1 株式会社エアー沖縄は、1964年12月に設立。航空会社の沖縄地区総

正社員登用 正
(正社員へ) (
職
限
○
多
○
社
員
登
用 処 遇 改 善 人 材 育 成 キャリアア
様 な 正 社 員 )
ップ助成金
務 勤 務 地 勤務時 間
定 限
定 限
定
○
○
株式会社エアー沖縄、株式会社グランドシステム沖縄
事例 21
非正社員の希望者全員を正社員化して離職率を大きく改善、併せて正
社員区分を多様化しキャリアアップを支援。
業種
本社所在地
正社員数1
(2015 年 10 月 1 日現在)
非正規雇用労働者数
(2015 年 10 月 1 日現在)
非正規雇用労働者の主
な仕事内容
取組のポイント
運輸業、郵便業
沖縄県
総合職:60
0名(男性 45
1名、女性 1
4
9名)
一般職:37
2名(男性 21
2名、女性 1
6
0名)
パート・アルバイト:2
6名(男性 8名、女性 1
8名)
航空機内清掃
▪非正社員を希望者全員正社員へ転換
▪職務範囲の違いに応じた処遇制度の正社員区分を構築
⇒離職率が大きく改善、社員のキャリアアップを支援
▪エルダー制度の採用、親子見学会等、定着率の向上に向けた取組
⇒施策が評価され企業認知度も向上、求人力強化
株式会社エアー沖縄は、1
96
4年12
月に設立。航空会社の沖縄地区総代理店業務、
旅行代理店業務を開始した。1
98
1年7
月にグループ企業として沖縄キャビンサービ
ス株式会社(のちに、株式会社グランドシステム沖縄に名称変更)を設立。現在、
株式会社エアー沖縄と株式会社グランドシステム沖縄(以下、
「両社」という)は
国内有数の観光需要や多くの国際貨物取引のある那覇空港において、空港ハンド
リング業務を行っている。発券、搭乗手続き等の主に空港ターミナル内での業務
を株式会社エアー沖縄が、飛行機の誘導や貨物、手荷物の搭降積、機内清掃等の
主に空港ターミナル外での業務を株式会社グランドシステム沖縄が担っている。
両社は担当業務の違いで分社しているが、雇用管理は共通化しており(後述の
1
社員数は株式会社エアー沖縄、株式会社グランドシステム沖縄の 2社合算。
1
正社員登用 正
(正社員へ) (
職
限
○
多
○
社
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登
用 処 遇 改 善 人 材 育 成 キャリアア
様 な 正 社 員 )
ップ助成金
務 勤 務 地 勤務時 間
定 限
定 限
定
○
○
各施策は両社共通の事例である)、また、
201
6年4
月に両社は合併し新たな会社
として運営していく予定である。
なお那覇空港は、202
0
年に第2滑走路
の供用開始を予定しており、両社にお
いても業務拡大が期待されているとこ
ろである。
1.取組の内容
◆非正社員を希望者全員正社員へ転換、雇用の定着化を図る
【定着率の向上と求人力を強化、優秀な人材確保を目指す】
両社は、新卒採用を除き、1
年間の有期雇用契約である契約社員を採用後、上
長推薦と面談試験により本人の適性や人間性を判断した上で正社員化してきた。
しかし、空港ハンドリング業務は、2
4時間体制のシフト勤務や体力的に負荷がか
かる業務もあり、また若年層を中心に、有期雇用契約ではなく雇用の安定した正
社員としての勤務を望む者が多いことから、両社における離職率は高い水準で推
移してきた。
更に昨今の労働市場は人材確保が困難になっており、有期雇用契約では求人力
が弱い。今後の業務拡大を見込む上で、求人力の強化と雇用の定着化を図り優秀
な人材を確保する必要があった。
【非正社員を希望者全員正社員へ転換、キャリアアップの機会が拡充】
そこで、2
01
5年4月に両社併せて214
名の契約社員を無期雇用契約の正社員へ転
換した。これは、若干名の従来の有期雇用契約を希望する者等を除いた全契約社
員である。また、パート・アルバイト2も学生や扶養範囲内での就労を希望する者
等を除き正社員へ転換した。転換に当たり、特別の選考は設けていない。なお、
従来の有期雇用契約を希望した方(3
名)については、「パートナー」として引き
2
1年間の有期雇用契約。正社員の指示の下、機内清掃に従事する。
2
正社員登用 正
(正社員へ) (
職
限
○
多
○
社
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登
用 処 遇 改 善 人 材 育 成 キャリアア
様 な 正 社 員 )
ップ助成金
務 勤 務 地 勤務時 間
定 限
定 限
定
○
○
続き同一の労働条件で勤務をしている。
