Q4/2014

Savills World Research
Tokyo
ブリーフィング
東京オフィス市場
2014年第4四半期
写真: 丸の内千代田区
サマリー
力強い賃貸需要に支えられる形でマーケットは引き続き回復傾向にあり、グレード
Aオフィス賃料は前年同期比約9.0%増を記録している。
 東京都心5区のグレードAオフィ
スビル空室率は、前四半期比0.3%、
前年同期比では2.7ポイント改善の
3.2%となり、2009年の第1四半期以
来の最低水準を記録した。
 グレードAオフィス賃料は前四半
期比1.7%、前年同期比9.0%上昇。力
強い賃貸需要が賃料回復に寄与して
いる。
 大型グレードBオフィスビル空室
率も2.9%と近年で最も低い水準とな
った。
 大型グレードBオフィスビルの平
均月額賃料は金融危機以来最も勢い
のある、前四半期比2.4%、前年同期
比8.2%の成長となった。
グレードAオフィスビル賃料は底値
より20%の上昇を記録している。
 東京都心5区のグレードAオフィ
スビル、大型グレードBオフィスビ
ルの平均賃料は、どちらも直近の最
高水準である2007年の賃料水準より
も、およそ40%低い水準に位置して
いる。
“ 景 気 回 復の 追 い 風 を 背 景
 しかしながら、2012年を底とし
て、以降持続的な回復傾向にあり、
に東 京の 賃 貸 市 場 の回 復
傾 向 は 、2 0 1 5 年 以 降もそ の
勢 い を 保 つ とみ ら れ る 。”
サヴィルズ リサーチ&コンサルティング
savills.co.jp/research
01
ブリーフィング | 東京オフィス市場
2014年第4四半期
あり、グレードAオフィス賃料は
状況は、新規契約あるいは契約更
2014年第4四半期において、6.0%
新の際に既存ビルオーナーに有利
2007年以来の規模となる120万㎡に
増を記録した2013年を凌ぐ、前年
に働くのみならず、計画中・建設
ものぼるグレードAオフィス の大規
同期比約9.0%増、前期比1.7%増の
中の物件における竣工前契約にお
模な空室消化の進展により、2014
29,700円/坪 3 となり、第4四半期と
いてもオーナー側に有利な市場環
年の東京都心5区 2 の空室率は、前年
しては2008年以来最高の水準を記
境を形成している。
同期比2.7ポイント減、前期比0.3
録した。
マーケットサマリー
グレードAオフィスセグメント
1
大 型グレ ードBオフィスビル セグメ
ポイント減の3.2%を記録、2008年
大型成約の進展により、トップグ
ント
レードの賃貸オフィスの供給が著
テナントの移転統合需要やより高
力強い賃貸需要に支えられる形で
しく減少している。特に本社移転
品位の物件への移転需要に支えら
マーケットは引き続き回復傾向に
の候補となる、一棟貸しあるいは
れ、大型グレードBオフィスビル
複数フロアでの賃借が可能な物件
4
の減少が顕著であり、このような
ト、前年同期比1.3ポイント改善
以来の低い空室率となった。
1 グレードAオフィスビルとは、東京都心5区に立地する延
床面積30,000㎡(9,000坪)以上かつ築年数が15年未満の
建物で、サヴィルズ・ジャパンが独自に選定したオフィスビ
ルである。
2 東京都心5区とは、千代田区、中央区、港区、渋谷区、新
宿区をいう。
3
の平均空室率は前期比0.2ポイン
の2.9%と、2008年第2四半期以来
1 坪 = 3.306 ㎡ or 35.583 sq ft
の低水準を記録している。
グラフ 1
東京都心5区のグレード別オフィス賃料と空室率の傾向(2008年∼2014
年)
大型グレードB空室率
大型グレード
空室率
グレードA賃料
グレード
賃料
善傾向は、老朽化が進んだ中小規
模ビルや、オーナー自用の旧式物
件からの移転需要に支えられてお
大型グレードB賃料
大型グレード
賃料
100
10%
り、競争力に劣る物件は改修や再
90
9%
開発を目的に市場から退去せざる
80
8%
を得なくなっている。
70
7%
60
6%
50
5%
40
4%
オフィスビルの賃料調査による
30
3%
と、2014年第4四半期の月平均賃
20
2%
