生検−画像支援脊椎骨生検

IVR マニュアル/ 2004 日本血管造影・ IVR 学会「技術教育セミナー」より:広藤栄一
連載 3
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IVR マニュアル/ 2004 日本血管造影・ IVR 学会総会「技術教育セミナー」より・・・・・・・・・・・・・
生検−画像支援脊椎骨生検
天理よろづ相談所病院 整形外科
広藤栄一
はじめに
合併症
X線, CT, MRI, 骨シンチ, 骨生検の精度に関する
1)
1997 年 Olscamp の報告によれば, 骨生検は Sensitivity
94.5 %, Specificity 96.8 %と他の検査に比べて高い精度
を有する有用な検査法である。次に, 生検のための穿刺
経路の選択は重要で, 安全な穿刺経路に関する数多くの
2)
報告がされている 。
その内で, 経椎弓根アプローチについては, 1990 年
3)
Fidler により初めて open biopsy として報告された。
4)
1991 年 Renfrew は CT ガイドのもとに, 経皮的, 経椎弓
5)
根アプローチによる椎体生検を報告し, 1999 年 Pierot
により透視下でも同じアプローチを用いて, 安全で正確
な穿刺経路であることが報告された。
我々は, 従来はトレフィン針を用いて, 透視下に骨生検
を行ってきたが, 近年入手可能になった椎体形成のため
に開発されたMedtronic Sofamor Danek社製 Vertebroplasty
R
Guidance System を用いて, 椎体形成術の前に, 透視下
に経皮的, 経椎弓根アプローチによる脊椎生検を行って
いるので, その手技の要点などについて述べる。
生検時の合併症は, 0 ∼ 21 %と報告されている
。
血管系では大動脈, 椎骨動脈, 下行大静脈, 奇静脈, 分
節血管の損傷があり, 神経系では脊髄, 馬尾, 神経根損
傷があり, 筋肉系では大腰筋損傷による血腫があり, 内
臓系では腎損傷や気胸があり, 不安による二次的流産
や, 感染や, 0.01 %以下ではあるが生検経路に沿った腫
瘍の播種や, 不正確な穿刺などが挙げられているので,
合併症を十分に熟知して, 避ける努力が必要である。
局麻では, 1 % Lidocaine hydrochloride を用い, 全麻
では GOS を用いている。
脊椎骨生検の適応と禁忌
手技の手順と要点
まず, 骨生検の適応としては, (1)脊椎腫瘍が疑われ
た場合の原発性か転移性かの組織診断, (2)脊椎炎が
疑われた場合の起炎菌の同定, (3)未知の脊椎疾患の
組織診断などが挙げられる。禁忌としては, 出血傾向が
ある例や, 麻酔や鎮痛剤を用いても生検を要する時間内
で体位の維持が不可能な例である。
1.手術体位と神経機能モニタリング
4 点フレーム上で, 腹臥位とし, 前後面・側面 2 方向
の透視が可能であるようにセッティングする。局麻下
に施行時は, 神経機能モニタリングは不要だが, 全麻下
に施行する時は神経損傷を防ぐためにモニタリングは
必要である。
我々は同時に椎体形成を行っているので全麻下に行
うことが多い。従って, 生検を行う際, 体性感覚誘発電
位と運動誘発電位によるモニタリングを併用している。
生検時の注意点
生検時の注意点としては, (1)解剖に熟知すること,
(2)経験者の指導の下に行うこと, (3)合併症を念頭
におくこと, (4)アプローチの限界を知り, 各種のアプ
ローチに慣れること, (5)生検針の口径に留意するこ
と, 即ち Fyfe6)によれば, 2 a 以下では精度 50 %だが,
2 a 以上では精度が 90 %になると報告している, (6)
同様にX線を用いても CT と透視の問題点に留意するこ
7)
と, 即ち, Metzger によれば透視は透視可能なものに
関しては CT より安全で効果的であるが, 透視不可能な
脊椎外軟部腫瘤に対しては, CT が透視より効果的であ
る。しかし, CT では, 針刺入後の状態を観察すること
になるので安全性には少し問題がある。
1, 8 ∼ 11)
前処置・前投薬
前処置としては絶食と剃毛を指示する。前投薬とし
ては局麻の場合は痛みが強ければ鎮痛剤を内服や坐薬
や注射で処方し, 全麻時は全麻用前投薬として硫酸アト
ロピン, 鎮静剤を処方する。
使用薬剤
2. 使用器具は(図 1)のごとくである。
3. 手順
局麻の場合は, 皮膚浸潤麻酔後, 穿刺経路に沿って,
カテラン針にて骨膜に到達するまで麻酔する。
透視下に, まず前後面を見ながら 1.8 a 径キルシュナ
ー鋼線を手廻しドリルを用いて経皮的に椎弓根の中央
部にあて, 皮質部を穿刺すれば, 側面に透視を変更して
椎弓根の中央部を穿刺しながら椎体の病巣部に向けて
鋼線を挿入する(図 2)。
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キルシュナー鋼線の皮膚穿刺部に約 1 b 大の皮膚切
開を加え, 側面像を見ながら椎弓根皮質部まで径 4.0 a
のインナーダイレーターを挿入する(図 3)。
さらに, 径 10.0 a のアウターダイレーターをインナ
ーダイレーターにかぶせて椎弓根皮質部まで挿入し, 挿
入部を拡張する(図 4)。
キルシュナー鋼線が抜けないように注意しながら, イ
ンナーダイレーターを抜去し, 次にキルシュナー鋼線を
通じて, 径 4.5 a キャニュレイテッドリーマーを用いて
病巣部までリーミングを行う(図 5)。
図 1 生検器具(Vertebroplasty Guidance System)
図 3 インナーダイレーターの挿入
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この時も, キルシュナー鋼線が抜けないように注意し
ながら, キャニュレイテッドリーマーを抜去し, 径
4.5 a インナースリーブを病巣部まで挿入し設置する。
その後キルシュナー鋼線を抜去する(図 6)。
インナースリーブを介して, 鋭匙を用いて病巣部の組
織を採取する。インナースリーブは椎弓根内にあるた
め, ある程度可動範囲は制限されるが, スリーブを前後
方向に移動できるので, かなりの範囲の病巣組織の採取
は可能で, さらに両側の椎弓根を利用できるため, より
採取範囲は拡大される(図 7)。
図 2 キルシュナー鋼線の挿入
図 4 アウターダイレーターの挿入
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両側に経皮的・経椎弓根的にアウターダイレーター
