(1)これが公務員に必要なマーケティングです

地方創生成功の方法論
公務員のための
行政マーケティング
1:これが公務員に必要なマーケティングです
淡路富男(行政経営総合研究所代表)
http://members.jcom.home.ne.jp/igover/
https://www.facebook.com/tomio.awaji?ref=tn_tnmn
※関連した情報は上記の URL をご参照下さい。
※未定稿のため誤字などはご容赦下さい。
1.公務員と行政組織の成果不足とマーケティング
◆成果を出せない公務員と行政組織
現在の日本は、副作用も覚悟したマイナス金利の金融政策、返済不能な
借金増にもなる大規模な財政出動、損失リスクもある年金資金を活用した
必死の株価 UP 策など、禁じ手ともいえる高リスク景気回復策がとられて
います。
この背景には、これまでの国家と地方経営の失敗から、地方の多くが地
方消滅につながる人口減、困窮増に見舞われ
ていることがあります。民間機関の研究では、
2040年には896の自治体が再生不能に
なると報告されています。
地方と国家経営を担当する首長・職員は、
その熱意と努力にも拘わらず、住民・国民が
期待する成果を実現できていません。長年の
成果不足から存在が問われる事態に遭遇して
います。
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◆二人の巨匠の指摘
ところがこの事態を予測し、その手立てを準備していた二人の巨匠がい
ます。その巨匠の一人が、「マネジメントの父」であるドラッカーです。
ドラッカーは、1954年に組織に成果をもたらす「マネジメント」を発
明します。GM、フォード、GE など多くの企業が、それを企業改革に取
り入れました。ドラッカーは、マネジメントの中で、成果に直接関わるの
がマーケティングであるとし、組織とそこで働く人たちに、マネジメント
とマーケティングの修得を勧めました。
もう一人の巨匠が、
「マーケティングの父」
であるコトラーです。コトラーは、1975
年に「非営利組織のマーケティング戦略」を
刊行した際に、マーケティングは、あらゆる
組織に必要なものであるだけに、非営利組織
にも早く導入されなければならない」と、マ
ーケティングの導入を勧めました。
しかしドラッカーとコトラーの先見に満ちた助言にもかかわらず、行政
組織はマーケティングを、企業の利益獲得の手法と軽視してきました。結
果、行政組織は住民ニーズから離れ、「地方と日本の再生」が20年以上
も国家の最大政策課題になるほどの、成果不足を続けることになりました。
2.マーケティングに関する公務員のニーズ
近い将来の破綻をつきつけられている行政組織にとって、成果に直接的
に関係するマーケティングの活用は、まったなしの課題です。首長と職員
すべてが、マーケティングの考え方と体系を習得し、「地方創生」などの
実践を通じた住民・国民起点の成果の産出で、社会の安定と発展への貢献
が求められています。
◆公務員のニーズ
マーケティングの習得は、行政も含めた非営利組織と企業のマーケティ
ングを確立した、コトラーのマーケティングが最適です。ただ、コトラー
の著書は数が多く、そこから公務員向けの書籍を選択したとしても、かな
りのものになります。例えば、そのうちの一つである『非営利組織のマー
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ケティング戦略』を見ても798ページもあり、読破にはかなりの根気が
必要です。これが、①公務員に必要なマーケティングの基本を理解したい、
②業務や政策策定にマーケティングを適用して実践したい、③部署のマー
ケティング戦略を策定したい、といったニーズをもちながら、マーケティ
ングの学習を未達にしてしまう理由です。
3.連載の概要/行政のマーケティングを学習する
◆公務員の役に立つマーケティングの概要を学習する
そこで、「地方創生を担う公務員の業務に役立つマーケティングの基本
を学習する」をコンセプトにした本連載を企画しました。
内容は、今春刊行予定の単行本『コトラーに学ぶ公務員のためのマーケ
ティング教科書』(同友館)を参考にして、公務員に必要なマーケティン
グに関する基本的な事項を解説します。より詳細な内容は『コトラーに学
ぶ公務員のためのマーケティング教科書』(同友館)を参照下さい。
◆7つを理解し学習する
公務員と行政組織がマーケティングを習得するには、下記の内容の理解
や学習が求められます。
1.公務員や行政組織にとってのマーケティングによる成果と必要
性を理解する。
国家経営の失敗である人口減などから、住民生活の現在と未来に不安が
漂っています。この原因の一つに、年間140兆円の税金を扱う公務員と
行政組織のマーケティングへの無関心があります。公務員と行政組織にと
っての行政マーケティングの成果と必要性について学習します。