料は、前期比2.4%、前年同期比
10
1%
0
このような空室減少が成約賃料
空室率
賃料インデックス (2007 = 100)
グレードA空室率
グレード
空室率
2011年初頭から続く空室率の改
0%
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
水準の上昇につながっており、
サヴィルズによる大型グレードB
8.2%増の22,340円/坪であり、金
融危機以来最も勢いのある上昇率
となっている。
出所: サヴィルズ・リサーチ&コンサルティング
2014年第4四半期において、グレ
グラフ 2
区別グレードAオフィス賃料インデックス(2011年第1四半期∼2014年第4
四半期)
グレードA賃料
グレード
賃料 (平均)
千代田区
中央区
港区
新宿区
ドBオフィス賃料に対し33%割高
の水準となった。前期比賃料成長
率において、大型グレードBがグ
渋谷区
レードAを追い抜いたことから、
150
当該プレミアムは前四半期の水準
140
に比し0.8%減となったが、2013
年第4四半期の32%差より大きく、
130
Q1/2012 = 100
ードAオフィス賃料は大型グレー
また、最低水準を示した2009年の
120
約25%よりも依然として8%程度の
開差が存在している。
110
100
サヴィルズでは、300棟を超え
る東京都心5区所在かつ延床面積
90
10,000㎡超のオフィスビルの賃
80
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
2011
出所: サヴィルズ・リサーチ&コンサルティング
Q2
Q3
2012
Q4
Q1
Q2
Q3
2013
Q4
Q1
Q2
Q3
2014
Q4
料および空室率を独自に調査し
ている。弊社においては、賃料は
4 グレードBオフィスビルとは、延床面積15,000㎡(4,500
坪)以上かつ築年数が25年未満の建物で、サヴィルズ・ジ
ャパンが独自に選定したオフィスビルである。
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2014年第4四半期
実際に成約が可能な現成約可能賃
グラフ 3
料、また空室率は調査時点での空
区別平均グレードAオフィス賃料(2013年第4四半∼2014年第4四半期)
室のみをカウントしている。その
ため、同業他社が算出している募
Q4/2013
集賃料および解約予告が織り込ま
Q1/2014
Q2/2014
Q3/2014
Q4/2014
40
れた空室率と比較すると、低く算
35
出される傾向があることを明記し
ておく。
(単位:円/坪)
(単位:円
坪)
賃 料 回 復ストーリー ど
の 市 場 が 成 長しているの
か?
30
25
20
15
東京都心5区のグレードAオフィ
スビル、大型グレードBオフィス
10
ビルのどちらも直近最高水準であ
5
る2007年の賃料水準よりおよそ
40%低い水準となっている。しか
0
しながら、市場環境は2012年を底
として、以降持続的な回復傾向に
ある。この現象は特に渋谷区と中
央区で顕著で、これは以下の2点
の複合的影響によるものと思われ
る。①2012年における低い空室率
千代田
中央
港
新宿
渋谷
出所: サヴィルズ・リサーチ&コンサルティング
グラフ 4
区別平均グレードAオフィス空室率(2013年第4四半期∼2014年第4四半
期)
とランドマークビルの竣工に伴う
Q4/2013
賃料水準の底上げ、②他エリアが
Q1/2014
Q2/2014
Q3/2014
Q4/2014
14
2013年の供給過多に伴い成長鈍化
12
を経験したこと。
10
第1四半期の賃料を100とすると、
%
直近の賃料推移の底である2012年
8
グラフ2に見られるように東京のグ
レードAの平均賃料は20%ほど回復
している。特に渋谷区(142)が市
6
4
場をけん引し、そのあとに中央区
(126)が続いている。
大幅な空室率の改善に支えら
れ、新宿区は2014年において都
2
0
千代田
中央
港
新宿
渋谷
出所: サヴィルズ・リサーチ&コンサルティング
