阿見町と大学との協働による女性の健康づくり事業の開発 に関

○地域貢献研究 T-3
研究課題 「阿見町と大学との協働による女性の健康づくり事業の開発
に関する研究-理学と看護の連携」
○研究代表者 理学療法学科 教授
上岡裕美子
○研究分担者 看護学科 教授
山口 忍
(計4名)
阿見町保健福祉部健康づくり課 理学療法士 眞島美穂
阿見町保健福祉部健康づくり課 係長 保健師 湯原恵子
○研究年度
平成26 年度
(研究期間) 平成25年度~平成26年度(2年間)
1.研究目的
高齢女性における尿失禁は、有病率は約 30%と報告され、外出の制限など生活の質(QOL)に影響する
問題である。また、平成 25 年国民生活基礎調査によると、自覚症状で訴えの多い症状は肩こりが最も多く、
次いで腰痛となっている。そこで、阿見町と大学との連携事業として、腹圧性尿失禁予防を目的とした骨盤
底筋体操を中心とし、肩こり、腰痛予防体操を取り入れた「女性の健康作り事業」に取り組んでいる。この事
業は、高齢者の介護予防事業の前段階となる若い人への予防事業であり、阿見町と大学のそれぞれの理
学療法士と保健師(看護)が協働して企画し、実施している。腹圧性尿失禁を有する人への治療法の一つ
として骨盤底筋体操は有効性が示されている 1)。本事業はそれを地域保健における予防活動へ応用した
もので、全国的に見ても前例が乏しく先駆的な取り組みである。
本研究は、この骨盤底筋体操を中心とした女性の健康づくり教室の参加者の意識、変化などを評価し、
今後の事業内容の拡充のために示唆を得ることを目的とした。
2.研究方法
(1)教室の実施
教室の目的は、腹圧性尿失禁の予防啓発のため、参加者がその知識と予防体操として骨盤底筋体操を
習得すること。健康に関心を持ち日常に運動を取り入れるようになることとした。対象は、育児期(出産後 3
~12 か月)および中年期(40~59 歳)の女性とした。実施期間は 6 週間、平成 25 年度は 3 週間に 1 回の
頻度で全 3 回、平成 26 年度は 2 週間に 1 回の頻度で全 4 回とした。時間は 1 回あたり 90 分間とした。内
容は、腹圧性尿失禁のメカニズムおよび予防方法の講義、骨盤底筋体操(表 1)、肩こり・腰痛予防のため
のストレッチと筋力トレーニングとした。参加者募集は、年 2 回行い(上半期と下半期)、町の広報誌と、ちら
しを育児相談事業、町公民館、総合保健福祉会館等で配布した。
(2)評価
評価は、教室参加の前後のアンケートと長座体前屈測定を行い、運動継続を促すため自宅での運動記
録表を用いた。対象者は、教室参加者のうち研究協力に同意が得られ、かつ教室前後の両方のアンケー
トを回収できた者とした。評価項目は鎌田のロジック・モデル 2)を参考に以下のとおりとした。
1)知識:骨盤底筋のゆるみによる症状があることを理解できたか、骨盤底筋体操の方法を理解できたか
2)意図:骨盤底筋体操を続けていこうと思うか
3)行動:自宅での体操の実施頻度(回数/週)
4)身体自覚症状:最近 1 か月間での尿もれの有無、長座体前屈
肩こりの程度(Visual Analogue Scale: VAS)(0:肩こりなし-100:耐え難いほどの肩こり)、他
表1
骨盤底筋体操について
骨盤底筋体操とは:骨盤底を構成する筋肉(肛門挙筋、尿道括約筋、肛門括約筋等)の随意収縮練習のこと.
目的は、骨盤底筋群の強化による尿道閉鎖圧の増強と腹圧上昇時に骨盤底筋を随意的に収縮する方法
の習得.
