ラベルワーク技法を活用した コミュニケーション能力育成への取り組み

島根県立大学短期大学部出雲キャンパス
研究紀要 第 1巻 ,93-99,2007
ラベ ル ワ ー ク技法 を活用 した
コ ミュニ ケ ー シ ョン能力育成 へ の取 り組み
飯塚
桃子 ・石橋
照子
要
概
実習 カンファレンスの場 において ,ラ ベルワーク技法 を活用 した学生 の コ ミュニ
ケーシ ョン能力育成 へ の取 り組み を実施 した。2005年 度後期 ,2006年 度前 ・後期 に
精神看護実習 を展開 した95名 の学生 の 自己評価 を,学 生 の背景 となるラベル ワー ク
体験度 の違 いに よって 3群 に分 けその効果 を比較 した。結果 ,「 聴 く力」「自分 の傾
向を知 る」 は実習期間内で も高 めることが可能であった。 しか し「表現す る力」 に
ついては,短 期 FHEで の習得 は難 しく,長 期的 な トレーニ ングが必要 であると考 えら
れた。今後 は,実 習 カンファレンスだ けでなく,意 図的 な講義へ の導 入やその繰 り
返 し,他 実習 との連携 など,継 続 した トレーニ ング を実施 していける方法 を検討 し
てい く必要 がある。
キ ー ワー ド :ラ ベル ワーク技法 ,コ ミュニ ケーシ ョン能力 ,実 習 カンファレンス
,
看護学生
I.は
考 の道具 (媒 体)と して ラベル を用 いる理論 と
技術 の体系」 で ある (林 ,1994,2002,2004)。
本研究 では,コ ミユニ ケ ーシ ョン能力で も特
じ め に
看護基礎教育 における精神看護実習 では,日 々
の患者 との関わ りについて ,プ ロセス レコー ド
などを用 いた専門的 コ ミュニ ケ ーシ ョン能 力の
に基本 とされ る「聴 く力」「考 えをまとめる力」
「伝 える力」 に焦点 を当 てた 。 そ して ,2005年
度後期 ,2006年 度前期 ,2006年 度後期 の約 1年
半 の期間 にわたって取 り組 んで きた成果 を,学
指導 を行 っている。 しか し,学 生 の記録や報告
会話 を してい く中 において ,学 生 の 「伝 える」
「聴 くJ「 考 えをまとめる」 とい うコ ミュニ ケー
,
生 の背景 による違 いに よって 3群 に分 け,学 生
の 自己評価 か らその効果 を比較す ることを目的
シ ョンにお ける基本的な部分 につ いて 問題意識
を感 じた。そ して ,専 門的 な コ ミュニ ケ ーシ ョ
とした。
Ⅱ.研 究 方 法
ン能力 だけでな く,コ ミュニ ケ ーシ ョンの基本
的な 「伝 える」「聴 く」「考 えをまとめ る」能力
の育成 が必要 ではないか と考 えた。 そ こで ,20
05年 度後期 か ら,実 習 カンファレンスにラベル
1.対 象
ワーク技法 を導入 してい る。そ して ,実 習 カン
フ ァレンスの場 を,学 生 の コ ミュニ ケ ー シ ョン
に,精 神看護実習 を行 った 3年 次生 の学生 ■4
名 を対象 とした。その うち,研 究 の主旨等 につ
能力育成 トレーニ ングの場 として活用す る取 り
組 み を行 っている。
いて説明 し,同 意 の得 られた学生である。
2005年 度後期 か ら2006年 度後期 の までの期間
2,対 象者の背景
学生 の ,ラ ベル ワー クに関す る経験 など背景
の違 いに よって ,2005年 度後期 ,2006年 度前期
ラベル ワーク とは,参 画理論 の権威者 で ある
林 が,学 生参画 を進める方法論 の一つ として開
発 した ,「 人間交流 の知 的活動 ,と りわ け知識
の発信 ・交流 および ,知 的生産 のための 図解思
,
2006年 度後期 をそれ ぞれ ,「 初 めての体験 」
,
「講義 の体験」,「 講義 と実習 の体験」 とした。
-93-
飯塚
拶[子 ・石橋
照子
「初 めての 体験」群 は ,2005年 度後期 に実習
した学生 35名 で あ り,今 回の実習 で初 めて ラベ
へ の 自主提出 をもって研究協力へ の 同意 とみな
ル ワー ク を知 り,体 験 した学生 で ある。「講義
究倫理害査委員会の承認 を得 て実施 した。
した。なお ,本 研究 は島根県立看護短期大学研
の体験」群 は ,2006年 度前期 に実習 した学生36
名 で あ り,実 習 までの段階 において講義等 で ラ
ベル ワ ー クの 体験 の ある学生で ある。 ただ し
