正社員登用 正 (正社員へ) ( 職 限 ○ 多 ○ 社 員 登 用 処 遇 改 善 人 材 育 成 キャリアア 様 な 正 社 員 ) ップ助成金 務 勤 務 地 勤務時 間 定 限 定 限 定 ○ ○ ◯ ◯ イケアジャパン株式会社 事例 18 非正社員・正社員の雇用区分を廃し、全ての社員を同一の身分とした 上で同一労働同一賃金を実現。どのような局面でも仕事を続けられる 環境を整備。 業種 本社所在地 正社員数 (2015 年 10 月 1 日現在) 主な仕事内容 取組のポイント 卸売業・小売業 千葉県 コワーカー( フルタイム) :1 ,0 30名( 男性 49 0名、女性 54 0名) コワーカー( 短時間) :1, 6 90名( 男性 47 0名、女性 1 , 22 0名) 接客、売場メンテナンス、レジ、物流、レストラン業務 ▪全員をコワーカーとして、同一の賃金制度を適用 ⇒給与水準のアップにより、扶養枠を超えた働き方が増加 ▪有期契約を無期契約に転換 ⇒安心感が高まり、長期でのキャリアプランを描けるように ▪3区分の所定労働時間を設定 ⇒ライフプランに合わせた働き方の選択肢が増加 家具小売り世界最大手イケアの日本法人である同社は、200 2年設立、2 006年に 1号店を開店し、現在では全国に 8店舗を展開している。 「より快適な毎日を、より多くの方々に」という同社の理念は、お客様はもち ろんのこと、 「すばらしい職場を全てのコワーカーに」と、従業員に対しても同様 の考え方を持つ。従業員一人ひとりの能力発揮と成長をサポートするための変革 や努力を惜しまず、人への投資が何よりも重要だと考えている。202 0年には店舗 数及び売上高を現在の 2倍にする計画を掲げ、その達成には従業員一人ひとりの 達成意欲が重要であり、従業員の満足度を高めることが顧客満足につながるとし て、従業員の待遇向上を図っている。その中で、女性の活用と実績が評価され、 2014年経済産業省「ダイバーシティ経営企業 100選」への選出や、社内保育所の 充実等が評価され、201 0年日本経済新聞社「にっけい子育て支援大賞」に選ばれ るなど、多くの受賞歴がある。 1 正社員登用 正 (正社員へ) ( 職 限 ○ 多 ○ 社 員 登 用 処 遇 改 善 人 材 育 成 キャリアア 様 な 正 社 員 ) ップ助成金 務 勤 務 地 勤務時 間 定 限 定 限 定 ○ ○ ◯ ◯ 同社では、正社員、パート社員等呼称の区別はない。マインドセットに言葉は 非常に重要と考え、全員を、共に働く人を意味する「コワーカー(C Owor ke r) 」 という呼び方で統一している。 1.取組の内容 ◆正社員、パートタイマーという考え方を廃止し、全員をコワーカーとして、 同一労働同一賃金を実現 【イケアの理念に基づき平等な環境を整備】 “W ebel ie vei npeo pl e” 「人の力を信じる」という理念に基づき、Div er sit y& Inc lus io n(多様な人材の受容と活用)、Se cu r ity(長期的な関係構築の保障)、 Equ ali ty (平等な機会創出)の 3つの柱を掲げているが、これを具現化するため には何が足りないのかという発想から、20 14年 9月、有期雇用を廃止し、給与形 態の見直しや統一した福利厚生の付与を図る新人事制度を導入した。会社設立時 よりこうした制度は当たり前にはじめるべきという考えがあったものの、日本の 労働慣行等を鑑み導入を見送っていたが、設立から 10年超が経過し、社内での議 論を重ねる中で企業理念に沿ったインフラ整備を行うこととなった。 本国スウェーデンのグローバルなシステムをそのまま導入するのではなく、日 本人の職務に対する誠実さや責任感といったローカルな部分の良さを生かした 「グローカル」な視点で制度を構築した。 