【電磁界を表す諸定数】

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電磁界を表す諸定数
【電磁界を表す諸定数】
【マクスウェルの方程式】
電波の存在は、1864 年マクスウェル (英) により理論的に証明され、1888 年ヘルツ (独) によって実証され
た。マクスウェルの方程式とは、電気磁気に関するアンペアの法則、ファラテーの法則、ガウスの法則に、電
束の時間的な変化を仮想的に流れる電流 (変位電流) とする考え方を導入したもので、ベクトル解析の式を使っ
て表すと、次式で表される。


rot H = J +
div D = ρ
∂D
∂t
rot E = −
div B = 0
∂B
∂t
ただし、電界、磁界などは、空間に方向と大きさを持つベク
トル量で表される。
E : 電界
D : 電束密度
J : 導電電流密度
H : 磁界
B : 磁束密度
ρ : 電荷密度
これらの微分方程式に条件を代入して解くことで、電波の状態 (波動性) が証明される。また、これらの方程
式から図のような平面波の場合の解は、次式で表される。
Ez = A sin(ωt − βy)
Hx =
A
sin(ωt − βy)
Z0
Ez : z 方向の電界 [V/m]
Hx : x 方向の磁界 [A/m]
A : 積分定数
Z0 : 空間の特性インピーダンス
β : 位相定数 ( = 2π/λ)
【位相速度】
上式は、周波数 f [Hz]、波長 λ [m] の電波が y 軸方向に進んでいく状態を表している。
微小時間 ∆t に、電界の同じになる等位相面(波面) が y 軸方向に ∆y だけ進んだ時の速度を位相速度(phase
velocity) と言い、(距離)/(時間) で求められる。その値は真空の誘電率を e0 *1 、真空の透磁率を µ0 *2 とする
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で表すことができる。
と、 √
e0 µ 0
自由空間は通常、等方性媒質であり、e = e0 、µ = µ0 として扱われるので、この速度は自由空間における
::::::::::::::::::::::::::
光速 c [m/s] に等しい。つまり、
c=
1
∆y
= √
∆t
e0 µ 0
(1)
光速 ( ; 2.99792458 × 108 ; 3 × 108 [m/s]) は (周波数)×(波長) で求められるので、c = f λ は (1) 式と等
しいことが分かる。
*1
*2
1
× 10−9 ; 8.854 × 10-12 [F/m]
36π
µ0 = 4π × 10−7 ; 1.256 × 10−6 [H/m]
e0 ;
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電磁界を表す諸定数
180◦ を π とし、正弦波の 1 振幅を円状でとらえる表現法を弧度法と言い、位相の空間的な減少の割合を単
位長当たりの角度 (ラジアン) で表したものを位相定数(phase constant) と言う。周波数に全円周角 2π をかけ
た角周波数を ω ( = 2π f ) とすると、位相定数 β は
√
β = ω e0 µ 0
で表される。この式を変形すると
1
ω
= √
β
e0 µ 0
であり、この式もまた、(1) 式と等しいことが分かる。
これらの関係を書き直すと、
λ=
c
1
2π
2π
= √
= √
=
f
f e0 µ 0
ω e0 µ 0
β
√
ω
2π
β = ω e0 µ 0 =
=
c
λ
真空中において、電界 E、磁界 H が存在する時のエネルギー密度 UE 、UH は、それぞれ、次式で表される。
UE =
1
e0 E 2
2
UH = −
1
µ0 H 2
2
平面波の伝搬では、これらの値が等しいので、
::::::::::::::::::::::::::::::::::::
e0 E 2 = µ 0 H 2
(2)
また、電界と磁界の比が空間の特性インピーダンスZ0 [Ω] を表すから、
Z0 =
E
=
H
r
µ0
; 120π ; 376.7 ; 377 [Ω]
e0
(3)
【ポインチング・ベクトル】
電波は、その進行方向に伝搬するエネルギーの流れとして、大きさと方向を持つベクトル量で表される。
W = E×H
これをポインチングの定理といい、W をポインチング・ベクトルという。その大きさ W [W/m2 ] をポイン
チング電力といい、電界と磁界が直交する平面波の場合は、次式で表される。
W = EH [W/m2 ]
これは、単位時間あたりに単位面積を通過するエネルギー量を表す。これを電力密度または、電力束密度と
いう。
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電磁界を表す諸定数
電界のエネルギーと磁界のエネルギーが等しいので、(2)(3) 式より、
r
H=
e0
E
µ0
r
∴ W = EH =
e0 2
E2
E2
E =
=
= Z0 H 2 [W/m2 ]
µ0
Z0
120π
ベクトル A とベクトル B において、それらの成す角を θ とすると、内積
(スカラ積)C は大きさのみのスカラで表されるので、
C = A · B = AB cos θ
外積 (ベクトル積)D は、
D = A×B
で表される。ベクトル D は A、 B 平面に垂直なベクトルを表し、その大きさは次式で表される。
D = AB sin θ