放射光を用いて微細加工技術を開発し環境分析バイオデバイスへ応用

環境分析バイオデバイス
兵庫県立大学高度産業科学技術研究所
LIGAプロセス研究開発センター
マイクロリアクターとは?
なぜ立体構造が必要か?
マイクロリアクターとは髪の毛ほどの微細な流路の中で混
送
送液
合、反応、検出といった一連の化学操作を実現するという
液
概念のものです。微細な空間を用いることで、省エネル
ギー省資源はもちろんのこと、高速、高収率反応等の従来
のサイズでの反応にはない利点が発現します。私たちの
研究室では、平面空間に作られてきたマイクロリアクターを 平面空間から立体空間に拡張することによって
立体空間に展開させ、これまでに無い概念の「垂直積層型 3次元空間を利用できるので、反応器の集積化に有利
マイクロリアクター」の研究を行なっています。
3次元キャピラリー束構造が作製可能であり、表面反応に有利
2次元空間に無い流体特性を利用したデバイスが作製可能
垂直積層型マイクロリアク
ター
圧力制御装置
加圧装置
試薬A
20cm
試薬混合槽
圧力センサ
試薬B
フィルター1
加圧装置
免疫反応槽
圧力センサ
(抗体固定化
PSビーズ充填)
ミキシング機能
バルブ機能
400µm
フィルター2
加圧装置
圧力センサ
分析槽
バルブ機能
抗原抗体反応場
光源
吸光分析
Capillary bundle structure
廃液
蛍光分析
システム外観と集積化垂直積層型リアクター
垂直積層型マイクロリアクターは試薬の混合や反応を受け持つ複数の反応槽と、バルブ・ミキサー・マイクロチャンネル・化学
反応場という機能を兼ね備える流体フィルターを垂直に積層した構造をもっています。流体の駆動は空気加圧により行なわれ、
ポリスチレン(PS)ビーズの表面や、キャピラリー束構造の大きな表面積を用いることで、高速かつ高効率な表面反応を起こす
ことが可能です。
40
Portable detection system for
UV absorption and fluorescence
20
0
0.1
1
10
100
1000
Nonylphenol conc. [ ng/ml ]
PSビーズを使用した競合法ELISAの結果
0.7
ELISA法の概念図(競合法)
0.6
Abs. 450 [nm]
ELISA(酵素免疫測定法)とは、免疫反応
を利用した簡便な物質の同定、定量分析
手法で、現在さまざまな分野で用いられて
います。私たちは一般的に用いられている
競合法ELISAとサンドイッチELISAという二
つの方法を垂直積層型マイクロリアクター
の中で実現し、従来法に対して100倍の感
度上昇を確認しています。競合法ELISAで
は現在ELISAに用いられているの96穴タ
イタープレートと同じ材料であるポリスチレ
ンのビーズを用いていますが、これとは異
なるPMMA製(アクリル樹脂)のキャピラ
リー束構造表面を用いてもELISAが可能で
あることを実証することに成功しました。こ
れにより、他のマイクロリアクターに比べ非
常に大きな表面積が利用可能になるため2
桁以上の感度向上を実現でき、ガンをはじ
めとする疾病の早期発見等、より高感度が
要求される分野への応用が期待できます。
B/B0 [ % ]
ELISA環境分析システム
Immobilized
antibody
抗体固定化キャピラリー束構造
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
20
40
60
80
100
Mouse IgG conc. [ng/ml]
キャピラリー束構造を使用した
サンドイッチELISAの結果