5.4 原子核の変形振動 原子核は,完全な球形ではなく変形している可能性がある。したがって,基底状態で球形の核でも,励起状 態では変形しているかもしれない。 重心から核の表面までの距離を R(θ, φ)とおき,R(θ, φ)と球の半径 R0 の差を球関数で展開すると, R(θ, φ)= R0 {1 + ∑ αlm ∗ Ylm (θ, φ)} (1) l,m |αlm | ≪ 1 R(θ, φ)は実数であるから, Ylm ∗ (θ, φ) = (−1)m Yl−m (θ, φ) より αl−m = (−1)m αlm ∗ よって,αlm ∗ を時間の関数とすると,αlm ∗ (t) はある角振動数の単振動になると予想される。m は z 軸のと り方に依存するが,角振動数 ωl は z 軸に依存しないので,ωl は m に依存しない。 • 例:m = 0 の場合の δR/R0 ≡ {R(θ) − R0 }/R0 (5-1 表,5-12 図) また,基底状態での核の変形(§5.1)も同様に表すことができる。 R(θ, φ)= R0 {1 + ∑ αlm ∗ Ylm (θ′ , φ′ )} (2) l,m ここで,θ′ , φ′ は変形の対称軸を z 軸にとった場合の極角,方位角である。 αlm ∗ (t) が核表面の単振動であるとすると,エネルギーは Hlm = 1 1 Bl |α̇lm |2 + Cl |αlm |2 2 2 (4) Bl : 質量 Cl : 弾性定数 に対応 このとき, √ ωl = となる。 1 Cl Bl (5) ◦Bl ,Cl の理論的計算:Fiügge による流体モデルでの計算 原子核が非圧縮性で粘性のない流体の小滴であるとすると,連続の式より ∂ρ + div ρυ = 0 ∂t (6) div υ = 0 (7) 密度が一定であるから,第 1 項は消え, となるので,スカラー関数 Φ (流体ポテンシャル)を υ = gradΦ(r , θ, φ) (8) ∆Φ = 0 (9) と定義すると となる。流体小球の自由表面では運動速度が表面に垂直になるから,(1) を用いて, υr = ∑ ∂Φ ∂R(θ, φ) ∗ = = R0 α̇lm Ylm (θ, φ) ∂r ∂t (r = R0 ) (10) l,m 以下では,振動する流体小球の運動エネルギー,ポテンシャルエネルギーを考える。 • 運動エネルギー 運動エネルギーを K とすると, K= 1 ρ 2 ∫ υ 2 dxdydz = 1 ρ 2 ∫ |gradΦ|2 dxdydz (11) である。この K を αlm で表す。(9) より,Φ は球面調和関数で展開できるので, Φ= ∑∑ ( blm m l r R0 )l Ylm (θ, φ) (12) とかける。(10) に代入すると, blm = R0 2 αlm ˙ ∗ l (13) が得られる。また,(11) を極座標で表すと ρ 2 ∫ ∫ ∫ {( ∂Φ ∂r )2 1 + 2 r ( ∂Φ ∂θ )2 1 + 2 2 r sin θ ( ∂Φ ∂ϕ )2 } r2 dr sin θ dθdϕ (14) (14) に (12) を代入すると,付録 14(i) の計算により, K= 1∑ Bl |α̇lm |2 2 l,m Bl = ρR0 5 l 2 (15) • ポテンシャルエネルギー ポテンシャルエネルギーは,変形に伴う表面エネルギーと静電エネルギーの変化の和として考えられる。ま ず,表面エネルギーの変化を求める。(1) を R(θ, φ) = R0 + ζ(θ, φ) ∑ ζ(θ, φ) = R0 αlm ∗ Ylm (θ, φ) (16) l,m とおく。変形による液滴の表面積の増加は,付録 14(ii) より, 1 2 ∫ ∫ {( ∂ζ ∂θ )2 1 + sin2 θ ( ∂Φ ∂θ } )2 − 2ζ 2 sin θ dθdϕ (17) これに表面張力 σ をかけたものが表面エネルギーの変化になる。付録 14(iii) より, ∑ 1 σR0 2 (l − 1)(l + 2)|αlm |2 2 (18) l,m 表面張力 σ については,Weizsäcker − Bethe の質量公式 (§2.2(1)) の表面エネルギー項と 4πR0 σ = a2 A2/3 (19) という関係があり,これから σ を計算できる。 液滴の静電エネルギー Vc は,電荷密度を ρe (r),静電ポテンシャルを u(r) とおくと, 1 Vc = 2 ∫ ρe (r)u(r)dr (20) となる。