【意識改革に傾注】 新制度を導入するに当たり、改革に速やかに対応できるよう、ミーティングや 説明会を通じて意識改革に力を入れた。まず、ストアマネージャー等の経営幹部 の意識改革が最も重要と考え、201 4年 6月頃より「チェンジマネジメントとは何 か」等のワークショップを集中的に行った。一部にコストアップを懸念する声も あったが、長期的視野に立ったビジネスには必要不可欠な施策であるということ を、時間をかけて説いていった。 一方、短時間のコワーカーに対しても、これまでより高い職務期待水準が求め られることになるため、それに対して何が足りないか、自分ではどういうキャリ 2 正社員登用 正 (正社員へ) ( 職 限 ○ 多 ○ 社 員 登 用 処 遇 改 善 人 材 育 成 キャリアア 様 な 正 社 員 ) ップ助成金 務 勤 務 地 勤務時 間 定 限 定 限 定 ○ ○ ◯ ◯ アプランを描いているのかなどを、マネージャーとの 1対 1の面談を重ねながら 詰めていった。扶養から外れることを不安視する者には、時給が正社員並みに上 がって「10 3万円の壁」を超えて働いても手取り収入が減らないことや、社会保 険への加入で、長期的に働くと年金の支給額が変わりメリットがあること等を丁 寧に説明していった。個別面談には、一人に対して 2 ~3時間かけており、延べ 1 万時間ほどにも上る。多くの時間を費やして、個々人の能力や職務期待水準を明 確にしたことが、新制度を機能させる上で重要なポイントとなった。 【人事制度の 5つの施策により同一の労働条件へ】 誰もが平等・公平に扱われるべきだという信念の下、5つの人事施策により、 短時間のコワーカーの労働条件を整備した。 ①同一の基準で賃金を決定 同じ職務であれば全てのコワーカーが同じ賃金を支給されるべきと考え、同一 労働同一賃金を実現した。それに伴い、最低賃金を 9 00円から 1 ,3 00円に大幅に 上げ、地域ごとに異なっていた時給も全国一律とした。 賃金は職務給を適用し、同じ職務であれば同じ賃金表が適用される。 また、 「ワン・イケア・ボーナスプログラム」というボーナスが、フルタイムの コワーカーと同様の仕組みで支給される。 ②職務期待水準の再設定 同じ職務であれば、労働時間の長さに関係なく職務期待水準は同じであり、職 務記述書にも明記されている。しかし、旧人事制度の時には「パートだからここ まででいい」など、会社側もコワーカー自身も短時間のコワーカーに対する期待 値を低く持ってしまう傾向があったため、職務期待水準を職務記述書のとおりに するための教育を徹底していった。 ③同一の福利厚生を適用 これまで、フルタイムのコワーカーと短時間のコワーカーで明確に区分けをし ていたわけではないものの、運用の中で格差が生じていた部分もあり、全てのコ ワーカーに同じ福利厚生を適用するようにした。子どもの傷病休暇等、それまで 旧人事制度の時には、短時間のコワーカーでは取れなかった休暇も全員が取れる 3 正社員登用 正 (正社員へ) ( 職 限 ○ 多 ○ 社 員 登 用 処 遇 改 善 人 材 育 成 キャリアア 様 な 正 社 員 ) ップ助成金 務 勤 務 地 勤務時 間 定 限 定 限 定 ○ ○ ◯ ◯ ように整えた。 また、スウェーデン語で「ありがとう」の意味である “Ta ck! ”と名付けられ た個人年金制度も適用され、部門・地位・給与レベルに関わらず、働いた時間に 比例した額を受け取れることとなった。 ④無期契約へ転換 6か月更新の有期契約を廃止し無期契約に転換することで、65歳の定年までの 勤務が可能となった。 ⑤労働時間の選択が可能 コワーカーの所定労働時間は、①週 39時間(フルタイム) 、②週 25時間~3 8 時間、③週 1 2 ~24時間の 3区分に分かれており、自分のライフステージに合わせ た労働時間が選択しやすくなった。 ◆原則転勤命令がなく、職務限定、勤務地限定も可能 同社には、原則として会社の辞令による転勤はない。欠員やポストの新設、新 店オープンがある場合は、 「オープン・イケア」という社内公募制度により自ら希 望するコワーカーが手を挙げて異動する。異動命令がないため、自分の希望する 職務や勤務地で働き続けることも可能となっている。 同社は、キャリアの描き方はジャングルジム型が理想と考えており、同じ部署 を一直線に上がるだけでなく、色々な部署を平行に移動したり、ライフプランに よっては少しペースを落として下がったりなど、自分でキャリアパスを描けるよ うな仕組みとなっている。 2.効果と課題、今後の運用方針 ◆雇用区分の廃止による 4つのメリット 雇用区分を廃止し、全社員を同一の身分にしたことにより、以下の 4つのメリ ットがあった。 ①給与水準が大幅にアップしたことにより、税法上の扶養控除がなくなってもそ れをカバーできるだけの収入が見込まれることから、より長時間働きたい、新 しいことにチャレンジしたいというコワーカーが増加した。 4 正社員登用 正 (正社員へ) ( 職 限 ○ 多 ○ 社 員 登 用 処 遇 改 善 人 材 育 成 キャリアア 様 な 正 社 員 ) ップ助成金 務 勤 務 地 勤務時 間 定 限 定 限 定 ○ ○ ◯ ◯ また、地域ごとに異なっていた賃金を全国一律にしたことで、地方への転勤希 望がでるなど、働く場所の選択肢の拡大にもつながった。 ②有期契約から無期契約に切り替わったことにより、コワーカーの間に安心感や 安堵感が広がり、長期でのキャリアやライフプランを考えることができるよう になった。コワーカーからも「自分の人生を考える機会になった」「責任が重 くなったが、仕事を見直すきっかけになった」という声が聞かれる。離職率も 低下傾向にある。 ③休暇制度等の福利厚生を統一したことにより、育児や介護等、様々なことが起 こった時に、自分のライフステージに合わせて働きやすくなった。 ④制度を整備したことで、イケアで長期的に働き続け成長したいという、意欲の 高い応募者が増加した。 また、今回の制度改革はフルタイムのコワーカーにとっての直接的な変更は少 ないものの、 「Equ al it yという理念を具現化した会社を誇りに思う」と称賛する 声が聞かれており、コワーカー全体のベクトル合わせができたのではないかと感 じている。 ◆短時間マネージャーの増加が目標 育児や介護に関する特別休暇を設けたり、社内保育所をつくるなど、女性が働 き続けやすい環境を整備してきたこともあり、 2015年 1 0月現在の女性比率は 6 5%、 女性マネージャー比率は 43 %と高くなっている。 また、現在、短時間のコワーカーのマネージャーは 2名であるが、新制度導入 により増えていくことが想定される。将来的には、ストアマネージャーを短時間 のコワーカー2名で務めるといったスタイルも考えていきたい。 前 CEOもパートタイマー出身だったことから、短時間のコワーカーの中からも CEOを目指す者が出てきてくれることをぜひ願っている。 ◆長期的な視野を持ち、引き続きインフラ整備を推進 新制度導入から 1年が経過したが、ビジネスへの寄与については、長期的な視 5 正社員登用 正 (正社員へ) ( 職 限 ○ 多 ○ 社 員 登 用 処 遇 改 善 人 材 育 成 キャリアア 様 な 正 社 員 ) ップ助成金 務 勤 務 地 勤務時 間 定 限 定 限 定 ○ ○ ◯ ◯ 野で成果を測っていきたい。導入段階から、2 017年、20 20年の KPI (重要業績評 価指標)1に照準を合わせているため、現段階で結論を出すのは時期尚早だと考え ている。一方で、従業員満足度調査は毎年定期的に実施しているため、次回の結 果がどうなるのか今から楽しみにしている。 1 顧客満足度、生産性、売上高等 6
© Copyright 2024 ExpyDoc