シニア世代の場所への愛着

~代官山に居住する高齢者の場所に対する愛着~
國學院大學経済学部 3 年 三上優樹・坂元かおり
問題意識と調査・分析の方法
代官山は住宅地、商業地、業務地域とさまざまな顔を持つ。だが、テレビや雑誌を通じて
発信されるのはおもに商業地としての代官山である。そこで筆者らは住民、とりわけシニア
世代の住民が代官山のどんな場所に愛着を持って暮らしているのかに注目した。なぜなら、
場所に対する愛着は高齢者に安心感や主観的な満足感を与えるという研究結果があり、愛
着の構造が明らかになれば、高齢者が住み慣れた場所で安心して、満足しながら住み続ける
ことができる街をつくるためのヒントとなるかもしれないからだ。
調査は 10 年以上1代官山に居住(勤務)する高齢者を対象として、聞き取り調査に基づく
因子探索分析2とメンタルマップ調査に基づくメンタルマップ分析3を用いた。また、シニア
世代の住民の特徴を明らかにするために、若者・来街者を代表して田原ゼミ生 9 人につい
ても同様のメンタルマップ調査を実施し、比較を行った。
調査結果の概要
① 強い愛着を持つ場所の違い
高齢者:ex.「旧山手通り」
「西郷山公園」など・・・長期間変わらずに存在する場所
来街者:ex.「蔦屋書店」
「ラフェンテ」など店舗・・時間とともに変化する場所
② 場所に対する愛着の源泉の違い
高齢者:原風景(心の奥にある原初の風景)や思い出
来街者:メディアが発信した代官山イメージ
③ 「まちづくり」に関わる活動と場所に対する愛着の相乗効果
「まちづくり」活動は住民に愛着のある場所を意識的に残す役割がある。また、活動を
通じて場所をより深く知ることにもなり、仲間との思い出を重ねることで、さらなる場
所への愛着を育む。
高齢者と若者のメンタルマップ(まとめ)
高齢者
若者
出典:2014ZENRINDataCom をもとに筆者作成
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田原裕子・荒井良雄・川口太郎(1996)「大都市圏郊外地域に居住する高齢者の生活空間と定住意志―埼
玉県越谷市の事例―」人文地理 48-3、102-105 頁。
2 本調査では具体的な文章データ(お話)から抽象的なキーワード(愛着の形成要因)を抽出する分析。
3 頭の中にある地図を描いてもらい、その地図から、目的地までの経路の長さや目印となる場所を分析。
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