「心の円陣」

「心の円陣」
赤穂東中学校長
尼 子 勝 義
【平成26年度
奇跡の円陣 】
体育祭の閉会宣言がおこなわれた後も、生徒
たちはその隊形のまま動かなかった。グラウン
ドの中央で整然と並び笑顔で前を見つめている。
生徒一人一人の表情には、自分たちの力で体育
祭を創りあげたという誇りがあった。
昨年度の体育祭の「心の円陣」は、いやが上にも今年の生徒たちに意識されていたはずで
ある。だからこそ生徒たちは、夏の暑さの残る厳しい日差しの中で、本気で練習に取り組ん
でいた。特に、全校体育では、行進の手の振り方や脚の上げ方、話を聴く姿勢、無言のすば
やい集合と整列、そして全力で取り組む競技と演技など、自分たちで注意し合い、励まし合
いながら進め、生徒自身の力による質の高い取組ができていた。
私は閉会式の挨拶で、「“灼熱の舞台 キセキを起こせ!! 仲間とともに”の体育祭スロ
ーガンそのままに、今日は灼熱の舞台に皆さんのすばらしい演技が繰り広げられました。た
くさんのキセキと大きな感動を共有した1日でした。」と話したのであった。
生徒たちは、一生懸命頑張る人のかっこよさを、一生懸命頑張る姿の美しさを、一生懸命
頑張ることのすばらしさを、この日グラウンドいっぱいに繰り広げたのである。
勝ち負けを超越した世界がそこにあった。優劣を遥かに超えたステージに生徒たちは立っ
ていた。それは、閉会式を終えた後もグラウンドに残る生徒たちの姿に凝縮していた。
そして、生徒会長が全校生徒の前に進み出て、協力への感謝や自分自身
の感動を話した後、
「僕たち生徒全員が心を一つにして一生懸命に頑張ることができました。
大成功だったと思います。この感動を生徒全員で分かち合うため、今
から、生徒全員で円陣を作りたいと思います。皆さんいいですか。」
と呼びかけた。生徒たちは満面の笑顔で応えていた。
さらに、笑顔で私を見つめ、「校長先生、いいですか。」と尋ねてきた。私は、昨年と同じ
ように、「先生たちもその円陣に入れてくださいね。」と答えた。
生徒たちは、すぐに整列の隊形から円陣へと移動し始めた。教師たちもその円陣の輪に加
わり、にこやかに肩を組んでいった。その様子を見ていた私を円陣の輪の中に誘いに来たの
は、今年もやはり3年生の、どちらかと言えばやんちゃな男子生徒たちであった。
生徒たちは、円陣の輪に保護者や地域の方々も誘っていった。昨年より一回り大きな円陣
が作られた。「心の円陣が、今、形になりました。」という生徒会長の声が響いた。そして、
生徒たちの呼びかけにより、円陣に加わる全員が高らかに校歌を歌い上げたのである。
生徒一人一人は、一生懸命に頑張った自分を、かけがえのない存在であると感じたことだ
ろう。そして、仲間とともに心を一つにし、力を合わせて頑張れば、夢がかなうということ
を体感しただろう。自分の大切さ、他の人の大切さ、そして、仲間と共に生きることの大切
さを学んだであろう。それは、生徒たちのこれからの人生にとって大きな力となるだろう。
「心の円陣」は、見事に引き継がれた。昨年の円陣は、その体育祭スローガン「とびきり
の感動をあなたに」から「感動の
円陣」と呼びたい。そして、今年
の生徒が作った円陣は、今年のス
ローガン「キセキを起こせ 仲間
とともに」から「奇跡の円陣」と
呼びたい。どちらも生徒の心が一
つになった「心の円陣」である。
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