羅針盤

授業の動機づけが思考を促進する
が必要,と考える。教師の授業スキルが生徒
国立教育政策研究所は全国学力調査結果に
に受容されることが大切である。
ついて多様な分析を行っているが,昨年度の
調査についても興味ある分析を行った。
総合的学習との関連指導の重視
一つは,「授業の冒頭に目標(めあて,ね
国教研のもう一つの調査分析は,総合的学
らい)を示す」と B 問題の回答率が高く
習で探究活動を行った学校ほど B 問題の成
なったというのである。周知のように B 問
績がよいとされたことである。
題は「活用型」であって思考力・判断力・表
現力等を問う問題である。
と こ ろ が,
「 よ く + ど ち ら か と い え ば,
行った」学校で,生徒が否定的な回答をした
ところが生徒の反
割 合 は な ん と 90 %
応は,そうした授業
であったという。
を「よく行った+ど
総合的学習が生徒
ち ら か と 言 え ば,
の活用力を高めると
行った」学校で否定
されながら,教師の
的な回答をした生徒
が 60 % で, 半 数 を
超えていたという。
さらに注目される
のは,「授業の最後
に学習したことを振
生徒の授業認識の
改善と思考力の形成
髙階 玲治
からきているのであ
学校も効果があった
教育創造研究センター所長。
生 徒 は な ん と 93 %
編 著 書『 新 学 校 経 営 相 談 12
か月 全 6 巻』,
『見てわかる教
務担当マニュアル』など多数。
である。
めていない。
と総合的学習の違い
Takashina Reiji
(財)学校教育研究所理事長。
否定的な回答をした
生徒はその効果を認
それは教科の学習
り返る活動」を行う
とされるが,同様に
思いとは全く違って
ろうか。
総合的学習のパ
ターンは,例えば課
題発見・設定→課題
追究→成果発表の流
れをもつが,その基本は「自ら課題を見出し,
なぜ,こうしたことが起きるのか。
自ら追究する」という生徒の学びの主体性の
教師は,授業の導入や終末をていねいに
重視である。
行ったことが活用型の学力を上げられる,と
しかし,教科は「自分で課題を立てて」行
考えている。しかし,結果として生徒が受容
う学習活動は稀で,与えられた課題から回答
していない。
をどう引き出すか,という傾向になりやすい。
実のところ,わが国の教師たちは伝統的に
授業のスタイルを,導入→展開→終末という
そのため生徒は教科と総合的学習は異なると
判断するのではないか。
形で行うことが多い。その場合,例えば導入
ただ,今回の調査は教科と総合的学習との
において,単に「目標」を提示するだけでい
相関が明らかになったことで,両者の統合的
いのか,学習への「動機づけ」として生徒を
な学習のあり方を生徒にもよく理解させる必
学習課題に引きつける魅力あるものに変える
要がある。「活用」と「探究」との連動であ
必要がないか,などが課題のように思われる。
る。
さらに生徒が自覚的に学習に取り組めるた
めの「目標」
「まとめ」への教師の説明指導
学力形成は,学ぶ主体である生徒の学習意
識の高まりが大きいのである。
教科研究数学 No.198
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