変形が無い場合,ρe (r) は eZ 4π R0 3 ρe (r) = 3 0 r < R0 r > R0 となる。変形によって液滴表面の ρe (r) が変化し,Vc が変化する。その変化分 δVc は付録 14(iv) より, δVc = − 3e2 Z 2 ∑ l − 1 |αlm |2 4πR0 2l + 1 (21) l,m 結局,液滴の変形によるポテンシャルエネルギーの変化は (18)(21) の和になり, V = 1∑ Cl |αlm |2 2 (22) 3e2 Z 2 l − 1 1 σR0 2 (l − 1)(l + 2) − 2 4πR0 2l + 1 (23) lm Cl = 以上より,流体モデルによる核表面の単振動エネルギーは (15)(22) の和として 1 1 Bl |α̇lm |2 + Cl |αlm |2 2 2 ρR0 5 Bl = l 3e2 Z 2 l − 1 1 Cl = σR0 2 (l − 1)(l + 2) − 2 4πR0 2l + 1 Hlm = となる。 3 ◦ 量子化 表面振動の問題に対して,正準量子化をおこなう。αlm に共役な運動量 πlm = ∂Hlm ∗ = Bl α̇lm ∂ α̇lm (24) を考え,αlm と πlm との間に,交換関係 [αlm , παm ] = iℏ (25) をおく。xそして ( )1/2 { } ω l Bl i qlm = (−1)m πl −m αlm − 2ℏ ωl Bl ( )1/2 { } ωl Bl i qlm = πlm (−1)m αl −m + 2ℏ ωl Bl ∗ (26) によって振動量子の生成消滅演算子を定義すると ( Hlm = ℏωl qlm ∗ 1 qlm + 2 ) (27) とかける。(25)(26) から [qlm , qlm ∗ ] = 1 (28) nlm = qlm ∗ qlm (29) より,個数演算子 nlm を とおくと,これは 0 以上の整数の固有値をもつ。l ̸= m のとき,αlm ,πlm ,qim ,qlm ∗ などの変量はすべて可 換である。 以上より,基底状態で球形が安定な形であるような原子核には等間隔 ℏωl で並んだ振動準位が存在すること が予想される。(5-13 図) 液体モデルで考えると,l,m を決めたときの表面の変形は 5-12 図のような凹凸の形に対応する。このよ うな凹凸を定常波ではなく進行波と考えると、この進行波には l,m に依存した以下のような角運動量が付随 する。 ∫∫∫ (yυz − zυy )dr Lx = ρ ∫∫∫ Ly = ρ (zυx − xυz )dr ∫∫∫ Lz = ρ (xυy − yυx )dr 4 (30) υ に (8) を代入すると、この積分には表面の球形からのずれの部分からの寄与が生じることが分かる。 L± = Lx ± iLy と Lz とを計算すると、付録 14(vi) より、 L+ = −i ∑√ (l − m)(l + m + 1)πlm αl m+1 l,m L− = −i ∑√ (l + m)(l − m + 1)πlm αl m−1 l,m Lz = i ∑ mπlm αlm l,m (31) これらの演算子はよく知られた角運動量の交換関係 [L+ , L− ] = 2ℏLz , [L+ , Lz ] = −ℏL+ , [L− , Lz ] = ℏL− (32) を満たす。(26) を αlm ,πlm について解くと ( )2 ℏ αlm = {qlm ∗ + (−1)m ql −m } 2ωl Bl ( )2 ℏωl Bl πlm = −i {qlm − (−1)m ql −m ∗ } 2 (33) となり,これらを用いて Lz を表すと Lz = ∑ mℏqlm ∗ qlm = ∑ mℏnlm (34) l,m l,m よって、(l, m) 型の 1 個の振動量子のもつ角運動量の固有値について、 z 成分 Lz:mℏ (m = l, l − 1, …, −l + 1, l) 大きさの 2 乗 L2 :l(l + 1)ℏ2 となることがわかる。 • 例:l=2 の振動 振動準位は 5-13 図のように ℏω2 の間隔に並ぶ。各準位の角運動量は • 基底状態 :0 • 第 1 励起準位:2 • 第 2 励起準位:0,2,4 となる。第 2 励起準位は 2 個の粒子の角運動量 2 が合成され,3 つの準位が縮退している。合成角運動量に 1 と 3 が現れないのは、振動粒子が Bose 粒子(互いに区別できない粒子)の性質を持つためである。