BIOCHEMICA No

*詳細は英文で確認してください。
BIOCHEMICA No.1 2003 p10∼
RTS E.coli Linear Template Generation Set、MBP Fusion( LTGS,MBP )は PCR を用いた
in vitro タンパク質合成用の DNA テンプレート調製に使用されます。このセットを使用す
る事で、ターゲットタンパク質をコードしている遺伝子断片の両側にタンパク質合成用テ
ンプレートとして必要な T7 プロモーター、RBS(リボソーム結合配列)
、T7 ターミネータ
ー等の制限配列、また N 末端にヒスチジンタグ配列とマルトース結合タンパク質(M
Maltose
Binding Protein:MBP )配列を付加します。MBP は MBP 自身の C 末端側に連結される
タンパク質を可溶化させる強力な作用があります。そのため、LTGS,MBP を使用して調製
される直鎖状 DNA テンプレートを使用して同時に RTS100 E.coli HY 反応で合成する事が
できます。結果として、合成されたターゲットタンパク質の可溶性を迅速にスクリーニン
グする事が可能です。またサブクローニングなしに、テンプレート DNA のコンストラクシ
ョンの変更を簡便に行えます。PCR のプライマー中に変異を導入する事で、タンパク質の
ミュータントの作成も可能となります。この PCR によって調製された DNA テンプレート
から直接タンパク質を合成する事が出来るため(Expression-PCR;E-PCR)
、時間の浪費
と、これまで行われていた面倒なサブクローニングをする必要性がありません。
RTS E.coli Linear Template Generation Set, MBP Fusion
◆ PCR 法によってタンパク質合成に必要なテンプレートの必要配列と MBP フュージョン
タンパク質配列をターゲット・テンプレートに付加する事ができます。
◆ PCR でのテンプレート調製と、機能解析に必要な量のタンパク質合成を行うのに 8 時間
以内で行う事ができます。
◆ タンパク質工学のために変異の導入とそのタンパク質機能解析。
◆ 可溶性向上化のスクリーニング。
タンパク質合成用に直鎖状テンプレートの調製は、基本的に 2 ステップの PCR によって行
います。最初の反応では、個々のターゲットの遺伝子に対してデザインされたプライマー
配列に“オーバーラップ領域(約 20 塩基 )
”と呼ばれる配列を断片の外側(プライマーの
外側)に付加したプライマー対を使用して PCR が行われます。二番目の PCR での増幅断
片に、RTS システムでのタンパク質合成に必要な制限配列(T7 合成系で必要な配列)と N
末端に His6-tag、MBP フュージョン配列とその後に Factor Xa 切断部位配列を PCR 増幅
断片に付加し、タンパク質合成用のテンプレートを調製します。この 2 番目の PCR に必要
な様々な配列を含んだ DNA 断片とプライマーは LTGS,MBP セット中に含まれています。
アプリケーション
LTGS 、 MBP の 使 用 と MBP フ ュ ー ジ ョ ン タ ン パ ク 質 に よ る 可 溶 化 を ”human
erthropoietin(EPO)”,” the ligan-binding domain of a human nuclear receptor( LBD)”,
”human receptor kinase domain(B1)”を使用して実験を行ってみました。個々のテンプレ
ート DNA の調製は、説明書通りに従って行われています。その後調製されたテンプレート
DNA を用いて RTS100 E.coli HY Kit での反応でタンパク質を合成し、ウエスタンブロッ
トで解析されています(図 1 と 2)
。上澄み液(S)とペレット(P)画分の解析結果から、
MBP フュージョンしていない EPO、LBD,または B1 と比較して、N 末端に MBP が付加
された MBP-EPO、MBP-LBD, MBP-B1 は明らかに可溶性が向上しています。また、この
傾向はこのテンプレート DNA をクローニングし、環状化した後も維持されています(図 2
レーン 6,7)
。
図 1:RTS L.T.G.Set でテンプレート DNA 断片を調製し、RTS100E.coli
断片を調製し、RTS100E.coli HY を使用して MBP フュージ
ョンタンパク質を付加して合成したものと、付加していないものとでのターゲットタンパク質の可溶性の
比較。
MBP フュージョンタンパク質を付加しない場合は RTSL.T.G.Set,His-tag を使用し、
MBP フュージョンタンパク質を付加する場合 RTSL.T.G.Set、MBP を使用してテンプレート DNA を調製
してあります。すべてのテンプレート DNA は RTS100 E.coli HY Kit を使用してタンパク質合成を行って
あります。個々のサンプルは可溶画分(上澄み画分;S)とペレット(不溶性画分;P)をして SDS-PAGE
によって分離され、Anti-His6 抗体を用いてウエスタンブロットで解析されています。各レーンは合成反応
溶液の 0.2μl が流されています。
* MBP フュージョンタンパク質の場合、His6-MBP-ターゲットタンパク質の形を取っているため、AntiHis6抗体での検出が可能となります。
図 2:MBP フュージョンでの可溶性の向上が、直鎖状テンプレートの場合と、その直鎖状 DNA をベクタ
ーにサブクローニングした場合、可溶性に差が出るかどうかの比較検討。
“ human receptor kinase domain ” (B1) は RTS Linear Template Generation Sets, His6-tag と
RTSL.T.G.S, MBP Fusion を使用して調製された DNA テンプレートでの合成が行われています。
それぞれの DNA テンプレートは RTS100 E.coli HY Kit でタンパク質合成が行われ、比較されています。
またその内 MBP-B1 の直鎖状 DNA テンプレートは pCRII-Topo ベクターにサブクローニングされ、同様
に RTS100 E.coli HY kit でタンパク質合成されています。合成反応溶液の上澄み画分(可溶性画分;S)
とペレット(不溶性画分;P)は SDS-PAGE で分離され、Anti-His6 抗体を使用したウエスタンブロット
で解析されています。かくレーンに流されている反応溶液量は 0.2μl です。また完全長の MBP-B1 タンパ
ク質の他に MBP のみのタンパク質合成も確認されています。
RTS E.coli Linear Template Generation Set で調製された直鎖状 DNA テンプレートは、
精製なしに RTS100 E.coli HY 反応に使用する事が可能です。このように PCR での迅速な
テンプレート調製と高収量の反応溶液の組み合わせにより、スクリーニングや最適化の効
果的なツールとなります。最終的にタンパク質の機能活性検討、プロテインミュータジェ
ネシス、HTS、エピトープタグマッピング、タンパク質相互間作用等の解析等を迅速に行
う事ができます。また RTS500HY や RTS9000HYKit を使用したスケールアップが必要な
場合、得られている直鎖状 DNA テンプレートを簡単にサブクローニングする事で対応する
事ができます。
The MBP expression component (derived from pMAL TM New England Biolabs)of Roche’s Rapid
Translation System (RTS) Reagents and Kits is licensed for use with Roche’s Rapid Translation System
only. For any commercial uses of pMAL TM expression, licensing information may be obtained from
New England Biolabs, Legal Department, 32 Tozer Road, Beverly, MA 01915, USA.