心5区の中で最も高い成長率を記
録、2012年時点より賃料は21%回
復し、賃料インデックスの順位で
第3位につけている。
最も低い成長率となったのは東京
最大のオフィス市場である港区と
千代田区で、2012年を基準とした
グレードA賃料インデックスはそ
れぞれ115、108となった。しかし
ながら空室率は徐々に下がってお
東京都心5区別 グレード
Aオフィスビル賃料および
空室率
千代田区
2014年の千代田区のグレードAオ
フィスビルの空室率は大幅に改善
し、2011年第4四半期以来の最低水
準である2.7%まで下がった。これ
は前期比0.6ポイント、前年同期比
2.0ポイントの改善となる。
った業界に属する企業が主だった
移転成約主体となった。
2014年第4四半期の千代田区のグレ
ードAオフィスビルの平均成約月額
賃料は前期比1.5%増、前年同期比
5.3%増の36,270円/坪となった。
都心5区では最低の年成長率である
が、3期連続してのプラス成長とな
った。
り、投機的な供給計画も見られな
いことから、これらの区の成長率
当該エリアでは今期、商社、法
改善は徐々に加速していくものと
曹、メディア、ビジネスサービ
思われる。
ス、公共サービス及び製造業とい
千代田区は東京で最も賃料が高い
オフィスエリアであり、都心5区
との間には依然として確固とした
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ブリーフィング | 東京オフィス市場
2014年第4四半期
表 1
主要なオフィス賃貸契約(2014年第4四半期)
賃借面積
会社名
バンダイナムコホールデ
ィングス
事業内容
移転事由
移転元/所在
移転先/所在
坪
㎡
エンタテインメン
ト/ゲーム
本社移転
バンダイナムコ未来研究所/
品川区
住友不動産三田ビル/港区
5,200
17,200
長島・大野・常松法律
事務所
法律事務
本社移転
紀尾井町ビル/千代田区
JPタワー/千代田区
3,800
12,550
レノボ・ジャパン
メーカー
本社移転/統合
六本木ヒルズ森タワー/港区
秋葉原UDX/千代田区
2,100
6,950
独立行政法人
本社移転
東京桜田ビル/港区
読売新聞ビル/千代田区
2,085
6,900
商業デザイン
コンサルタント
本社移転/統合
丹青社本館/台東区
品川シーズンテラス* /港区
1,900
6,300
日本医療研究開発機構
丹青社
出所:サヴィルズリサーチ&コンサルティング
* 未竣工物件
賃料差が存在している。しかしな
ホールディングスの移転もその一
スビルの平均賃料は12期連続増の
がら、市場の底であった2012年前
つで東品川の本社機能を住友不
前期比1.9%増の30,230円/坪であ
半の36%差から、2014年第4四半期
動産三田ビル(仮称、地上13階
り、年成長率は10.4%であった。
の22%差へと、都心5区の成長に伴
建、2015年11月竣工予定)に移す
い、その賃料差は縮小の方向に向
ことが決定している。さらに、商
2012年以来続くグレードAオフィス
かっている。
業デザインコンサルタントの丹青
ビル平均賃料の継続的な上昇によ
社は台東区にある自社ビルの本館
り、渋谷区は2013年第4四半期に
中央区
と賃借している別館から、2015年
東京で2番目に高い区となり、以後
中央区のグレードAオフィスビルの
2月竣工予定の港区港南の高層ビ
2014年を通しても第3位の港区を上
平均空室率は前期比で1.1ポイン
ル、品川シーズンテラスへの移転
回り続けている。
ト、前年同期比で2.7ポイント改善
を発表している。
し、3.0%となった。これは主にビ
ジネスサービス、製造業、情報通
港区のグレードAオフィスビルの平
信技術関連企業の優良物件への移
均オフィス賃料は、前期比で1.2%
転によるものである。
の緩やかながらも10期連続のプラ
ス成長を見せた。前年同期比では
中央区のグレードAオフィスビル
6.3%増の29,080/坪となった。
の平均成約月額賃料は前四半期比
2.5%増、前年同期比は10.9%増の
渋谷区
27,380円/坪となっている。
渋谷区のグレードAオフィスビルの
