第10回 - FC2

マクロ経済学 A
第 10 回
マクロ経済学 A
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第 10 回 2015/6/23
I,貨幣供給
1、貨幣供給 (p. 111)
(a)貨幣の定義
硬貨や日本銀行券などの現金通貨は貨幣であるが、他にも貨幣として事実上通用しているものが存在
する
特に要求払い預金(当座預金、普通預金)は高い流動性を持ち、貨幣と見なされている
(i)M1:現金通貨の内の流通通貨+預金通貨
(ii)M2: M1 +その他の金融機関の普通預金
(iii)M2+CD: M2+CD(譲渡性預金)
(iv)M3: M2 +準通貨(定期預金)
(v)広義流動性: M3 + CD +信託、債券現先、金融債、国債、投資信託、外債など
*どれをマネーサプライの指標として重視するかは目的によって異なる
*定義も変更されることがある、現在は M3 が重視されている
ハイパワードマネー、マネタリーベース、ベースマネー:中央銀行が直接制御出来る貨幣量:通貨当
局が発行する通貨+民間銀行が中央銀行に預ける預け金
流動性:必要な時に、即座に他の物と交換できる性質
貨幣の流動性が一番高い
(b)金融政策(p. 114)
ハイパワードマネーを制御する政策
( i)公定歩合政策:中央銀行が民間銀行に貸し出す際の利子率である公定歩合を変化させることによ
って貨幣供給量を制御する政策
公定歩合政策の効果:公定歩合を高くすると、銀行は貸出金利を上昇させ、その結果、市場利子率が
上昇する→貸出が減少→経済活動の拡張の抑制
アナウンスメント効果:公定歩合の変動を見て、経済主体が経済の予測を行い、それに従って行動す
ることによって引き起こされる効果
例:公定歩合が引き上げられると、それだけで、景気が後退すると予測すれば、実際に投資を控えた
り、生産量を減少させたりすることによって、景気の上昇が抑制される
(ii)公開市場操作:公開市場において中央銀行が手形や債券の購入や売却を行って、貨幣供給量を制
御する政策
公開市場操作の効果:売りオペレーション(売りオペ ):日銀が1兆円、債券を売却→銀行の準備が
1兆円減少→銀行は貸し出しを減少させる(日銀から1兆円借り入れるのは困難−売りオペの目的は
金融引き締め)
(iii)法定準備率操作:民間銀行が保有しなければならない預金の一定割合である準備金の割合である
法定準備率を中央銀行が変更する政策−実際にはあまり使われない
(c)貨幣乗数(p. 116)
M:マネーサプライ CC:現金通貨 DP:預金
M=CC+DP
H:ハイパワードマネー RE:銀行手許保有現金+預かり金
H=CC+RE
現金/預金比率:CC/DP=cc 準備金/預金比率:RE/DP=re
H=(CC/M+RE/M) M =(CC/(CC+DP)+RE/(CC+DP))M)
=(cc/(cc+1)+re(cc+1))M =(cc+re)/(cc+1)・M
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m =(cc+1)/(cc+re)とすると
M=mH
m:貨幣乗数
もし、ハイパワードマネーを中央銀行が制御出来るならば、 m が安定的であれば、貨幣供給量を制
御可能である
しかし、m が不安定ならば、貨幣供給量の制御は困難となる
(d)貨幣市場の均衡と利子率の決定(p.126)
貨幣需要関数:L=L(Y, r)
貨幣供給:中央銀行が外生的に決定可能と仮定
M=mH
貨幣市場の需給均衡条件は
M/P=L(Y, r)
この式により利子率 r が決定される
r
MM
LL
0
M/P
L
(e)貨幣供給について
貨幣供給はどのように決定されるか?
( i)外生的貨幣供給論:一般的なマクロ経済学においては、貨幣供給量は中央銀行が制御するものと
仮定している
しかし、実際には貨幣供給量はそのような外生変数ではなく、貨幣需要に応じて決まる内生変数であ
る→内生的貨幣供給論
(ii)内生的貨幣供給論:貨幣供給量は外生的に中央銀行が決定可能であるというマネタリズムとは逆
の考え方−貨幣供給量は貨幣需要によって決定される
(f)バランスシートによる説明
(i)公定歩合政策
中央銀行
商業銀行
民間非金融部門
資産
負債
資産
負債
資産
負債
貸出 中央銀行預金
中央銀行預金 中央銀行借入
預金 銀行借入
貸出
預金
公定歩合を引き上げた場合:商業銀行の中央銀行からの借り入れの利子率である公定歩合が上昇する
ため、商業銀行はその分、余分に利子を支払う必要がある→商業銀行は利潤を増大させるためには貸
し出しの利率を引き上げる→借り手の民間部門は、投資の限界効率(期待収益率)と比較して、利子
率が高いならば、新規投資を行わない→新規投資が減少、供給される貨幣量の伸びが抑えられる
(ii)公開市場操作
中央銀行
商業銀行
民間非金融部門
資産
負債
資産
負債 資産 負債
債券 中央銀行預金 中央銀行預金 預金 債券
預金
売りオペレーション(売りオペ)の場合:日銀が1兆円、債券を売却→銀行の準備が1兆円減少→
銀行は貸し出しを減少させる( 日銀から1兆円借り入れるのは困難−売りオペの目的は金融引き締め)
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