公務員のための 行政マーケティング

地方創生成功の方法論
公務員のための
行政マーケティング
5:住民の活力を引き出し、地域を発展させる
行政マーケティングの定義
淡路富男(行政経営総合研究所代表)
http://members.jcom.home.ne.jp/igover/
https://www.facebook.com/tomio.awaji?ref=tn_tnmn
※関連した情報は上記の URL をご参照下さい。
※未定稿のため誤字などはご容赦下さい。
1.行政に有用なマーケティングの定義を理解する
◆定義を曖昧にするとマーケティング活動の成果は半減する
公務員が、マーケティングを習得するには、「マーケティング定義」の
理解が前提になります。特にマーケティングを民間の手法といって誤解し、
成果産出の手立てを失ってきた成果不足の公務員と行政組織とって、マー
ケティングの定義は、自己の成果不足を是正する前提になります。
他稿でも明らかにしたように、マーケティングは、もはや企業だけのも
のではありません。組織の成果を通じて社会
に貢献する意志のある組織すべてに必要なも
のです。この民間のものといった認識の変更
なしでは、行政組織とそこで働く公務員の成
果産出活動は常に中途半端になり、成果不足になります。
◆行政マーケティングの特色
企業の課題解決から誕生したマーケティングは、コトラーによって多く
の分野に適用され拡大してきました。その適用範囲は、コトラーの軌跡か
ら大別すると下記のようになります。
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1.企業のマーケティング
2.非営利組織のマーケティング
3.ソーシャル・マーケティング
それぞれが関連しています。地域と住民活力を喚起し、地域社会の安定
と発展を担う行政に適用される行政マーケティングも、これらのマーケテ
ィングの影響を受けて誕生しています。
よつて公務員と行政組織に必要な行政マーケティングの内容には、福祉
に貢献するソーシャル・マーケティングと地域振興に貢献する企業のマー
ケティングの考え方や体系が含まれます。公務員に有用な行政のマーケテ
ィング定義を理解するには、企業のマーケティング定義とソーシャル・マ
ーケティングの定義の確認が必要です。
最初に企業のマーケティング定義を理解します。次にコトラーが明らか
にしているソーシャル・マーケティングの定義を確認します。そこから行
政マーケティングの定義を考えます。
◆企業向けのマーケティング定義
コトラーは、企業向けのマーケティングの定義に関して、社会的(ソー
シャル)な定義と経営的(マネジリアル)な定義を明らかにします。
前者の社会的な定義としては
「マーケティングとは、個人や集団が製品およびサービスを創造
し、提供し、他者と自由に交換することによって、自分が必要と
し求めているものを手に入れる社会的プロセスである」とします。
後者の経営的な定義としては
「どのような価値を提供すればターゲット市場のニーズを満たせ
るかを探り、その価値を産み出し、,顧客に届け、そこから成果
をあげる」とします。
コトラーは、企業のマーケティングを社会的なプロセスと考えることで、
マーケティングを企業以外の組織にも必要な社会的なものとします。その
内容は、顧客起点の創造性と共創的な活動による成果産出の実効性を強調
し、このためには価値創造と提供の仕組みが必要とします。創造性、共創、
成果、仕組みの構築などがポイントになります。
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さらに、地域経営を担う行政組織とそこで働く公務員に、マーケティン
グの意義を確認するに必要な定義としては下記の定義があります。
マーケティングとは、一国の産業能力を社会のウォンツに
適合させる力である。
これは「地方の産業と住民の活力を、社会のニーズに適合させる」とも
言い換えられます。ここから、地域や住民の福祉と活力を喚起する地方経
営を担う行政には、マーケティングが不
可欠であることがよくわかります。マー
ケティングなしの行政では、地方経営を
担うことはできません。事実、現在の地
域の疲弊や人口減少に見られるように、
行政の社会の安定と発展に寄与する役割
が失われつつあります。
次はソーシャル・マーケティングの定義を検討します。行政マーケティ
ングの中心的な概念になります。
◆複数のソーシャルマーケティングの定義
(1)書籍『非営利組織のマーケティング戦略』での定義
コトラーは、この書籍で、ソーシャル・マーケティングと他の分野のマ
ーケテイングを区分するものは、組織の「目的」に関すること「のみ」と
し、ソーシャル・マーケティングの定義を下記のように明記します。
ソーシャル・マーケティングは、「対象とした住民と社会一般
の便益のため」に、「社会行動」に影響を及ぼそう
とするものである」とし、「ソーシャル・マーケテ
イング・プログラムは、個人や社会全体の利益の
ために、行動を変革させることを目標として実施
される、一般的マーケテイング・プログラムであ
る」
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(2)書籍『ソーシャル・マーケティング』での定義
コトラーはこの書籍で、社会問題を解決するには、社
会を変革することが必要であるとします。しかし残念な
がら、社会変革のための活動の多くは、ほとんど成果を
