世界の漁業: 漁獲量再構築の結果 ダニエル・ポーリー ブリテッシュ・コロンビア大学 日本財団 東京 2015年6月30日 漁業管理に漁獲量データは不可欠である。 国際連合食糧農業機関の水産統計は不完全である。 90 80 漁獲量(100万トン) 70 ? 60 50 40 30 20 10 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 「実効的」漁業努力量の進化 (1950-2006年) Effective effort (GW or watts x 109) 9 Asia 8 7 6 5 4 Europe 3 2 North America Africa Oceania South America 1 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 参照:Anticamara et al. 2011 現在、約200件150国過去1950年まで遡 り各海域での漁獲量が再構築され、漁業がこれま で海洋生態系に与えて影響がさらに詳しく調べる ことが可能になる。 例: 西アフリカ 北にモロッコから南に ナミビア、南アフリカ西海域 まで合22国の漁獲量を再構 築 西アフリカ諸国の漁獲量再構築結果: 国内漁業 4.5 Recreational 4.0 Discards Catch (t x 106) 3.5 Reported to FAO Sparidae 3.0 2.5 Artisanal Subsistence 2.0 1.5 1/ 2 Industrial 1.0 0.5 0.0 1950 1960 1970 1980 Year 1990 2000 2010 西アフリカ諸国の漁獲量再構築結果: 国内と外国遠洋漁業の比較 10 Foreign illegal 9 Discards 8 Reported to FAO Catch (t x 106) 7 6 Foreign legal Subsistence 5 1/ 2 4 3 Artisanal 2 1 0 1950 1/ 4 Industrial 1960 1970 1980 Year 1990 2000 2010 全体的に先進国は30%から50%ほど自国の漁獲 量を過少評価しており、途上国では100%以上自国 の漁業を過少評価する傾向がある。 結論 漁業は海洋生態系や魚資源に対し極度な影響を与え 、生物多様性の低下や生態系の変化を招く。 漁獲量再構築の結果、漁業が世界の海洋生態系に かけってきた負荷は、現在公表されていたレベルより さらに大規模であると考えられる。 詳しくはwww.seaaroundus.org 気候変動が 海洋環境へ与える影響 プリンストン大学 ホルヘ・サルミエント教授 参照: • Bopp et al., 2013, Biogeosciences, 10, 6225-‐6245 • Rodgers et al., 2015, Biogeosciences, 12, 3301-‐3320 気候に敏感な海洋性質 • 海面水温(上昇) – 海洋生物の成長率 – 海水の階層化 • 海水の酸性度 (上昇) – 二酸化炭素 (上昇) – 炭酸イオン (減少) • 酸素濃度(水面下200-‐600mで減少) • 植物プランクトン生産率 海面水温 4 2 0 -‐2 -‐4 • すでに+0.78oC (0.72~0.85)ほど の上昇が観察さ れている • 今世紀末には現在の水温から2−4 ℃上昇すると予測 される。 海水の酸性度 0.5 0.25 0 -‐0.25 -‐0.5 • pH-‐0.1の酸性 化 が観測さ れている(水 中の水素イオ ン26%増し) • 今世紀末には現在からさらにpH0.2−0.4ほどの酸性 化が予測される。 酸素濃度(水面下200-‐600 m) 50 25 0 -‐25 -‐50 • 今世紀末には現在からさらに20μmol/ Lほどの減少が予測される。 • 酸素濃度の 減少は観察 さているが、 さらなる測定 が必要とされ る 植物プランクトン生産率 200 100 0 -‐100 -‐200 • 季節による 経年変動が 強く見られる • 今世紀末には現在からさらに25〜50%ほどの変化 が予測されるが、不確定な要素が多く、変化のスケー ルなどに関しての科学的合意には達していない。 海洋環境は 気候変動により変化して おり、さらに加速し続くと考えられる • 海面水温は上昇(生物の成長に影響を与え 、海水の階層化を進める) • 酸性化が進む (植物プランクトンの光合成, 生物の呼吸, また貝類の殻体形成への影響) • 水面下200−600mでの酸素濃度は広いエ リアで減少 • 植物プランクトン生産率は熱帯地域で減少 、極地園で上昇 気候変動が魚資源と海洋生態系 に与える影響 ウィリアム・チュン 日本財団ネレウスプログラム共同総括 ブリテッシュ・コロンビア大学准教授 2015年6月30日 概要 • 気候変動のよる漁業への影響は、熱帯海域に生息する魚種の増 加によって測ることができる。1970年代から2000年代にかけて、 熱帯海域の魚種の漁獲量が(熱帯海域以外でも)すでに世界各地 で増加していたことが確認できている。 • 現在観測されている海水温の上昇と酸性化、さらに酸素濃度の減 少が2050年まで続くならば、海洋生物種が両極の冷たい水域へ 100−1000キロ単位で移動することが予測される。 • 漁獲量への影響は地域毎に差があるが、水産物供給量への影響 は世界規模で見られると予測される。 参照: Cheung, Ota, Swartz and colleagues (2015) Predicting Future Oceans Cheung, Watson, Pauly (2013) Nature Jones and Cheung (2015) ICES Journal of Marine Science 気候変動による 再分布 海水温 極域 魚種の侵入 地域 A 地域 B 地域レベルの 絶滅 元来の分布 深海域 海水温の 上昇 気候変動のよる漁業への影響は、1970年代から 既に漁獲量に現れている • 魚種の生存に最も適して海 水温は魚種により違う • 世界の漁獲量に見られる魚 種の平均適応海水温は19 70年代から2000年代に かけ0.7度ほど上昇 • 太平洋北西部では、平均適 応海水温は約1度、上昇。 同時期、海水温にも約1度 の上昇を観測 シミュレーションモデル 世界海洋モデル シミュレーション 海洋生物 モデル 各魚種の生物的、生態的データ • 適応海水温 • 適応生息地 • 成長率、産卵率、死亡率など 地球規模の海洋生物 の分布や漁獲量を 推測 熱帯地域での漁獲量は地域により30%以上減少 気候変動による 2050年の推測漁獲量 (%2000年比較) 漁業への影響は地域毎に違いがあるが、グローバル化した水産 物貿易ネットワークにより、水産物供給へ影響は世界規模で見 られると予測される 漁業による供給 気候変動による 2050年の推測漁獲量 (%2000年比較) 水産物貿易による供給 結語 • 気候変動の漁業への影響は、1970年代から既に漁獲量に表れ ている。 • 気候変動によって、海洋生物種は2050年までに両極の冷たい水 域や深海の水域へおよそ10−100km単位で移動する。 • 気候変動の影響は地域毎に異なるが、世界の水産物供給という 面では世界全体の問題であると考えられる。 ご静聴ありがとうございます 漁業への影響は地域毎に違いがあるが、グローバル化した水産 物貿易ネットワークにより、水産物供給へ影響は世界規模で見 られると予測される 漁業による供給 気候変動による 2050年の推測漁獲量 (%2000年比較) 水産物貿易による供給 日本のマグロ漁業 日本のマグロ輸入
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