2.公務員と行政組織が現場で活用するマーケティングの定義と体
系を理解する。
社会の安定と発展に貢献する行政マーケティングに関する基本事項と体
系を学習します。
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3.行政マーケティング分析の方法と政策課題の設定を理解する。
最初は、内外の環境分析から「機会と脅威」「強みと
弱み」を把握し、SWOT 分析を通じて政策課題案を抽
出します。重要課題については仮説を検討し、その内
容を構想案として策定し、評価を通じて取り組むべき
政策課題を決定します。
4.戦略的な視点と政策・公共サービスの価値を決めるコンセプト
の策定方法を理解する。
住民・競合・資源から戦略的視点を検討します。次に、コトラー・マー
ケティングの柱の一つである STP - C プロセスを明らかにします。
5.政策・公共サービスのコンセプトを具体化する方法を理解する。
政策・公共サービスのコンセプトは、住民価値、住民
コスト、住民協働、住民対話の個別戦略で具体化します。
これで住民の課題を解決する政策形成へのマーケティン
グ適用が完了します。
6.「行政マーケティング計画策定マニュアル」の理解します。
マーケティングを活用した総合計画の策定や政策形成、予算編成での予
算要求書の作成が可能になります。
7.M 市におけるマーケティング導入の成果と成功要因を理解する。
成功要因とは普遍性のあることです。普通の職員と行政組織が、マーケ
ティングの「基本と原則」を活用して成果を手にすることです。特別すぎ
る成功は他の人には不可能を意味します。普通の職員と行政組織の成功が、
地方と日本の創生を担うことになります。事例でこれを確認します。
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◆マーケティングとマネジメントで地域の未来を拓く
コトラーが強調するように、マーケティング
は、住民ニーズに対応する行政組織に働く首長
も含めた職員すべてに必要なものです。マーケ
ティングを理解した職員の多い組織が、地方と
国の再生と創生に貢献することができます。
またドラッカーが指摘するように、マーケティングはマネジメントの重
要な実践機能です。よってマネジメントの素養があると、マーケティング
の実践力がさらに高まります。これに関しては本連載の姉妹書である『ド
ラッカーに学ぶ公務員のためのマネジメント教科書(同友館)』をご活用
下さい。
あなたはマネジメントで自ら最上の能力を引き出し、マーケティングで
住民ニーズに対応できる政策・公共サービスを提案することができます。
そこに地域の未来とあなたの役割があります。
次回は、公務員のためのコトラー・マーケティング(2:疲弊と貧困に
挑むマーケティング)になります。
【参考資料】
※本原稿に関連した内容は、新刊『コトラーに学ぶ公務員のためのマーケ
ティング教科書』(同友館)と既刊『ドラッカーに学ぶ公務員のためのマ
ネジメント教科書(同友館)』を参考にして下さい。理解が深まります。
また、フェイスブックや YouTube にも関連した資料があります。学習の
参考にして下さい。
https://www.facebook.com/tomio.awaji
https://www.youtube.com/channel/UCKmN1mLRCoPAuSx7tnNgoVA
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-著者紹介-
淡路富男(あわじとみお)
行政経営総合研究所代表
民間企業を勤務後、民間大手コンサルティング会社、
(財)日本生産性本部主席経営
コンサルタント、自治体マネジメントセンター主席コンサルタントを経て、現在は
行政経営総合研究所の代表。
◆兼職
各自治体 長期総合計画審議学識委員
各自治体 行政改革推進学識委員
各自治体職員研修所 自治体経営研修講師、管理職向けマネジメント研修講師
各シンクタンクのコンサルティングと研修講師
◆専門領域:総合計画、行政経営改革、マネジメント、公共マーケティング
◆主な著書:
『ドラッカーに学ぶ公務員のためのマネジメント教科書』
(同友館)
『突破する職員になる』
(公職研)共著
『三鷹がひらく自治体の未来』
(ぎょうせい)
『自治体マーケティング戦略』
(学陽書房)
『民間を超える行政経営』
(ぎょうせい)
◆コンサルティング、研修、講演のお問い合わせは下記に
MAIL
URL
[email protected]
http://members.jcom.home.ne.jp/igover/
本書の内容は2016年3月刊行予定の下記の書籍に関連します。ご活
用下さい。
新刊
既刊
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