契約社員から正社員に転換すると、時給制から月給制となり、後述する正社員
の「一般職」に転換した場合は、扶養手当が支給され、通勤手当も拡充される。
基本給における時間当たりの賃金は大きく変わらないが、勤続年数に応じた一般
職の賃金テーブルにより賃金が決定される。
職務内容については、その範囲が拡大される。両社では職務に対していくつか
の社内資格が用意されており、資格を取得することで、より高いレベルの職務に
従事できる。正社員になると取得が可能な社内資格が増え、キャリアアップを図
ることができる。また、後述する正社員の「総合職」へ登用されると、昇進・昇
格が望まれ、収入面の充実とともに、一般職における職務限定が解除され、より
やりがいの持てる職務を目指すことができる(詳細は後述)。
なお、20
15年 4月の正社員転換については、キャリアアップ助成金(
正規雇用
等転換コース)
の支給申請をしており、人材育成費用の原資として活用したいと考
えている。
◆職務範囲の違いに応じた処遇制度の正社員区分を構築
【総合職と一般職による職務の難易度に応じた処遇制度を採用】
非正社員の正社員転換施策と併せ、2
015年 4月より、契約社員区分を廃止し新
たに正社員を「一般職」と「総合職」に区分し多様性を持たせた。
総合職は一般職より難易度の高い職務に従事し、例えば、搭乗手続き業務では、
接客等カウンターでの業務は総合職、一般職ともに行うが、トラブル対応や人員
の割り振り、管理・監督等は総合職が携わる。社員の育成や指導に当たるのも総
合職の職務となるなど、社内のどの職務にも、総合職のみが携わる領域が線引き
されている。社内資格についても「業務責任者」や実務を指導・教育する「イン
ストラクター」等は総合職のみに受験資格が与えられている。また、役職には総
合職の者が任命され、一般職は対象になっていない。
処遇の違いについては、一般職の基本給は勤続年数に応じた賃金テーブル(等
級制度はない)があり、後述する人事考課により昇給額が決定されて基本給が決
定する。総合職は、職能資格制度として 9等級に分かれており、人事考課により
3
正社員登用 正
(正社員へ) (
職
限
○
多
○
社
員
登
用 処 遇 改 善 人 材 育 成 キャリアア
様 な 正 社 員 )
ップ助成金
務 勤 務 地 勤務時 間
定 限
定 限
定
○
○
昇給・昇格決定がなされる。総合職では一般職と比較すると月額給与・賞与支給
額ともに増える。更に上位等級へ昇格することで支給水準は上がっていく。
なお、5等級から 9等級在籍者の中から、各等級に応じた役職が任命される。
一般職と総合職の概要
賃金制度
一般職
総合職
勤続年数に応じた
賃金テーブル
9等級の
職能資格制度
役職任命
職務限定
なし
あり
あり
なし
【2つの人事考課と「人財育成シート」を活用した公正な考課を実施】
両社は、年2
回の成績・態度考課と年1回の能力考課を実施している。
成績・態度考課は、総合職、一般職における賞与支給に関する判断考課として
実施している。成績考課には「仕事の質」と「仕事の量」の2
つ、態度考課には「規
律性」や「協調性」等4
つの考課項目があり、5段階で考課される。考課表はレベ
ルによって、
総合職と一般職を4
つのクラスに分けたクラスごとのものをそれぞれ
作成している。上位クラスの考課項目になると、成績考課が「仕事の成果」と「部
下・後輩の指導」になるなど求めるレベルが高くなる。
能力考課は、成績・態度考課と併せ、一般職と総合職の昇給や総合職の昇格に
関する判断考課として実施している。「知識・技能」や「理解力」等の5
つの考課
項目についてレベルごとに5
段階で考課される。考課表は、成績・態度考課同様に
クラス分けし、クラスごとに作成している。上位クラスでは「理解力」の中の項
目が「判断力」になるなど、等級が上がると求めるレベルが高くなる。
考課実施に当たり、考課対象が直近の状況に偏らないよう、
「人財育成シート」
に半年間の従業員一人ひとりのプラス行動、マイナス行動及び施した指導・育成
内容について記録している。考課は 2段階で実施され、半期に 1度、1次考課者
と被考課者が面談を実施し、人財育成シートを基に直近半年間のフィードバック
4
正社員登用 正
(正社員へ) (
職
限
○
多
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社
員
登
用 処 遇 改 善 人 材 育 成 キャリアア
様 な 正 社 員 )
ップ助成金
務 勤 務 地 勤務時 間
定 限
定 限
定
○
○
をしながら行っている。人財育成シートを活用することで、考課基準の曖昧さを
