレーションの
精度向上等への活用
GPS(プローブ情報等)
○
車(ETC等)
○
○
○
○
○
○
建築物 GNSS(建物の変位情報等)
被災情報
一斉帰宅 帰宅者の 避難スペー 避難誘導や 被災・交通 被災ニー
の抑制 安全確保 スの確保 負傷者救助 状況の把握 ズの把握
携帯電話基地局データ
屋内測位端末(IMES等)
位置情報
事後対策
主要駅周辺等のミクロな
滞在状況の把握、避難ス
ペース計画への活用
マスメディア
ソーシャルメディア
現場職員や登録者の報告
○
○
○
○
遠隔システム(監視カメラ等)
検索エンジン(グーグル等)
全ての対策の基盤情報とし
ての活用
取引データ(POSシステム等)
○
地理空間情報システム
○
○
○
○
○
○ 6
ビッグデータの活用可能性③(帰宅困難者・徒歩帰宅者の推計)
検討状況
○パーソントリップ調査データの他、携帯電話の基地局情報を活用し、帰宅困難者の推計や広域徒歩
帰宅者のシミュレーションが実施されている。
埼玉県の例
埼玉県HP(帰宅困難者推計調査結果について)
(3)埼玉県外にいる埼玉県民の人数(23区内抜粋/単位:万人/平日12時)
<帰宅困難者の推計>
○平常期、長期休暇期の平休日の5時、
12時、18時のデータを活用し、以下を推
計。
(1)埼玉県内で発生する帰宅困難者数 (2)県内主要5駅の帰宅困難者数 (3)埼玉県外にいる埼玉県民の人数
○一時滞在施設の必要数等、今後必要と
なる対策の検証に活用。
(1)埼玉県内で発生する帰宅困難者数(居住地別/平日12時)
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ビッグデータの活用可能性④(滞在者の属性や分布状況の把握)
検討の視点
○携帯電話のGPSによる位置情報を活用し、大都市都心部の滞在者数や分布状況を時間帯ごとに
把握することにより、効率的な避難スペース確保に役立てられないか。
・特に、滞在者の属性(来街者、勤務者、住民の別)を把握することにより、来街者向けに優先的に
確保することが必要な一時滞在施設の規模を把握できないか。
背景
○首都直下地震では約800万人、南海トラフ
巨大地震では約1,060万人と、膨大な数の
帰宅困難者の発生が想定されており、一時
滞在施設の確保だけでなく、一斉帰宅の抑
制が不可欠。
○例えば、発災時にとどまる場所のある勤務者
については一斉帰宅の抑制を図りつつ、滞在
場所がないと想定される来街者向けにまず
は一時滞在施設の確保を図るなど、実態を
踏まえた対策の推進が求められている。
<一時滞在施設の必要量の把握イメージ>
来街者
(買物客・観光客)
県内
都市圏内等
区内
市町村内
勤務者
(通学者も含む)
住民
一時滞在
施設の確保
一斉帰宅の
抑制
避難所
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ビッグデータの活用可能性⑤(災害時の避難行動の分析)
検討の視点
○携帯電話のGPSによる位置情報を活用して、被災時の滞在者の行動パターンや混雑度を把握す
ることにより、効率的な避難スペースの確保・整備や避難誘導に役立てられないか。
背景
○大規模地震の発災時には、局所的に帰宅
困難者や屋外避難者、負傷者が集中し、
逃げ惑いや混乱による被害が想定される。
○大都市都心部においては、これらの膨大
な屋外避難者や負傷者の全てを受入れ可
能なスペースを公共が確保することは困
難。
○例えば、避難スペース確保が必要な地区
を指定し、民間事業者の取組を誘導する
など、計画的な取組が求められている。
被災時の行動パターンイメージ一時滞在施設
避難スペース
①帰宅
②帰宅
<安全確認後>
<一時避難後>
④帰宅困難
<避難>
駅
③帰宅
<駅等滞留・うろつき後>
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ビッグデータの活用可能性⑥(迅速な被災状況把握や情報伝達)
検討の視点
○ビッグデータを活用して、発災時のリアルタイムな被災状況の把握・情報伝達や避難シミュレーショ
ンの高度化などに役立てられないか。
・電子防災情報システムの整備など、リアルタイムな被災情報を集約・分析・共有する取組みが進
められているが、ツイッターなどビッグデータの活用は考えられるか。
・リアルタイムな情報を最も必要とする避難者や被災想定区域の住民等にどのように迅速に情報伝
達できるか。
背景
<豪雨災害等への対応>
広島の土砂災害など大雨や台風で局地化・激甚化する災害への対応として、
災害が想定される区域の住民等へ災害情報を迅速に伝達することが求められている。
防災行政無線
携帯電話のエリアメール
<広島豪雨による土砂災害>
<情報伝達手段>
<電子防災情報システムの整備>
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国土交通省都市局における調査検討①(概要)
○主に大都市部を想定して、GPSによる位置情報を活用した効果的な避難スペースの計画など
ビッグデータの都市防災対策への活用方策を検討し、とりまとめを行う。
<都市防災対策の新たな課題に関する検討委員会>
メンバー
○委員
都市計画、防災まちづくり、シミュレー
ション等を専門とする学識経験者や地
方公共団体より構成。
○事務局
国土交通省都市局都市安全課
(日建設計総合研究所(株)・ゼンリン
データコム(株))
○開催経緯
第1回 平成26年10月
第2回 12月
※平成26年度中に計4回開催予定。
ビッグデータに関する検討内容
大都市部の避難スペース計画への活用
(ケーススタディ)
○非居住者の滞留状況の分析
○被災時の避難・滞留状況の分析 その他の活用状況・可能性の把握
(ヒアリング)
○活用状況のヒアリング
○活用可能性の検討
地方公共団体向けの
参考資料としてとりまとめ
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国土交通省都市局における調査検討②(ケーススタディ)
○地域特性や避難スペースの状況の異なる主要駅周辺3地域について、滞在者の属性別の分布
状況や、東日本大震災当時の行動パターンや混雑度分析などを行い、避難スペースの効率的
な整備・確保に役立てられないか検討。
検討対象地域
東京駅周辺地域
池袋駅周辺地域
仙台駅周辺地域
※いずれも駅周辺2km四方のエリアが対象。
検討内容
①時間帯・属性別の帰宅困難者の推計
時間帯(2時間毎)別に250mメッ
シュごとの滞在者数を居住者/在
勤者等/来街者に区分して推計
<帰宅困難者分析イメージ>
エリア内
滞在合計
対象
エリア内
人数
帰宅困難者
来街者
勤務者
時間
24時
発災
時系列での滞留者分析(イメージ)
②発災時の行動パターンや混雑度分析
時間帯(1時間毎)別に滞留者の
メッシュ間での移動や、駅周辺の2
km四方の範囲を通過する者の数
を推計
1
◆メッシュ間O D データ(
流出入)
2
エリア外
3
対象エリア内々の
メッシュ間移動人数
4
5
対象エリア内外の
メッシュ間移動人数
6
※エリア外はメッシュ集計せず一本化
7
8
A
B
C
D
E
F
G
H
時系列での行動パターン分析(イメージ)
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