とインナースリーブを挿入することにより生検範囲が
拡大されるだけでなく, また, 骨ペースト注入による椎
体形成も容易となる(図 8)。
インナースリーブ, アウターダイレーター抜去後は,
両側とも 1 針ずつの皮膚縫合にて手術を終了する
(図 9)。
椎に対しては不可能な場合がある。この時は, Ostycut
R
針 を用いて経椎弓根的に行うか, 他のアプローチによ
12)
る 1990 年 Brugieres の CT ガイド下の transcostovertebral
13)
アプローチを用いるか, 頸椎では 1991 年 Tampieri の
anterolateral アプローチを用いる必要性がある。
4. 留意点
インナースリーブが径 4.5 a であるため上位胸椎や頸
図 6 インナースリーブの設置
図 5 病巣部へのリーミング
図 8 両側へアウターダイレーターとインナースリーブの
設置
図 7 鋭匙による生検
図 9 生検器具抜去後
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5. 要点
経椎弓根的経路を選択する場合, 特に血管・神経損傷
が問題となる。術前に CT を用いて病巣の局在より判断
して経椎弓根的アプローチが可能ならば, 椎弓根の形態
や血管・神経との関係を十分に熟知しておく必要がある。
すなわち, 椎弓根の上下方向に誤って挿入された場合
は神経根と伴走血管が損傷されるし, 内側に入れば, 脊
髄・馬尾を損傷するし, 外側に入れば椎骨動脈や分節血
管を損傷する可能性がある。神経損傷の予防に対して
は, 神経機能モニタリングが参考になるが, 血管損傷は
予防が困難なため, 解剖に熟知して十分慎重に行う必要
がある。それゆえ, 自信のない時は, 十分に 2 方向の透
視で確認すべきである。
従って, 透視下経椎弓根生検の“コツ”としては, 「上
達に早道なし」, 「急がば回れ」で, できれば基礎訓練を
模型や検体で行い, 経験者の指導の下に研鑽に励むべき
である。そして, 特に解剖に熟知し, 合併症を念頭に置
き, 慎重に行えば, 安全かつ迅速に施行できる生検法と
思われる。
まとめ
透視下経皮・経椎弓根的生検について, 手技や要点や
合併症などについて述べた。
謝辞
本原稿の作成に多大な協力を得た天理よろづ相談所医学
研究所 大林 準氏に深謝する。
【文献】
1)Olscamp A, Rollins J, Tao SS, et al : Complications
of CT-guided biopsy of the spine and sacrum. Orthopedics 20 : 1149 - 1152, 1997.
2)Gishen P, Witham FM : Bone biopsy. Practical Interventional Radiology of the Musculoskeletal System.
Edited by Wilson D. Edward Arnold, London, 1995,
58(300)
p49 - 69.
3)Fidler MW, Niers BBAM : Open transpedicular biopsy of the vertebral body. J Bone Joint Surg 72 - B :
884 - 885, 1990.
4)Renfrew DL, Whitten CG, Wiese JA, et al : CT-guided percutaneous transpedicular biopsy of the spine.
Radiology 180 : 574 - 576, 1991.
5)Pierot L, Boulin A : Percutaneous biopsy of the thoracic and lumbar spine. Transpedicular approach
under fluoroscopic guidance. AJNR 20 : 23 - 25, 1999.
6)Fyfe IS, Henry APJ, Mulholland RC : Closed vertebral biopsy. J Bone Joint Surg 65 - B : 140 - 143, 1983.
7)Metzger CS, Johnson DW, Donaldson III WF : Percutaneous biopsy in the anterior thoracic spine.
Spine 18 : 374 - 378, 1993.
8)Ottolenghi CE : Aspiration biopsy of the spine. J
Bone Joint Surg 51-A : 1531 - 1543, 1969.
9)Adapon BD, Legada BD, Lim EVA, et al : CT-guided
closed biopsy of the spine. J Comput Assist Tomogr
5 : 73 - 78, 1981.
10)Murphy WA, Destouet JM, Gilula LA : Percutaneous
skeletal biopsy : A procedure for radiologists - results,
review, and recommendations. Radiology 139 : 545 549, 1981.
11)Brugieres P, Revel MP, Dumas JL, et al : CT-guided
vertebral biopsies. A report of 89 cases. J Neuroradiol 18 : 351 - 359, 1991.
12)Brugieres P, Gaston A, Heran F, et al : Percutaneous
biopsies of the thoracic spine under CT guidance :
Transcostovertebral approach. J Comput Assist
Tomogr 14 : 446 - 448, 1990.
13)Tampieri D, Weill A, Melanson D, et al : Percutaneous aspiration biopsy in cervical spine lytic lesions.
Indications and technique. Neuroradiology 33 : 43 47, 1991.