方法:おっしこやおならをがまんするような感じで、肛門と膣を「ぎゅっ」と上にひっぱるようにすぼめる
回数:速い収縮(2~3 秒間で締める、緩めるを繰り返す)と持続収縮(6~8 秒間持続した後 10 秒間緩める)
を各 10 回、1 日 1 セット
実施姿勢:骨盤底筋の収縮を
自覚しやすい姿勢
右図のどれでもよい
3.研究結果
(1)対象者
教室参加者は、育児期 39 人、中年期 47 人の計 86 人であった。そのうち研究協力の同意が得られ、教
室前後の両方のアンケートを回収できたのは、育児期 24 人、中年期 31 人の計 55 人(64%)であった。
(2)教室参加前と参加後の変化
1)知識:骨盤底筋のゆるみによる症状があることを理解できたかについては、「理解できた」と「おおむね理
解できた」の合計が 54 人(98%)であった。骨盤底筋体操の方法を理解できたかについては、「理解でき
た」と「おおむね理解できた」の合計が 51 人(93%)であった。
2)意図:骨盤底筋体操を続けていこうと思うかについて、「思う」と「おおむね思う」の合計が 45 人(81.8%)
であった。
3)行動:教室開催期間中の自宅での体操実施頻度について、骨盤底筋体操は、育児期は「週 3 回以上」2
人(8%)、「週 1~2 回」10 人(42%)、「週 1 回未満」11 人(46%)、中年期は「週 3 回以上」13 人(42%)、
「週 1~2 回」12 人(39%)、「週 1 回未満」4 人(13%)であった。肩こり予防体操は、育児期は「週 3 回以
上」11 人(46%)、「週 1~2 回」6 人(25%)、「週 1 回未満」6 人(25%)、中年期は「週 3 回以上」22 人
(71%)、「週 1~2 回」4 人(13%)、「週 1 回未満」3 人(10%)であった。
4)身体自覚症状:尿もれ症状のある人は、教室参加前は育児期 6 人、中年期 10 人の計 16 人(29%)であ
った。骨盤底筋体操の実施頻度別に変化を見ると、週 3 回以上実施した群では 8 人から 3 人へ、週 1
~2 回実施した群では 5 人から 3 人へと減少した(図 1)。肩こりの程度は、中年期で肩こり予防体操を週
3 回以上実施した群は、参加前 45.2±31.9 から参加後 27.7±29.1 へと統計的に有意に減少した
(t(21)=3.448, p<0.01)(図 2)。
10
週3回以上(n=22)
週3回以上
50
週1~2回
週1~2回(n=4)
p<0.01
VAS
人数
週1回未満
5
週1回未満(n=3)
25
0
0
参加前
参加後
図 1 尿もれ症状「あり」の人数(55 人中)
参加前
参加後
図 2 肩こりの程度(中年期)
(実施頻度不明の 2 名を除く)
(VAS: Visual Analogue Scale)
4.考察(結論)
教室を通して腹圧性尿失禁について参加者の理解が深まった。週 3 回以上の骨盤底筋体操の実施によ
り、尿もれ症状が減少する可能性が確認され、週 1~2 回でも有効である可能性が示唆された。骨盤底筋
体操の実施頻度は、育児期よりも中年期で高い傾向にあった。理由として、育児期は時間的余裕がないこ
と、中年期には将来に対する不安や危機感が高いことが考えられた。
参加者の知識レベルから身体の自覚症状レベルにおいて教室の成果を確認できたことから、今後も腹
圧性尿失禁に関する知識と予防体操を普及することが必要であると考えられた。今後の事業の拡充に向
けて、参加者募集方法などより多くの住民へ普及するための検討が必要であると考える。
5.成果の発表
本研究の成果は以下のとおり発表した。論文は執筆中である。
1)眞島美穂、湯原恵子、篠山勝弘、上岡裕美子、山口忍
骨盤底筋体操を取り入れた女性の健康づくり事業の取り組み 第 1 報
日本健康福祉政策学会 第 17 回学術大会 島根大会(出雲市), 2013 年 12 月
2)眞島美穂、湯原恵子、篠山勝弘、上岡裕美子、山口忍
阿見町と大学との協働による骨盤底筋体操を取り入れた女性の健康づくり事業の取り組み-理学療法
と看護の連携-. 第 17 回茨城県理学療法士学会(阿見町), 2014 年 2 月
3)眞島美穂、湯原恵子、飯野智美、篠山勝弘、上岡裕美子、山口忍
骨盤底筋体操を取り入れた女性の健康づくり事業の取り組み 第 2 報
日本健康福祉政策学会 第 18 回学術大会(阿見町),2014 年 11 月
6. 文献
1) Dumoulin C, Hay-Smith J. Pelvic floor muscle training versus no treatment, or inactive control
treatments, for urinary incontinence in women. Cochrane Database of Systematic Reviews 2010. CD005654.
2) 鎌田真光. 身体活動を促進するポピュレーション戦略のエビデンスをいかに作るか?-ポピュレーショ
ン介入研究に関わる理論と枠組み-. 運動疫学研究 15(2):61-70. 2013.