Ⅲ .カ ン フ ァ レンス の 実 際
他領域実習 での ラベル ワー ク体験 はない 。「講
精神看護実習 カンファレンスは,実 習病院内
の学生 カンファレンスル ームにて行 なった。 カ
,
義 と実習 の体験」群 は,2006年 度後期 に実習 し
た学生43名 で あ り,講 義 で もラベル ワー ク を体
ンフ ァレンスは,実 習 中 (8日 間)毎 日15:30
∼16:30ま での 1時 間程度 で実施 したc実 習 は
験 し,他 領域 の実習 で もラベル ワー ク を取 り入
れ るよ うにな り,講 義 ・実習 を併 せて複数回の
ラベル ワー ク体験 の ある学生である。
常時 10∼ 12名 で行 な うため,ラ ベル ワー クはそ
れを 2つ の小 グループ (5∼ 6名 )に 分け行なっ
3.調 査方法
た。
無記名 自記式 による調査用紙 を,実 習最終 日
の実習 カンフ ァレンス終 了後 に配布 し,学 生 カ
カ ンフ ァ レンスの内容 は,実 習 での受 け持 ち
患者 を通 した 「学び」や 「感想」 を各 自 ラベル
に書 き表 し,そ れを使 って ラベル交流 を行 い小
ンフ ァレンスル ーム出 口付近 に設置 した回収箱
へ の 自主提 出 と した。
グル ー プそれぞれの考 えをまとめて発表 した。
また ,ラ ベル新聞を作 り自分達 の考 えをグル ー
4.調 査 内容
コ ミュニ ケ ー シ ョン能力 について問 う調査用
プ同士や病棟 スタ ッフと共有 した。
紙 を独 自に作成 した。
内容 は,① 聴 く力 がつい た,② 考 えをまとめ
学 びや感想 だけでな く,「 私 たちの 目指す精
神看護」 に対す る自分達 の思考 をまとめるラベ
る力 がつ いた ,③ 発言す る力 がついた,④ 表現
力 がついた,⑤ 意見 を聴 いて学び を深め られた
ル 図解作 りを行 った。そ して ,実 習最終 日には
完成 した図解 の発表会 を行 った
,
⑥意見 を聴 いて視野 を広 げ られた,⑦ 患者 に対
す る感性 が高 まった,⑥ 自分 の傾向がわかった
Ⅳ .結
,
(石 橋 ,2006)。
果
とい う 8項 目を設定 した。評価方法 は,「 大変
対象学生■4名 の うち,「 初 めての体験」群 は
対象者35名 中30名 の回答があり (回 答率85.7%),
そ う思 う」「やや そ う思 う」「 あまりそ う思わな
い」「全 くそ う思 わない」 の 4段 階評価 で ある。
5.分 析方法
得 られた学生 の 自己評価結果 を集計 し,記 述
統計 にて度数 の比較 を行 った。
その うち有効回答数は28名 であった。「講義 の
体験」群 は対象者36名 中30名 の回答 があ り (回
答率98.3%),有 効回答数 は30名 であった。「講
「大変 そ う思 う」 と「ややそ う思 う」 を併 せ
た,コ ミュニ ケ ー シ ョン能力 が向上 した と評価
義 と実習の体験」群 は対象者43名 中38名 の回答
があ り (回 答率88.4%),有 効回答数 は37名 で
した学生 ,「 あま りそ う思わない」 と 「全 くそ
う思わない」 を併 せた,コ ミュニ ケーシ ョンが
あった。
向上 していない と評価 した学生 とに分 け,向 上
す。
3群 の調査項 目ごとにおける度数分布 を見て
い くと, 3群 全てにおいて「大変そ う思 う」
調査結果を,各 群の調査項目ごとに表 1に 示
した と評価 した学生 における 3群 の比率 を比較
した。
6.倫 理的配慮
学生 に対 して ,研 究 の 目的,方 法 ,研 究協力
へ の 自由意思 ,成 績 とは無 関係 であること,プ
ライバ シーの 匿名性 の保持 ,デ ー タ管理 の方法
とデ ー タを目的以外 に使用 しないことについて
,
「ややそう思 う」側 に偏っていた。
「初 めての体験」群では,全 項 目について「大
変そう思 う」 と評価 した学生 が最 も多か った。
「講義の体験」群では,「 考 えをまとめる力がつ
いた」「発言する力がついた」「表現力がついた」
口頭 と文章 をもって説明 した。そ して ,回 収箱
-94-
につ いて は,そ れぞれ 17名
(56.7%),14名
ラベルワーク技法 を活用 した コ ミュニ ケーシ ョン能力育成への取 り組み
表
l
コ ミュ ニ ケ ーシ ョン能力 に関す る学生 の 自己評価
大 変 そ う やや そ う あまりそ う 全 くそ う
