セレンディピティなスポット推薦が 可能なナビゲーションシステム 京都産業大学 コンピュータ理工学部 ネットワークメディア学科 准教授 中島 伸介 1 従来技術とその問題点 • スマートフォンの普及に伴い,歩行者用ナビ ゲーションサービスを利用するユーザが増えて いる. • 所要時間,交通費,乗換回数等を考慮した 複数の経路を推薦することが可能である. • しかし,推薦経路周辺にユーザにとって, 価値の高い寄り道スポットが存在したとしても 推薦されることはない. 2 新技術の特徴・従来技術との比較 • セレンディピティという観点から,個々のユー ザにとって価値のある寄り道スポットを選定し, そのスポットを経由する経路と共にユーザに 提示することが可能となった. • この寄り道スポットの選定は静的に行うので はなく,ユーザの興味,流行,地域,季節,天 気,気温等を考慮して,動的に行われる. • 従来技術と同様に,主にスマートフォン上にて 動作するアプリケーションとして実現可能であ る. 3 セレンディピティとは • 思いがけないものを偶然に発見すること.ま た,その能力. • 情報推薦技術の分野における「セレンディピ ティな情報推薦」とは,ユーザにとって未知で あり,かつ,有用性の高いアイテムの推薦を 意味する. • 近年,情報推薦分野で注目されている比較的 新しい評価尺度. 4 情報推薦のジレンマ • ユーザのアイテム利用履歴の学習を完璧 に行うことができれば,推薦精度を向上さ せることができるが,推薦アイテムの意外 性を損なうことになり,情報推薦そのもの の価値を失う. 5 セレンディピティスコアを考慮した 寄り道経路の提示例 レストランA レストランAを通る最短経路 カフェBを通る最短経路 最短経路 カフェB Start Goal 公園Cを通る最短経路 公園C 6 寄り道スポットのセレンディピティスコア 算出時に考慮するパラメータ(1/4) • • • • • • スポットに対するユーザ興味度(I) スポットの流行および新鮮度(F) スポットの実力発揮度(A) ユーザにとってのスポットの特異度(U) スポットの平均評価値(R) スポットvsユーザ合致度(M) 7 寄り道スポットのセレンディピティスコア 算出時に考慮するパラメータ(2/4) • スポットに対するユーザ興味度(I) – 事前アンケート および あるカテゴリのスポットの 利用履歴から,ユーザの興味度を算出 • スポットの流行および新鮮度(F) – スポットそのものの新設および世間のトレンドの 変化を考慮して新鮮度を算出 8 寄り道スポットのセレンディピティスコア 算出時に考慮するパラメータ(3/4) • スポットの実力発揮度(A) – 時刻,天気,季節等のコンテキスト情報を考慮し, そのスポットを訪れるタイミングが適切かどうかを 表した実力発揮度を算出する. • ユーザにとってのスポットの特異度(U) – 対象スポットが,各ユーザにとってどの程度特異 であるか,希少価値があるかを表した特異度を 算出する. 9 寄り道スポットのセレンディピティスコア 算出時に考慮するパラメータ(4/4) • スポットの平均評価値(R) – 他のユーザによる各スポットに対する評価値に 基づいて,正規化した平均評価値を算出する. • スポットvsユーザ合致度(M) – 人口統計データから推定される一般的なユーザ の好みとスポットの相性を表す合致度を算出す る. 10 セレンディピティスコア算出式 または ただし, S: スポット u: ユーザ Serendipity(s,u) は,最小値0,最大値1 11 寄り道スポットを経由する経路の 仮想コストの計算 ・スポットZを経由する経路の仮想コスト (仮想コスト1) =(実際のコスト)×(1-(スポットZのSerendipityスコア)) または (仮想コスト2) =(実際のコスト)/(1+(スポットZのSerendipityスコア)) 12 セレンディピティスコアに基づく寄り道スポット推薦方式 Start → レストランA Start 手順1: 手順2: 手順3: 手順4: 手順5: 手順6: レストランA レストランA → Goal Goal ユーザがナビ要求(Start・Goalが決定) 周辺地域のSerendipityの高いスポットをX件抽出 Start→Goalの最短経路とコスト算出(ダイクストラ法による) Start→?,?→Goalの合計の最短経路とコスト算出(ダイクストラ法による) 上記手順4の寄り道スポットのSerendipityスコアに基づいて,仮想コストを計算 上記手順3,5の仮想コストを比較し,上位Y件をユーザに提示する. (寄り道可能なスポットの情報を合わせて提示,Y件では多様性も考慮)(Y<X) 13 想定される用途 • 基本的には歩行者ナビゲーションにおける 新たな機能として実装することを想定している. • 自転車ナビゲーションへの適用も十分可能と 思われる.特に自転車走行の場合には,より 広範囲の寄り道スポットを対象とすることが可 能となるので,むしろ自転車ナビの方が実力 を発揮できる可能性もある. • 同じく,自動車ナビへの適用も検討可能と考 えている. 14 実用化に向けた課題 • 現在、基本アルゴリズムについては開発済. しかし,寄り道スポットデータベースの構築方 法や,コンテキスト情報の収集方法等につい ては,さらなる検討が必要である. • 今後は,実用化に向けて,データの取得方法 やサービスモデルの構築について解決してい く必要がある. 15 企業への期待 • 基本的なアルゴリズムの構築については,大 学においても開発可能であると考えている. • ナビゲーションシステムの開発やサービスの 提供を行っている,企業との共同研究を希望 している. 16 本発明に関する学会発表予定 • 第7回データ工学と情報マネジメントに関する フォーラム(3月2~4日,福島県郡山市)にて 発表予定 • タイトル: 歩行者ナビ・自転車ナビにおける Serendipityな寄り道推薦方式の提案 17 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称:情報処理装置、情報処理方法、 およびプログラム • 出願番号 :特願2015-023781 • 出願人 :京都産業大学 • 発明者 :中島伸介 18 お問い合わせ先 京都産業大学 TEL FAX e-mail リエゾンオフィス事務室 075 - 705 - 1778 075 - 705 - 1966 [email protected] 19
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