新所長の挨拶 金のさらなる純度向上を目指して

新所長の挨拶
ハイテク・リサーチ・センター所長
前田 裕司
金持 徹前所長(電子工学科教授)の後を受けて、広島国際学院大学ハイテク・リサーチ・センター所長の重責を担うことに
なりました。ハイテク・リサーチ・センターは平成 10 年度より施設の完成をみて、研究は着々と進展しております。この 2
年間で、施設・装置・設備等がほぼ整い、また年1回の研究報告書及び期間ごとのレターの発行等にその成果を報告しており
ます。これには紀隆雄 前学長や金持徹 前センター所長を始めとして関係各方々の御助力による賜物であり、また私学にお
いての有数の研究環境であると自負しております。
本センターのプロジェクトは、
「超高純度金属の開発とその応用」でありますが、現在進めております金属の超高純度化に
おいて、アルミニウムは世界一に迫る純度を精製しております。また赤外線可変ラマンレーザー出力はこれまた世界一のレベ
ルで発振しております。
現在の私学に求められることは、そのアイデンティティです。世界一の物あるいは世界一のレベルがまさにアイデンティテ
ィの一つであると考えます。それには、周辺機器や施設がこれらをサポートします。超高真空技術、分析法、試料評価法や低
温技術など多方面の開発技術を集積して初めて達成できるものであります。
研究報告書は年 1 回の成果を詳細に報告いたしますが、
このレターはそれらの速報であり、
わかり易くトピックスを紹介し、
ハイテク・リサーチ・センターの状況をお知らせいたします。
皆様の御助言・御支援を賜りますよう、お願いいたします。
金のさらなる純度向上を目指して
大園 洋仁、前田 裕司、紀 隆雄、井上 聡
この研究ではIT時代に有用な金属の高純度化を目指している。今回は金を高真空中で浮揚溶解し、高純度化のための溶
解条件を見出すことを目的とした。
溶解は低真空と高真空の 2 つの異なった真空度で 10 分間行った。右の写真は溶融直前の状態、写真の下側左は溶融中の状
態である。溶融中の金はルツボから完全に離れ、いわゆる“浮揚状態”にあった。
溶解後の状態を下側右の写真に示す。溶解後の真空槽壁面には金が蒸着された形跡は見られず、また、金の質量減少量は微
量であった。この傾向は真空度を変えても同じであった。
溶解後は水素と酸素のガス不純物が大幅に減少し、その他の不純物の合計も約半分に減少したので、更なる超高純度化が可
能であることが分った。
なお、この研究は田中電子工業 K.K.と提携して行っており、同社の三苫修一氏が共同研究者として参加している。
溶解直前の金の様子
全体が赤くなり、やがて表面
が真白に輝き出す
溶解中の金の様子
ルツボから離れ浮揚状態に
ある
溶解後の金塊
表面は綺麗な金属光沢
に輝いている
シリコンウェハの超精密加工
李木 経孝
単結晶シリコンのような脆性材料の機械加工において、加工単位を
真空チャック
微小化していくと、脆性破壊損傷のない材料除去が可能となることが経
験的に知られている。このため、超精密切削・研削によってシリコンウェ
ハを高品位かつ高能率に加工する延性モード加工が注目を集めている。
本研究室では、この延性モード加工の実用化を最終目標として、超精
シリコンウェハ
ダイヤモンド工具
密加工試験機とダイヤモンド工具を用いて、ナノスケールレベルの研削
シミュレーション試験を行ない(図1)、加工形態を走査型プローブ顕微
鏡と走査型レーザー顕微鏡を用いて総合的に評価している。
この結果、加工単位を支配する切込み量を制御することによりぜい性破壊損傷を伴わない高品位な加工ができることが
明らかとなった。切込み量200nm以上では大きなクラックが認めるが、切込み量の減少とともにクラックの発生が抑制され、
50nm程度になるとクラック発生を伴わない延性モード加工が実現されている(図2)。現在、このような延性・ぜい性遷移
挙動について、研削速度や工具形状の影響などを詳細検討しており、加工メカニズムが解明されて適正加工条件が明ら
かとなることにより、実用化されるものと期待できる。
トゥールーズ(Toulouse)の印象
宮崎
和彦
第 26 回赤外とミリ波国際会議に参加(発表)のため訪れた(9 月 10 日∼14 日)フランス南西部にある古都
トゥールーズは、古くは運河による交易で栄え、フランス最古の大学が創設されたのもこの地とされる。現在
も大学が多く、アカデミックな雰囲気の漂う落着いた学園都市であり、また、アリアン・ロケットやエア・バ
ス航空機の生産拠点らしい活気も感じられる。市街は(写真に見られるように)この地特有の赤みを帯びたレ
ンガと白い石で作られた歴史的構造物(橋や建物)が特徴的で、緑の樹木、水をたたえた運河の佇まいととも
に印象に残った。