思わない
思 わ ない
思う
思う
つ
い
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が
く
力
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考 え を ま とめ る力 が
講義 と実 習 の体験群 (n=37)
講義 の 体験群 (n=30)
初 めての体験群 (n=28)
調査項 目
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1
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初 めての体験群 :2005年 度前期 に実習 した ,初 めて ラベ ル ワ ー クを体験 した学生
講義 の体験 群 :2006年 度前期 に実習 した ,実 習 まで の段 階 において講義等で ラベ ル ワーク体験 の あ る学生
講義 と実 習 の体験群 :2006年 度後期 に実習 した,講 義 ・実習 を併 せ て複数回 の ラベル ワーク体験 の あ る学生
■■ :「 大変そう思う」「ややそう思う」を併せた,コ ミュニケーシ ョン能力が向上 したと評価 した学生
:「 あまりそう思わない」「全 くそう思わないJを 併せた,コ ミュニケーシ ョン能力が向上 していないと
評価 した宰生
│―
(46.7%),13名 (43.3%)と 「ややそう思 う」
の割合が多く,そ れ以外の項目については「大
変そう思う」が多かった。「講義 と実習の体験」
群では,「 考 えをまとめる力がついた」「表現力
こついては,22名 (59.5%), 18名
がついた」 イ
(48.6%)と 「ややそう思う」 が最 も多く,そ
れ以外の項目についは「大変そう思う」が多かっ
た。
次 に, 4段 階評価 のうち,「 大変そう思 うJ
と「ややそう思うJを 併せた,コ ミュニケーシ ョ
ン能力が向上 したと評価 した学生 (以 下 ,向 上
したと評価 した学生 とす る)と ,「 あまりそう
思わないJ「 全 くそう思わない」 を併せた,コ
ミュニケーシ ョン能力が向上 しなかったと評価
した学生 とに分けた。それぞれの比率をみると
全ての項 目において 「初 めての体験」群 では28
名中24名 (85.7%),「 講義の体験」群 では30名
中26名 (86.7%),「 講義 と実習の体験」群 では
37名 中31名 (83.8%)以 上の学生がぅ コ ミュニ
ケーシ ョン能力が向上 したと評価 していた。そ
,
の うち ,向 上 した と評価 した学生 につ いて ,そ
3群 の比較 を行 っ た。
「聴 く力がついた」 については,「 講義の体
験」 と「講義 と実習の体験」群が100%な のに
対 して,「 初めての体験」群 は26名 (93%)で
あった。「考 えをまとめる力がついたJに つい
ては,「 講義 と実習の体験J群 ,「 講義の体験」
群,「 初 めての体験」群の順 に37名 (100%),
「発言す
29名 (97%),26名 (93%)で あった。
る力がついた」 については,「 初めての体験」
群,「 講義の体験」群,「 講義 と実習の体験」群
の)原 に, 27名 (96%), 27名 (90%), 32名
(86%)で あった。「表現力がついた」について
は,「 初めての体験」群24名 (86%),「 講義の
体験」群26名 (87%),「 講義 と実習の体験」群
31名 (84%)と , 3群 全てが最も低 い結果の項
目であった。「意見を聞いて学びを深められた」
については, 3群 全てにおいて100%で あった。
「意見を聴いて視野を広げられた」については
「講義 と実習の体験」群37名 (100%),「 初めて
-95-
の 比率 を図 1に 表 し,
,
飯塚
桃子 ・石橋
照子
田 初めての体験群
■ 講義の体験群
回 誇義と真習の体験群
ワ ク
生
学
る生
あ学
のる
験あ
体の
ク験
一体
,
ル 一
,
納
い
表
現
力
が
つ
た
篤
翠
]
碧
発言する力が ついた
考えをまとめる力が ついた
建く力が ついた
初 めての体験群 :2005年 度前期 に実習 した
講 義 の 体 験 群 :2006年 度前期 に実 習 した
講義と実習の体験群 :2006年 度 後期 に実 習 した
,
図
1
コ ミュニ ケ ーシ ョン能力 が向上 した と自己評価 した学生 の比較
