【発表要旨】 *小林洋介「方法としての〈「魂」の幻想化〉―川端康成「金塊」をめぐって―」 川端「金塊」(一九三八年四月『改造』)は沈没船の金塊引揚と称した実際の詐欺事件を題材とした小 説である。「金塊」については小林芳仁氏らの先行研究により、内務省警保局『捜査実例集』(一九二七 年七月)を典拠としていることが明らかにされており、創作過程が辿りやすい小説である。川端はエッ セイ「琉球王の金塊引揚事件」(一九三〇年五月『朝日』)で同事件に人間の「慾」を見て取っているの だが、八年後の「金塊」では、詐欺師の娘による語りを通して、透視という超常現象を「大きな生命の 流れ」の一部をなすものとして描いている。そこで本発表では、そうした創作過程を参考にしつつ「金 塊」を読み解くことで、川端が「魂」 ・超常現象・変態心理など〈科学では十分に証明できない事象〉を 物語化するときの創作姿勢・技法・構成意識を解明することを目指す。 *馬場重行 「「油」を読む」 「油」はこれまで、作家論、あるいは実証研究を中心に取り扱われる傾向にあり、作品それ自体の「読 み」について、必ずしも十全に研究が進展しているとは言いがたい作品である。先行研究に学びつつ、 この作品の「語り」を読み直し、秘めているであろう作品のより濃密な価値発掘を目指したい。物語に よって駆動される小説としての特性を抽出し、作家像にまで射程を伸ばすことができればと願っている。 至らぬ報告に終始する恐れが大だが、諸氏のご教示を仰ぎたい。 【会場地図】
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