あげていない」とし、ソーシャルマーケティングの重要
性を明らかにしています。下記のように行政のマーケテ
ィングの必要性と特徴を明らかにしています。(1)の定
義内容とあわせて、行政マーケティングの定義に取り入れます。
「ソーシャル・マーケティングは、人々の行動を変えるための
戦略である」とし「反対の考えを持つ人々、反対の行動を取る人
々を変えること、あるいは新しいアイデアや行動を採用させるこ
とが目標である」
2.行政マーケティングの定義
◆行政が活用できるマーケティングとは
以上の企業のマーケティングとソーシャル・マーケティングの定義か
ら、行政が活用できるマーケティングの定義を検討すると、下記のように
なります。
-行政マーケティングの定義-
行政のマーケティングとは
住民と社会の安定と発展のために
住民価値を創造、協働、対話、交換することを通じ
て
対象とした住民の自発的な行動に影響を及ぼす
望ましい社会変革を起こす最適計画を
住民と共創的に策定し実施・評価することです。
①[目的]行政マーケティングの目的は、住民生活を豊かにすることを通
じて、住民と社会全体の安定と発展に貢献することです。これ
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には地域の資源の活用と住民活力の喚起が重要になります。
②[目標]行政マーケティングの目標は、住民の考え方の変化だけではな
く、自発的な行動の変革を目標にします。これが大切です。そ
れは、交換を通じて①認知を変えるだけではなく、②特定の行
為(投票)を行う、③行動(食生活)を変える、④価値観を変
えることです。
③[方法]行政マーケティングの方法は、独自の価値の創造、協働、対話、
交換を住民や関係者と協働的に行う仕組みを構築し、共助
(Co-Aid)と共創(Co-creation)を通じて望ましい社会変革(地
域の自助的な言動)を起こすための、最適計画を策定し実施・
評価します。
④[住民]行政マーケティングの住民は、政策の受給者ではありません。
満足させるべき顧客であり、社会の安定と発展を使命とする行
政と協働する、共助と共創コミュニティで生活する価値共創者
です。
④[協働]行政マーケティングの協働は、地域の課題を、住民と行政が協
働による自助と共創で解決することです。
行政マーケティングの意義
定義
住民と社会の安定と発展のために
対象とした住民の自発的な行動に影響を及ぼす
望ましい社会変革を起こす最適計画を
住民価値を創造、協働、対話、交換することを通じて
住民と共創的に策定し実施・評価することです。
構成
【目的】住民と社会全体に貢献する
【目標】考え方の変化だけではなく住民の自発的な行動変容を実現
【住民】政策の消費者ではなく価値共創者
【協働】課題を共創して解決する
【方法】交換により望ましい社会変革を起こすための最適計画をつくる
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以上のように行政マーケティングは、住民の行動変革を共創しながら支
援する協働的な活動です。行政マーケティングの定義を実践することで、
住民と社会の安定と発展に貢献することが可能になります。この定義をし
っかりと理解し、行政組織と公務員のマーケティングに対する誤解は即是
正しなければなりません。
マーケティングの理解不足を続ける限り、政策や公共サービスの成果は
ありません。それは地域における行政組織とそこで働く公務員の存在価値
を希薄なものにします。それはまた地域の衰退を意味します。定義を理解
した後は、それを具現するマーケティング体系の理解です。
【参考資料】
本文は新刊『コトラーに学ぶ公務員のためのマーケティング教科書』
(同
友館)を参考にして作成しています。また、フェイスブックや YouTube
にも関連した資料があります。アクセスして学習の参考にして下さい。
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https://www.facebook.com/tomio.awaji
https://www.youtube.com/channel/UCKmN1mLRCoPAuSx7tnNgoVA
-著者紹介-
淡路富男(あわじとみお)
行政経営総合研究所代表
民間企業を勤務後、民間大手コンサルティング会社、
(財)日本生産性本部主席経営
コンサルタント、自治体マネジメントセンター主席コンサルタントを経て、現在は
行政経営総合研究所の代表。
◆兼職
各自治体 長期総合計画審議学識委員
各自治体 行政改革推進学識委員
各自治体職員研修所 自治体経営研修講師、管理職向けマネジメント研修講師
各シンクタンクのコンサルティングと研修講師
◆専門領域:総合計画、行政経営改革、マネジメント、公共マーケティング
◆主な著書:
『コトラーに学ぶ公務員のためのマーケティング教科書』
(同友館)
『ドラッカーに学ぶ公務員のためのマネジメント教科書』
(同友館)
『突破する職員になる』
(公職研)共著
『三鷹がひらく自治体の未来』
(ぎょうせい)
『自治体マーケティング戦略』
(学陽書房)
『民間を超える行政経営』
(ぎょうせい)
◆コンサルティング、研修、講演のお問い合わせは下記に
MAIL
URL
[email protected]
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