の体験」群 。「講義 の体験」群それぞれ27名
(96%)・ 29名 (97%)で あった。「患者に対す
言する力」「自己の傾向がわかった」 について
また, 3群 共 に低 い傾向を示 した「表現する力」
について考察 してい く。
,
る感性が高まった」 については, 3群 共 に95∼
97%で あった。「自分の傾向 がわか った」 につ
いては,「 講義 と実習の体験」群37名 (100%),
「講義の体験」群28名 (98%),「 初めての体験」
「聴 く力」 について,「 講義の体験」 と「講
義 と実習の体験」群 に比べ,「 初めての体験」
群だけが低 い結果 となった。 これ は,「 初めて
群24名 (86%)と なり, 3群 の間のばらつ きが
最 も大 きかった。
3群 の比較より,「 聴 く力がついた」「発言す
る力がついた」「自分の傾向がわかった」 の 3
の体験」群は,実 習 カンファレンスの場で初め
てラベルワークという技法に出会い,手 順に沿っ
て一つずつ進めてい く段階から始まった学生達
であった。そのため,実 習カンファレンスを行っ
てい く中で,初 めてであるラベルワークの手法
つの項目について,他 の項 目に対 しばらつ きが
大きい結果となった。
V.考
察
コ ミュニ ケ ー シ ョン能 力 につ いて 問 うた 8項
目全体 を見 ると,全 ての 項 目につ いて , 8割 以
上の学生 か らコ ミュニ ケ ー シ ョン能 力 が向上 し
や手順 を追 うことに最 も集中し,相 手の話を聴
くとい うことに集中できていなかったのではな
いかと考 えた。それに対 して「講義の体験Jと
「講義 と実習の体験」群 では,講 義等 での数回
にわたるラベルワーク体験 を有 してお り,ラ ベ
ルワークの手順 はもとよ り,ラ ベルワーク自体
た とい う評価 を得 てお り,一 定 の 効果 を得 るこ
とが 出来 ていた と考 え られ る。今 回 ,そ の 中で
も,
3群 の 間 で ば らつ きの あ る 「聴 く力」「発
-96-
のイメージが既 に備わっていたため,よ り「聴
く」 ということに集中できたのだと考 えられた。
「自分の傾向がわかった」 については,「 講
義 と実習の体験」群 ,「 講義の体験」群,「 初 め
ラベ ル ワ ー ク技法 を活用 した コ ミュニ ケ ーシ ョン能 力育成 へ の取 り組み
ての体験」群 の順 に高 い結果 となった。 これ は
「聴 く力」 で述 べ たよ うに, ここで も同様 の こ
とがい えると考 える。 ラベル ワークの体験 が増
り組 みにつ いての報告 で も, 3年 間の基礎荻育
期間 をかけて段階的 に能力 が高 まる ことを目指
す に従 い ,そ の手法 についての理解度 も増 して
い く。手法 を理解 で きて い る分 ,ラ ベル ワーク
を しなが ら,自 己の コ ミュニ ケ ー シ ョン傾 向 に
組みの ように, 1日 1時 間の 8日 間 ,つ まり 8
時間 の トレー ニ ングで は,「 表現す る力」 の能
,
ついて意識 を向ける ことがで き,よ り傾 向 に気
付 くことがで きたのではな いか と考 える。「聴
く力」「 自分 の傾 向 がわかった」 につ いて ,ラ
ベル ワークの体験 を重ね てい くことで ,評 価 が
向上 している。今後 は,ラ ベ ル ワー クの意義 を
理解 した上での ,実 習 だけで はな く,講 義段階
か らの意 図的 な活用が大切 で あると考 える。
してい る
(山 川
ら,2006)。 今回 の 我 々の取 り
力 がつ いた とい うほ どの実感 を得 るには限界が
あったのではないか と考 える。 また,表 現す る
能力 を身 に付 けるには一 朝 ― 夕ではな く,表 現
力の トレーニ ングであることを意識 した長期的・
段階 的な取 り組 みが必要 で ある ことがい える。
そのため,今 後 ,学 内での講義や他実習 との連
携 も視野 に入れた,継 続 した取 り組み が必要且
つ有効 で あると考 える。
「発言す る力」 につ いて ,「 初 めての体験」群
は96.4%と 高 く,次 いで 「講 義 の 体験」 群
Ⅵ。ま
,
「講義 と実習 の体験」群 の順 に下 が ってい る。
これ は,ラ ベ ル ワー クの 経験 を重ね るごとに
と
め
コ ミュニ ケ ーシ ョン能 力 につ いての 8項 目を
,
発言す るとい う事 の意味 の深 まりが生 じ,学 生