排除し、記憶ではなく記録で考課し、納得性が向上するよう運用している。その
ほか、面談ではあらかじめ設定した年間目標の進捗状況の確認や是正指導等も行
い、年間目標の履行状況は成績考課に反映される。
考課スケジュールと概要
10月
中間面談、上期「成績・態度考課」実施、冬季賞与に反映
1月
「能力考課」実施
4月
最終面談、下期「成績・態度考課」実施、夏季賞与及び昇給・昇格に反映
1次考課ののちに、考課のブレがでないよう 2次考課が実施される。「人財育
成シート」記録者や考課者は被考課者の等級によって決まっており、例えば、一
般職及び総合職 4等級以下の被考課者の場合、「人財育成シート」記録者は 5等
級であるチーフが、1次考課者は 6等級であるアシスタントマネージャー、2次考
課者は 7等級であるマネージャーが当たっている。できるだけ、現場に近い者が
考課に当たり、「人財育成シート」を具体的な考課材料とすることで、公平、公
正な考課制度となるよう工夫されている。
5
正社員登用 正
(正社員へ) (
職
限
○
多
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社
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登
用 処 遇 改 善 人 材 育 成 キャリアア
様 な 正 社 員 )
ップ助成金
務 勤 務 地 勤務時 間
定 限
定 限
定
○
○
総合職・職能資格制度
等級
対応役職
考課者等例示
人事考課項目
9等級
部長
仕事の成果、管理・監督
8等級
リーダー
決断力、渉外力
7等級
マネージャー
2次考課者
等について考課
6等級
アシス
タント
マネ
ージ
ャー
1次考課者
仕事の成果、指導
5等級
チーフ
人財育成シート記録者
判断力、折衝力
等について考課
4等級
3等級
2等級
役職なし
仕事の質、量
被考課者
理解力、表現力
等について考課
1等級
※ 「考課者等」は被考課者が 4等級以下の場合の例
【一般職から総合職への登用で職務限定を解除、キャリアアップを支援】
毎年 2回(4月、10月)
、①入社 2年以上経過、②各課のリーダーが推薦、③
部長が実施する面談試験をパスした者が、一般職から総合職へ登用される。リー
ダーが推薦する際には、前述の人事考課結果を参考にしている。総合職へ登用さ
れると、これまでの職務限定が解除され、昇進・昇格が可能になるなど大きくキ
ャリアアップの道が広がる。登用人数は、当該事業年度の人事計画、事業計画に
よって異なる。なお、登用時は 2等級からスタートする。
一般職から総合職への登用制度は、2
015年 3月以前の契約社員からの正社員転
換制度を踏襲しており、2
015年 4月の正社員転換時に従来の制度における正社員
の登用基準を満たした者は、契約社員から総合職に転換し、それ以外の者は一般
職に転換した。
◆エルダー制度の採用、親子見学会等、定着率の向上に向けた取組
両社は、そのほかにも定着率向上に向けた様々な取組を行っている。
入社直後の不安を払拭し安心して働きはじめてもらう目的で、新入社員の入社か
6
正社員登用 正
(正社員へ) (
職
限
○
多
○
社
員
登
用 処 遇 改 善 人 材 育 成 キャリアア
様 な 正 社 員 )
ップ助成金
務 勤 務 地 勤務時 間
定 限
定 限
定
○
○
ら6
か月間は、
「エルダー制度」を採用している。これは、新入社員一人につき、
エルダー制度の教育を受けた総合職社員一人がエルダーとして担当につく制度で
ある。実務は社内資格「インストラクター」を持つ総合職社員が指導に当たり、
エルダーは新入社員に安心を与える相談者としての役割を担う。
「インストラクタ
ー」は複数の社員が担当する場合があるが、エルダーは固定化されている。エル
ダーと新入社員は、毎月、目標面談を実施し、フィードバックを繰り返す。
また、24
時間体制のシフト勤務となるので、夜間勤務や、休日が固定されない
ことが離職につながるケースもある。未成年である高卒採用者へは特段の配慮を
しており、入社3
か月間は日曜日を休日として固定化する、夜間勤務に組み込まな
い、といったシフト編成としている。更に夜間勤務に従事することに対しご家族
の心配が懸念されることから、ご家族の方に職場風景を見て安心してもらう「親
子見学会」を企画し、実施している。
2.効果と課題、今後の運用方針
◆離職率が大きく改善、施策が評価され企業知名度も向上
2015年 4月の正社員転換施策以降、定着率向上に効果が見えている。特に株式
