「マイナンバー」基礎知識 マイナンバー 関 係 書 類 の 保 管について 社会保険労務士法人サトー 主任コンサルタント 田村 由佳 平成27年も残り1か月を切り、企業の総務や経理の担当者の方をはじめ、年末調整等の業務で多忙 の日々をお送りのことと存じます。 とりわけ来年から本格的に始まるマイナンバー制度への対応準備のた め、例年よりはるかに業務負担が増していることでしょう。 マイナンバーに関する取扱いについては、特定 個人情報保護委員会が作成したガイドラインに沿って、 その収集から廃棄まで、厳重な取扱いが求めら れています。 しかしながら、専門用語が難解であることに加え、行政機関から示される情報もしばしば変更 になることから、 ガイドラインを読むだけでなく、常に最新情報を注視しなければならない状況です。 そのような中で、企業の担当者を悩ませていた扶養控除等(異動)申告書の取扱いについて、国税庁 から10月28日付で、 マイナンバーの記載を省略できる方法が公表されました。今回は、 その方法をご紹介 しながら、 マイナンバーの保管に関する留意点についてお伝えしたいと思います。 1. マイナンバー及びマイナンバーの 記載された書 類 の 保 管 講ずることが必要です。 平成28年1月1日以降、 事業者は、 社会保障や税に関 また、マイナンバー法では、マイナンバーやマイナン して行政機関に提出する書類に従業員等のマイナン バーを含む個人情報(特定個人情報) について、社会 バーを記載しなければならないため、 従業員等のマイナ 保障や税などの法で定められている利用目的以外で ンバーを収集して保管する必要があります。収集方法 は、保管することができないとされています。従って、従 については、 社内で作成した紙の届出書を利用する方 業員が退職後、 法令で定められた保存期限を過ぎた場 法やクラウドサービスなどを利用する方法がありますが、 合は、 書類の廃棄やデータの削除、 またはマイナンバー 紙で収集して保管する場合は、 キャビネットに保管して 部分を復元できない程度にマスキングするなどして保管 施錠するなどの漏えい防止のための安全管理措置を する必要があります。 (内閣官房マイナンバー広報資料より) 4 ワイエムビジネスレポート 2015.12月号 No.86 例えば、源泉徴収や年末調整のために、従業員が 提出を求められた場合を除き、 提出期限の属する年の 事業者に提出する必要のある各種の申告書について 翌年1月10日の翌日から7年間は保存しておく必要があ は、 平成28年1月1日以降は、 従業員は自分や配偶者・扶 ります。 これらのマイナンバーを含んだ書類を保管する 養親族のマイナンバーを記載する必要があります。 そし 際は、 漏えい防止の安全管理措置を講ずる必要があり て、 事業者は、 これらの申告書について、 税務署長から ます。 2. 扶 養 控 除 等( 異 動 )申 告 書 へ の マイナンバ ー の 記 載につ い て しかしながら、給与支払者と従業員との間での合意 に基づき、 従業員が扶養控除等申告書の余白に「個人 前述のとおり、扶養控除等(異動) 申告書について、 番号については給与支払者に提供済みの個人番号と 原則として、従業員自身が毎年、 マイナンバーを記載し 相違ない」旨を記載した上で、 給与支払者において、 既 て提出する必要がありますが、国税庁が10月28日付で に提供を受けている従業員等の個人番号を確認し、 確 更新したFAQ (よくある質問とその回答) で、 マイナン 認した旨を扶養控除等申告書に表示するのであれば、 バーの記載を省略できる方法が紹介されています。 扶養控除等申告書の提出時に従業員等の個人番号 (問) の記載をしなくても差し支えありません。 扶養控除等申告書の個人番号欄に 「給与支払者に なお、 給与支払者において保有している個人番号と 提供済みの個人番号と相違ない」旨の記載をすること 個人番号の記載が省略された者に係る個人番号につ で、 個人番号の記載に代えることはできますか。 いては、 適切かつ容易に紐付けられるよう管理しておく (答) 平成28年1月以後に提出する扶養控除等申告書に 必要があります。 (注) は、従業員本人、控除対象配偶者及び控除対象扶養 1.この取扱いは、 原則として税務署に提出されることなく 親族等の個人番号を記載する必要がありますので、 そ 給与支払者が保管することとされている扶養控除等申 の記載内容が前年以前と異動がない場合であっても、 告書について、給与支払者の個人番号に係る安全管 原則、 その記載を省略することはできません。 理措置への対応の負担軽減を図るために、個人番号 ワイエムビジネスレポート 2015. 12月号 No.86 5 の記載方法として認めるものであることから、 個人番号 以外の扶養控除等申告書に記載すべき項目について は、前年と変更ない場合であっても、記載を省略するこ となく扶養控除等申告書に記載する必要があります。 案し、 事業者において判断してください) 。 (3) 給与所得の源泉徴収票 (税務署提出用) には適切 に個人番号を記載する必要があります。 (国税庁ホームページより、 下線は筆者が加えたもの) 2.「給与支払者に提供済みの個人番号と相違ない」旨 が記載された申告書について、 税務署長から提出を求 上記の内容の具体的な方法としては、 事業者と従業 められた場合には、給与支払者は扶養控除等申告書 員との間で取り決めをして、 扶養控除等(異動) 申告書 に従業員等の個人番号を付記して提出する必要があ の余白にあらかじめ「個人番号については給与支払者 ります。 に提供済みの個人番号と相違ありません」 と印字してお 3.この方法をとった場合には以下の点に留意が必要 き、 その横に従業員に押印してもらったり、 または、 別紙に です。 同様の記載をして従業員に押印してもらい、 事業者が番 (1)給与支払者において保有している従業員等の個 号の確認をした旨を記載して、 扶養控除等(異動) 申告 人番号(従業員等の個人番号に異動があった場合は 書と一緒に保管しておくなどの方法が考えられます。 異動前の個人番号を含む) については、 扶養控除等申 これらの方法は、 一定の手間はかかりますが、 毎年従 告書の保存期間(7年間) は、 廃棄又は削除することは 業員から回収する際や保管に係る安全管理措置につ できません。 いての負担は軽減されると考えられます。留意点として (2) 保有する個人番号については、 個人番号関係事務 は、 社内で統一したルールが守られるよう従業員に充分 に必要がなくなったとき及び個人番号を記載すべきで な説明をして理解を得ることです。 あった扶養控除等申告書の保存年限を経過したときに なお、 この取扱いについては、 現時点では、 扶養控除 は、 速やかに廃棄又は削除しなければなりません (廃棄 等 (異動) 申告書に関するものとなっており、 保険料控除 が必要となってから廃棄作業を行うまでの期間につい 申告書及び配偶者特別控除申告書にも同様の取扱い ては、 毎年度末に廃棄を行う等、 個人番号及び特定個 ができるのかは不明です。今後この点も明らかになって 人情報の保有に係る安全性及び事務の効率性等を勘 くると思われます。 マイナンバーに関しては、実務対応においてまだ流動的な面があります。 内閣官房のマイナンバー特設サイトは、関係省庁のリンクも掲載されてい ますので、ときどきチェックされることをお勧めします。 http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/ 6 ワイエムビジネスレポート 2015.12月号 No.86
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