Lz の固有 値の合成表を 5-2 表のように作ると,(a) のように分類すれば 0∼4 の合成角運動量が現れる。しかし,振動粒 子は Boson であるから,正しくは (b) のように分類できる。その結果,合成角運動量は 4,2,0 になる。 5 l = 2 型の変形は中心に対して反転対称である。(1) より, R(θ, φ) = R0 {1 + ∑ α2m ∗ Y2m (θ, φ)} (35) m であるから, Y2m (π − θ, φ + π) = Y2m (θ, φ) (36) R(π − θ, φ + π) = R(θ, φ) (37) より, よって,l = 2 型の振動準位の parity は正である。5-14 図はこれらの予測に基づいた振動準位 (a) と実験デー タ (b) を表したものである。実験データでは 0+ ,2+ ,4+ の縮退が解けて 3 つの準位に分かれている。これは 理論とは異なり非調和性があり,それが小さい摂動として働いていると考えられる。 振動準位の集団運動的な性格は,準位間の電磁的遷移確率の大きさに最も著しく現れる。2+ → 0+ では電 気四重極型の遷移が起こり,換算遷移確率(§ 5.3(11))は 1 陽子の遷移の場合の 10∼数 10 倍になっている。 同様に換算遷移確率を流体モデルで考える。流体モデルで (l , m) 型の振動に参加する電荷は表面層にある もので, Ze ∼ = 4π R0 3 3 (∫ ) ∗ R0 |αlm Ylm (θ, ϕ)|R0 dΩ 2 ∼ = Ze|αlm ∗ | (33) より |αlm ∗ | ∼ = (ℏ/(ωl Bl ))1/2 であるから,振動に参加する電荷は ∼ = Ze ( ℏ ω l Bl )1/2 となる。換算遷移確率は電荷の 2 乗に比例する (付録 13) ので,1 陽子の振動の場合との換算遷移確率の比は Z2 ℏ ωl Bl • 例:106 46 Pd(5-14 図) ℏω2 ∼ = 0.5 MeV R0 5 B2 = ρ = MA 2 ( 4πR0 3 3 6 )−1 R0 5 3M AR0 2 = 2 8π よって,換算遷移確率の比は R0 = 1.2A1/3 fm ℏ ℏ2 c2 Z2 = Z2 3 ω2 B2 ℏω2 M c2 AR0 2 8π 40000 ∼ = 2500 1 0.5 × × 1000 × 2000 10 ∼ = 103 となるが、これは実測値より 1 桁大きい。この傾向は Pd だけでなく,振動準位をもつ全ての核に見られる。 流体モデルでは Bl の値が実際より 1,2 桁小さく出る。 Bl と Cl は流体モデルを使わず,換算遷移確率と振動準位の間隔 ℏωl の実験データを用いて計算することが できる。B2 , C2 の核による変動の様子は 5-15 図のように,滑らかではない。B2 は前述のように,液体モデル よりも 10∼数 10 倍大きい。 液体モデルの限界 液体モデルは,定性的には表面運動をよく記述できるが,定量的には限界を示している。 1. l = 2 の第 2 励起準位の 0+ , 2+ , 4+ の 3 つの準位が揃って見つからないことが多い。 2. 液体モデルでは第 2 励起 2+ から基底状態 0+ への E2 型遷移は完全に禁止されるが,実際はこの遷移 は起きる。 3. 第 1 励起準位 2+ は流体モデルでは電気四重極モーメントを持たないが,実際は持っていることがある。 これまで安定な形が球形であるような核の表面振動について述べてきたが,つり合いの形が球形から歪んで 回転楕円体になっている核でも,回転準位よりやや高いエネルギーの位置に表面振動の準位が出る。そのよう な核では,2 種類の表面振動(5-16 図)が見られる。 1. β 型振動:表面の形が対称軸のまわりの軸対称性を保ったままで振動する (a) 2. γ 型振動:対称軸方向の長さは変わらず,対称軸に垂直に切った断面が円形のまわりに振動する (b) どちらの振動も核の体積は変わらない。5-17 図は 238 92 U での回転準位と振動準位の関係位置である。 