平均空室率は前期比で0.1ポイント
新宿区
新宿区のグレードAオフィスビルの
平均空室率は前期比0.3ポイント減
の2.5%と、6期連続の改善を見せ
た。これは前年同期比で7.8ポイン
トの改善であり、特に2014年上半
期における大規模な空室解消が指
数改善に貢献している。
新宿区の2014年におけるグレード
港区
の微増を記録し、4.1%となった。
港区のグレードAオフィスビルの平
恵比寿ガーデンプレイスにおける
Aオフィスビル賃料成長率は、5区
均空室率は前期と同じ3.8%であっ
改装スペースが、市場に空室とし
中第一位の上昇率であり、2014年
た。これは前年同期比で3.0ポイン
て供給されたことの影響により、
第4四半期は前年同期比13.8%増の
トの改善であり、2012年第1四半期
前年同期比では2.3ポイントの悪化
25,550円/坪、前期比では1.8%増と
以来の最低水準である。
となっている。
なった。
既存ビルにおける中小規模のリー
しかし、他の区と比較して、依然
ス契約に加え、建設中のビルにお
として優良賃貸物件の市場供給量
いても相当数の成約実績が報告さ
は少なく、オーナー側優位の状況
れている。バンダイ・ナムコ・
に変わりはない。グレードAオフィ
savills.co.jp/research
04
ブリーフィング | 東京オフィス市場
2014年第4四半期
アウトルック
市場の見通し
景気回復の追い風を背景に
の、優良グレードB物件への需要
かい風に直面するだろうが、日本
東京の賃貸市場の回復傾向
を支える要因にもなるものと思わ
銀行による金融政策は、株価上昇
は、2015年以降もその勢いを
れる。
と円安を誘引し、以て企業利益の
下支えへとつながっている。この
保つとみられる。企業の大型移
転に応えられる規模の貸床の供
金融危機以降の既存賃料の下方修
ような環境に誘発されたビジネス
給は限定的となっており、これ
正は、すでに織込済みかつ、グレー
拡大意欲と人員強化の動きは、今
は既存ビルオーナー優位の市場
ドA賃料が2012年第2四半期以降継
後ともオフィス需要に影響を与え
環境を形成するのみならず、今
続的に上昇しているにも関わらず、
るものと思われる。
後市場に供給される未竣工床の
現時点の平均賃料は2007年の直近最
事前成約をも加速させるものと
高水準に比しおよそ42%割安の水準
思われる。
となっている。これは賃料の下振れ
リスクが限定的であるのみならず、
以上のとおり、特に優良物件の
更なる上昇余地があることを示唆し
需給バランスがオーナー優位に
ているものと思われる。
傾くことから、優良物件と他の
物件の賃料差は、さらに拡大し
昨年12月の衆議院解散総選挙を経
ていくものと思われる。またこ
て、安倍内閣は経済の活性化へ向
れは、グレードA物件入居への
けた政策の更なる強化へと動き出
資金力に劣る中小規模テナント
している。規制改革は政治的な向
詳しいお問合せ先:
サヴィルズ・ジャパン
サヴィルズ・リサーチ
クリスチャン・マンシーニ
ウィル・ジョンソン
代表取締役 兼 チーフ・エグゼ
クティブ・オフィサー、ジャパン
+81 3 5562 1717
[email protected]
ヘッド・オブ・リサーチ&コンサル
ティング
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中畑 太一
ハフイズ・イスマイル
サイモン・スミス
マーケット・リサーチャー
リサーチ&コンサルティング
マネージャ,リサーチ&コンサル シニア・ディレクター、
ティング、ジャパン
アジア・パシフィック
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that leads rather than follows, and now has over 600 offices and associates throughout the Americas, Europe, Asia Pacific, Africa and the Middle East.
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