書字運動における誤差抑制を目的とした教示法の検討

平成 21 年度卒業研究論文要旨
教育研究分野
認知行動科学
2318039
山根寛史
書字運動における
書字運動における誤差抑制
目的とした教示法
における誤差抑制を
誤差抑制を目的とした
とした教示法の
教示法の検討
実験 1 は経由点を表示しない。実験 2 は曲率の大き
1. はじめに
い箇所に経由点を配置。実験 2 で用いた経由点の位置
ヒトの一般的で複雑な運動として書字運動について、
を区切りとし、表 1 のように区間ごとに誤差を算出。
運動における経由点を拘束条件とすることで再現でき
実験 3 は実験 2 において誤差が増加し始める座標に新
るとされ、これまでに様々な運動モデルが提案されて
たに経由点を置き制御を加えた。実験 4 では start 直
きている。しかし、そのモデルはヒトの運動を計算機
後と 1-2 間の誤差を抑えるために軌道を表示し運動軌
上で再現するため、経由点での速度や関節トルクを拘
道を誘導した。実験 5 では 1-2 間の経由点に注意を向
束条件にしなければならず、実際にヒトに提示するこ
けさせるため塗りつぶした。実験 6 は従来用いられて
いる経由点のない軌道全表示。
とは困難であるとされている。[1]
本研究では、拘束条件を特には設けず、ヒトの普段
の書字運動に近い条件のもと、実際にヒトに提示した
表 1:区間別誤差平均値(値はピクセル)
s-1
1-2
2-3
all
実験 1
3.8
11.3
12.7
1639.8
実験 2
3.0
4.4
7.3
1112.2
実験 3
2.7
3.1
4.4
1095.7
実験 4
2.0
3.2
4.3
924.4
に示す実験条件の下で書字再現実験を経由点の形状を
実験 5
2.3
2.7
3.7
974.3
変化させながら6回行った。
図2 の右側に手本軌道を、
実験 6
2.0
2.9
4.0
917.1
実験から教示法を提案する。また、従来の教示法との
比較から本手法の有効性を検証する。
2. 実験条件
本研究では予備実験を 2 回行い、本実験として図 1
左側に計測中の表示を示す。手本とする軌道を覚える
表 2:区間別誤差の標準偏差(値はピクセル)
ための練習を 20 回行った後、経由点のみを表示し手本
通りになるよう書字運動を行ってもらう。書字した軌
跡の座標を計測し、試行時間も計測した。また、経由
点をすべて通過で成功、それ以外を失敗とした。
display
s-1
1-2
2-3
実験 1
2.4
7.9
7.2
実験 2
1.5
2.7
2.4
実験 3
1.1
1.7
2.0
実験 4
1.0
2.2
2.1
実験 5
1.1
1.2
1.6
実験 6
0.6
1.1
2.0
4. まとめ
pen
mouse
実験 4 から 6 の結果から、start から第 1 経由点ま
touch panel
では運動軌道を表示する方がよく、それ以降の区間は
PC
経由点で制御することができるといえる。
本研究において改善を繰り返した結果、表 1 の実験
5 の値に見られるように、従来の教示法を用いた実験 6
と同等の性能であった。このことから、本研究で提案
図 1:実験条件
した手法は有効性があるといえる。
文献
pointer
s
start
3
[1] 池上真史;福村直博;宇野洋二,ヒト腕運動の教示に利用する
経由点抽出手法,信学技報.
via-points
[2] 阪口豊;中野馨,
「注意」を考慮した随意運動制御のモデル,信
1
学技報.
goal
図 2:手本軌道
3. 実験結果
[3] 赤川奈緒;工藤博章;長石道博;大西昇,図形の線幅が視覚の
2
誘導場に及ぼす影響、映像情報メディア学会誌