7 8 付録 14 (i) 運動エネルギー ρ 2 ∫ ∫ ∫ {( ∂Φ ∂r )2 1 + 2 r ( ∂Φ ∂θ )2 1 + 2 2 r sin θ ( ∂Φ ∂φ )2 } r2 dr sin θ dθdφ (1) の計算 Φ= ∑∑ l ( blm m r R0 )l Ylm (θ, φ) (2) を微分して ( l−1 ) ∂Φ ∑ r = lblm Ylm ∂r R0 l l,m ( )l ∂Φ ∑ r ∂Ylm = blm ∂θ R0 ∂θ l,m ( ) l ∂Φ ∑ r = imblm Ylm ∂φ R0 l,m (2)′ (2)’ を (1) に代入すると 右辺第 1 項: ∫ R0 l′ −1 l−1 ∫ r r ρ ∑∑ ′ ∗ 2 ′ ′ l lbl m blm r dr Yl′ ,m′ ∗ Ylm sin θ dθ dφ l′ R l 2 ′ ′ R 0 0 0 l ,m l,m ∫ R0 ( )2l ρ∑ 2 r = l |blm |2 dr 2 R 0 0 (3) l,m 右辺第 2 項: ∫ R0 ( )l′ ( )l ∫ ρ ∑∑ r r ∂Yl′ ,m′ ∗ ∂Ylm ∗ bl′ m′ blm dr sin θ dθ dφ 2 ′ ′ R0 R0 ∂θ ∂θ 0 (4) ∫ R0 ( )l′ ( )l ∫ r r Yl′ ,m′ ∗ Ylm ρ ∑∑ ′ ∗ ′ ′ m mbl m blm dr sin θ dθ dφ 2 ′ ′ R0 R0 sin2 θ 0 l ,m l,m (5) l ,m l,m 右辺第 3 項: (5) の積分は,Ylm の満たす微分方程式 1 ∂ sin θ ∂θ ( ) ∂Ylm m2 sin θ − Ylm + l(l + 1)Ylm = 0 ∂θ sin2 θ を用いて変形すると ∫ Yl′ ,m′ ∗ 1 Ylm sin θ dθ dφ sin2 θ { ( ) } ∫ 1 ∂ 1 ∂Ylm ∗ = Yl′ ,m′ sin θ + l(l + 1)Ylm sin θ dθ dφ m2 sin θ ∂θ ∂θ [ ]π ∫ l(l + 1) 1 ∂Ylm ∗ ′ ′ = δ(l, l )δ(m, m ) + 2 dφ Yl′ m′ sin θ m2 m ∂θ 0 ∫ 1 ∂Yl′ ,m′ ∗ ∂Ylm sin θ dθ dφ − 2 m ∂θ ∂θ 9 (6) となるが,この第 2 項は sin0 = sinπ = 0 より 0 であるから, ρ∑ l(l + 1)|blm |2 2 l,m ∫ R0 ( 0 r R0 )2l r2 dr ∫ R0 ( )l′ ( )l ∫ ρ ∑∑ ∂Yl′ ,m′ ∗ ∂Ylm r r ∗ − dr sin θ dθ dφ bl′ m′ blm 2 ′ ′ R0 R0 ∂θ ∂θ 0 (7) l ,m l,m ここで,第 2 項には本来 mm′ /m2 という因子がつくが, ∫ ∫ 2π ∂Yl′ ,m′ ∗ ∂Ylm exp{i(m − m′ )φ}dφ sin θ dθ dφ ∝ ∂θ ∂θ 0 ∝ δm,m′ より,m = m′ のときしか残らないので,この因子を 1 とした。このとき,(7) の第 2 項は (4) と打ち消し合 う。以上をまとめると, K= ρ∑ 2 {l + l(l + 1)}|blm |2 2 ∫ l,m R0 ( 0 r R0 )2l dr 1 R0 2l+1 ρ∑ 2 {l + l(l + 1)}|blm |2 2l 2 R0 2l + 1 l,m ρ ∑ = R0 l|blm |2 2 = (8) l,m ここで,§5.4 の (13) bi m = R0 2 α̇l m∗ l を (8) に代入すると, K= ∑1 1 ρR0 5 |α̇lm |2 2 l l,m となる。 (vi) 変形振動の角運動量の計算 §5.4(30) ∫ Lx = ρ (yυz − zυy )dr ∫ Ly = ρ (zυx − xυz )dr ∫ Lz = ρ (xυy − yυx )dr が §5.4(31) のようにかけることを示す。 速度ポテンシャル Φ を用いて (24) を極座標で表すと, ) ∫ ( ∂Φ ∂Φ − cos θ r2 drsin θ dθdφ sin θ sin φ ∂z ∂y ) ∫ ( ∂Φ ∂Φ Ly = ρ cos θ − sin θ cos φ r2 drsin θ dθdφ ∂x ∂z ) ∫ ( ∂Φ ∂Φ Lz = ρ sin θ cos φ − sin θ sin φ r2 drsin θ dθdφ ∂y ∂x Lx = ρ 10 (24) ここで ∂Φ ∂Φ 1 ∂Φ sin φ ∂Φ = sin θ cos φ + cos θ cos φ − ∂x ∂r r ∂θ rsin θ ∂φ ∂Φ ∂Φ 1 ∂Φ cos φ ∂Φ = sin θ sin φ + cos