会社グランドシステム沖縄における離職率の改善は顕著で、前年が約 1
1%だった
ところ、2015年 4月以降 6か月間は約 3
%となり、高い効果があったと考えてい
る。
また、非正社員の正社員化やエルダー制度、親子見学会の取組は、地元のメデ
ィアで報じられたほか、沖縄県が行っている「沖縄県人材育成認証制度」におい
て両社とも 20
15年 11月に認証されている。社員は空港で働いているため、航空
会社の社員と思われがちであるが、地元
企業と認知され企業の知名度が上がり、
インターンシップの申込者が増えるなど
の反応が出ている。
求人力強化の一環として、更なる企業
知名度向上を図るため、現在は次世代育
7
正社員登用 正
(正社員へ) (
職
限
○
多
○
社
員
登
用 処 遇 改 善 人 材 育 成 キャリアア
様 な 正 社 員 )
ップ助成金
務 勤 務 地 勤務時 間
定 限
定 限
定
○
○
成支援対策推進法に基づく「くるみんマーク認定」も認定申請準備中である。
◆求人応募者の適性を見極める採用選考技術の向上が課題
契約社員の区分を廃止したため、これまでの契約社員の雇い入れ区分に当たる
一般職の正社員については、採用時にその適性を見極めることが求められること
となる。正社員として求人することはメリットも大きいが、採用した人材のミス
マッチも危惧される。そのため採用選考技術を高めていくことが今後の課題であ
る。
◆社員が「自らの子を入社させたい」と思える会社への成長を目指して
今後は、総合職へ転換できるような人材を多くし定着を図ることや、求人競争
力を強化し優秀な新卒を採用することに尽力していく。そのためには、給与水準
や労働条件を更に改善していくことが必要である。20
15年 4月に実施した非正社
員の正社員化はその第一段階の施策と位置付けており、今後も社員の雇用の安定
を図り、生活水準の維持・向上に努めていく。
社員が「入社してよかった」
、
「自らの子を入社させたい」と思えるような会社
として成長していくことを目指している。
3.活躍する従業員の声
年代
勤続年数
キャリアアップの
過程
30 代
性別
男性
2 年 2 か月
契約社員から正社員に転換し、仕事の幅が広がり雇用
の安定も実感。今後は、多くの社内資格を取得し総合
職を目指して更にキャリアアップしていく。
株式会社グランドシステム沖縄
ランプサービス(飛行機誘導)
、貨物搭降載
前田昭一氏
◆正社員になり仕事の幅が広がったことで将来に展望
201
3年に契約社員として入社、201
5年 4月に会社の取組により、契約社員の
一斉正社員転換にて正社員(一般職)となった。
8
正社員登用 正
(正社員へ) (
職
限
○
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○
社
員
登
用 処 遇 改 善 人 材 育 成 キャリアア
様 な 正 社 員 )
ップ助成金
務 勤 務 地 勤務時 間
定 限
定 限
定
○
○
契約社員から正社員になると取得できる社内資格が増え、社内資格を取得する
ことで仕事の幅が広がる。また、正社員になったことで、今後は後輩に教育・指
導できる機会も望めることから社内資格を取得しキャリアアップしたいと考えて
おり、最近では貨物搭降載業務の社内資格である「床下作業責任者」を取得し業
務に当たっているほか、人材指導の社内資格である「インストラクター」にも関
心がある。
◆雇用が安定し生活設計が充実、今後は更なるステップアップを目指す
契約社員時は時給制であったため、出勤日数の少ない月は収入も少なく不安定
だったが、正社員になって月給制となり、通勤手当や扶養手当が増額、又は新た
に支給されるようになったことで、
収入面で安定感や安心感を持つことができた。
また、正社員に転換することが決まったのを機に結婚を決めた。雇用が安定し
将来設計が描けるようになったのが大きな後押しとなった。
正社員に転換して間もないが、更なるステップアップを目指している。現在は
一般職だが、今後は給与水準が高く、昇進・昇格があり、一般職ではできない仕
事にチャレンジできる総合職を目指していくつもりである。
◆キャリアアップには先輩の経験値を知り向上心を高めるのが重要
自分がキャリアアップしたいと考えるようになったのは、総合職の先輩との会
話等から、保持している社内資格やスキル、給与水準が自分とは大きく違うこと
を知り、向上心が強くなったことが大きいと思う。自分も将来、役職に就いたら、
部下に対して自分の経験を伝えようと思っている。そうすることで自分が目標と
されキャリアアップしたいと考える人が出てきてほしいと思う。
9