の捉 え方 が変化 してきた為 ではないか と考 える。
ラベル ワー クにつ いて ,「 講義 の体験」 と 「講
設定 し調査 した結果 ,全 ての項 目において 8割
義 と実習 の体験」群 につ いて は,今 回 の実習 カ
ンフ ァレンスでの取 り組み だけでな く,学 内で
の講義 や演習 において もラベル ワー クを体験 し
シ ョン能力 の成長 を促す のに効果 があったと評
以上 の学生 が 「向上 した」 と自己評価 していた。
この ことか らも,本 取 り組み は,コ ミュニ ケー
価 で きる。
「聴 く力」「自分 の傾 向 を知 る」 は,ラ ベル
い を伝 えることや ,自 分 の考 えをまとめて書 く
ワークを活用 した実習 カンファレンスが,コ ミュ
ニ ケ ーシ ョン能力育成 トレーニ ングの場 である
こと,相 手 の話 を聴 きなが ら相手 の言わ んとす
ることを理解す る ことなど,ラ ベル ワーク技法
ことを意識 してい くことで ,短 期間で も高める
ことが可能 で ある。 しか し,「 表現す る力」 に
の特徴 を伝 えて きた。 この様 な働 きかけが影響
し,「 発言す る力」 へ の認識 が ,た だ話せば い
ういては,短 期間での習得 は難 しく,長 期的且
つ段階的 な トレーニ ング を要す る ことが必要 で
いとい う考 えか ら,相 手 に伝 わるよ うに話す と
い う意識 が深 ま り,学 生 の 「発言す る力」 につ
あると考 え られた。
て きた。そ して ,そ の都度 ,ラ ベル を使 って思
いての評価基準 が厳 しくなっていたのではない
かと考 える。 この厳 しい捉 え方の状態で ,継 続
した トレーニ ングの機会 があれば ,「 発言す る
力」 の 向上 につ なが るので はないか と考 える。
「表現す る力」 については, 3群 共 に低 い結
果 となった。 これは,ラ ベル ワークの経験疫 な
ど背景 による違 いで はな く,「 表現す る力」 の
育成方法 につ いての 問題 で ある と考 えた。「聴
く力」 や 「考 えをまとめ る力 」 ともまた違 い
「表現す る力」 は,自 らが意識 し意図的 に トレー
,
ニ ング して初 めて力 となるのではないかと考 え
る。山川 らが行 っている,自 他 を尊重 した 自己
表現力 を養 うアサ ーテ ィブ トレーニ ングヘ の取
-97-
今後 は,実 習 カンファレンスだ けでな く,意
図的 な講義 へ の導 入やその繰 り返 し,他 実習 と
の連携 した取 り組み など,継 続 した トレーニ ン
グを実施 していける方法 を検討 してい く必要 が
ある。
本研究 は島根県立看護短期大学 の平成 17年 度
及び18年 度 の特別研究費 によって行 い ,そ の概
要 を日本看護研究学会 中国四国地方会第20回 学
術集会 において発表 した。今回は発表 した内容
をさらに分析 し加筆 ,修 正 した もので ある。
飯塚 桃子・石橋 照子
と実践,精 神看護出版 ,東 京
文
献
林義樹 (19941 i学生参画授業論 一人間 らしい
「学びの場づ くり」の理 論 と方法 ―,学 文
社,東 京
.
社ぅ東京
石橋照子,飯 塚桃子,林 義樹 (2006):看 護学
生 に確 かなコ ミュニケーシ ョン能力を―ラ
ベル交流と拡大図解の併用法―,看 護展望
,
31o,9歩 97.
山川 由加 ,森 山幸子っ明田朋子 ,田 代 マツコ
重年清香,三 輪 田隆子 (2006):看 護学生
,
林義樹 (2002):参 画教育 と参画理論 一人間ら
しい『まなび』 と『くらし』の探求 ―,学
1文
.
のアサーテ ィブ トレーニングヘの取 り組み
,
大阪医科大学附属看護専門学校紀要 ,12,
.
林義樹 ,金 城祥教編 (2004):看 護の知 を紡 ぐ
ラベル ワーク技法一参画型看護教育の理論
-98-
9‐
15.
ラベルワーク技法を活用したコミュニケーション能力育成への取り組み
An AppЮ ach to C側 曲 画 碗 tion S皿 l Training
Ushtt Label Work Temttue
ヽlomoko
LTsuKA and Teruko ISHIBASHI
Key Words and PhFaSeSI label wolk tecll
que,colrunumcation skill,practical con‐
feゃ nce,llursing students
-99-