θ sin φ + ∂y ∂r r ∂θ rsin θ ∂φ ∂Φ ∂Φ 1 ∂Φ = cos θ − sin θ ∂z ∂r r ∂θ を代入し,L± = Lx ± iLy を定義すると, ∫ ( ) ∂Φ ∂Φ L+ = ρ i − cot θ eiφ dr ∂θ ∂φ ) ∫ ( ∂Φ ∂Φ L− = ρ −i − cot θ e−iφ dr ∂θ ∂φ ∫ ∂Φ Lz = ρ dr ∂φ (25) これらに (2),(2)’ を代入すると ∫∫ ( ) ∫ R0 +ζ ( )2l r ∂Ylm iφ − m cot θYlm e sin θ dθdφ r2 dr L+ = iρ blm ∂θ R0 0 l,m ) ∫∫ ( ∫ R0 +ζ ( )2l ∑ ∂Ylm r −iφ blm − L− = iρ − m cot θYlm e sin θ dθdφ r2 dr ∂θ R 0 0 l,m ∫∫ ∫ R0 +ζ ( )2l ∑ r Lz = iρ blm m Ylm sin θdθ dφ r2 dr R 0 0 ∑ (26) l,m r についての積分の部分は ∫ R0 +ζ ( 0 r R0 )2l ∫ R0 2 r dr = 0 ( r R0 )2l ∫ R0 +ζ ( 2 r dr + R0 r R0 )2l r2 dr のように分けると,第 1 項は定数,第 2 項は θ, φ の関数になる。ここで球面調和関数の公式 ( ) √ ∂ + m cot θ Ylm = (l − m)(l + m + 1)e−iφ Yl − ∂θ ( ) √ ∂ + m cot θ Ylm = (l + m)(l − m + 1)eiφ Yl ∂θ m+1 (27) m−1 より,(26) の角度積分に定数をかけても 0 になる。よって,r 積分の第 1 項は寄与せず,第 2 項のみ考えれば よい。第 2 項は ∫ R0 +ζ ( R0 r R0 )2l } { r2 dr = (R0 + ζ)l+3 − R0 l+3 1 (l + 3)R0 l } { ∼ = R0 l+3 + (l + 3)R0 l+2 ζ − R0 l+3 = ζ(θ, φ)R0 2 となる。§5.4(16) のように ζ(θ, φ) = R0 ∑ αl′ m′ ∗ Yl′ m′ (θ, φ) l′ ,m′ 11 1 (l + 3)R0 l と展開して (26) に代入すると ( ) ∂Ylm α blm Y L+ = iρR0 − m cot θ Ylm eiφ sin θ dθdφ ∂θ l′ ,m′ l,m ) ( ∫∫ ∑∑ ∂Ylm 3 ∗ L− = −iρR0 αl′ m′ blm Yl′ m′ + m cot θ Ylm eiφ sin θ dθdφ ∂θ ′ ′ l ,m l,m ∫∫ ∑∑ 3 ∗ Lz = iρR0 αl′ m′ blm m Yl′ m′ Ylm sin θ dθdφ 3 ∑∑ l ′ m′ ∫∫ ∗ l ′ m′ l′ ,m′ l,m となる。ここで,公式 (27) を用いて積分を計算すると, L+ = −iρR0 3 ∑∑ α l ′ m′ ∗ ∫∫ √ blm (l − m)(l + m + 1) Yl′ m′ Ylm+1 sin θ dθdφ l′ ,m′ l,m = −iρR0 3 ∑√ (l − m)(l + m + 1)(−1)m+1 αl −m−1 ∗ blm l,m ( ∫∫ ∫∫ ∵ Yl′ m′ Ylm+1 sin θ dθdφ = Y l ′ m′ Y l −m−1 ∗ ) sin θ dθdφ = δ(l , l)δ(m , −m − 1) ′ ここで §5.4(13)(15)(24) から R0 2 ∗ α̇ l lm R0 2 πlm = lBl πlm = ρR0 3 blm = であり,αlm の条件から αl−m = (−1)m αlm ∗ であるから,これらを用いて L+ を計算すると L+ = −i ∑√ (l − m)(l + m + 1)(−1)m+1 πlm αl m+1 l,m となる。同様にして L− , Lz も計算でき,結局 L+ = −i ∑√ (l − m)(l + m + 1)πlm αl m+1 (l + m)(l − m + 1)πlm αl m−1 l,m L− = −i ∑√ l,m Lz = i ∑ mπlm αlm l,m が求まる。 12 ∗ ′
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