マクロ経済学 A 第 14 回 マクロ経済学 A http://anaito.web.fc2.com/ 第 14 回 2015/7/21 I、投資決定の理論 1、設備投資の推移と設備投資の決定理論 (1)設備投資の不安定性 設備投資は、非常に不安定←企業家の将来に対する期待に依存 技術革新によって決定される部分も存在 投資の限界効率理論:投資は投資の限界効率(予想収益率)が実質利子率に一致するところで決定さ れる *実質利子率=名目利子率−期待物価上昇率 実際には、物価の変動を考慮した実質利子率が影響する (2)加速度原理 投資は利子率ではなく、GDP の変化分(増分)に比例して変動する 企業の資本設備の望ましい水準は、その企業の生産・販売計画によって決定される 望ましい資本設備(Kt)は生産の水準(Qt)に比例する Kt=vQt (1 ) v:資本ストックと生産量の比(資本係数):一定と仮定 (t-1)期:Kt-1=vQt-1 ( 2) (1)-(2)より Kt-Kt-1=v(Qt-Qt-1) (3 ) Kt-Kt-1:資本の増加、すなわち、t 期における投資 It に等しい It=v Δ Qt ( 4) Δ Qt=Qt-Qt-1 経済全体では、It=v Δ Yt (5 ) (3)加速度原理の問題点 ( i)固定的な資本係数:利子率と賃金の水準によっても資本係数は変動、長期的には技術革新により 資本係数は上昇傾向 (ii)(1)式の v は「望ましい資本量と産出高の関係」を本来、示しているので、現実に(1)式が成り立 つかどうかは別の問題となる 現実には、資本ストックの設置にはそれなりの時間が掛かる (4)ストック調整モデル Kt*:今期望ましい資本ストック、Kt-1:前期末の実際の資本ストック 今期望ましい投資( Kt*(今期望ましい資本ストック) -Kt-1(前期末の資本ストック ))は一部だけが 今期実現される -1- マクロ経済学 A It=λ(Kt*-Kt-1) 第 14 回 ( 6) λ:望ましい投資の内、今期実現される割合:伸縮的アクセラレーター 通常は、0<λ<1: (i)投資計画の作成に時間が掛かる (ii)投資財の生産に時間が掛かる (iii)巨額の投資は、資本財価格の上昇を招いたり、経営計画に負担が掛かる (iv)途中で計画を変更可能なように徐々に投資を行う方が安全である λが 1 の時は、加速度原理と同じになる λ:一定と仮定 現実にはλの値も変動する可能性がある:好景気で投資活動が活発な時には、λは小さくなる (5)調整費用と投資効果曲線 調整費用:設備投資を行う時に成長率を高くしようとすればするほど余計に掛かる追加的な諸経費 投資効果(ペンローズ)曲線:生産能力の増加と投資のための支出額の関係を表す (6)トービンの q 理論 q:「 企業の市場価値」と「現存する企業の資本ストックを現在の市場価値で買い換える費用」の比 率 q=企業の市場価値/現存資本を買い換える費用総額 (7) 企業の市場価値=株式時価総額 +債務 q>1:企業の市場価値がその企業が保有している資本ストックの価値よりも高いので、株主は株を売 ってその代金で資本財を購入すると現存資本ストック以上の資本ストックが購入可能 あるいは、市場がその企業の成長力を現在の資本ストックの市場価値以上に評価→その企業が追加的 投資を行うと、それに要する費用以上の期待収益が得られる→投資を行うべき(資本設備が過小、過 小投資状態) 株価:企業の将来の収益力の評価 投資は q の増加関数となる: I=I(q) q>1:純投資>0、 q=1:純投資 =0、 q<1:純投資<0 (7)q 理論の意義 (i)株式市場の役割を評価 (ii)調整費用の考え方が背景にある -2-
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